情報処理学会EIP研究会主催の「電子政府に向けての社会基盤シンポジウム」に参加してきた。情報処理学会の場でこうした内容について議論されることに期待に胸を膨らませ、土曜なのに眠い目をこすり朝から出かけたのだが、内容は残念なものだった。発表時間が短すぎて質疑応答がほとんどの発表で省略された。これでは、シンポジウムではなくて、セミナーだ。(遅刻して聴き損ねた最初の一件と、途中からしか聴けなかった二件目を除き)ほとんどの講演が基礎的な内容に(おそらくあえて)とどめられていたので、質疑応答にこそ意義があったはずなのに。はなから一件も質問を受け付けようとしなかったあの座長は、何のためにこういう会合をやっていると思っているのだろう。
講演後に名刺交換にうかがって、井上源三自治行政局市町村課長に直接質問と議論ができたのが大きな収穫だった。
八重洲ブックセンターの横を通りがかったので、IT本コーナーへ。CRM (Customer Relationship Management) だの、ワン・トゥ・ワン・マーケティングだのの本をパラパラとめくり漁る。マーケな人たちは何をやろうとしているのか、知っておかないと。どれも1999年ごろに書かれた本で、新しいものがないようだった。
ISBN:4-478-50170-Xから引用:
Q83 カードシステムを導入したいと考えていますが、ワン・トゥ・ワン・マーケティングに発展できますか?
...顧客固定化に最も有用なのはプリペイドカードですが、これはワン・トゥ・ワンにはなりません。クレジットカードも顧客識別できる以上、その発展の可能性を秘めていますが、現状では代金決済以外の用途に活用されているとはいえません。
「代金決済以外の用途に活用されているとはいえません」って、そりゃそうだろ。……いや、クレジットカードの目的外使用の禁止って、カード会社が規定しているのかなあ。
...また、ワン・トゥ・ワンの観点からは、来店時に顧客識別できることが大切です。...「いらっしゃいませ、○○様」と声のかけられる接点対応から始まるのと、最後の「ありがとうございました、○○様」では、コミュニケーションの密度と時間に相当な開きがあり、結果として顧客心理も別のものになります。
ですから、最終的な顧客識別方法は、カードシステムではありません。顧客の顔を遠くから見ただけで識別できるシステムがベストでしょう。...本人認証技術で注目されているのは、バイオメトリクスという方法です。...将来、顔貌や虹彩などによる認証技術が発展すれば、やがて解決していくと考えられます。このあたりの期待は飲食店に多いと思います。
そんな店、嬉しいかねえ。プライバシー云々以前の話として。「いらっしゃいませ○○様、いつものですね?」と機械に言われると。……あ、違う。そういう話ではないらしい。従業員が機械に自動的に表示される顧客の嗜好情報を見て、あたかも暗記しているかのように応対することを狙っているのか。いきつけの理髪店で受付で氏名を書くと、理容師が裏でカルテを見て客の好みを把握して出てくるのと同じか。