<前の日記(2003年07月29日) 次の日記(2003年08月01日)> 最新 編集

高木浩光@自宅の日記

目次 はじめに 連絡先:blog@takagi-hiromitsu.jp
訪問者数 本日: 99   昨日: 1842

2003年07月30日

村井先生の講義で取り上げられていた

6月30日に行われたという村井純先生の講義「自律分散協調論」第11回(テーマ:「安全」)の中で、私の4月の日経ネット時評の件を取り上げていただいていたようだ。(35枚目のスライドより。)ビデオ映像もある。

RFIDタグの話題は31枚目のスライドから始まっている。「所有者の意思に反して読むことができる」、「安価な市販の装置でだれでも読むことが可能」といったことから書かれている。

37枚目のスライドのところで、「プライバシーを定義しない」とある点(今掲載されているスライドには書かれていないので、後で修正されたのかな?)について、論点が揺れていたようだ。(ビデオ映像。)

「プライバシーを定義しない」というのは、ネット時評で冒頭に書いたことなのだが、村井先生はネット時評の最後の部分のことと理解なさったようだ。講義の中で村井先生は、

技術者がプライバシーをきちんと定義して、それに対応する技術を作って、それからやれと。だけど、「おまえらが(世論が、法律が、あるいは業界が)プライバシーを定義してくれないから、ちゃんとした技術を俺たち(技術者)は作れないんだよね」と、そういう言い訳はすんなよなと。というのがいつも高木さんの言っていることだと僕は思います。

とおっしゃっている。たしかに、「そういう言い訳はすんなよ」という点は、ネット時評の最後の部分で述べた。だが、「プライバシーをきちんと定義して、それに対応する技術を作る」というのは、ちょっと私の主張とは異なる。

プライバシーを先に定義してしまうと、それが硬直した基準となってしまって、時に免罪符として使われてしまう心配がある。たとえば、業界団体でプライバシーを定義しようとすれば、できるだけ狭い定義としたいという力は働くであろう。固定IDについて、「これはランダムな番号であり個人を特定するものではない」という定義を先に決めて、それに準拠したものだとしてシステムが作られるといったことが起きてしまうだろう。36枚目のスライドに紹介されている事例はまさにそのパターンだったのではないか。

私の考えは、技術を議論する上では、プライバシーを定義することは必須ではなく、様々な条件の下でできる限りプライバシーを広く想定して、(コストとのトレードオフを含めて)可能な限りの技術的解決策を考えておくことが重要というものだ。現在置かれているスライドは、そのようにまとめなおされているようだ。

先日、東工大のシンポジウムの席でも、会場から、暗号研究に携わる研究者から、「プライバシーあるいは個人情報とは何なのか?」という質問が出た。やはり、技術者にはそれを明確にして欲しいという思いがあるようだ。その質問には、上のように「(技術の議論では)定義しないでおくべきである(法律の議論では定義せざるを得ないが)」と答えた。


<前の日記(2003年07月29日) 次の日記(2003年08月01日)> 最新 編集

最近のタイトル

2024年12月02日

2024年11月24日

2024年11月11日

2024年07月28日

2024年07月27日

2024年07月07日

2024年04月07日

2024年04月01日

2024年03月23日

2024年03月19日

2024年03月16日

2024年03月13日

2024年03月11日

2023年03月27日

2022年12月30日

2022年12月25日

2022年06月09日

2022年04月01日

2022年01月19日

2021年12月26日

2021年10月06日

2021年08月23日

2021年07月12日

2020年09月14日

2020年08月01日

2019年10月05日

2019年08月03日

2019年07月08日

2019年06月25日

2019年06月09日

2019年05月19日

2019年05月12日

2019年03月19日

2019年03月16日

2019年03月09日

2019年03月07日

2019年02月19日

2019年02月11日

2018年12月26日

2018年10月31日

2018年06月17日

2018年06月10日

2018年05月19日

2018年05月04日

2018年03月07日

2017年12月29日

2017年10月29日

2017年10月22日

2017年07月22日

2017年06月04日

2017年05月13日

2017年05月05日

2017年04月08日

2017年03月10日

2017年03月05日

2017年02月18日

2017年01月08日

2017年01月04日

2016年12月30日

2016年12月04日

2016年11月29日

2016年11月23日

2016年11月05日

2016年10月25日

2016年10月10日

2016年08月23日

2016年07月23日

2016年07月16日

2016年07月02日

2016年06月12日

2016年06月03日

2016年04月23日

2016年04月06日

2016年03月27日

2016年03月14日

2016年03月06日

2016年02月24日

2016年02月20日

2016年02月11日

2016年02月05日

2016年01月31日

2015年12月12日

2015年12月06日

2015年11月23日

2015年11月21日

2015年11月07日

2015年10月20日

2015年07月02日

2015年06月14日

2015年03月15日

2015年03月10日

2015年03月08日

2015年01月05日

2014年12月27日

2014年11月12日

2014年09月07日

2014年07月18日

2014年04月23日

2014年04月22日

2000|01|
2003|05|06|07|08|09|10|11|12|
2004|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2008|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2009|01|02|03|05|06|07|08|09|10|11|12|
2010|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2011|01|02|03|05|06|07|08|09|10|11|12|
2012|02|03|04|05|06|07|08|09|
2013|01|02|03|04|05|06|07|
2014|01|04|07|09|11|12|
2015|01|03|06|07|10|11|12|
2016|01|02|03|04|06|07|08|10|11|12|
2017|01|02|03|04|05|06|07|10|12|
2018|03|05|06|10|12|
2019|02|03|05|06|07|08|10|
2020|08|09|
2021|07|08|10|12|
2022|01|04|06|12|
2023|03|
2024|03|04|07|11|12|
<前の日記(2003年07月29日) 次の日記(2003年08月01日)> 最新 編集