13日の衆議院総務委員会でストリートビューに関する質疑が行われていたことを、トラックバックを頂いて知った*1。
会議録はまだ公開されていないようだが、「衆議院TV」でその様子を視聴できる。
最初の質問者である松本文明議員(自由民主党)により、12分間ほどストリートビューについて質疑が行われている。
2.5mの高さから撮影されて塀の中が庭先まで写っている件や、ラブホテル街が撮影されている件、米国では道路が広い件などを挙げ、よく質問されている。
しかし、それに対する政府参考人の総務省総合通信基盤局長の答弁には、明らかな事実誤認がある。
松本文明委員(自由民主党)
(略)こういうようなことというのは、この国のプライバシーの考え方というのは、どういうことになっているのか、総務省のご見解をちょっとうかがいたい。
桜井俊政府参考人(総務省総合通信基盤局長)
お答えいたします。ストリートビューとプライバシーとの関係でございますけれども、グーグル側では、人の顔、あるいは自動車のナンバープレート、こういったものを解析いたしまして自動的にぼかしを入れるという技術、システムを導入しております。ぼかし漏れ等の事例があるようでございまして、利用者からの申告がありますと、それに応じて削除をするという対応をしているというふうに聞いているところでございますけれども、先生ご指摘の通り、プライバシーの問題、懸念する声というのはあるということも事実でございます。
プライバシー権、大変幅広い概念でございますので、国民各界各層の十分なご議論というのも必要かと思いますけども、総務省といたしましても、インターネット上の情報流通を所管するという立場から、引き続きグーグル社等からヒアリングするなど、このサービスについて注視して参りたいというふうに考えております。
衆議院平成20年11月13日総務委員会
自動車ナンバープレートについて自動的にぼかしを入れるシステムをグーグルが導入していると断定的に答弁されているが、それは米国や欧州での話*2であって、日本のストリートビューには導入されていない。このことはグーグル株式会社の担当社員が8月にそう説明しているし、実際それを否定する事実は一度も発見されていない。
グーグルで地図製品担当のプロダクトマネージャーを務める河合敬一氏は(略)また、映っている人の顔については自動認識によりぼかし処理を行っており、米国では車のナンバープレートなどについても一部処理を行っているが、日本では解像度の問題でほとんど識別できないと思われるため、現時点では顔以外には自動的な処理は行っていないとした。
「ストリートビュー」のプライバシー問題、グーグルが方針説明, NTERNET Watch, 2008年8月5日
8月31日の日記にもまとめたように、実際にストリートビューを見てみればすぐにわかることなのに、どうしてこんな誤った答弁が出てしまうのだろう。これまでに一部の新聞や雑誌等が誤ってそう書いた*3ことがあったが、そういったものが鵜呑みにされているのだろうか。
この答弁に対して議員も疑問を挟んでいないことから、議員にも事実誤認があるのではないか。議員から直接グーグル社の河合敬一担当社員に問い質したらいいのにと思う。
自動車ナンバープレートのぼかし処理が行われていないことを示す実例として、グーグルの撮影車(別の車両)が写っている写真を挙げておく。前後に移動させてもどの写真も処理されていないことがわかる。
一方、フランスでは次のようにぼかし処理が施されている。
*1 私は国会にも地方議会にも知り合いはなく、またこちらから活動したこともないので、この情報は入ってこなかった。ブログ検索で調べてみたところ、衆議院議員土屋正忠氏のブログにストリートビューのことが取り上げられていた(10月15日、11月12日のエントリ)。
*2 10月26日の日記で示したように、フランスのストリートビューでは、ナンバープレートはかなり遠くのものまでしっかりとぼかし処理が施されている。
*3 たとえば、産経新聞大阪版11月1日の記事には「グーグルは通行人の顔や車のナンバーなどについては、自動画像認識装置でぼかしを施しているとしている」との事実に反する記述がある。また、8月19日の池田信夫の「サイバーリバタリアン」で「日本では人の顔や車のナンバーなどは消されている」と出鱈目なことが書かれている。