<前の日記(2015年06月14日) 次の日記(2015年10月20日)> 最新 編集

高木浩光@自宅の日記

目次 はじめに 連絡先:blog@takagi-hiromitsu.jp
訪問者数 本日: 1724   昨日: 1295

2015年07月02日

国会会議録から重要部分を抜粋(パーソナルデータ保護法制の行方 その17)

個人情報保護法の改正案は、衆議院で可決し、参議院で採決寸前のところで、年金機構事件が発覚したため審議が凍結され、成立は先送りされている状況となっている。そのため、未成立ながら、そこまでの国会会議録の全部がすでに公開(衆議院参議院)されている。

論点の確認のため、すべての会議録に目を通し、重要な部分にマーキングしたので、これをテーマ別に分割し、以下に転載しておく。色分けは以下の通り。

  • 黄色: 質問(橙色: そのうち特に重要な部分)
  • 紫: 向井審議官答弁(ピンク: そのうち特に重要な部分)
  • 水色: その他の答弁(青: そのうち特に重要な部分)
  • 緑: 参考人発言、転載者コメント

  1. 個人情報定義関係
  2. 容易照合性関係
  3. 匿名加工情報関係
  4. 第三者提供に係る記録作成等義務関係
  5. オプトアウト・名簿屋業法関係
  6. 相当の関連性関係
  7. 第三国移転・EU十分性・域外適用関係
  8. 小規模事業者・過剰反応関係
  9. 要配慮情報関係

今後これを元に解説ができると考えているが、とりあえず今日のところは「2. 容易照合性関係」の一部を紹介しておく。

2. 容易照合性関係」は前半と後半に分かれる。前半では、容易照合性のこれまでの解釈では困ったことになるのでなんとかしてほしいとする質問が、2人の委員から出ている。これは「行方その3」(日記予定)の中で書くつもりだった「Q14問題」に関わる論点である。このお二方の質問が、興味深いことに、一見同じことを指摘しているようで実は正反対の立場、前提で質問されているようであり、「Q14問題」を理解するうえで実に好都合な格好となっていた。このまま国会で議論が進むとあらぬ方向へ結論が行きかねず危ういと心配した(それがどういうことなのかについてはいずれ書く予定)が、国会では(別の論点の方が重要であることが認識されたためか)この議論は深まることなく終わっている。

今回注目するのは、「どのような場合に容易照合性があると言えるのか」との質問に対し、消費者庁審議官の答弁で、「容易照合性でございますが、当該情報を保有する事業者において、他の情報との照合により特定の個人を識別することが可能か否かにより判断するものでございます。」とされた部分である。照合するのが誰にとってなのかが、「当該情報を保有する事業者において」であるとして明言された。照合の主体が取扱事業者自身であるという政府見解は、これまでは、公式記録としては内閣府行政刷新会議規制制度改革委員会経済活性化WGでの消費者庁の説明(「行方その2」の「3. 第三者提供時の照合の主体」参照)しかなく、心もとないものだったのが、今国会で明確にされたことになる。

これは要するに「提供元基準」vs「提供先基準」の論争(「行方その2」の「3. 第三者提供時の照合の主体」参照)に終止符を打つものであるが、さらに、後半部分でこのことをズバリ指摘する答弁があった。

○政府参考人(向井治紀君) お答えいたします。

日本の個人情報の定義は、容易に照合できる、他のデータと合わせて個人が識別できるものというふうになっているところでございます。

その際に、情報を移転する際に、容易に照合するのは情報の移転元か移転先かという議論がございます日本の場合、これは情報の移転元で容易照合性があるということで解釈が統一されておりまして、そういたしますと、一旦個人情報となりますと、その情報の一部を提供する場合でも、これは大抵の場合、提供元において容易照合性はありますので、個人情報になってしまうという、そういうことはございます。

それは解釈で変更するか、いろんな手はあろうかと思いますけれども、今回はそういう意味で、匿名加工情報という新たな類型を設けることによって、法律に明確に個人情報を、そういう個人を識別できるデータを外して匿名化することによってその一部を移転することを明確化するというのが新たな試みであろうと思います。

(略)

この論点については単純に決着がついたと言える。

検索

<前の日記(2015年06月14日) 次の日記(2015年10月20日)> 最新 編集

最近のタイトル

2024年11月11日

2024年07月28日

2024年07月27日

2024年07月07日

2024年04月07日

2024年04月01日

2024年03月23日

2024年03月19日

2024年03月16日

2024年03月13日

2024年03月11日

2023年03月27日

2022年12月30日

2022年12月25日

2022年06月09日

2022年04月01日

2022年01月19日

2021年12月26日

2021年10月06日

2021年08月23日

2021年07月12日

2020年09月14日

2020年08月01日

2019年10月05日

2019年08月03日

2019年07月08日

2019年06月25日

2019年06月09日

2019年05月19日

2019年05月12日

2019年03月19日

2019年03月16日

2019年03月09日

2019年03月07日

2019年02月19日

2019年02月11日

2018年12月26日

2018年10月31日

2018年06月17日

2018年06月10日

2018年05月19日

2018年05月04日

2018年03月07日

2017年12月29日

2017年10月29日

2017年10月22日

2017年07月22日

2017年06月04日

2017年05月13日

2017年05月05日

2017年04月08日

2017年03月10日

2017年03月05日

2017年02月18日

2017年01月08日

2017年01月04日

2016年12月30日

2016年12月04日

2016年11月29日

2016年11月23日

2016年11月05日

2016年10月25日

2016年10月10日

2016年08月23日

2016年07月23日

2016年07月16日

2016年07月02日

2016年06月12日

2016年06月03日

2016年04月23日

2016年04月06日

2016年03月27日

2016年03月14日

2016年03月06日

2016年02月24日

2016年02月20日

2016年02月11日

2016年02月05日

2016年01月31日

2015年12月12日

2015年12月06日

2015年11月23日

2015年11月21日

2015年11月07日

2015年10月20日

2015年07月02日

2015年06月14日

2015年03月15日

2015年03月10日

2015年03月08日

2015年01月05日

2014年12月27日

2014年11月12日

2014年09月07日

2014年07月18日

2014年04月23日

2014年04月22日

2000|01|
2003|05|06|07|08|09|10|11|12|
2004|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2008|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2009|01|02|03|05|06|07|08|09|10|11|12|
2010|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2011|01|02|03|05|06|07|08|09|10|11|12|
2012|02|03|04|05|06|07|08|09|
2013|01|02|03|04|05|06|07|
2014|01|04|07|09|11|12|
2015|01|03|06|07|10|11|12|
2016|01|02|03|04|06|07|08|10|11|12|
2017|01|02|03|04|05|06|07|10|12|
2018|03|05|06|10|12|
2019|02|03|05|06|07|08|10|
2020|08|09|
2021|07|08|10|12|
2022|01|04|06|12|
2023|03|
2024|03|04|07|11|
<前の日記(2015年06月14日) 次の日記(2015年10月20日)> 最新 編集