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高木浩光@自宅の日記

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2008年08月22日

「LOCATION VIEW」のプライバシーへの配慮状況

Googleマップの「ストリートビュー」よりも先に日本で類似のサービスを提供していた「LOCATION VIEW」だが、以下のページに「G社」との比較表が掲載されていた。

  • ロケーションビューとは, 株式会社ロケーションビュー
    LOCATION VIEW(公開サービスサイト)LOCATION VIEW(法人向けサービス)他サイト(G社)
    撮影方法 視点ほぼ人間の目線の高さほぼ人間の目線の高さ高い(おおよそ2.5m程度)
    解像度低(G社サイトと同等解像度のものを1/10程度に圧縮して配信)最高〜低(用途に応じて)
    (引用時、一部略)

なるほど、これはプライバシーへの配慮だろうか。

ロケーションビュー社にプライバシーへの配慮状況について問い合わせてみた。

件名: 住宅地映像のプライバシー保護に関する公開質問

株式会社ロケーションビュー個人情報保護方針問い合わせ窓口御中

貴社の「LOCATION VIEW」サービスにおけるプライバシー保護へのお取り組みについて質問いたします。

「LOCATION VIEW」が公開している映像には、住宅地で撮影されたものも含まれていますが、その映像を一般公開するにあたって、貴社では何らかのプライバシー上の配慮に取り組まれていますか。特に以下の2点についてお答えいただけましたら幸いです。

(1) 撮影視点に関する方針
住宅地を撮影するにあたり、カメラの視点の高さについての規定あるいは方針はありますか。またその理由は何ですか。

(2) 撮影する道路の幅員等に関する方針
住宅地を撮影するにあたり、一定幅に満たない道路では撮影しない、もしくは撮影しても一般公開しないといった規定あるいは方針はありますか。またその理由は何ですか。

以上の点、お尋ねします。

公開前提のこの問い合わせに対し、(前回の日記が既に読まれていたようで)以下の回答を頂くことができた。(強調部は、転載時による)

(1) 撮影視点に関する方針
住宅地を撮影するにあたり、カメラの視点の高さについての規定あるいは方針はありますか。またその理由は何ですか。

弊社では従来の地図、航空写真で応えられないニーズに対応するため、空からでなく地上からみた地図という新しい概念にもとづいてロケーションビューの開発を行っています。ロケーションビューは公開サイト以外にも新しい地図サービスとして官公庁・地方自治体・電力・ガス事業者など含め広く利用されており、公開サイトにおきましても目的地までの道順の確認や、待ち合わせ、(特に小規模な)飲食店への案内、不動産の現地案内などの場面で従来の地図になく便利であると評価をいただいています。実際に公開サービス開始時点からのダウンロード数は2億ダウンロードを超え(およそ地球5周相当)、現在も安定してサービスを提供しています。弊社ではこの新しい地図サービスを安定して提供することも責任のひとつと考えています。

事業の計画、撮影仕様の決定段階においては、利用者として想定される官公庁・地方自治体などの意見を取り入れるとともに、地図としての著作権、プライバシーや個人情報の保護のありかたに関しても国土交通省所轄の財団法人にも調査を依頼しその結果も踏まえています。公的サービスとして利用されている側面もありますので、事業運営においても各種利用規定を設けること、個人情報保護方針を定めこれに基づき対応窓口を設け一定の手順のもとに対応すること、捜査当局からの要請に基づき速やかに協力体制を整えることなどの取り組みを行っています。

弊社では撮影用に複数台の車両を保有しています。撮影の品質を確保するため、各車両でカメラまでの地上高がほぼ同じになるように設定しています。その地上高に関してはカメラの性能、有効な撮影範囲(画角)などの観点から実証実験を行った上で決定しています。その中にはブログのご指摘にもあるとおりプライバシーに配慮して目線の高さに近いという点も含まれています。

(2) 撮影する道路の幅員等に関する方針
住宅地を撮影するにあたり、一定幅に満たない道路では撮影しない、もしくは撮影しても一般公開しないといった規定あるいは方針はありますか。またその理由は何ですか。

ロケーションビューに関する業務を受託する際、地図としての網羅性を確保することが業務仕様の重要な要素になる場合があります。この点から申し上げますと、撮影は公道から行なうことを原則としていますが、自動車が物理的に入れない場所以外はできるだけ撮影するようにしています。ただ、車両には一般に販売されているものと同等のカーナビゲーションシステムを搭載し使用している関係から、通常の場合カーナビで表示されないような道路は撮影範囲には入りません。通常の場合と申し上げますのは弊社では自動車の進入が困難な地下街や建物の中、鉄道や遊園地などカーナビの地図で道路が存在しない場所についても撮影ができる体制を整えており、この場合施設の所有者、管理者などの監督のもとに撮影を行うこともあります。しかし実際の撮影時には撮影現場の状況により撮影範囲が影響されることもあり、例えば大規模な地震被害の把握業務を実施する場合など、道路状況は現場に行ってはじめて判断しなければならないこともあります。

次に弊社サイトで公開する場合、撮影エリアと公開エリアは必ずしも一致するわけではありません。さらに公開にあたっては新しい地図としての利便性を損ねない範囲で肖像権、個人情報保護などの観点から必要な画像処理などを施し、表札や車のナンバープレートなどが見えないように調整した上で公開サイトでサービスを提供しています。具体的な例をひとつ申し上げますと、公開にあたっては画像のすべてについて画像認識プログラムによりチェックを行い、さらに人間の目によるチェックを行なっています

ご質問の住宅地の道路幅員に関してですが、以上のような多様なサービスを提供していることもあり一概には申し上げにくい部分もあります。また先に述べましたとおり道路状況は常に一定でないこと、後ほど例として挙げる建築基準法などの法令も条例、地域の実情に応じた運用がされる場合があり必ずしも全国で一律ではないことなどから、撮影・公開の基準につきましても統一したものを設けることは困難なのが実情です。さらに一方で観光案内などの場合では、お客様からの依頼により狭い道路、私道や私有の施設であっても撮影・公開することが業務仕様に含まれる場合もあります。

その点ご理解いただいた上でご説明するならば、繰り返しになりますが撮影は公道から行うことを原則とし、公開時のエリアのおおよその判断としまして道路幅員3mから4mをひとつの基準として考えております。これはもともと不動産調査や不動産物件案内としての利用方法も想定していることもあり、建築物が建築できる道路、すなわち建築基準法第42条、43条における道路の定義も参考にしています(その場合幅員が4mに満たないとしてもセットバックにより建築物が建築できることがあることも考慮しています)。また住宅地おきましては、明確に私道と分かる場合(例えば私有地の看板がありそのように判断できる場合、現場において建築基準法上の位置指定道路と判断できる場合など)では撮影・公開しないことを原則としています。

株式会社ロケーションビュー
運営企画部
〓〓〓〓(担当者氏名、転載時略)

撮影の視点の高さはやはりプライバシーにも配慮した結果としての設定のようだ。前回の日記の図2の場所も、以下の図1のように、概ね通行人の目線と同じくらいで、20センチほど高いかもしれない程度のようだ。おそらく、自動車の天井から30センチくらいの位置にカメラを設置しているのではないか。


LOCATION VIEWサイトで見る
図1: 前回参照した場所のLOCATION VIEWでの見え方(この通りには入れない)

一方、撮影する道の狭さの基準については歯切れの良い回答は頂けなかった。図1の周辺地域では狭い道に入ってはいないようであったが、もう少し調べてみたところ、狭い道でも撮影されて公開されているところがあるのを確認した。以下の図2は、私にとって馴染みのある場所で、「ここに車で入るのか」と驚いてしまうほど狭い道だ。20年前に比べて家々も建て替えが進んでおり、広くなった場所もあるようだが、当時はここを歩くだけで怪しまれるのではないかと感じるほど通行するのが申し訳ない道だった。


LOCATION VIEWサイトで見る
図2: LOCATION VIEWも狭い路地に入って撮影している事例

狭い道で撮影することの何が問題かと言えば、被写体までの距離が短くなるため、(1)撮影視点が高い場合には見下ろし角度が急になり通行人には通常見えないはずのものが見えてしまう範囲が広くなるという点と、(2)被写体の解像度が高くなるという点にある。

見下ろし角度については、LOCATION VIEWの場合は撮影視点が十分に低いので、距離が近くても問題にならないと思われる。

解像度の問題については、LOCATION VIEWでは、一般公開サービスにおいては映像の解像度を下げて配慮がなされているようだ。*1

それに対し、Googleストリートビューには、そういった配慮がみられない。

また、今回頂いたご回答には次の記述があった。

表札や車のナンバープレートなどが見えないように調整した上で公開サイトでサービスを提供しています。(略)公開にあたっては画像のすべてについて画像認識プログラムによりチェックを行い、さらに人間の目によるチェックを行なっています。

住宅地おきましては、明確に私道と分かる場合(例えば私有地の看板がありそのように判断できる場合、現場において建築基準法上の位置指定道路と判断できる場合など)では撮影・公開しないことを原則としています。

車のナンバープレートについて、Googleストリートビューではどうなっているかというと、「日本では人の顔や車のナンバーなどは消されている」などと書いている記事も散見される*2が、INTERNET Watchの報道によれば、車のナンバーは消す処理を施していないとグーグル社が公式に述べている。(「解像度の問題でほとんど識別できない」が嘘か真かは、実際に使ってみればわかることである。)

河合氏は(略)撮影地点については、「撮影する道路は公道からに限っており、私道や敷地内に入っての撮影はしていない」と説明。また、映っている人の顔については自動認識によりぼかし処理を行っており、米国では車のナンバープレートなどについても一部処理を行っているが、日本では解像度の問題でほとんど識別できないと思われるため、現時点では顔以外には自動的な処理は行っていないとした。

「ストリートビュー」のプライバシー問題、グーグルが方針説明, INTERNET Watch, 2008年8月5日

LOCATION VIEWでは、「人間の目によるチェックを行なっています」とのことだっが、Googleは、少しなりとも人間の目によるチェックを行なっていたのだろうか? マスコミはそこを聞き出すべきだと思うが、残念ながらそれに関する情報は出ていない。

サービス開始早々、立ち小便する人やラブホテルに入る人など不適切な写真が続々と発見されたわけだが、こういった画像の公開前チェックをグーグル社は少しなりとも行っていたのだろうか?

グーグル社の河合敬一氏は、「私道や敷地内に入っての撮影はしていない」と公言しているが、あきらかに私道*3に進入している事例が多数報告されている。たとえば、図3、4の事例では、集合住宅の駐車場に入って撮影していることがわかる。こうした事例は無数にあるようで、ストリートビュー開始直後にたまたま会話した知人も、自分のマンション前の私道に入られていると言っていた。


大きな地図で見る
図3: 集合住宅の駐車場にまで入り込んで撮影している事例


大きな地図で見る

図4: 集合住宅の駐車場にまで入り込んで撮影している事例

図4の事例は、地図にない場所(赤い線で示した位置)に入り込んでしまったのだと思われる。地図にないため、Googleマップでは青い線がずれた位置の道に表示されてしまっている。

このように撮影作業員が誤って入った場所の他、撮影作業員が休憩に立ち寄ったコンビニのシーンや給油所でのシーンも見つかっており、おそらく撮影は全自動で行われていて、誤った撮影のキャンセル作業は行われていない様子がうかがえる。

撮影作業員の頭には「誤って入ってしまった」という認識はあったに違いないが、機械任せに撮りっぱなしにし、記録しっぱなしにしたデータを、ダダーっと機械に突っ込んで公衆送信してしまっている。

グーグル社には人間らしい配慮が微塵もない。人に風景を撮影する自由があるのは責任を伴うからこそではないのか。

Googleストカーの撮影風景を再現しよう

先日の日記への反応を見ていると、ストリートビュー撮影カー(ストカー)がどんな仕組みになっているのか(どのようにカメラが設置されているのか)まだご存知でない方も少なくないようだった。ストカーの目撃情報は日本でもいくつも報告されており、複数の写真が紹介されている。

車の上に取り付けられた棒の先端にある赤い物体がカメラで、以下の市販製品が使われているらしい。

車はプリウス。プリウスのスペックによると「全高 1,490mm」とのことなので、上の写真からカメラの高さを算出すると2,470mm、2メートル50センチくらいのようだ。

これを前回の日記の図2の風景に重ねてみた。

図1: Googleストカーの撮影風景(合成写真による想像図)

写真の構図が異なるので正確な再現はできないが、この道の幅はちょうど3メートルで、右の壁の高さが2メートルなので、概ねこんな感じだ。カメラはこのように壁より高く突出してパシャパシャと撮影して行ったのだろう。

中の家から塀の方を見ていたらどう見えただろうか。プリウスは低速走行時は電気モーターのみで走るので、音をたてることもなく、赤いものが塀の上をすーっと動いていく様子が見えたことだろう。

そんな様子を再現してみたいと思っていたところ、エクステリア専門工事業者の方のブログに、「Googleストカーの視点をCGで検証する」という記事が掲載された。歩行者目線に配慮して設計したフェンスのある家について、ストカーから撮影すると中の窓がどう見えてしまうか、三次元CGでシミュレーションされている。

これはすごい。さすがプロ。車がフェンスに近いときの全体図、それから、家の中から見るストカーのシーンを見てみたいです。3メートル幅の道の両脇に家があり、間を通るストカー。それがどのくらい異常な事態なのかを示す意味で。


23日追記

さっそく、エクステリア明日香様が検証してくださった。

すばらしい。ありがとうございます。

私たち良識を持つ人間は、こうして架空の絵を作成して問題点を指摘するほかない。実例をおおやけに示すのは憚られる。その一方でグーグル社は、問題のある写真を大量に今なお公衆に対し送信可能化している。

*1 LOCATION VIEWの現在の方針であれば十分と言えるかついては、私はとくに考えを持たない。

*2 実際にストリートビューを使ってみればすぐにわかることなのに、ろくに使いもせずに書いているのか。

*3 「公道」「私道」という言葉をグーグルの河合敬一氏はどういう定義で言っているのかわからないが、少なくとも、LOCATION VIEWの場合では、建築基準法上の位置指定道路は私道として扱い「撮影・公開しない」とされている。

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なんか一部で異様な盛り上がりを見せているGoogleストリートビュー(以下Gスト

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