すごいタレコミがあった。東芝テクノネットワーク(株)の「サイトポリシー」と東芝テクノシステム(株)の「サイトポリシー」にすごいことが書いてある。
リンクについて
※御社の規定によって下記の2つよりお選び下さい。
(事前の連絡不要の場合)
このウェブサイトへのリンクは原則として自由です。ただし、途中のページやページ内のコンテンツそのものにリンクを張ることや、当社が不適当と判断するホームページからのリンクはお断りすることがあります。(事前の連絡必要の場合)
事前に当社からの文書による承諾を得ない限り、このウェブサイトへリンクをはることはできません。このウェブサイトへのリンクを希望する場合は、必ずリンク元のURL、当社ホームページの希望リンク先のURLをこちらへご連絡ください。リンクの際のURLは、(http: //www.toshiba.co.jp/tcn/)を基準に東芝テクノネットワーク株式会社のウェブサイトである旨を明示してください。
なお、このウェブサイトへのリンクとして相応しくないと判断した場合は、リンクをお断りすることがあります。
これは……いったい? 「御社」って読者のこと?
いや、この場合「御社」とは東芝テクノネットワークのことを指すのだろう。つまり、「お選び下さい」と言っているのは、このサイトの運営者がではなく、このサイトのデザインテンプレートを作成したWebデザイナーが言っているのだろう。東芝テクノはそれをそのまま掲載したわけだ。プギャー *1
二者択一かよ。
しかも、この文書にあるフレーズで検索してみると、同じ文章が大量に増殖して世に蔓延っていることが観察できる。
会社のポリシーは会議室で決めていない。コピーして使いまわせば完了。理由を訊かれたら後付で辻褄合わせればオーケ。
リンク許諾制やディープリンク禁止方針の汚染源はWebデザイナーではないかという、これまで憶測で語られてきたことの傍証が発掘されたと言えよう。
類似事例: 「事業の内容および規模を考慮」で検索
はてなブックマークコメントに、他にも同じサイトがあるとのコメントがあった。
これは、読まずにコピーを掲載したのではなく、読んだ上で修正してこの内容にしたのだと推察される。「(事前の連絡不要の場合)」が、「事前の連絡が不要な場合」へと、読者向けの文に改められているように見える。
もうひとつ興味深いのは、「リンクの際のURLは、(URLが入ります)を基準に株式会社……」という部分だ。この括弧書きは、掲載するサイトのURLに書き換える部分なのに、そうとは気づかなかったようだ。
「URLが入ります)を基準に」で検索してみると、同じミスをしているところが1か所見つかる。「を基準に のウェブサイトである旨を明示してください」で検索すると、URLには書き換えたものの、括弧を削除し忘れているサイトがたくさん見つかる。よく見ると、東芝テクノの「サイトポリシー」にもこの括弧が残っていた。
いったいどこが用意したテンプレートなのだろうか。
水無月ばけらのえび日記「Web屋が無断リンクを禁止する?」にて、
Web 屋が他人のポリシーを決めることはないと言いましたが、中には「Webは分からないんでサイトポリシーも御社で考えてほしい」というご依頼をいただくケースもあります。(略)ディープリンク禁止はほとんどの場合デメリットにしかならないと思いますし、Webのプロであれば皆このあたりは理解しているはずです。ですから、私はそのような文言を用意したのが Web のプロだとはとうてい思えないのです。
とあった。さあどうですかね。私も過去に2度ほど発注側の立場で軽く関わったことがあったが、プライバシーポリシーのテンプレートが付いてきて破棄したのは確かに覚えている。トップページの下部にはフッターとして、「プライバシーポリシー」、「著作権について」、「リンクポリシー」が並んでいた記憶がある。トップ絵、メニュー、これらポリシーのフッターを用意することがWebデザインの仕事になっているように思った記憶がある。
私が言いたいのは、そもそも「リンクポリシー」などという枠を作るなということだ。デザイン屋がその枠を作れば、サイト運営者は枠に何か入れないといけなくなる。「リンクポリシーって何ですか?」、「『リンクフリー』と『無断リンク禁止があります』」、「じゃあリンク禁止で」という流れの源は、枠が作られることにある。
ところで、「模倣は手法や形態を問わず禁止されています」で検索するといっぱいヒットする。
当ウェブサイトのデザインエレメント、外観および情報の構造などは、不正競争防止法・商標法を含む各種の法律によって保護され、その複製・模倣は手法や形態を問わず禁止されています。
というのだが、情報の構造までもを対象に模倣が手法や形態を問わず法律によって禁止されているなどというのは、本当か?
だいたい、本当に法律で保護されているなら、書くまでもないことだろう*2。著作権で保護の対象となるものは著作権で保護されているし、特許、商標に登録しているものはそれらで保護されているし、不正競争防止法で保護されているものは不正競争防止法で保護されているが、著作権でも特許法でも不正競争防止法でも保護していないもの(情報の構造など)は保護されていないし、保護されるべきでない。
Webデザイン屋の筆一つで社会通念を変革し得るという、第六の権力が生まれてきたということか。