先週、マイナンバー制度(納税番号制度(aka 共通番号制度))のICカード配布の話の流れで、(住基カードが4%しか普及していないのに)TSUTAYAのTポイントカードは「今や国民の3人に1人が持つ」という話*1が話題になっていた。「共通番号を官民で使えばカードを1枚にできる」などといった主張も出ていた。
その一方で、本当にそんなにたくさんの人が持ってるのか疑問だとの声も出ていた。「レジから聞こえてくる声に耳を傾けていると、Tポイントカードを持ってる人なんて存在しないんじゃないかと思えてくる。」という声もあった。(「Togetter - 「「ポイントカードはお持ちですか」への反応」」参照)。
実際のところどうなんだろうか。
そこで、街行く人々にきいてみた。
というわけで、けっこう持っている人はいるようだ。(ある世界においては、だが。)
ちなみに、街頭インタビュー中に、高校生で持ってるという子がいたので、ちょっと長く話してみたところ、どこでいつ何を買っているか記録されていることを知らなかったという話だった。カードを作るときに住所氏名を書いて申し込むわけだが、それは「作ったカードを送るため」と思っていたそうだ。
途中から怪しい二人組に取り囲まれて、無言の圧力をかけられるような格好となったが、追っ払った。*2
ところで、6月に「プレジデント」がこういう記事を出していた。
Tカードと提携する企業にとって最大のメリットは、顧客情報の共有である。
ある日、TSUTAYAでDVDを借りたAさんが、ファミリーマートで買い物をし、ガストで食事をして、代金を支払う際に、ポイントをためるためにTカードを提示した。Aさんの買い物情報は提携企業の間で共有される。Aさんは、どんな映画が好きで、どんな飲み物、食べ物が好きで、どんな所に行っているかといったことが共有されるのだ。
別の日に買い物をしたAさんがTカードを提示すると、レシートと一緒に新商品の割引クーポンを渡された。Tカードと提携する企業の新商品で、いかにもAさん好みのものだった。そんな顧客サービスも当たり前のように行われるのだ。
(略)
それがいま、膨大なデータとして蓄積され、提携先でTカードが使われるたびに情報が加わっていく。その情報に基づいて、買い物をすると割引があり、客の好みに合ったクーポンがもらえる。詳細な顧客情報で、ピンポイントの価格戦略が講じられるのである。
これは違うんじゃないか? と、ツイートしたところ、「ガセだ」という情報が寄せられた。
つまり、購買履歴が生で共有されているのではなく、購買履歴から分析した結果が共有されているとか、あるいは、それすら共有されず、分析結果に基づく広告配信の代行が(Tポイントを管理するCCC社によって)行われているというのが正しい事実ではないか。
プレジデント編集部から、「誤解を招く表現があったようで」との返事があったが、記事は訂正されなかった。事実でないのにそれを「当たり前のように行われる」として流布されたのでは、「そういうものなんだ」「しかたないんだな」「みんなそうなんだね」と、人々の感覚を変えていってしまう。(日本はそういう社会。)
プレジデント編集部は、「誤解を招く表現があったようで申し訳ありません」と、一見誤りを認めたかのような返事をしつつも、「各社の購買履歴を共有・管理しており」などと、あくまでも「共有」は行われているかのような表現を残しつつ、記事を訂正していないので、誤りとは認めていないのだろう。
何らかの「共有」が行われているのか、いないのか、問い合わせて確認せねばと思っていたが、まだできていない。
本当は、そういったこと(何がどこに共有されるのか、されないのか)が、ポイントカードを作るときに読むはずの約款に書かれていてしかるべきだが、書かれていない。
*1 「「官僚の官僚による官僚ための番号制度」その1 « 平井たくや|衆議院議員自民党ネットメディア局長」参照。
*2 ちなみに、「PlayStationネットワーク使用許諾契約書」には、「SCEは、PSN上の全オンライン活動を監視および記録する権利を保有し、お客様はSCEがお客様の行動を監視および記録することに対して明示の同意を与えているものとします。」と書かれており、「PlayStation Home ベータ版 利用規約」にも「SCEは、自らまたは第三者を通じて、PlayStation Homeのあらゆるスペースにおけるお客様のコミュニケーションを含むあらゆるオンライン行動を監視、記録する権利、および(略)したりする権利を有するものとします。本規約に同意することにより、お客様は明示的に上記に同意したものとみなします。」とある。少なくとも、PlayStation Homeのラウンジについては、公開の場ということで理解できる。(通信の秘密の対象ではない。)