先週、とうとう内閣官房長官が「Winny使わないで」と国民に呼びかけたという。これに対し、ニート達からは「お願いする相手が違うだろ。警察官にお願いしろよ」といった反発がみられたが、官房長官の呼びかけの趣旨は、情報漏洩事故を起こさないためにというよりも、誰かが今後も起こすかもしれない万が一の事故のときに、その後の被害(被害者は漏らされた一般市民である)の広がりを小さく抑えるために「使わないで」というものだろう。
それは、チェーンメールが酷く広がっているときに、メールの転送をやめるように呼びかけるのと類似している。
チェインメールは比較的早い時期から、いわゆる「ネチケット」において、「絶対にやってはいけないこと」とされてきた。たとえ献血が必要であっても、すべて駄目だとされている。これに反対する人はほとんどいない。ネチケットなどという、個人の主観に左右されがちなブレブレの道徳モドキにおいて、これほどまでに全員一致で「絶対やってはいけない」とされているものも珍しい。
キャッシュと嘘とファイル放流, 2004年8月14日の日記
他人のプライバシーを侵害するだけのファイルをチェーンメール的に躊躇なく転送する人は、そう多くはないと思われる。チェーンメールがわざわざ「絶対にやってはいけないこと」としてネチケット化されているのは、それが人々の善意に乗っかって広がる仕掛けになっているから(言われないとわからないから)だ。
Winnyネットワークとチェーンメールの類似性を考えるとき、Winnyネットワークは、人々の善意で駆動されているわけではない。しかし悪意で駆動されているわけでもないだろう。
Winnyネットワークに放流されたファイルは、チェーンメールと異なり、人手を介さず自動で広がる。転送するかしないかの判断を人が行わないため、チェーンメールなら人々の良心によってかかるはずのブレーキが、Winnyではかからない。そのような性質のWinnyネットワークは存在自体が危険である。このことは以前に書いた。
といって、チェーンメールのように「絶対にやってはいけないこと」とネチケット化するのは難しそうだ。
とりあえず、「自分が何をやっているか(やらされているか)を知りなさい」というアドバイスは正当なものではないだろうか。つまり、「自分のWinnyのCacheフォルダに何が入っているかを見てみなさい」ということだ。
たとえば、最近では女性のWinnyユーザも意外に少ないわけではないらしい。「音楽が簡単に無料で手に入るソフト」だと思っているのだろう。女性のユーザ達は、自分のWinnyのCacheフォルダに何が入っているか知っているだろうか? 一度開いて見てみたらいい。自分のコンピュータがどんな映像を人に提供しているのか、知っておくべきだ。
そのために、Cacheフォルダの内容を全部、その場に復号して展開するツールがあるとよい。(ただし危険性のある種類のファイルは展開しないほうがよい。)
高木浩光@自宅の日記 - 次は「汝のcacheを開いて鏡に映して見よ」と国民に呼びかけてはどうか...
最近警察官の私物パソコンからWinnyのウイルス経由で捜査情報が流出する事件があいついでお