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高木浩光@自宅の日記

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2008年08月31日

グーグル株式会社の3つの虚偽(まとめ)

もし日本にプライバシー擁護団体があったなら、ただちに次の3点について抗議声明を出していたことだろう。私が個人でこのようなことを言ってもニュースとして扱われることはない。団体の声明という形式が重要であるのだが、残念ながら日本にそのような活動のできる団体はまだなさそうだ。

「通りに立った目の高さで」という嘘

Googleマップのヘルプの「ストリートビューとは」には、「通りに立った目の高さで移動しながら周辺の景色を見ることができます」と、説明されている。

図1: Googleマップのヘルプ「ストリートビューとは」

これは全くの嘘偽りで、実際には、約2.5メートルの高さから見下ろす景色であり、狭い路地では民家の塀の中まで覗き込む景色が撮影、公衆送信可能化されている。

グーグル株式会社は少なくとも次のどちらかの対応をとるべきである。

  1. 約2.5メートルの高さから撮影した写真(少なくとも被写体までの距離が短く塀などを越えて覗き込む形となっている写真のすべて)をただちに廃棄すること。
  2. Googleマップのヘルプの「ストリートビューとは」の説明を訂正し、「約2.5メートルの高さから見下ろす視点で移動しながら周囲の景色や狭い道では民家の塀の中なども見ることができます」と、実態に即した説明に差し替えること。

「私道や敷地内に入っての撮影はしていない」という嘘

京都新聞の記事INTERNET Watchの記事によれば、グーグル株式会社は「公道から視覚的に見えているものだけを使っている」、「撮影する道路は公道からに限っており、私道や敷地内に入っての撮影はしていない」との公式見解を示しているが、それは事実でない。

「関係者以外進入禁止」等の警告があるにもかかわらず、ゲート等を越えて私有地に入り、目的外活動(敷地の所有者がその道路を開放するに際して想定している正当な目的以外の活動)を行っている事例が複数存在する。また、集合住宅の駐車場内に進入して撮影された写真も多数存在する。撮影作業員のミスで進入したと思われる事例でも、撮影作業員は誤りを認識していたはずと推定される写真においてさえ、撮影のキャンセル処理や写真の自主的な削除処理が行われていない。

グーグル株式会社は少なくとも次のどちらかの対応をとるべきである。

  1. 私道や敷地内に入って撮影したすべての写真をただちに廃棄すること。
  2. 「公道から視覚的に見えているものだけを使っている」、「撮影する道路は公道からに限っており、私道や敷地内に入っての撮影はしていない」との発言が誤りであったことを公式に認め、「私道や敷地内に入っての撮影も行っており、公道からでは見えない写真も使っている」と見解を訂正すること。

「自動車ナンバーは日本では解像度の問題でほとんど識別できない」という嘘

INTERNET Watchの記事によれば、グーグル株式会社は「米国では車のナンバープレートなどについても一部処理を行っているが、日本では解像度の問題でほとんど識別できないと思われるため、現時点では顔以外には自動的な処理は行っていない」との公式見解を示しているが、「解像度の問題でほとんど識別できない」というのは事実に反しており、番号が丸見えのナンバープレートが無数に撮影されて公衆送信可能化されている。

グーグル株式会社は少なくとも次のどちらかの対応をとるべきである。

  1. 自動車ナンバープレートの不可視化処理を直ちに実施し、番号が識別できないようにすること。
  2. 自動車ナンバープレートの不可視化は不要であるとの立場である旨を公式に示すこと。

以上。

グーグル株式会社は新聞社の取材申し込みをシカトしているらしい

8月30日の東京新聞朝刊に「ストリートビューの是非」という特報記事が出ている。記事は数々の問題点を挙げた上で、最後に次のように結んでいる。

こうした状況への対応も含め疑問に答えてもらおうと、グーグルに二十六日から再三、取材を申し込んでいるが、二十九日現在、何の音さたもない。

東京新聞2008年8月30日朝刊

日本社会は、説明することさえ拒否するような企業でも存在し続けられるようなところだっただろうか。

児童生徒の視点で考え出されたストリートビュー等の用途とは

ストリートビューは何の役に立つのかという疑問があちこちで呈されている。これについては、Googleより先に類似のサービスを開始していたロケーションビュー社の「LOCATION VIEW」が、既に興味深い答えを示してくれていた。

  • たった一日でできちゃう!夏休み自由研究inロケーションビュー, 株式会社ロケーションビュー, 2008年8月6日

    「夏休み自由研究inロケーションビュー」の画面

    • Let's人通り調査! ・渋谷の交差点との人数を比べよう (LOCATION VIEWで見る)
    • ファッションチェック! ・原宿を歩くヒトと近所を比べよう (LOCATION VIEWで見る)
    • 「決戦!姫路城 ・お城の弱点をさがして攻め込め」 (LOCATION VIEWで見る)
    • 変な建物を見つける ・ぶらり歩いて変な建物を見つけよう(LOCATION VIEWで見る)

なるほどこれが本音ですか。わかります。

つまり、この種のサービスを一般公開したときの用途というのは、撮影された人間を観察するためのものでもあるし、建造物の弱点を探して攻め込む方法を考えるためのものであり、また、変なものを探して晒しものにするためのものであると。少なくとも児童生徒向けにはそうであると。

これは冗談では済まないかもしれない。実際、小中学生が夏休み中にストリートビューを使って何らかの資料を作成している可能性は十分にあるのではないか。「子供が同級生の家の写真を集めていじめに使うのではないか」という懸念の声はしばしば耳にしていた(そのときは杞憂だと思った)が、資料を作成する子供自身には悪気がなくて無邪気にリストを作成するくらいのことはありそうだ。それが夏休みの自由研究などとして学校に持ち込まれたときに、悪意ある児童生徒によって使われたりしないだろうか。

既にストリートビューの対象地域となっているところでは、学校関係者は夏休み明けに警戒が必要ではないか。また、今後対象地域となりそうな名古屋、福岡、沖縄等では、ストリートビューが公開された際の児童生徒の行動に注意した方がよいのではないか。一般にはいじめの原因は様々であり、予見できない原因のものは事前防止策をとることはできないものだろうが、「同級生の家の写真リストを作成するコストが急激に下がる」という事態は予見できる。

東京新聞の街角アンケートの結果によると、ストリートビューがどういうものか知らない人がほとんどだという。各地の教育委員会は、少なくともストリートビューの実態を学校関係者に周知した方がよいのではないか。

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