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高木浩光@自宅の日記

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2006年09月13日

三井住友銀行、「雨やどり」「お風呂あがり」で検索のテレビ広告で便乗フィッシングの危機(被害防止用エントリ)

三井住友銀行のテレビCMで、「雨やどり」「お風呂あがり」で検索させるシーンが放映されているらしいが、現時点で、検索結果の上位に登場するサイトは「雨やどり」「お風呂あがり」のどちらも三井住友銀行の本物サイトではない。「雨宿り」「あまやどり」「お風呂上り」「おふろあがり」も同様だ。

Googleで「雨やどり」で検索した1番目は、現在のところ、露骨な性描写を含む二次元児童性愛倒錯ゲーム*1のサイトになっている。2番目以下もマイナーなページばかりだ。ちょっとしたドメインのページに三井住友銀行を装った偽サイトを作成されると、それが上位に出てきかねない。そのような偽サイトによる詐欺の危険性を低減するため、この日記が先に読まれることを期待し、次のとおり書いておく。


初めて訪れたサイトが、どこかからのリンクで辿り着いたのなら、そこに個人情報を送信したり、パスワードを送信するのは思い止まったほうがよい。たとえ、画面のデザインやロゴが本物っぽくても、それは丸ごとコピーされた偽サイトかもしれない。本物かどうかは、アドレス欄の「ドメイン名」部分が本物と同じになっているかを確認することで判別できるが、初めて訪れたサイトの場合は、どんなURLが本物かをまだ知らないはずだ。銀行であれば、通帳やキャッシュカードに書かれたURLと見比べるのがよい。それができない場合は、「雨やどり」とかではなく、銀行の正式名称で検索すれば本物サイトに辿り着ける確率は比較的高い。

三井住友銀行の本物サイトは http://www.smbc.co.jp/ にあるが、もしあなたが私のこの日記を今初めて見たのなら、これを信用してはいけない。私がこのように書いていることが嘘で、偽サイトに誘おうとしている可能性を疑うべきだ。


ところで、「雨やどり」で検索したときに三井住友銀行へのリンクがどこに出るかというと、右側のスポンサー枠に「三井住友銀行 特設サイト」と出るだけで、「雨やどり」の文字はない。普通、「雨やどり」と入力して検索した直後は、「雨やどり」の文字を探してリンクをクリックしようとするだろう。端っこのスポンサー枠にわざわざ目をやって、「三井住友銀行 特設サイト ネットバンキングなら三井住友銀行。便利な活用法をわかりやすくご紹介。」という文を見て、「ああ、ここに行けってことなんだね」と気づくのは、他にめぼしいサイトがないと気づいた後だ*2。もし検索結果のトップに「三井住友銀行 雨やどりキャンペーン CMソング無料ダウンロード中!」というタイトルのページが存在すれば、そっちが先にクリックされてしまう。

この広告手法がもたらす危険性は、富士通の「地底人の秘密」のときに既にあちこちで話題にされていた。このときは、既に本物サイトがトップに出る状態になっていたし、仮に富士通の偽サイトが登場したところで、たいして悪用されようがないからまだよかった。正直、キーワードSEOコンテスト気分で実験も兼ねて注意喚起するという面があっただろうが、今回は、よりによって、インターネットバンキングの新規申し込みを誘う広告だ。しゃれにならない。

いくら三井住友銀行が「簡単!やさしいセキュリティ教室」でフィッシング詐欺から自己防衛する策を説いていても、それは既に本物サイトを知っている人にしか読まれない。今回のテレビ広告は、口座を持っているけどまだインターネットバンキングを申し込んでいない人を誘うのが目的なのだろうから、視聴者のネットリテラシに期待できない。

ではこうしたテレビ広告はどうあるべきか。「smbc.co.jp」の文字列をどーんと放映して覚えてもらうというのが最も正しいが、アルファベットに見向きもしない人を誘いたいというのであれば、「三井住友銀行」で検索させるべきだろう。

トップページにも「CMソング&楽譜無料配信中♪」というバナーで今回のキャンペーンページへのリンクはあるのだから、それでいいはずだ。なのになぜ「雨やどり」とかで検索させるのか。CMの効果を測ろうとしているのか。銀行サイトを見に来てもらうことよりも実はキャンペーンサイトを見てもらうことが第一なのか。広告会社のための広告になってしまってはいないか。

*1 いわゆるエロゲ。

*2 キーワードを入れて広告枠に何が出るか見る——などということを一般の人はしない。広告屋の人には日常なのだろうが。


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