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高木浩光@自宅の日記

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2007年08月11日

現場でコピペしてるんだパート2 「CNETブログを封鎖せよ」

昨年10月、CNET Japanブログの一つに掲載されていた「時代にマッチした「サイト利用規約」を作ってみた」は、そもそも利用規約の形態になっていない上に、引用の方法を「blockquoteタグ推奨」と決め付けたり、引用元の明示方法に「直リンク」を強制するなど、他人の表現手法に指図しようとする悪例であり、そのことは昨年10月7日の日記「無思慮なサイト運営者が本来言わんとすることを利用規約の形式で書いてみた」で書いていた。その記事にはトラックバックを送っておいたが、著者の反応はなく、記事はそのままになっていた。その記事のはてなブックマークには、「これをこのままコピペする輩が続出の悪寒。blockquote推奨、とか。」といった懸念の声も出ていたが、その後も「お役立ち」などとしてブックマークされ続けており、最近でも数多く読まれていることがうかがわれる。

そしてその嫌な予感は現実のものとなっていた。「Fragment identifierでページ内の特定の部分(アンカー)にリンクを張ることも可能」で検索してみると既にコピペ汚染が広がっていることがわかる。

真っ当な企業までもが、この「時代にマッチした『サイト利用規約』」とやらをコピーして使ってしまっている。*1

しかも、元のCNET Japanブログの記事は、

ちなみに、この「サイト利用規約」そのものは、クリエイティブ・コモンズのコンセプトを日本で普及させる意味も含めて、クリエイティブ・コモンズの「アトリビューションーシェアアライク 2.1」の条件で提供する

時代にマッチした「サイト利用規約」を作ってみた, 中島聡・ネット時代のデジタルライフスタイル, 2006年10月3日

というライセンスで著作権を主張していたのに、誰一人としてアトリビューションーシェアアライクの条件を守っていない。*2

*1 「“Fragment identifier” でページ内の特定の部分 (アンカー) にリンクを張ることも可能ですが」と書かれている(コピーされている)が、fragment identifierが何なのかわかってて書いているのか? あるいは、読者にわかると思って書いてるのか?

*2 そもそもこの種の文章に著作権があるかどうか疑わしいが。


2007年08月18日

ユビキタス社会の歩き方(2) ストーカーから逃れて転居したら無線LANを買い換える

5月27日の日記「PlaceEngineのプライバシー懸念を考える」では、「無線LANアクセスポイントのMACアドレスを知られると、住所を知られることになる」という状況が生じ始めていることついて書いたが、そのリンク元に、それがもたらす被害の具体例としてストーカー被害を挙げている方がいらした。同じことについて私なりに書いてみる。

ストーカーに自宅を特定されて付き纏いなどの被害に遭っている被害者が、ストーカーから逃れるために転居することがしばしばあるようだ。勤務先を特定されていない場合や、転居先がそこそこ遠方であれば、その対処が有効なのだろう。

しかし、無線LANが普及した現在、平均的な家庭には無線LANアクセスポイントの1台や2台は設置されているであろう。自宅を特定したストーカーは、自宅前で無線LANパケットを傍受することにより、ターゲットの所有する無線LANアクセスポイントのMACアドレスを既に収集しているかもしれない。

被害者がストーカーから逃れて転居したとき、ストーカーは、その場所から同じMACアドレスの無線LANパケットが出なくなっていることに気づくだろう。そのときストーカーは、PlaceEngineサーバにそのMACアドレスを送信して問い合わせることで、転居先の経度緯度(位置情報)を検索することができてしまう*1。これは数十メートルの誤差で得られる場合がある*2ので、ストーカーはすぐにターゲットの自宅を特定してしまうだろう*3

たとえ勤務先を変えても、何百キロ先に転居しても、同じ無線LANアクセスポイントを使用してしまうと、ストーカーは即座に転居先を調べることができてしまう。

このようなことが可能になったのは、PlaceEngine(と同様のサービス)が開始されたからだ。詳しくは「PlaceEngineのプライバシー懸念を考える」で書いた。

被害者の自衛策は、転居前に使用していた無線LANアクセスポイントを転居前に廃棄するなどして、転居先で同じ機器の電源を一度も入れないようにすることである。新しい無線LANアクセスポイントに買い換えるか、もしくは、もう無線LANを使うのをやめてしまう。

無線LANアクセスポイントは家電製品に組み込まれていることもあるので注意が必要である。「ロケーションフリー」のベースステーションは無線LANアクセスポイントでもあるが、テレビを見るためだけに買った人はそれに気づいていないかもしれない。

今後このような危険の存在が社会問題となった場合、5月27日の日記の追記で書いたように、PlaceEngine側が、「複数の近隣のMACアドレスをリクエストで送信しないと応答しないという対策」をとるかもしれない。その場合でも、「複数の」が何個以上に設定されるかしだいである。「2個以上送信しないと応答しない」という対策であった場合は、2台の無線LANアクセスポイント(例えば、パソコン用の無線LANルータと、ロケーションフリーベースステーション)を一緒に転居先に持っていって電源を入れたら、ストーカーに特定されてしまう。「3個以上送信しないと応答しない」という対策であった場合は、3台(例えば、パソコン用の無線LANルータ、ロケーションフリーベースステーションと、fonルータなど)を移設すると特定されてしまう。

こうした危険を生じさせないためにも、電波法は第59条で、特定の相手方に対して行われる無線通信の傍受について、「その存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない」としているのだと思う。

*1 ストーカーが無線LANパケットを傍受したとき、周囲に多数の家(ないし集合住宅の部屋)があり、どのMACアドレスがターゲット所有のものか特定できない場合もあるであろうが、その場合でも、別の原因でストーカーがターゲットの転居に気づいたとき、ストーカーは、収集しておいた各MACアドレスをそれぞれ検索してみることで、転居先を検索することができてしまうだろう。

*2 転居先で、誰かによって、その周辺でPlaceEngineが利用されると、周辺の他の無線LANアクセスポイントの既存の位置情報と組み合わされて、その(被害者の)無線LANアクセスポイントの位置が推定され登録される。そして利用されるたびに位置精度が増していく。

*3 仮に精度が低くて、数百メートルの誤差でしか特定できなかった場合でも、無線LAN用の八木式指向性アンテナを使えば、電波の出てくる方向を調べられるので、家や部屋の位置を特定されてしまうだろう。


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