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高木浩光@自宅の日記

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2008年08月30日

ストリートビューに写った自動車ナンバープレートは機械判読され得るレベル

Googleマップのストリートビューについて「問題ない」と発言する人は、綺麗なところしか見てないのだろう。問題のありそうな場所を自力で少し見渡してみればわかることでも、見ようとしないから理解しない。「日本版ではナンバープレートはぼかし処理が施されていない」と、いくら文章で説明したところで、そういう人は自力で確かめないし、確かめるまで実感として理解しない。したがって、面倒であるがやはり、実際にナンバープレートが具体的にどう判読可能な状況になっているのか示す必要がある。ここまで示せば「やっと理解した」という人が出てくるだろう。

以下は、東京と大阪の適当に選んだ3か所の地域から、集合住宅の駐車場に進入して撮影された写真を各2枚ずつ選び、駐車中の自動車のナンバー部分にズームインしたものである。


図1: 事例A


図2: 事例B


図3: 事例C


図4: 事例D


図5: 事例E


図6: 事例F

人間の目にはこのままでも判読できる。

機械が判読し易いように、いくつかを画像処理してみた。

図7: ズームインしたナンバープレートを画像処理した例

これを、汎用のOCRソフトにかけて数字認識を試してみた。使用したのは「読んdeココ!! Ver.13」の「無料体験版」である。

図8: 汎用のOCRソフトで数字認識した例

汎用のOCRでは無理があったか、残念ながら十分な認識結果は得られなかったが、図8の例では1桁読み間違えただけで他の桁は認識できた。ナンバープレート写真専用の認識プログラムを作成すれば、十分な認識精度が得られるように思える。今回はナンバー部分の抽出を手作業で行ったが、それを自動化するプログラムが作成されたら、Googleマップで公衆送信されている大量の写真から自動抽出されてしまうおそれがある。

今回の事例では、ナンバープレートのうち、認識できそうなのは4桁数字の部分で、分類番号は認識が難しそうな解像度だった。平仮名部分は人間には判読困難なケースが多いが、機械なら識別可能かもしれないレベルと感じた。地域名も同様かそれよりやや識別困難なレベルであるが、これは、写真の撮られた場所から概ね推定できてしまうだろう。

犯罪捜査等では、4桁数字のナンバーと車種と色から概ね特定できると聞く。ストリートビューの写真からは車種や色を概ね識別できるだろう。地域名が場所から確定するなら、分類番号や平仮名部分が識別できなくても、数台くらいに絞られ得るのではないだろうか。

日本では、自動車の写り込んだ写真を公開するときはナンバープレートを隠すのがマナー*1として常識だと思っていたが、グーグル株式会社はどういうつもりなのか。INTERNET Watchの報道によれば、グーグル株式会社の河合敬一プロダクトマネージャーは、「日本では解像度の問題でほとんど識別できないと思われるため、現時点では顔以外には自動的な処理は行っていない」と説明したそうだが、「ほとんど識別できない」というのはまるっきりの嘘っぱちだ。

河合氏は(略)また、映っている人の顔については自動認識によりぼかし処理を行っており、米国では車のナンバープレートなどについても一部処理を行っているが、日本では解像度の問題でほとんど識別できないと思われるため、現時点では顔以外には自動的な処理は行っていないとした。

「ストリートビュー」のプライバシー問題、グーグルが方針説明, , INTERNET Watch, 2008年8月5日

ナンバープレートが隠されないと何が問題なのか、常識だと思うが、念のため書いておく。

ナンバーが判明すると、陸運局に照会することで所有者の住所を調べることができる。ただし、正当な理由がなければならない。道路運送車両法第22条は、「何人も、国土交通大臣に対し、登録事項その他の自動車登録ファイルに記録されている事項を証明した書面(略)の交付を請求することができる。」としているものの、同第5項に「請求の事由又は請求に係る委託の事由その他国土交通省令で定める事項を明らかにしてしなければならない。」とあり、同第6項で「国土交通大臣は、第一項の規定による請求若しくは第三項の委託が不当な目的によることが明らかなとき又は第一項の登録事項等証明書の交付若しくは第三項の登録情報の提供により知り得た事項が不当な目的に使用されるおそれがあることその他の第一項又は第三項の規定による請求を拒むに足りる相当な理由があると認めるときは、当該請求を拒むことができる。」とされているので、興味半分で調べることはできないようになっている。

グーグル社を擁護する人は「自宅に駐車した車のナンバープレートが公開されたところで、自宅はそこにあるのだから、ナンバーが見えていても問題ない」と言うかもしれないが、正当な目的でなければナンバーから住所を調べることはできないところに、Googleのストリートビューが登場したことによって、何者かが自動認識処理によってナンバーと緯度経度の対応表を作成してしまうおそれが生じた。そうなると、ナンバーから誰でも簡単に住所を調べられる(すべての車ではないにせよ)ようになってしまう(A)。

そしてもう一つの問題は、車で出かけた先で写真を撮られ(て公開され)た場合に、その場所に居たということが誰にでも知られてしまうという点である。たとえば、ゴルフ場の駐車場の写真から判読できるナンバーから、 上記(A)の方法で自宅を特定できた場合には、誰がそのゴルフ場に行っていたかがバレる。隣りに駐車した自動車も判読、検索できてしまうなら、誰と行ったかもバレてしまう。従来ならその場にいた人にしか知り得ないはず情報が、Googleストリートビュー撮影カー(Googleストカー)に撮影されると、万人に知られるようになってしまう。

自動車のナンバープレートもCAPTCHAのような字体にしろというのか。ひき逃げに遭ったら「CAPTCHA文字を読んで記憶してください」と?

*1 Googleストカーを撮影した場合では、ナンバーは隠さず公表する方が公益性があるのかもしれないが。

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MIAUのシンポジウムで、主催者の人はストリートビューの応用例があまり思いつかな

WiiのバランスボードでGoogle マップ ストリートビューを遊べるようにした...

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