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高木浩光@自宅の日記

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2006年10月18日

IPAセキュリティセンターさえディープリンク禁止などとしているわけだが

タレコミがあった。IPAさえもがディープリンクを「ご利用条件」で禁止している。

ご利用条件

リンクについて
(略)

・セキュリティ関連の情報については、頻繁にアップデートされています。
利用者に的確な情報を伝えるため、http://www.ipa.go.jp/security/ にリンクを張ることをお願いしております。配下のページに直接リンクしないで下さい。

情報処理推進機構:ご利用条件

脱力。電話すると知り合いにつながりそうな予感がするのでしない。直接関係者に連絡すればすぐに直りそうな案件だが、直ればよいという問題ではない。なぜこうなってしまうのか、そしてそれを皆が知ることがキモだ。

これは、ディープリンク禁止事例にしては理由が比較的明確にされている。「セキュリティ関連の情報は頻繁にアップデートされている」から、アップデートされた他のページの存在にも気付けるように、つまり「利用者に的確な情報を伝えるため」に、トップページにもリンクして欲しいということなのだろう。百歩譲ってそれはよいとしよう。だが、それがなぜ「配下のページに直接リンクしないで下さい」となってしまうのか?

IPAセキュリティセンターが提供する個々の情報のページに直接リンクできなかったら、どれだけ皆が不便な思いをするかは、いまさら説明する必要は全くないだろう。直接リンクが禁止されたのでは、利用者に的確に情報を伝えることが阻害される。

必要があって個別のページにリンクしつつ、同時にトップページにもリンクしてあげるというのは、リンクする側にとってもそれがその場において読みやすいと思えばそうするだろう。初めてIPAのセキュリティセンターのことを知る読者層を想定しているときは普通にリンクするだろうし、既にサイトの存在を知っているはずの読者を想定する場合はいちいちリンクしたりしない。リンクが2つあれば、ハズレを先にクリックしてがっかりする読者も出るだろうから、余計なリンクをしないほうが読みやすいページになる。

そもそも、個別ページに直接リンクされ、そこだけ読まれて何が問題だというのか? IPAの個別ページは適切にデザインされており、たとえば、「ソフトウエア等の脆弱性関連情報に関する届出状況 [2006年第3四半期(7月〜9月)]」のページに突然ジャンプしても、画面上部でそこがIPAであることは表示されているし、トップへジャンプするリンクも用意されているし、パンくずリストも用意されているし、各コンテンツへのメニューも用意されている。明らかにディープリンクされることを期待したサイト設計をしているくせに、表の顔では「配下のページに直接リンクしないで下さい」と言う。

こういうことがなぜ起きるのかだ。一人でサイトを作っているときはこういうことは起きないだろう。個人が無断リンクやディープリンクを禁止しているときはそれは趣味の問題であり、「文化の衝突」などと評されることがあるが、組織でサイト作りをやっている場合には、個々のページ製作担当者が直接リンクされることを期待してデザインしても、「利用条件」なるページを作成する担当者が皆の本意ではないことを書いてしまう。

組織における無断リンク禁止問題は「文化の衝突」ではない。組織として本意とは違う態度を示してしまう病気の問題だ。「本当はおたく、こうでしょ?」ということを組織に対して気付かせるのはとんでもなくハードルが高い。その手の意見を受け付ける担当者は「問題ありません」と答えることが使命とされている。誰もが指摘することをあきらめて放置してしまう。

そして、これを放置しておくわけにいかないのは、他へ波及してしまうことと、有害性があるためだというのはこれまでに書いたとおり。

ところで、「頻繁にアップデートされているから、利用者に的確な情報を伝えるため」という理由で、トップへのリンク「も」要求することに妥当性はあるだろうか。一度考えてみてはどうだろう。

追記(19日)

「利用者に的確な情報を伝えるため」で検索してみると……、ほーらゾロゾロ。

LASDECの「リンク・引用転載について」なんか、「個別情報(案件)についても自由にリンクしていただいてかまいませんが、利用者に的確な情報を伝えるため、なるべくトップページにリンクされるようお願い」って、自分で言ってておかしいと思わない?


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