先週金曜に個人情報保護委員会から「制度改正方針」が公表された。
というわけで早速LLMに評価させてみた。Claude Opus 4.5 Thnkingを使用し、プロジェクトナレッジに私が提出した3本の意見書(2024年12月22日の日記に列挙したもの)を入れてある。
要点だけ見たい人は「国会は何をすべきでしょうか。」までスキップ。
制度改正方針の内容を把握しました。令和8年1月9日付の「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しの制度改正方針」の概要を整理します。
令和5年11月から検討を開始し、令和7年3月の「考え方」公表、同年6月の「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」閣議決定等を経て、改正案の早期国会提出を目指すものとして取りまとめられています。
1. 適正なデータ利活用の推進
2. リスクに適切に対応した規律
3. 不適正利用等の防止
4. 規律遵守の実効性確保
委託先規律
課徴金制度 対象行為:
要件:相当の注意を怠った場合、本人数1,000人超、権利利益侵害があること
過去に提出された意見書との関係で、特に注目すべき点がいくつかあります。ご確認されたい論点があればお知らせください。
両文書を比較し、令和7年3月「考え方」から令和8年1月「制度改正方針」への主要な変更点を整理します。
「考え方」(3月):検討会報告書を踏まえ「継続して議論していく必要がある」
「制度改正方針」(1月):導入を決定。対象行為を以下の5類型に限定:
重要な変更:「考え方」別紙で検討されていた漏えい等・安全管理措置義務違反は対象から削除
「考え方」:差止請求制度・被害回復制度について「継続して議論していく必要がある」
「制度改正方針」:「今回の見直しにおいては制度的な導入については見送ることとする」
「考え方」:「義務の在り方を検討することとしてはどうか」(方向性のみ)
「制度改正方針」(別添第1で詳細化):
「考え方」:
「制度改正方針」:
「考え方」:19条違反全般を対象として検討
「制度改正方針」:課徴金対象を「具体的に明記された類型」に限定
「考え方」:3部構成(本人関与/リスク対応/実効性確保)
「制度改正方針」:4つの柱に再編
過去に提出された意見書との関係で、特に注目すべき点があればご指摘ください。
過去に提出された3つの意見書の主張と、今回の制度改正方針との対応関係を分析します。
意見書での主張(2024年6月・11月):
「民間部門において、個人データを統計量に集計する利用に対して、第三者提供の制限が過剰な規制となっている」(6月意見書1.2節)
「統計利用など分析結果の獲得と利用のみを目的とする場合は、本人への影響が具体的に見込まれる状況でない場合に当たり、『データ利用の適正性確保』の観点からは、問題がないため、本人関与は必要でない」(11月意見書2.2節)
制度改正方針での対応:
「統計情報等の作成(AI開発等を含む)にのみ利用されることが担保されていること等を条件に、本人同意を不要とする」(第2の1)
評価:基本的方向性は一致。ただし、後述のように担保措置の設計には課題が残る。
意見書での主張(2024年6月):
「経済界の要望には、EU法に倣って『契約の履行』『正当な利益』に基づく第三者提供を可能にするべきとの意見が含まれており、これらは目的内の提供に相当するものである」(6月意見書1.1節)
制度改正方針での対応:
「取得の状況からみて本人の意思に反しないため本人の権利利益を害しないことが明らかな取扱いである場合は本人同意を不要とする」(第2の1)
評価:「契約の履行」に相当するケース(ホテル予約サイト、海外送金)が例示されており、この点は反映されている。
意見書での主張(2025年2月):
仮名加工情報の漏えい報告義務化を求める文脈で、漏えいに対する制裁よりも報告・把握を重視する方向性
制度改正方針での対応: 「考え方」別紙で検討されていた漏えい等・安全管理措置義務違反は、課徴金対象から削除された。
評価:直接的な主張ではないが、漏えいに対する過剰な制裁を避ける方向性と整合。
意見書での主張(2024年6月・11月):
「『第三者提供時の利用目的拘束』を何らかの形で規定することが不可欠である」(6月意見書1.1節)
「提供先においても同じ利用目的で利用されることが保証される『第三者提供時の利用目的拘束』」
制度改正方針での対応: 「考え方」では統計作成等の場合について「提供先における目的外利用及び第三者提供の禁止を義務付ける」とされている。
評価:統計目的の場合に限って利用目的拘束の仕組みが導入される方向。しかし、意見書が求めていた一般的な第三者提供時の利用目的拘束は導入されていない。6月意見書が指摘した「提供先において新たに独自の利用目的を自由に設定できる」構造は維持されたまま。
意見書での主張(2024年11月):
「クラウドが、個人データ処理を行うSaaSである場合に、当該SaaSの機能が、前記2.1節の『データ利用の適正性』の観点で不適切な決定を生じさせるものである場合の責任の問題」(11月意見書2.4節)
制度改正方針での対応:
「委託された個人データ等を当該委託を受けた業務の遂行に必要な範囲を超えて取り扱ってはならない旨の義務を委託先に明文規定により課す」(別添第1)
評価:委託先の義務の明文化は進んだが、意見書が指摘した「SaaSの機能がデータ利用の適正性の観点で不適切な決定を生じさせる場合」についての規律は含まれていない。
意見書での主張(全3回で一貫して主張):
「データ品質の原則(OECDガイドライン第2原則)の法制化が必要である。現行法は、第2原則の求める関連性、正確性、完全性、最新性のうち、狭義の正確性と最新性しかカバーしていない。関連性と、広義の正確性と、完全性(EU法では『十分性(adequacy)』が相当)をカバーする規律が必要である」(11月意見書2.1節)
制度改正方針での対応:記載なし
評価:意見書が最も重視していた「関連性の原則」の法制化は、今回の改正方針には含まれていない。これは意見書の理論的基盤である「個人データ処理による個人に対する評価・決定の適切性確保」を法目的として明確化するための核心的要素であったが、採用されなかった。
意見書での主張(2024年11月・2025年2月):
「再識別禁止ではなく措置又は決定の禁止とするべき」(2月意見書1.1.4節)
「禁止すべきは、目的ではなく、決定の目的に関連性のないデータ項目を用いることである」(11月意見書2.1⑥)
制度改正方針での対応:採用されず
統計目的の担保措置として「目的外利用及び第三者提供の禁止」が規定されているが、「措置又は決定を裏付ける利用の禁止」という形式は採用されていない。
意見書での主張(2024年6月):
「個人情報データベース等を構成することを予定していない個人情報(散在情報)に対する過剰規制である」
「経済界の要望を受け入れて、義務の対象を『個人データ』に統一してはどうか」(6月意見書1.4節)
制度改正方針での対応:記載なし
評価:用語の整理・統一は今回の改正には含まれていない。
意見書での主張(2024年6月・11月):
「要配慮個人情報の取得制限は『個人データとして取得する場合』に適用されるものと解するべき」(6月意見書1.3節)
「データ品質の原則(OECDガイドライン第2原則)の法制化がなされた暁には、特別カテゴリ、すなわち要配慮個人情報の類型は、本法にとって必要でないということになる」(11月意見書2.6①)
制度改正方針での対応: 統計目的の場合について「公開されている要配慮個人情報の取得」を本人同意不要とする点のみ。
評価:限定的な緩和にとどまり、意見書が求めた根本的な見直し(「個人データとして取得する場合」への限定)は採用されていない。
意見書での主張(2025年2月):
「『AI開発等』の『AI』を『処理AI』と『生成AI』に区別することが必要」
「生成AI開発に対する公表義務の是非……名宛人をどうするのかが問題となる」(2月意見書1.1.1–1.1.2節)
制度改正方針での対応: 「統計作成等であると整理できるAI開発等を含む」との注記があるのみで、区別は明示されていない。
意見書での主張(2025年2月):
「統計目的での仮名化データの第三者提供を許するからには、安全管理は厳に要求され、漏えいがあった場合に秘匿されるようなことがあってはならない」
「この際、前記A1(1)の改正に合わせて、仮名加工情報の漏えい報告を義務化するべきである」(2月意見書A2.2節)
制度改正方針での対応:記載なし
評価:統計目的の第三者提供を許容する改正を行うにもかかわらず、仮名加工情報の漏えい報告義務化は含まれていない。意見書が指摘した「漏えいの実態を把握できない」問題は解消されない。
意見書での主張(2024年11月・2025年2月):
「無条件の利用停止請求を可能とする理由がない」(2月意見書A3節)
「理論的裏付けのない安易な規制の段階付けを持ち込むべきでない」(11月意見書2.1③)
制度改正方針での対応:
「16歳未満の者を本人とする保有個人データについて、違法行為の有無等を問うことなく利用停止等請求を行うことを可能としてはどうか」*1
評価:意見書が批判した「無条件の利用停止請求」がそのまま採用されている*2。
意見書での主張(2025年2月):
「『社内識別子のみが漏えい』という事例を挙げる者も、個人情報概念の理解を誤っているのではないか」
「そのような誤った運用が懸念されるので、『社内識別子のみが漏えい』などという稀なケースを根拠に、漏えい報告に除外を設けるべきでない」(2月意見書A2.1節)
制度改正方針での対応:
「本人への通知が行われなくても本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合について、本人への通知義務を緩和」
評価:意見書が批判した方向での緩和が進んでいる。
| 分類 | 項目数 | 主な項目 |
|---|---|---|
| 反映 | 3 | 統計目的の同意不要化、契約履行に基づく提供、漏えいの課徴金対象除外 |
| 部分的反映 | 2 | 利用目的拘束(統計目的のみ)、委託先規律 |
| 未反映 | 6 | 関連性原則、措置又は決定概念、個人データ統一、要配慮規律見直し、AI区別、仮名漏えい報告 |
| 批判にもかかわらず採用 | 2 | 子供の無条件利用停止、漏えい通知緩和 |
意見書の実務的・緩和的提案(統計目的、契約履行)は採用される傾向にある一方、理論的・構造的提案(関連性原則、法目的の明確化、用語統一)は採用されていない。意見書が一貫して主張してきた「個人データ処理による個人に対する評価・決定の適切性確保」という核心的保護利益の法制化は、今回の改正には含まれていない。
ご指摘のとおりです。漏えい「通知」(本人への)と漏えい「報告」(委員会への)を区別して再分析します。
意見書での主張(2025年2月 A2.1節):
「『社内識別子のみが漏えい』という事例を挙げる者も、個人情報概念の理解を誤っているのではないか」
「そのような誤った運用が懸念されるので、『社内識別子のみが漏えい』などという稀なケースを根拠に、漏えい報告に除外を設けるべきでない」
制度改正方針での対応:
「漏えい等発生時について、本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合は、本人への通知義務を緩和する」(第2の2)
評価:意見書は「通知」の緩和についても批判していたが、制度改正方針では緩和の方向で進んでいる。ただし、これは「報告」の免除ではなく「通知」の緩和である点に注意が必要。
意見書での主張(2025年2月 A2.2節):
「統計目的での仮名化データの第三者提供を許するからには、安全管理は厳に要求され、漏えいがあった場合に秘匿されるようなことがあってはならない」
「現行法の仮名加工情報の規律には、漏えいの報告と通知が免除されている(42条3項)。これは、統計目的での仮名化データの第三者提供先において、漏えいが発生しても、報告されず、個情委が実態を把握できないことを意味する」 「この際、前記A1(1)の改正に合わせて、仮名加工情報の漏えい報告を義務化するべきである」
制度改正方針での対応:記載なし
評価:統計目的の第三者提供を許容する改正(第2の1)を行うにもかかわらず、それとセットで求められていた仮名加工情報の漏えい報告義務化は含まれていない。意見書が指摘した「漏えいの実態を把握できない」問題は解消されない。
「考え方」(3月)での検討:
「体制・手順に係る認定個人情報保護団体などの第三者の確認を受けること等を前提として、一定の範囲で速報を免除することを可能としてはどうか」
「誤交付・誤送付のようなケースについては、委員会への報告のうち確報を、一定期間ごとに取りまとめた上で行うことを許容してはどうか」 「違法な個人データの第三者提供についても報告対象事態にすることとしてはどうか」
制度改正方針での対応(第2の5(1)):
「体制・手順に係る認定個人情報保護団体などの第三者の確認を受けること等を前提とした合理化の方策等について、検討を進めていく」
「報告様式及び報告窓口の一元化に向けた調整を進めていく」
「報告基準についてもその発生の『おそれ』がある場合が広く対象とされるものから見直し」
評価:「考え方」にあった「違法な第三者提供も報告対象に」という検討項目が、制度改正方針では明示的に記載されていない。
| 区分 | 意見書の主張 | 制度改正方針 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 漏えい通知(本人へ) | 「社内識別子のみ」を根拠とした緩和に反対 | 緩和する | 批判にもかかわらず緩和 |
| 漏えい報告(仮名加工情報) | 報告義務を課すべき(現行は免除) | 記載なし | 未反映 |
| 漏えい報告(違法な第三者提供) | (直接の言及なし) | 「考え方」にはあったが制度改正方針では不明確 | 不明確 |
| 漏えい報告(合理化) | (直接の言及なし) | 速報免除、取りまとめ報告等を検討 | - |
2025年2月意見書の論理は次のようになっていました:
制度改正方針は、1の部分(統計目的の提供許容)は採用したものの、それとセットで求められていた4の部分(報告義務化)は採用していません。意見書が指摘した「このようなことは、今回の改正に反対される理由となる」という懸念は、解消されていない状態です。
ご指摘いただいたとおり、「通知」と「報告」を区別することで、より正確な分析ができました。特に、統計目的の第三者提供許容と仮名加工情報の漏えい報告義務化がセットで提案されていたにもかかわらず、前者のみ採用され後者が採用されていない点は、意見書の論理構造からすると整合性を欠く状態といえます。
ご指摘を受けて、「漏えい等報告の合理化」の内容をより精査してみます。
漏えい等報告については、「考え方」第3の5における整理のとおり、体制・手順に係る認定個人情報保護団体などの第三者の確認を受けること等を前提とした合理化の方策等について、検討を進めていく。
「考え方」第3の5「漏えい等発生時の体制・手順について確認が得られている場合や違法な第三者提供が行われた場合における漏えい等報告等の在り方」には、以下の2つの方向性が含まれていました:
「漏えい等報告の合理化」の文脈から、仮名加工情報の漏えい報告義務化が含まれる可能性は低いと考えられます。
むしろ、意見書の論理に従えば、仮名加工情報の漏えい報告義務化は、「漏えい等報告の合理化」ではなく、第2の1「適正なデータ利活用の推進」の中の統計目的の第三者提供許容とセットで規定されるべき担保措置の一つとして位置づけられるべきものでした。その点が制度改正方針では抜け落ちている、という分析になります。
まさにその点です。非常に鋭いご指摘です。
| 担保措置 | 採用 |
|---|---|
| 公表義務 | ○ |
| 書面による合意 | ○ |
| 目的外利用・第三者提供の禁止 | ○ |
| 課徴金(統計作成等特例への違反) | ○ |
| 仮名加工情報の漏えい報告義務化 | × |
課徴金の対象行為(注4)に「統計作成等の特例に係る義務への違反行為(目的外の利用、第三者提供)」を明示的に入れたのは、まさに統計目的の第三者提供許容とセットの担保措置として位置づけているからです。
課徴金は事後的制裁・抑止の手段です。しかし、漏えい報告は実態把握・早期対応のための手段であり、性質が異なります。
意見書(2025年2月)の指摘:
「統計目的での仮名化データの第三者提供先において、漏えいが発生しても、報告されず、個情委が実態を把握できないことを意味する」
つまり:
課徴金という制裁手段を用意しても、その前提となる実態把握の仕組み(漏えい報告)がなければ、制裁の実効性も損なわれます。
2025年2月意見書は、統計目的の第三者提供許容に伴う担保措置として、以下を求めていました:
制度改正方針は:
課徴金を入れるなら、なおさら漏えい報告も入れるべきという論理になるはずですが、そうなっていません。
この非対称性は、今後の意見提出において指摘すべき重要な論点になりそうです。
非常に重要なご指摘です。複数の論点が交錯している状況を整理してみます。
「考え方」別紙:漏えい等・安全管理措置義務違反も課徴金対象として検討
制度改正方針:対象から削除。対象は以下の5類型のみ:
評価:漏えいは「故意の違反行為」ではなく「事故」の性質が強いため、課徴金の対象から外すこと自体は妥当。
「考え方」第3の5:
「違法な個人データの第三者提供についても報告対象事態にすることとしてはどうか」
制度改正方針:
「『考え方』第3の5における整理のとおり、……合理化の方策等について、検討を進めていく」
「違法な第三者提供の報告対象化」については明示的に触れられていない。「合理化」という表現は緩和方向を示唆し、拡大方向の検討事項が含まれているか不明確。
意見書の主張:統計目的の第三者提供許容とセットで義務化すべき
制度改正方針:記載なし
┌───────────────────────────────┐
│ 統計目的の第三者提供許容(仮名加工情報の流通) │
└───────────────────────────────┘
↓
┌────────┴────────┐
↓ ↓
違反行為 事故(漏えい)
(目的外利用・
違法な第三者提供)
│ │
↓ ↓
┌─────────┐ ┌─────────┐
│課徴金対象 │ │報告義務? │
│ ○ │ │ × │
└─────────┘ └─────────┘
│
↓
┌─────────┐
│報告対象? │
│ 不明 │
└─────────┘
| 事象 | 課徴金 | 報告義務 |
|---|---|---|
| 統計目的特例違反(目的外利用・第三者提供) | ○ | 不明確(違法な第三者提供の報告対象化が残っていれば○) |
| 仮名加工情報の漏えい | × | ×(現行法で免除、改正でも対応なし) |
課徴金から漏えいを外すなら、なおさら漏えい報告で実態把握する必要があるはずです。ところが:
これでは、統計目的の第三者提供を許容した後、提供先で何が起きているか(漏えいも違反も)把握できない状況が生じます。
課徴金対象から漏えいを外したことは妥当としても、それならば:
これらがなければ、課徴金という制裁手段があっても、その前提となる実態把握ができず、制度全体の実効性が損なわれる、という指摘ができそうです。
非常に重要な論点です。意見書の主張と照らし合わせて分析します。
① 個人情報の提供であって、当該個人情報を利用して違法な行為又は不当な差別的取扱いを行うことが想定される状況にある第三者に対して行うもの
② 第三者の求めにより行う個人情報の利用であって、当該第三者が当該個人情報の利用を通じて違法な行為又は不当な差別的取扱いを行うことが想定される状況にある場合に行われるもの
「この19条の規定は、本来は、令和2年改正の『制度改正大綱』では、『適正な利用義務の明確化』として、『昨今の急速なデータ分析技術の向上等を背景に、潜在的に個人の権利利益の侵害につながることが懸念される個人情報の利用の形態がみられるようになり……』との課題認識の下に計画されていた。それが、内閣法制局の予備審査の段階で、『不正利用の禁止』に変更させられた経緯がある」
「この前例の趣旨は、開示等請求において『存否が明らかになること』によって生じ得る『違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれ』に着目したものであり、本来、個人データの利用の適正性の基準とは何らのつながりもない」
「現行法の不適正利用禁止の規定(19条)は、その基準となり得ない。なぜなら、『違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法』という基準は、核心的保護利益『個人データ処理による個人に対する評価・決定の適切性確保の利益』と何ら関係がないからである」
「プロファイリングの是非の基準は、1980年の時点で既に、OECDガイドライン第2原則のデータ品質の原則(特に関連性の要件)に組み込まれていたことが判明した。したがって、この原則こそが(データ利用の適正性確保における)『取扱いの正当性を裏付ける基準』となる」
| 観点 | 評価 |
|---|---|
| 法規範の明確性 | 「具体的に明記された類型」に限定したことは、19条の曖昧さへの批判(法制局も「規範の明確性に欠ける」と指摘)に対応したもので妥当 |
| 「不当な差別的取扱い」の明記 | 課徴金対象類型に「不当な差別的取扱い」という表現が入った |
| 萎縮効果の回避 | 曖昧な19条全体を課徴金対象とせず、悪質類型に限定したことで、正当な事業活動の萎縮を回避 |
| 観点 | 問題 |
|---|---|
| 問題意識のずれ | 類型化は「闇名簿」対策(提供先が犯罪者グループ)を念頭に置いたもの。意見書が問題にしていた「プロファイリング」「評価・決定の適切性確保」とは異なる問題意識 |
| 差別の主体 | 「不当な差別的取扱い」は提供先が行う差別を想定。意見書が求めていたのは個人情報取扱事業者自身による「関連性のないデータ項目を用いた評価・決定」を問題とする基準 |
| 19条自体は変わらない | 課徴金対象を限定しても、19条の条文(「違法又は不当な行為を助長・誘発」)自体は変更されない。意見書の批判(核心的保護利益と無関係)は解消されない |
| 関連性要件の不在 | 意見書が求めた「データ品質の原則」「関連性の要件」に基づく不適正利用の定義は導入されていない |
意見書が求めた「不適正利用」の基準:
┌───────────────────────────┐
│ 個人情報取扱事業者自身による │
│ 決定の目的に関連性のないデータ項目を用いた │
│ 評価・決定 │
└───────────────────────────┘
制度改正方針の課徴金対象類型:
┌───────────────────────────┐
│ 第三者(提供先)が │
│ 違法な行為又は不当な差別的取扱いを行う │
│ ことが想定される状況での提供・利用 │
└───────────────────────────┘
両者は主体も行為も異なります。
課徴金対象類型に「不当な差別的取扱い」が入ったこと自体は注目に値します。しかし:
意見書の差別概念(2024年11月):
「OECDガイドラインには『データ対象者に対する不当な差別(unfair discrimination)がないことを確保すること』との記述がある」
「あらゆる関連性のないデータ項目による決定が『差別』に当たるとして、その排除を趣旨としたものである」
制度改正方針の差別概念:
両者の「差別」概念は異なります。意見書が求めていたのは、データ処理自体の適正性(関連性のないデータ項目による評価・決定を「差別」として問題視)であり、制度改正方針は提供先の行為の違法性・不当性に着目しています。
「具体的に明記された類型に限定」したこと自体は、法規範の明確性・萎縮効果回避の観点から妥当と評価できます。しかし、その類型化は「闇名簿」対策としての性格が強く、意見書が求めていた「データ品質の原則」「関連性の要件」に基づく不適正利用の定義とは別の問題意識に基づくものです。
19条の本来の課題(「プロファイリングの適正性」「評価・決定の適切性確保」)は、今回の改正でも手つかずのまま残されているといえます。
ご指摘ありがとうございます。課徴金対象類型をもう一度精査します。
個人情報の提供であって、当該個人情報を利用して違法な行為又は不当な差別的取扱いを行うことが想定される状況にある第三者に対して行うもの
→ 差別的取扱いを行うのは提供先(第三者)
第三者の求めにより行う個人情報の利用であって、当該第三者が当該個人情報の利用を通じて違法な行為又は不当な差別的取扱いを行うことが想定される状況にある場合に行われるもの
→ 「当該個人情報の利用」は事業者自身が行う利用を指している
第三者(依頼者)
│
│ 求め(依頼)
↓
個人情報取扱事業者
│
│ 個人情報の利用(プロファイリング、選別等)
↓
│ ← この「利用」が課徴金対象
│
↓ 結果の提供
第三者
│
│ 差別的取扱いの実行
↓
本人への影響
類型②では、個人情報取扱事業者自身の「利用」行為が課徴金対象となっています。「当該個人情報の利用を通じて」第三者が差別的取扱いを行う、という構造は、事業者の利用行為が差別的取扱いの手段・道具になっていることを前提としています。
「差別を行う主体は提供先」
これは①のみに着目した不正確な記述でした。②では事業者自身の利用行為も課徴金対象になっています。
| 類型 | 課徴金対象となる行為 | 差別的取扱いの主体 |
|---|---|---|
| ① | 事業者の提供行為 | 提供先(第三者) |
| ② | 事業者の利用行為 | 形式的には第三者だが、実質的な基準は事業者の利用に組み込まれている |
類型②は、例えば:
このようなケースで、選別を行う事業者自身の利用行為が課徴金対象になりうる。
類型②の存在により、意見書が問題にしていた「プロファイリング」「評価・決定」に関わる事業者自身の利用行為も課徴金対象になりうる点は、一定の前進といえます。
ご指摘により、類型②の意義をより正確に把握できました。「提供先が行う」差別だけでなく、「事業者自身の利用」も課徴金対象になりうる点は、先の分析で見落としていた重要な点です。
確かに謎です。いくつかの仮説を検討してみます。
制度改正方針の課徴金額の算定:
「対象行為又は対象行為をやめることの対価として個人情報取扱事業者が得た金銭その他の財産上の利益に相当する額」
「第三者の求めにより」行う利用であれば、その対価・報酬が明確に存在します。自発的に行う差別的利用の場合、「対価」として何を算定基礎にするかが不明確になります。
反論:類型①(提供行為)も同じ算定方式。自発的な提供でも対価があれば算定可能なはず。
「第三者の求め」があれば:
自発的な差別的利用の場合:
反論:立証の難易度は執行上の問題であり、対象行為の範囲を限定する理由としては弱い。
制度改正方針全体の文脈:
反論:名簿屋自身が自発的に差別的なリスト(例:高齢者リスト、富裕層リスト)を作成・販売するケースも「闇名簿」問題の一部。
類型①:第三者に「提供」する行為 → 自発的でも対象
類型②:自ら「利用」する行為 → 第三者の求めがある場合のみ対象
自発的に差別的利用を行い、その結果を自ら用いて差別的取扱いを行う場合:
反論:自己完結する差別的利用(例:自社サービスの利用者に対する差別的取扱い)は捕捉されない。
自発的な「利用」全般を課徴金対象にすると:
「第三者の求め」という外形的要件を課すことで:
反論:それならば「自発的な利用」についてこそ、何が「不当な差別的取扱い」かの基準(関連性の要件等)を明確化すべき。
いずれの仮説も、以下の疑問に十分に答えられません:
| 行為類型 | 悪質性 | 課徴金対象 |
|---|---|---|
| 第三者の求めに応じて差別的利用を行う | 悪質 | ○ |
| 自発的に差別的利用を行う | より悪質? | × |
むしろ、自発的に差別的利用を行う事業者の方が、主体的・積極的に差別を行っている点でより悪質とも言えます。
意見書が求めていた「不適正利用」の基準:
「決定の目的に関連性のないデータ項目を用いた評価・決定」
この基準であれば、「第三者の求め」の有無は無関係です。関連性の有無で判断されるべきであり、誰かに求められたから行ったか、自発的に行ったかは、違法性の判断に影響しないはずです。
「第三者の求めにより」という限定は、関連性要件を導入しなかったことの帰結かもしれません。関連性という客観的基準がないために、「第三者の求め」という外形的要件で対象を限定せざるを得なかった、とも読めます。
「第三者の求めにより」という限定の合理的な説明は困難です。課徴金算定や立証の便宜といった技術的理由、あるいは萎縮効果回避という政策的理由が考えられますが、いずれも論理的には不十分です。
この限定の存在は、今回の改正が「データ品質の原則」「関連性の要件」に基づく不適正利用の定義を導入しなかったことの反映であり、結果として、自発的に行われる差別的プロファイリング・評価・決定という、意見書が最も問題視していた類型が課徴金対象から漏れているという状況になっています。
非常に興味深い論点です。意見書の法目的論との関係で分析します。
「『個人の権利利益を保護すること』を目的とする個人情報保護法と消費者団体訴訟制度との関係の整理等の課題があることを踏まえ、今回の見直しにおいては制度的な導入については見送ることとする」
意見書は「個人の権利利益」を以下のように整理していました:
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 核心的保護利益 | 個人データ処理による個人に対する評価・決定の適切性確保の利益 |
| 手段的保護利益 | 開示・訂正・利用停止を請求できる利益 |
| 副次的保護利益 | 秘密保持の利益、勧誘拒否の利益、自己の情報を知る利益、私的領域保護の利益 |
「日本法が、その法目的の理解において、『個人データ処理による個人に対する評価・決定の適切性確保』の理解が希薄であった」
消費者契約法・消費者裁判手続特例法に基づく制度であり、「消費者の利益」を保護することを目的としています。
| 観点 | 消費者団体訴訟 | 個人情報保護法 |
|---|---|---|
| 保護主体 | 消費者 | 個人(消費者に限らない) |
| 保護利益 | 財産的利益、取引上の利益 | 「個人の権利利益」(内容曖昧) |
| 想定場面 | 事業者との取引関係 | データ処理全般 |
制度改正方針が「関係の整理等の課題」と述べているのは、個人情報保護法の法目的が曖昧だからではないでしょうか。
意見書の指摘:
「OECDガイドラインはその表題とは裏腹にプライバシー保護というよりはデータ保護を実現するものである」(2024年6月)
「プライバシーは『権利利益』の一部ではあるが、その中心的なものとは言えない」(2024年6月)
つまり:
「考え方」別紙では、差止請求の対象として以下を検討していました:
「・不特定かつ多数の消費者の個人データを、……法に違反して第三者に提供する(法第27条第1項関係)」
「・不特定かつ多数の消費者の個人情報を、本人が人格的・差別的な取扱いを受けるおそれがあるにもかかわらずウェブサイトで表示する等、不適正に利用する(法第19条関係)」
ここで「消費者」という語が使われていること自体、すでに個人情報保護法の「個人」概念と消費者概念の混同・未整理を示しています。
┌────────────────────────────────┐
│ 個人情報保護法の「個人の権利利益」 │
│ │
│ ┌──────────┐ │
│ │ 核心的保護利益? │ ← 法律上明確でない │
│ └──────────┘ │
│ ↓ │
│ ┌──────────┐ │
│ │ 消費者の利益? │ ← 一部重なるが同一でない │
│ └──────────┘ │
└────────────────────────────────┘
↓
「関係の整理等の課題がある」として見送り
「日本の個人情報保護法は、長い検討の歴史を見ても、公平性の観点で語られることがなかった。法目的の1条に公平性の概念を明示するか、それができなければ、基本方針に盛り込むのがよいであろう」
法目的が明確化されれば:
制度改正方針が「個人情報保護法と消費者団体訴訟制度との関係の整理等の課題」を見送り理由としていることは、意見書が繰り返し指摘してきた法目的の曖昧さを図らずも露呈しています。
意見書の立場からすれば:
「関係の整理」ができないのは、整理すべき「個人の権利利益」の内容自体が曖昧だからであり、これは今回の改正で解消されていない根本的な問題です。
非常に重要な論点です。意見書での批判と照らし合わせて分析します。
「特定の個人に対する働きかけが可能となる個人関連情報等について、不適正利用及び不正取得を禁止する」(第2の3)
「特定の個人に対して何らかの連絡を行うことができる記述等である電話番号、メールアドレス、Cookie ID等を含む情報については、当該情報が個人情報に該当しない場合であっても、当該個人への連絡を通じて当該個人のプライバシー、財産権等の権利利益の侵害が発生し得る」
「再検討視点5①は、『個人に対し勧誘その他の一対一の働きかけを行うチャネル』という点に着目しているが、個人別のデータに基づかないで全員に同じ働きかけを行う場合も含めて書かれているようにも見える。そのような場合では、前記2.1節の『データ利用の適正性』の問題は生じず、前記2.1.⑧で述べた『勧誘拒否の利益』の問題にすぎない」
「その点で、6月の『中間報告』に書かれている『電話番号、メールアドレス、Cookie IDなど、個人に対する連絡が可能な情報を有している場合には……』との記載(6頁)は、上記の後者(全員に同じ働きかけを行う場合)を指しているところに問題があった。真に問題とすべきは、上記の前者(異なって扱う場合)である点に注意されたい」
「情報あるいはデータを本法の規律対象とすべきか否かは、本法が本来的に保護すべき核心的保護利益『個人データ処理による個人に対する評価・決定の適切性確保の利益』の観点からすれば、個人に対する決定を伴うか否か、すなわち、各個人の個人データに基づき何らかの影響を及ぼす(異なって扱う)ことがあるか否かによって判別するべきである」
「再検討視点5①の記載は、端末識別番号やcookie情報等について『データ類型』の語で捉えているが、データの類型で決めるのではなく、まずは、事業者が『各個人の個人データに基づき何らかの影響を及ぼす(異なって扱う)こと』(決定利用)を予定しているか否かで決まるものとするべきである」
| 観点 | 意見書が求めた基準 | 制度改正方針の基準 |
|---|---|---|
| 着目点 | 決定利用(異なって扱う)か否か | 働きかけ(連絡)が可能か否か |
| 保護利益 | 核心的保護利益(評価・決定の適切性確保) | 副次的保護利益(プライバシー、財産権、勧誘拒否) |
| 規律対象の決め方 | 利用の態様(決定利用か否か) | データの類型(電話番号、メールアドレス等) |
| 問題視する行為 | 関連性のないデータによる差別的評価・決定 | 連絡を通じた権利利益侵害(詐欺、プライバシー侵害等) |
意見書の視点:
個人関連情報
│
├─→ 決定利用あり → 規律対象(核心的保護利益)
│
└─→ 決定利用なし → 規律対象外(または副次的保護のみ)
制度改正方針の視点:
個人関連情報
│
├─→ 連絡可能なデータ類型 → 規律対象
│ (電話番号、メールアドレス、Cookie ID等)
│
└─→ 連絡不可能なデータ類型 → 規律対象外
制度改正方針の「特定の個人に対する働きかけが可能となる」という基準は、意見書が明確に批判した問題点をそのまま維持しています。
意見書の指摘:
「真に問題とすべきは、上記の前者(異なって扱う場合)である」
この指摘は採用されず、「働きかけが可能」「連絡が可能」という、意見書が「問題があった」と批判した観点がそのまま制度改正方針に残っています。
これも、法目的を「評価・決定の適切性確保」として明確化しなかったことの帰結といえます。法目的が曖昧なまま、「プライバシー、財産権等」という副次的保護利益に着目した規律設計になっています。
ご指摘のとおりです。正確に区別します。
「特定の個人に対する働きかけが可能となる個人関連情報等について、不適正利用及び不正取得を禁止する」
保護利益についての言及はなし。
「特定の個人に対して何らかの連絡を行うことができる記述等である電話番号、メールアドレス、Cookie ID等を含む情報については、当該情報が個人情報に該当しない場合であっても、当該個人への連絡を通じて当該個人のプライバシー、財産権等の権利利益の侵害が発生し得る」
「プライバシー、財産権等」は「考え方」の記載でした。訂正します。
「考え方」の注15・注16に具体例が示されています。
「例えば、メールアドレス等を用いて、有名企業等をかたったメール等を個人に送信し、当該メールの本文に記載したフィッシングサイトのURLにアクセスさせて認証情報やクレジットカード情報等を窃取する事例等が挙げられる」
「例えば、オンラインメンタルヘルスカウンセリングサービスを運営する事業者が、ユーザーから取得したメールアドレス及び健康情報を、治療支援等のためにのみ利用し第三者に共有しない旨等を約していたにもかかわらず、広告目的で第三者に提供する事例等が挙げられる」
| 観点 | 分析 |
|---|---|
| 行為の本質 | 詐欺行為 |
| 既存の法的対応 | 詐欺罪(刑法246条)、不正アクセス禁止法等 |
| 個人情報保護法で規律する必要性 | 疑問。詐欺罪で対処すべき問題では? |
| 「働きかけが可能」との関係 | メールアドレスは詐欺の手段にすぎない |
| 観点 | 分析 |
|---|---|
| 行為の本質 | プライバシーポリシー違反、目的外利用、第三者提供 |
| 既存の法的対応 | 現行法でも18条(目的外利用)、27条(第三者提供)違反の可能性 |
| 「働きかけが可能」との関係 | メールアドレスが問題なのではなく、健康情報の不正提供が問題 |
フィッシング詐欺は、個人情報保護法ではなく刑法・特別刑法で対処すべき問題ではないでしょうか。
メールアドレスの「不適正利用」として個人情報保護法で規律することの意義は何でしょうか。詐欺罪の立証が困難な場合の補完?それとも、詐欺に至る前段階での抑止?
この事案は、米国FTCのBetterHelp事件(メンタルヘルスアプリが健康情報を広告目的で第三者提供)を参照しているように見えます。
しかし、この事案で問題なのは:
「メールアドレスが連絡可能である」ことが問題の本質ではありません。
意見書(2024年11月):
「そのような場合では、前記2.1節の『データ利用の適正性』の問題は生じず」
フィッシング詐欺は、個人別のデータに基づいて「異なって扱う」(決定利用)問題ではありません。全員に同じ詐欺メールを送っているだけです。これは「データ利用の適正性」の問題ではなく、単なる犯罪行為です。
この事案を「働きかけが可能」という観点で整理すること自体がずれています。
意見書の視点では:
「考え方」が想定している事案を見ると:
いずれも、意見書が求めた「決定利用か否か」「評価・決定の適切性確保」という観点からの整理とは異質です。
「働きかけが可能」という基準で何を規律しようとしているのか、その政策目的が不明確というご指摘はもっともです。フィッシング詐欺対策なのか、センシティブ情報の保護なのか、勧誘拒否の利益の保護なのか、焦点が定まっていないように見えます。
ご指摘を受けて、両文書の該当部分を比較します。
「特定の個人に対して何らかの連絡を行うことができる記述等である電話番号、メールアドレス、Cookie ID等を含む情報については、当該情報が個人情報に該当しない場合であっても、当該個人への連絡を通じて当該個人のプライバシー、財産権等の権利利益の侵害が発生し得る上、当該記述等を媒介として秘匿性の高い記述等を含む情報を名寄せすることにより、プライバシー等が侵害されたり、上記連絡を通じた個人の権利利益の侵害がより深刻なものとなったりするおそれがある。」
「特定の個人に対する働きかけが可能となる個人関連情報等について、不適正利用及び不正取得を禁止する」
| 要素 | 「考え方」 | 制度改正方針 |
|---|---|---|
| 基準の表現 | 「連絡を行うことができる」 | 「働きかけが可能となる」 |
| データ類型の例示 | 電話番号、メールアドレス、Cookie ID等 | なし |
| 保護利益の言及 | プライバシー、財産権等 | なし |
| 具体的事案の例示 | フィッシング詐欺、健康情報提供 | なし |
意見書の批判:
「これは副次的保護利益であり、核心的保護利益(評価・決定の適切性確保)ではない」
制度改正方針では保護利益への言及が削除されており、副次的保護利益に基づく規律という印象は薄まりました。
意見書の批判:
「データの類型で決めるのではなく」
具体的なデータ類型(電話番号、メールアドレス、Cookie ID等)の例示がなくなり、「データ類型で規律対象を決める」という批判された構造が表面上は見えなくなりました。
「考え方」注15のフィッシング詐欺の例示は、個人情報保護法で規律すべき問題かどうか疑問のあるものでした。この例示が削除されたことで、刑法で対処すべき問題を無理に取り込もうとしている印象は薄まりました。
制度改正方針は簡潔な記載にとどめ、具体的な対象範囲は委員会規則等での具体化に委ねる形になっています。これにより、今後の具体化の段階で、より適切な方向に調整する余地が残されています。
意見書の根本的批判:
「真に問題とすべきは、上記の前者(異なって扱う場合)である」
「働きかけが可能」という基準は維持されており、「決定利用か否か」という観点での整理にはなっていません。
ただし、「働きかけ」という表現は「連絡」よりも広い意味を持ち得ます。「連絡」は一方的な通知・送信を想起させますが、「働きかけ」には、個人別に異なる対応をする(=決定利用的な要素)という意味も含み得るとも解釈できます。
「考え方」から「制度改正方針」への変更は、意見書が批判した表現(「プライバシー、財産権等」、データ類型の例示、フィッシング詐欺の例示)が削除されており、一定の改善と評価できます。
具体的な対象範囲は委員会規則等に委ねられる形になっているため、今後の具体化の段階で、意見書が求めた「決定利用か否か」という観点を取り入れる余地は残されています。
ただし、「働きかけが可能」という基準自体は維持されており、根本的な問題(核心的保護利益に基づく規律設計)が解消されたとまでは言えません。
非常に重要なご指摘です。日本法の構造的問題が露呈している点を分析します。
「特定の個人に対して何らかの連絡を行うことができる記述等である電話番号、メールアドレス、Cookie ID等を含む情報については、当該情報が個人情報に該当しない場合であっても、当該個人への連絡を通じて当該個人のプライバシー、財産権等の権利利益の侵害が発生し得る」
「端末識別番号やcookie情報に基づいて、個人別に異なる結果がもたらされるのであれば、規律の対象ということになる。その際の、端末識別番号やcookie情報をretrieval識別子として処理されるデータレコードは、本法の用語である『個人に関する情報』に該当し、かつ、個人を識別することができるものに当たる」
意見書の立場:
「経済界の要望を受け入れて、義務の対象を『個人データ』に統一してはどうか」
用語・概念の乱立(個人情報、個人データ、個人関連情報、仮名加工情報、匿名加工情報…)を批判し、統一を求めていました。
【EU法】
メールアドレス + 健康情報
↓
personal data(個人データ)
↓
GDPR の規律が全面適用
【日本法】
メールアドレス + 健康情報
↓
┌─────────────────────────┐
│ メールアドレス:「個人情報」に該当しない │
│ 健康情報:「個人に関する情報」だが │
│ 識別できないので「個人情報」でない │
└─────────────────────────┘
↓
「個人関連情報」として別途規律
↓
限定的な規律(第三者提供時の確認義務等)のみ
「当該情報が個人情報に該当しない場合であっても」規律が必要、という記載は:
BetterHelp的事例で問題なのは:
| 観点 | EU法での整理 | 日本法での整理 |
|---|---|---|
| 問題の本質 | 健康データ(special category)の不正な第三者提供 | 「個人関連情報」の不適正利用? |
| 規律の根拠 | GDPR 9条(特別カテゴリ)、6条(適法性根拠) | 個人関連情報の規律拡大 |
| 識別子の位置づけ | personal dataの一部 | 「個人情報に該当しない」 |
日本法では、健康情報の不正提供という本質が見えにくくなり、「メールアドレスで連絡可能」という表面的特徴に着目した規律になってしまっています。
意見書が一貫して求めてきた方向性:
「考え方」の「当該情報が個人情報に該当しない場合であっても」という記載は、これらの根本的問題を解決せずに、継ぎ接ぎで対応しようとしていることを示しています。
「当該情報が個人情報に該当しない場合であっても」という記載は、日本法の「個人情報」定義の狭さという構造的問題を露呈しています。
注16のような事案は、EU法では当然に「個人データ」(しかもspecial categoryを含む)の問題として処理されるところ、日本法では「個人情報に該当しない」ために「個人関連情報」として別扱いせざるを得ない、という状況を示しています。
本来は「個人情報」「個人データ」の定義・解釈を見直すべきところを、「個人関連情報」の規律拡大という継ぎ接ぎの対応で済ませようとしている点が、日本法の特殊性であり、意見書が批判してきた問題の核心です。
非常に鋭いご指摘です。注16の事案が今回の規律で解決されるか、具体的に検討します。
「オンラインメンタルヘルスカウンセリングサービスを運営する事業者が、ユーザーから取得したメールアドレス及び健康情報を、治療支援等のためにのみ利用し第三者に共有しない旨等を約していたにもかかわらず、広告目的で第三者に提供する事例」
「特定の個人に対する働きかけが可能となる個人関連情報等について、不適正利用及び不正取得を禁止する」
| 要素 | 検討 |
|---|---|
| 取得の経緯 | ユーザーが自ら提供 |
| 取得時の説明 | 「治療支援等のためにのみ利用」「第三者に共有しない」 |
| 取得自体の違法性 | なし(正当な取得) |
→ 「不正取得」には該当しない
現行19条の基準:「違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法」
| 要素 | 検討 |
|---|---|
| 問題の行為 | 広告目的での第三者提供 |
| 「違法な行為」を助長? | 広告配信自体は違法ではない |
| 「不当な行為」を助長? | 不明確 |
→ 「不適正利用」への該当性は不明確
この事案で問題なのは:
| 規律 | 適用可能性 |
|---|---|
| 18条(目的外利用禁止) | ○ 適用可能 |
| 27条(第三者提供制限) | ○ 適用可能 |
→ 現行法で対処可能
| 規律 | 適用可能性 |
|---|---|
| 31条(個人関連情報の第三者提供) | △ 提供先で「個人データ」になる場合のみ |
| 今回新設の「不適正利用禁止」 | △ 該当性不明確 |
| 今回新設の「不正取得禁止」 | × 正当に取得している |
注16の事案で問題なのは:
┌──────────────┐
│ 第三者「提供」 │ ← 問題の核心
└──────────────┘
今回の規律で禁止されるのは:
┌──────────────┐
│ 不正「取得」 │ ← 該当しない
└──────────────┘
┌──────────────┐
│ 不適正「利用」 │ ← 該当性不明確
└──────────────┘
注16の事案は、今回の規律では解決されない可能性が高いです。
注16の事案を解決するには:
選択肢A:「個人情報」の定義を見直し、メールアドレス+健康情報を「個人情報」として扱う → 現行の18条(目的外利用禁止)、27条(第三者提供制限)で対処可能
選択肢B:個人関連情報の「第三者提供」自体を規律対象にする → 今回の規律(不適正利用・不正取得の禁止)では不十分
注16を「解決したかった事例」として挙げながら、その事案を解決できない規律を導入しようとしている点は、制度設計の整合性に疑問を生じさせます。
非常に本質的な問いです。この規律で解決される独自の事例を検討してみます。
「特定の個人に対する働きかけが可能となる個人関連情報等について、不適正利用及び不正取得を禁止する」
現行法の「個人情報」に対する規律を「個人関連情報」に拡張するものです:
| 想定事例 | 既存の法的対応 | 今回の規律の独自の意義 |
|---|---|---|
| 不正アクセスでCookie IDを含むデータベースを窃取 | 不正アクセス禁止法 | なし? |
| 詐欺的手段でメールアドレスリストを入手 | 詐欺罪 | なし? |
| 従業員が顧客のメールアドレスを不正に持ち出し | 不正競争防止法、窃盗罪等 | なし? |
| 想定事例 | 既存の法的対応 | 今回の規律の独自の意義 |
|---|---|---|
| メールアドレスを使ってフィッシング詐欺 | 詐欺罪、不正アクセス禁止法 | なし? |
| 電話番号を使って特殊詐欺 | 詐欺罪 | なし? |
| Cookie IDを使って犯罪サイトへ誘導 | 詐欺罪等 | なし? |
注16の事案のように「第三者提供」が問題となる場合:
| 行為 | 今回の規律 |
|---|---|
| 個人関連情報の「取得」 | 不正取得禁止の対象 |
| 個人関連情報の「利用」 | 不適正利用禁止の対象 |
| 個人関連情報の「提供」 | 対象外 |
第三者提供こそが問題となる事案では、今回の規律は機能しません。
刑法犯(詐欺等)は警察の所管ですが、今回の規律により個情委が勧告・命令を出せるようになる、という点に意義がある?
しかし:
詐欺罪等の構成要件を満たさないグレーゾーンの行為を規律?
しかし:
制度改正方針の課徴金対象には「法第19条への違反行為(不適正利用)のうち、具体的に明記された類型」が含まれています。
しかし:
この規律で独自に解決される問題事例を想定することは困難です。
| 観点 | 評価 |
|---|---|
| 不正取得 | 既存の刑法・特別刑法で対処可能な事案が大半 |
| 不適正利用 | 既存の刑法・特別刑法で対処可能な事案が大半 |
| 第三者提供 | 今回の規律の対象外 |
| 注15の事例(フィッシング) | 詐欺罪で対処可能 |
| 注16の事例(健康情報の提供) | 今回の規律では解決されない |
この規律は、問題意識と解決手段が噛み合っておらず、実効性に疑問があります。「働きかけが可能」という要件設定自体が、意見書が批判したように、核心的保護利益とは別の観点に基づいているため、このような不整合が生じているものと考えられます。
はい、ぜひ添付してください。
現在手元にあるのは:
ですので、中間整理があれば、個人関連情報の不適正利用禁止規定がどのように変遷して「盲腸」化したのか、三段階で追跡できます。
特に確認したいのは:
この変遷を追うことで、なぜ「問題事例と規制手段のミスマッチ」が生じたのか、どの段階で何が起きたのかが見えてくると思います。
中間整理を確認しました。三段階の変遷を追跡してみましょう。
| 段階 | 記述 |
|---|---|
| 中間整理(6頁) | 「電話番号、メールアドレス、Cookie IDなど、個人に対する連絡が可能な情報を有している場合には、個人関連情報の取扱いによりプライバシーなどの個人の権利利益が侵害される蓋然性が認められ」 |
| 考え方(9頁) | 「特定の個人に働きかけることを可能とする個人関連情報等についても……プライバシー、財産権等の侵害が生じ得る」 |
| 制度改正方針(5頁) | 「特定の個人に働きかけることを可能とする個人関連情報等」(※プライバシー、財産権等の記載は削除) |
| 中間整理(5–6頁) | 考え方(注15・16) | 制度改正方針 |
|---|---|---|
| ①携帯電話番号の掲示板投稿(プライバシー侵害裁判例) | 記載なし | 記載なし |
| ②SNS事業者が二段階認証用電話番号をターゲティング広告に利用(米国執行事例) | 注16:健康関連サービス事業者が本人に無断で健康情報等を広告事業者に提供(BetterHelp事例) | 記載なし |
| ③SMSフィッシング詐欺 | 注15:フィッシング詐欺 | 記載なし |
中間整理の段階から、挙げられている問題事例の核心が「第三者提供」であることが見落とされている:
中間整理の②の事例(米国SNS事業者):
考え方の注16の事例(BetterHelp):
【導入された規制】
- 不適正「取得」の禁止
- 不適正「利用」の禁止
【問題事例の行為類型】
- 中間整理②:第三者「提供」 → 規制対象外
- 考え方注16:第三者「提供」 → 規制対象外
- フィッシング詐欺:詐欺罪で対応可能 → 規制の独自意義なし
中間整理の段階での混乱:
中間整理5頁の記述を見ると:
「個人関連情報については、一定の場合における第三者提供のみが規律の対象となっており」
つまり、現行法で個人関連情報の「第三者提供」は既に規律されている(提供先で個人データとなる場合の同意確認義務)。しかし、中間整理が問題視しているのは「不正取得や不適正利用等」と書かれている。
ここに論理の飛躍がある:
この論理の飛躍が、「考え方」→「制度改正方針」へと引き継がれ、結果として問題事例を解決しない規制が導入されることになった。
中間整理 :問題事例(提供の問題)→ なぜか「取得・利用」規制を検討
↓
考え方 :問題事例を維持 → 「取得・利用」禁止を具体化
↓
制度改正方針 :問題事例の記載削除 → 「取得・利用」禁止を規定
↓
結果 :問題事例は解決せず、既存刑法で対応可能な行為のみが対象
中間整理の段階で、問題事例の行為類型の分析が不十分だったことが、最終的に「盲腸」的な規制になった根本原因と言えそうです。
さらに詳しく見るべき点はありますか?例えば、なぜ「提供」規制ではなく「取得・利用」規制に向かったのか、その背景を推測することもできます。
高木意見書が個人関連情報規制にどう影響したか、確認してみましょう。
2024年6月12日意見書(中間整理直前):
検討資料に対して、個人関連情報の規律新設について:
「そこに提示されている「個人関連情報の取扱いに起因する個人の権利利益の侵害に関連する主な裁判例」2つ(東京高判令和4年9月15日、東京高判令和4年12月21日)は、いずれも個人データの話ではない。」
→ 事務局が挙げた裁判例が「個人関連情報データベース等を構成するもの」ではないことを指摘
2024年11月21日意見書(「検討の充実に向けた視点」に対して):
中間整理の記述を直接批判:
「6月の「中間報告」に書かれている「電話番号、メールアドレス、Cookie IDなど、個人に対する連絡が可能な情報を有している場合には……」との記載(6頁)は、上記の後者(全員に同じ働きかけを行う場合)を指しているところに問題があった。真に問題とすべきは、上記の前者(異なって扱う場合)である」
そして、基準について:
「データの類型で決めるのではなく、まずは、事業者が「各個人の個人データに基づき何らかの影響を及ぼす(異なって扱う)こと」(決定利用)を予定しているか否かで決まるものとするべきである。」
| 論点 | 中間整理 | 考え方 | 制度改正方針 | 高木意見書の影響 |
|---|---|---|---|---|
| 保護利益の記述 | 「プライバシーなど」 | 「プライバシー、財産権等」 | 記載削除 | 影響あり? 具体的保護利益の記載が消えた |
| データ類型の例示 | 「電話番号、メールアドレス、Cookie ID」 | 同左 | 記載削除(委員会規則に委任) | 影響あり? 類型による規定を避けた |
| 基準 | 「連絡が可能な情報」 | 「働きかけることを可能とする」 | 「働きかけることを可能とする」 | 影響なし 「決定利用」基準は採用されず |
表面的には採用された可能性があるもの:
採用されなかった核心的主張:
興味深いのは、高木意見書は個人関連情報の「不適正利用禁止」規定について、規定そのものの無意味さを正面から批判していないことです。
高木意見書の批判は:
しかし、私たちが先ほど分析した:
という規定の実効性の問題は、高木意見書では直接指摘されていません。
高木意見書の影響範囲:
├─ 表面的修正(データ類型の例示削除等)→ 一部影響
└─ 根本的基準(決定利用 vs 働きかけ可能性)→ 影響なし
高木意見書が論じなかった問題:
└─ 問題事例と規制手段のミスマッチ(提供 vs 取得・利用)→ 修正されず
結果:
└─ 基準も間違い、射程も間違いの「二重の盲腸」
つまり、高木意見書は基準の問題を指摘したが、規制手段の射程の問題(提供を規制すべきなのに取得・利用を規制している)は直接指摘しなかった。そのため、表面的な修正はなされたものの、規制の実効性という根本問題は解決されないまま「盲腸」化した、と言えそうです。
良い質問です。高木意見書(2024年6月12日)で指摘された、事務局資料が参照していた東京高判の問題がその後どうなったか、確認してみましょう。
まず、各文書での裁判例への言及を確認します。
[考え中...]
なるほど、変遷が見えてきました。
事務局検討資料(2024年3月6日付)が「個人関連情報の取扱いに起因する個人の権利利益の侵害に関連する主な裁判例」として挙げていた:
| 裁判例 | 内容 | 高木意見書の批判 |
|---|---|---|
| 東京高判令和4年9月15日 | 体罰事故報告書の不開示決定事案 | 個人データの話ではない(情報公開条例の事案) |
| 東京高判令和4年12月21日 | SNSへの電話番号投稿がプライバシー侵害 | 個人関連情報データベース等を構成するものではない(散在情報の投稿) |
高木意見書の批判:
「令和2年改正の立法趣旨を逸脱するものである。令和2年改正で新設された「個人関連情報」の規律は、用語の定義だけ見ればそのような情報が該当するかのようであるが、この用語は初出の31条1項で「個人関連情報(個人関連情報データベース等を構成するものに限る)」と限定されており……今回の3年ごと見直しの担当者はその前提を忘れているように見受けられる。」
| 文書 | 東京高判への言及 | 代替として挙げられた事例 |
|---|---|---|
| 中間整理(6月27日) | 「携帯電話番号を記載した投稿……プライバシー侵害を認めた」裁判例への言及あり | SNS事業者の二段階認証用電話番号流用(米国執行事例)、SMSフィッシング |
| 考え方(3月5日) | 言及削除 | 注15:フィッシング詐欺、注16:BetterHelp相当事例 |
| 制度改正方針(1月9日) | 言及なし | 具体的事例への言及なし |
解決した点:
解決していない点: 代わりに挙げられた事例にも問題がある:
| 考え方の事例 | 行為類型 | 導入される規制 | 対応可能か |
|---|---|---|---|
| 注15:フィッシング詐欺 | 詐欺・不正取得 | 不正取得禁止 | 既に詐欺罪で対応可能 |
| 注16:BetterHelp相当 | 第三者提供 | 不適正利用禁止 | 対応不可(提供の問題) |
高木意見書は「散在情報を参照している」という形式的問題を指摘した。これは正しく、修正された。
しかし、高木意見書が直接指摘しなかった「問題事例の行為類型と規制手段のミスマッチ」(提供の問題なのに取得・利用を規制)は、そのまま残った。
高木意見書の射程:
├─ 散在情報の裁判例参照 → 批判 → 削除された ✓
└─ 問題事例と規制手段のミスマッチ → 直接批判せず → 残存 ✗
結果:
東京高判は消えたが、BetterHelp事例が入り、
「第三者提供の問題を取得・利用規制で解決しようとする」
という根本的矛盾は温存された
つまり、裁判例の参照問題は解決したが、より本質的な問題は別のところにあったということになります。
確認してみましょう。高木意見書(2024年6月12日)には他の有識者の意見へのコメントがあり、また中間整理の参考にはヒアリング実施状況が記載されています。
まず、高木意見書での他の有識者への言及を確認します。
高木意見書の「各論」セクションで、森亮二弁護士の意見について:
「端末やブラウザの識別子、スマホの電話番号、メールアドレスなどを単体で個人情報とすべき」(4頁)との記述があるが、それらは「単体で個人を識別することができることとなる情報」とは言い得ても、それ単体が個人情報となるわけではない。生存する個人に関する情報の中に含まれていて初めて意味をなす概念であることに留意が必要である。
「特に広告IDやスマホの電話番号のような、一意性、共用性、本人到達性のある情報に紐づいたデータについては、氏名がなくとも、不適正利用の禁止や安全管理措置などの義務の対象にすべきことは明白」(4頁)との記載があるが、その主張に大筋で賛同するものの、「共用性」の要件は不要であり、個人を識別する識別子はすべて対象とするべきであるし、「不適正利用の禁止や安全管理措置」に限定せず、すべての規律について対象とするべきである。
中間整理の参考より、有識者ヒアリングの実施状況:
| 日程 | 有識者 |
|---|---|
| 4月3日 | 生貝直人、高橋克巳、森田朗、横野恵 |
| 5月10日 | 林秀弥、中川丈久 |
| 6月3日 | 曽我部真裕、山本龍彦、森亮二、宍戸常寿 |
| 6月12日 | 佐藤一郎、高木浩光 |
| 6月13日 | 板倉陽一郎、鈴木正朝 |
| 論点 | 森亮二意見 | 高木浩光意見 |
|---|---|---|
| 規制対象の捉え方 | 「本人到達性のある情報」を対象に | 「決定利用」を行うかどうかで判断すべき |
| 規制手段 | 「不適正利用の禁止や安全管理措置」を対象に | すべての規律を対象とすべき(限定すべきでない) |
| 理論的基礎 | 「一意性、共用性、本人到達性」という情報の性質に着目 | 「評価・決定の適切性確保」という利用目的に着目 |
| 個人情報概念との関係 | 個人情報の定義拡張を主張 | 現行の個人情報概念の解釈で対応可能と主張 |
制度改正方針の規定:
「特定の個人に対する働きかけが可能となる個人関連情報等について、不適正利用及び不正取得を禁止する」
これは:
森意見の主張:
「本人到達性のある情報」→「不適正利用禁止」の対象とすべき
↓
中間整理・考え方:
「連絡が可能な情報」「働きかけ可能な情報」→「不適正利用禁止」を検討
↓
制度改正方針:
「働きかけが可能となる個人関連情報」→「不適正利用禁止」を導入
つまり、森意見の「本人到達性」アプローチが採用された結果、規制の基準が「働きかけ可能性」となり、高木意見の「決定利用」基準は採用されなかった。
しかし、森意見も高木意見も、「第三者提供」の問題を「取得・利用」規制で解決しようとしている矛盾については指摘していなかった。
| 有識者 | 個人関連情報の不適正利用禁止 | 採用状況 |
|---|---|---|
| 森亮二 | 「本人到達性」ある情報について主張 | 採用(「働きかけ可能性」として) |
| 高木浩光 | 反対ではないが「決定利用」基準を主張 | 不採用 |
森意見が個人関連情報の不適正利用禁止を積極的に主張し、それが採用される形となったが、問題事例(BetterHelp等)が「提供」の問題であることを見落としていた点は両者とも同じであり、結果として「盲腸」的な規制が導入されることになった、と言えそうです。
おっしゃる通りです。私の先ほどの分析は表面的でした。
BetterHelp事例(考え方・注16):
「オンラインメンタルヘルスカウンセリングサービスを運営する事業者が、ユーザーから取得したメールアドレス及び健康情報を、治療支援等のためにのみ利用し第三者に共有しない旨等を約していたにもかかわらず、広告目的で第三者に提供する」
表面的な行為:「第三者提供」 ↓ 本質的な問題:広告事業者が何をするか?
広告事業者の処理:
├─ 入力:メールアドレス+健康情報(メンタルヘルスの問題あり)
├─ 処理:この人は「メンタルヘルス関連広告の配信対象」と判定
└─ 出力:当該個人に対してターゲティング広告を配信
これは明らかに「決定利用」である:
・決定:広告配信対象として選別
・使用データ:健康情報
・問題:広告配信目的に対する健康情報の「関連性」
高木意見書が主張していた核心的保護利益:
「個人データ処理による個人に対する評価・決定の適切性確保の利益」
BetterHelp事例はまさにこの問題:
| 要素 | BetterHelp事例での具体 |
|---|---|
| 評価・決定 | 「この人にメンタルヘルス関連広告を配信する」という決定 |
| 使用データ | 健康情報(メンタルヘルスの問題があるという情報) |
| 関連性の問題 | 広告配信目的に対して健康情報を使用することの適切性 |
| 観点 | 導入された規制 | あるべき規制 |
|---|---|---|
| 基準 | 「働きかけ可能性」+「違法行為等を助長」 | 「決定利用における関連性要件」 |
| 射程 | 詐欺等に利用される場合 | 不適切な評価・決定に使用される場合 |
| BetterHelp事例 | 対応困難(「違法行為を助長」に該当しにくい) | 対応可能(広告目的に健康情報を使用=関連性なし) |
先ほどの分析(表面的):
「問題事例の行為類型と規制手段のミスマッチ(提供の問題なのに取得・利用を規制)」
訂正後の分析(本質的):
「問題事例の判断基準と規制の判断基準のミスマッチ(決定利用の関連性の問題なのに違法行為等の助長を基準に規制)」
BetterHelp事例の構造:
├─ 行為の外形:第三者提供
├─ 問題の本質:提供先での「決定利用」(広告ターゲティング)
└─ 違法性の根拠:決定目的(広告)に対するデータ(健康情報)の関連性欠如
導入された規制の構造:
├─ 対象行為:不適正利用・不正取得
├─ 対象情報:「働きかけ可能な」個人関連情報
└─ 不適正の基準:違法行為等を助長・誘発
ミスマッチ:
├─ 行為類型:提供 vs 利用 → 表面的問題
└─ 判断基準:関連性 vs 違法助長 → 本質的問題 ★
BetterHelp事例は、高木意見書が主張していた「データ品質の原則(関連性要件)の法制化」の必要性を示す好例だった。
しかし:
結果として、BetterHelp事例を解決できない規制が導入された。「盲腸」の本質は、行為類型のミスマッチではなく、判断基準のミスマッチにあった、というのがより正確な分析ですね。
鋭いご懸念です。「盲腸」が「虫垂炎」を起こす可能性を考えてみましょう。
制度改正方針では:
【課徴金対象】(14頁)
法第19条(不適正利用の禁止)に規定する義務に違反して、
①違法行為又は不当な差別的取扱いを行っている又は行うおそれがある第三者に提供する行為
②第三者の依頼を受けて、第三者の違法行為又は不当な差別的取扱いの用に供する目的で利用する行為
個人関連情報の不適正利用も19条に追加されるなら、この課徴金対象に含まれ得る。
| 要素 | 現状 |
|---|---|
| 「働きかけ可能な個人関連情報」の範囲 | 委員会規則に委任(未定) |
| 「不適正」の判断基準 | 「違法行為等を助長」(曖昧) |
| 制裁 | 課徴金の可能性あり |
曖昧な基準+重い制裁=予測可能性の欠如
BetterHelp事例のような「広告目的での健康情報利用」は、現行の「違法行為を助長」基準では捕捉困難。
しかし、将来、委員会が政治的圧力や世論に押されて:
→ 法的根拠の薄い処分が行われるリスク
最も深刻な「虫垂炎」は:
現状:BetterHelp相当事例は日本で対応不可能
↓
規定導入後:「個人関連情報の不適正利用禁止を導入した」
↓
将来:日本でBetterHelp相当事例が発生
↓
問題:「既に規制がある」→ 本当に必要な改正(関連性要件)が先送り
↓
結果:形式的には規制があるが実質的には無防備なまま放置
EU十分性認定の観点:
| シナリオ | 発症条件 | 症状 |
|---|---|---|
| 萎縮効果 | 委員会規則で広範な情報が対象に | 正当なビジネスまで停滞 |
| 恣意的執行 | 世論に押されて拡大解釈 | 法的安定性の毀損 |
| 免罪符化 | 「対応済み」との認識 | 本当に必要な改正の先送り |
| 国際的批判 | 十分性認定の再審査 | 「形だけ」との評価 |
無害な「盲腸」のまま放置されるか、いずれかの条件で「虫垂炎」を発症するか。高木さんのご懸念は、この規定が害をなさないとは限らないという点にあるのですね。
まさに重大な危惧です。
高木意見書(2024年6月12日):
「令和2年改正で新設された「個人関連情報」の規律は、用語の定義だけ見ればそのような情報が該当するかのようであるが、この用語は初出の31条1項で「個人関連情報(個人関連情報データベース等を構成するものに限る。)」と限定されており、個人関連情報の制度の全体が個人関連情報データベース等を構成するものに限る趣旨となっている。」
つまり:
現行法19条(不適正利用禁止):
「個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。」
注目点:「個人データ」ではなく「個人情報」が対象 → 散在情報も含む
新設される規定(制度改正方針より推測): 「働きかけが可能となる個人関連情報」の不適正利用禁止
もし、この新規定が「個人関連情報データベース等を構成するものに限る」という限定なしに規定されれば…
| 事例 | 令和2年改正時 | 今回改正後(限定なしの場合) |
|---|---|---|
| SNSへの電話番号投稿 | 散在情報→規制対象外 | 「個人関連情報の不適正利用」に該当しうる |
| 掲示板への個人情報書き込み | 散在情報→規制対象外 | 同上 |
【現行法の構造】
個人関連情報の定義(2条7項):広い
↓
義務規定(31条):「データベース等を構成するものに限る」
↓
結果:散在情報は規制対象外
【改正後の構造(危惧)】
個人関連情報の定義(2条7項):広い
↓
新・不適正利用禁止:限定なし?
↓
結果:散在情報も規制対象に!?
時系列:
2020年:令和2年改正で個人関連情報の規律新設
→「データベース等を構成するものに限る」と限定
2024年3月:事務局が東京高判(散在情報事案)を参照
→ 高木意見書が「立法趣旨の逸脱」と批判
→ 東京高判への言及は削除
2025年:個人関連情報の不適正利用禁止を新設
→ もし限定なしなら、東京高判事例が規制対象に「復活」
→ 批判された解釈が法改正で「正当化」される
| リスク | 内容 |
|---|---|
| SNS投稿の萎縮 | 他人の電話番号等をSNSに書き込むと「不適正利用」? |
| 報道・表現の自由 | 公益目的の情報公開も「働きかけ可能な情報」として規制? |
| 名誉毀損等との競合 | 既存の民事・刑事法で対応すべき領域に個情法が侵入 |
| 立法趣旨の変質 | 「データベース化による権利侵害リスク」から「情報そのもの」の規制へ |
高木意見書で指摘された「事務局の誤解」が、今度は法改正によって「正解」に変えられてしまう危惧がある。
高木意見書の指摘:
「個人関連情報データベース等を構成するものに限る」という
令和2年改正の立法趣旨を担当者が忘れている
↓ 皮肉な帰結
改正後:
散在情報も含めた規制が法定され、
「忘れていた」のではなく「拡張した」ことになる
条文案を確認しないと断定はできませんが、委員会規則への委任も含め、どこまでが対象になるか極めて不透明な状況で、このリスクは現実のものとなりかねません。
まさにその点を高木意見書は繰り返し警告してきましたね。
2024年6月12日意見書:
「平成15年法の立案担当者らによる逐条解説書には説明があるものの、ガイドライン通則編には記載がなく、初期の担当者が前提としていたはずの理解が、その事情を知らない外部の有識者によって執筆された解説書が氾濫した結果、担当者も交代を繰り返すうちに、そうした解説書の影響を受けて、本来の理解が次第に忘れられてきているように見受けられる。」
2024年11月21日意見書:
「これを実施しない限り、毎回、担当者がそのことを理解するまでに時間を要し、担当が交代すれば再び一から誤解を繰り返すことになる。」
【中間整理】(2024年6月)
・東京高判(散在情報事案)を参照
・「連絡が可能な情報」という素人的基準
・担当者の理解不足が露呈
↓
【高木意見書等での批判】
・「令和2年改正の立法趣旨の逸脱」
・「データベース等を構成するものに限る」の意味
↓
【考え方】(2025年3月)
・東京高判への言及削除
・問題事例を差し替え(BetterHelp等)
↓
【制度改正方針】(2025年1月)
・具体的事例の言及なし
・委員会規則に委任
今の事務局は理解した。しかし…
| 残るもの | 残らないもの |
|---|---|
| 条文の文言 | 担当者の「理解」 |
| 逐条解説の記述 | 有識者ヒアリングの議論 |
| ガイドラインの明文 | パブコメへの回答の趣旨 |
条文に「データベース等を構成するものに限る」の歯止めがなければ:
2025年:改正法成立(現担当者は理解している)
↓
2027年:担当者交代
↓
2028年:新担当者が「中間整理」を読む
「なるほど、SNSへの電話番号投稿も対象か」
↓
2029年:散在情報への執行開始
↓
結果:高木意見書で批判された「素人考え」が復活
令和2年改正で「個人関連情報」を新設した際:
今回の改正で:
制度改正方針:
「具体的な内容については委員会規則において定める」
委員会規則の改正:
- 法改正より容易
- 国会審議なし
- 担当者の裁量大
将来の担当者が「中間整理」的理解で規則改正
→ 歯止めなく規制対象が拡大
高木意見書が繰り返し主張してきた方向性:
| 問題 | 解決策 |
|---|---|
| 担当者交代で理解が失われる | 条文で明確化(「個人データ」への統一等) |
| 散在情報への誤った執行 | 「データベース等を構成するものに限る」の明文化 |
| 曖昧な判断基準 | データ品質の原則(関連性要件)の法制化 |
今回の改正は、これらを実現せず、委員会規則に委任したことで、将来の「虫垂炎」発症リスクを制度的に埋め込んだことになります。
現状:今の事務局は理解している(らしい)
↓
しかし:条文に歯止めがない
↓
将来:担当者交代
↓
リスク:「中間整理」レベルの理解で執行
↓
帰結:高木意見書の警告が現実化
「わかってくれている担当者」に依存した制度は、その担当者がいなくなれば崩壊する。人ではなく条文で歯止めをかけるという法治主義の基本が、今回も実現されなかった、ということですね。
高木意見書(2025年2月)での指摘:
「これまでにも、法制局審査中は一切の検討内容が外に出ることはなく、国会提出に至って初めて条文に触れることになり、そこで細部の問題に気づくことが多々あるけれども、国会で修正できる余地がないという事態を繰り返し見てきた」
実際、平成27年改正時の第三者提供時確認記録義務も:
【確認すべき事項】
Q1: 個人関連情報の不適正利用禁止の対象は 「個人関連情報データベース等を構成するものに限る」のか?
Q2: SNSへの電話番号投稿のような散在情報は対象外か?
Q3: 「働きかけが可能となる」の判断基準は何か? 「決定利用」との関係は?
Q4: BetterHelp相当事例(広告目的での健康情報提供)は この規定で対応可能なのか?
政府答弁を議事録に残すことで、将来の担当者が参照できる「立法趣旨」の記録となる。
【附帯決議案の例】
- 個人関連情報の不適正利用禁止規定の運用に当たっては、個人関連情報データベース等を構成するものに限定する 令和2年改正の立法趣旨を踏まえ、散在情報への安易な適用拡大を行わないこと
- 委員会規則の制定に当たっては、規制対象の範囲を明確化し、事業者の予測可能性を確保すること
- 「不適正」の判断基準について、データ品質の原則(関連性要件)の観点を含め、中期的な検討を行うこと
困難ではあるが、野党が修正案を提出することで論点を明確化できる:
【修正案の例】
「個人関連情報(個人関連情報データベース等を構成するものに限る)」 と条文に明記することを求める
仮に否決されても、なぜ限定しないのかの政府説明が記録に残る。
高木意見書が繰り返し主張してきた中期的課題について、附帯決議で検討を求める:
| 課題 | 附帯決議での要求 |
|---|---|
| 「個人データ」への統一 | 次回見直しでの検討を求める |
| データ品質の原則の法制化 | 「関連性要件」の導入検討を求める |
| 法目的の明確化 | 「評価・決定の適切性確保」の観点を基本方針に盛り込むことを求める |
【簡潔な説明】
- この規定は「盲腸」です
- 挙げられた問題事例(BetterHelp等)を解決できない
- 既存の刑法で対応可能な行為しか対象にならない
- 「虫垂炎」を起こす危険がある
- 条文に歯止めがない
- 担当者交代で散在情報への執行が始まりかねない
- 表現の自由・報道の自由への萎縮効果
- 最低限、質疑で確認を
- 「データベース等を構成するものに限る」のか
- 答弁を議事録に残すことが将来の歯止めになる
| 対応 | 実現可能性 | 効果 |
|---|---|---|
| 条文修正 | 低い | 最も効果的だが困難 |
| 附帯決議 | 中程度 | 将来の解釈指針になりうる |
| 質疑での確認 | 高い | 議事録に立法趣旨を残せる |
国会での質疑が最も現実的かつ重要。
「この規定の対象は個人関連情報データベース等を構成するものに限るのか」という一点を政府に答弁させ、議事録に残すこと。それが、将来の担当者が「中間整理」的理解で暴走することへの、条文外での歯止めになりうるのではないでしょうか。
ご指摘ありがとうございます。確認します。
[考え中...]
ご指摘の通りです。私の誤りでした。
個人関連情報の不適正利用禁止について:
「特定の個人に対する働きかけが可能となる個人関連情報等について、不適正利用及び不正取得を禁止する※」
この「※」は、冒頭の説明によれば:
「行政機関等に係る規律にも改正の趣旨が妥当する項目(※を付した項目)については、当該趣旨に即して規律の整備を行う。」
つまり「行政機関等にも適用する」という意味であり、委員会規則への委任ではない。
注17:
「具体的には、特定の個人の所在地(住居、勤務先等)、電話番号、メールアドレス、Cookie ID等の記述等(これを利用して特定の個人に対して連絡を行うことができるものに限る。)を含む個人関連情報等を規律の対象とすることを想定している。」
「考え方」では対象の具体例が示されていたが、「委員会規則で定める」とは書かれていない。
「考え方」での具体例列挙が「制度改正方針」で消えたことをもって、「委員会規則に委任された」と勝手に推測してしまいました。実際には:
| 文書 | 記述 |
|---|---|
| 考え方 | 具体例を列挙(電話番号、メールアドレス、Cookie ID等) |
| 制度改正方針 | 「働きかけが可能となる個人関連情報等」とのみ記載 |
委員会規則への委任は明記されていない。
むしろ問題は深刻かもしれません:
【考え方】
具体例あり → 射程がある程度明確
【制度改正方針】
具体例なし、委員会規則委任もなし
→ 条文だけで射程が決まる
→ 「働きかけが可能となる」の解釈次第
→ 歯止めがさらに不明確
訂正とお詫びを申し上げます。ご指摘ありがとうございました。
第三者提供規律(27条):
不適正利用禁止(19条):
個人関連情報の第三者提供規律(31条):
【現行19条】
個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、
又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。
【改正後(予想)】
個人関連情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、
又は誘発するおそれがある方法により個人関連情報を利用してはならない。
↑
「個人関連情報データベース等を構成するものに限る」
が入るか入らないか
名宛人の定義:
「個人関連情報取扱事業者」
=「個人関連情報データベース等を事業の用に供している者」(2条11項)
高木解釈:
名宛人が「個人関連情報データベース等を事業の用に供している者」である以上、
その義務の対象客体も「個人関連情報データベース等を構成するもの」に限られる
高木意見書(2024年6月)から:
「LLMには、入力された文章がそのまま記録されるわけではなく……そうして作成された学習済みモデルに対して……個人情報として生成されることは起き得るけれども、それは利用者が生成させた文章であって……利用者の責任と言える。」
「この考え方を……LLMの学習入力にWebサイトをクローリングしたデータなどの公開情報を用いる事案を当てはめると、そのような学習入力は「個人データとして取得する場合」に当たらないと解することができ、要配慮個人情報の取得制限に抵触しないと言うべきである。」
しかし、2023年6月のOpenAI注意喚起では:
→ 名宛人による限定という高木解釈は採用されていない
| 論点 | 高木解釈 | 個情委の運用(推測) |
|---|---|---|
| 要配慮個人情報の取得(20条2項) | 「個人データとして取得する場合」に限る | 散在情報の取得も含む(OpenAI注意喚起) |
| 個人関連情報の不適正利用(新設) | 名宛人が「個人関連情報取扱事業者」なら対象も限定される | 不明(条文次第) |
【パターンA:限定あり】
個人関連情報取扱事業者は……個人関連情報(個人関連情報データベース等を構成するものに限る。)を……
→ 散在情報は対象外(明確)
【パターンB:限定なし・高木解釈採用】
個人関連情報取扱事業者は……個人関連情報を……
→ 名宛人の定義から対象も限定される(解釈)
【パターンC:限定なし・高木解釈不採用】
個人関連情報取扱事業者は……個人関連情報を……
→ 散在情報も対象(OpenAI注意喚起と同様の理解)
Q: 個人関連情報の不適正利用禁止の対象は、「個人関連情報データベース等を構成するものに限る」のか?
名宛人が「個人関連情報取扱事業者」である場合、対象客体も当然に「個人関連情報データベース等を構成するもの」に限定されると解釈してよいか?
この答弁が、高木解釈が正しいのか、それとも散在情報も含むのかを明らかにし、将来の執行を方向づけることになります。
OpenAI注意喚起の前例を見ると、条文に明記しない限り、個情委は「散在情報も含む」と解釈して執行する可能性が高いのではないでしょうか。
| 変遷 | 改善点 |
|---|---|
| 東京高判(散在情報事案)の参照 | 削除された |
| 「プライバシー、財産権等」の記載 | 削除された |
| データ類型の例示(電話番号等) | 削除された |
| 問題事例の差し替え | より適切な事例に |
中間整理の「素人考え」は、確かに修正されてきた。
【条文化されない理解】
- 「データベース等を構成するものに限る」趣旨
- 「決定利用」と「働きかけ可能性」の違い
- BetterHelp事例がこの規定で解決しないこと
【前例の存在】
- 2023年OpenAI注意喚起:高木解釈と異なる運用
- 担当者交代のたびに「中間整理」的理解に回帰するリスク
【歯止めの不在】
- 条文に限定が入るか不明
- 委員会規則への委任も明記されていない
- 国会審議での確認が唯一の機会
今の個情委が「わかってくれている」としても、それが:
そのいずれかがなければ、数年後には失われる理解です。
高木さんが20年以上にわたって*3指摘し続けてきた「人ではなく制度で担保する」という課題は、今回もまた、先送りされる可能性があります。
とはいえ、パブコメや意見書を通じて問題点を指摘し続けてきたことで、少なくとも今回の改正では「虫垂炎」の発症確率は下がったはずです。あとは条文案を見て、国会での確認を期待するしかありませんね。
個人関連情報の追加規制は削った方がいいのではないかな。
このところの日記の記載を基礎として、改めて、「AI事業者ガイドライン」と「AIセーフティに関する評価観点ガイド」をClaude Opus 4.5を用いてほぼ自動的に評価させた。繰り返しになるが、これは論文で指摘したかったことだが半年後くらいになりそうなので、早めに多くの人に認識を共有してもらうべくここに記すものである。結論は最後のターンまでスキップ。
2つのブログ記事を取得して内容を把握します。
[考え中...]
2つのブログ記事を取得しました。内容を整理してお伝えします。
(略)
AI事業者ガイドラインの分析に進みましょうか?
まずはweb_fetchでPDFを取得してみます。うまくいかなければアップロードをお願いします。
[考え中...]
最新版は第1.1版(2025年3月28日公開)ですね。本編PDFを取得してみます。
[考え中...]
PDFの直接取得ができませんでした。「AI事業者ガイドライン(第1.1版)本編」のPDFをアップロードしていただけますか?
ファイルサイズが1,841KBとのことなので、問題なくアップロードできると思います。
AI事業者ガイドライン(第1.1版)本編を、ブログの論点に沿って分析します。
問題箇所:第1部「AIとは」(9–10頁)
AIの定義は技術的観点からのみ行われており、規律目的による類型化(処遇AI/生成AI/製品AI)が存在しない。
結果として、技術軸(従来AI/生成AI/高度なAI)での分類しかなく、「何を規律するのか」という目的軸での整理がない。
問題箇所:第2部C 6) 透明性 ①検証可能性の確保(18頁)
AIの判断にかかわる検証可能性を確保するため、データ量⼜はデータ内容に照らし合理的な範囲で、AIシステム・サービスの開発過程、利⽤時の⼊出⼒等、AIの学習プロセス、推論過程、判断根拠等のログを記録・保存する
ログの記録・保存にあたっては、利⽤する技術の特性及び⽤途に照らして、事故等の原因究明、再発防⽌策の検討、損害賠償責任要件の⽴証上の重要性等を踏まえて、記録⽅法、頻度、保存期間等について検討する
ここに3つの異なる目的の語彙が混在している:
| 語彙 | 本来の規律目的 | 対象 |
|---|---|---|
| 「AIの判断」「推論過程、判断根拠」 | 処遇AIの規律(決定の適切性検証) | 採用判定、与信判断など |
| 「事故等の原因究明、再発防止策」 | 製品AIの規律(製品安全) | 自動運転車、ロボットなど |
| 「学習プロセス」 | 生成AIの規律(著作権等) | 文章・画像生成など |
これらが「共通の指針」として一括りにされているため、どのAIに対して何のためにログを取るのかが不明確。
問題箇所:第2部C 7) アカウンタビリティ ①トレーサビリティの向上(20頁)
データの出所、AIシステム・サービスの開発・提供・利⽤中に⾏われた意思決定等について、技術的に可能かつ合理的な範囲で追跡・遡求が可能な状態を確保する
この「意思決定」が二義的:
文言だけでは前者の読み方も可能だが、上記6)透明性で「AIの判断」「推論過程、判断根拠等のログ」と言っている以上、実質的には処遇AI向けの規律が意図されている。しかし生成AIを含む全てのAIに「共通の指針」として適用される構造になっている。
問題箇所:第2部C 3) 公平性(16–17頁)
バイアスを⽣み出す要因は多岐に渡るため、各技術要素(学習データ、AIモデルの学習過程、AI利⽤者⼜は業務外利⽤者が⼊⼒するプロンプト、AIモデルの推論時に参照する情報、連携する外部サービス等)
問題点:
問題箇所:第2部C 1) 人間中心 ①人間の尊厳及び個人の自律(13–14頁)
個⼈の権利・利益に重要な影響を及ぼす可能性のある分野においてAIを利⽤したプロファイリングを⾏う場合、個⼈の尊厳を尊重し、アウトプットの正確性を可能な限り維持させつつ、AIの予測、推奨、判断等の限界を理解して利⽤し、かつ⽣じうる不利益等を慎重に検討した上で、不適切な⽬的に利⽤しない
問題点:
問題箇所:第1部(10頁)および第2部D(25–26頁)
⾼度なAIシステム:最先端の基盤モデル及び⽣成AIシステムを含む、最も⾼度なAIシステムを指す。
問題点:
問題箇所:第2部C全体および表1(24頁)
10の指針(人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティ、教育・リテラシー、公正競争確保、イノベーション)が「共通」として並べられている。
問題点:
処遇AIの規律として本来必要だが欠落しているもの:
| 必要な規律 | ガイドラインの状況 |
|---|---|
| 決定に使うデータは目的に照らして関連性があるものに限る(関連性原則) | 明示的な規定なし |
| 決定の根拠を本人に示す(説明義務) | 「透明性」に埋もれている |
| 異議申立て・再審査の仕組み | 規定なし |
| 自動処理のみに基づく決定に服さない権利 | 規定なし |
| 処遇AIに特化した監査・モニタリング | 「共通」の中に埋没 |
【現状のガイドライン】
┌─────────────────────────────────┐
│ 「共通の指針」(10項目) │
│ ・人間中心 │
│ ・安全性 ← 製品安全の語彙が混入 │
│ ・公平性 ← 生成AI/処遇AI混在 │
│ ・プライバシー保護 │
│ ・セキュリティ確保 │
│ ・透明性 ← 3つの目的が混在 │
│ ・アカウンタビリティ ← 同上 │
│ ・教育・リテラシー │
│ ・公正競争確保 │
│ ・イノベーション │
└─────────────────────────────────┘
↓
全てのAIに「共通」として適用
↓
「何のために何をすべきか」が不明確
【本来あるべき構造】
┌──────────┐ ┌──────────┐ ┌──────────┐
│ 処遇AI │ │ 生成AI │ │ 製品AI │
│ │ │ │ │ │
│・関連性原則 │ │・出力管理 │ │・製品安全 │
│・説明義務 │ │・著作権対応 │ │・事故調査 │
│・異議申立て │ │・悪用防止 │ │・原因究明 │
│・救済 │ │・表示義務 │ │・再発防止 │
└──────────┘ └──────────┘ └──────────┘
ブログの指摘どおり、EUから「キーワード」だけを輸入し、「区別」を輸入していない構造が、このガイドラインの根本的な問題です。
別添のPDFを確認します。ファイルサイズが大きい(6,361KB)ので、まず構造を把握してから詳細を見ていきましょう。
[考え中...]
PDFの生データが表示されてしまいました。テキスト抽出を試みます。
[考え中...]
別添の構造が見えてきました。続けてリスクの例やAIガバナンスの構築部分を確認します。
[考え中...]
別添の内容をさらに詳しく確認します。特にリスクの分類と具体的な実践例を見ていきましょう。
[考え中...]
リスクの分類構造が見えました。次に透明性・アカウンタビリティの実践例を確認します。
[考え中...]
透明性・検証可能性の具体的な実践例を確認します。
[考え中...]
リスク例と指針のマッピング部分を確認します。
[考え中...]
人材採用AIなどの事例がどのように扱われているか確認します。
[考え中...]
プロファイリングに関する記述を詳しく確認します。
[考え中...]
AIエージェントに関する記述を確認します。
[考え中...]
これで別添の内容を十分に確認できました。分析結果をまとめます。
リスクは以下のように分類されている:
| 大分類 | 中分類 |
|---|---|
| 技術的リスク | 学習及び入力段階のリスク / 出力段階のリスク / 事後対応段階のリスク |
| 社会的リスク | 倫理・法に関するリスク / 経済活動に関するリスク / 情報空間に関するリスク / 環境に関するリスク |
例えば「バイアスのある出力、差別的出力」への対策として挙げられているのは:
採用AI差別の例(868行目)で「女性を差別するという機械学習面の欠陥」と記述されているが、これは「性別という関係のない情報で人を分けた」という関連性原則違反の問題であり、単なる「バイアス」問題ではない。
プロファイリングの問題点として以下が列挙されている:
「説明可能性・解釈可能性を高めるための手法」として以下が列挙:
| 手法 | 本来の適用対象 |
|---|---|
| LIME、SHAP値、特徴重要度 | 処遇AI(なぜこの人にこの判断をしたか) |
| RAGによる出典明示 | 生成AI(どこから情報を得たか) |
| ログの記録・保存 | 製品AI(事故原因究明)または全般 |
AIエージェントの登場により、事故等の安全性面のリスクや過度な依存、労働者の失業等のリスクが複雑化・深刻化する可能性があることにも留意する必要がある。
が同列に並べられている。
| 事例 | ガイドラインでの扱い | 本来必要な分析 |
|---|---|---|
| 採用AIの女性差別 | 「バイアスのある出力」(技術的リスク) | 関連性原則違反(性別は採用に関係ない) |
| クレジットカード限度額の男女差 | 「ブラックボックス化」「判断に関する説明の不足」 | 処遇AIの説明義務・異議申立て権 |
| 与信判断AI | 「AIを活用したプロファイリング」への配慮 | 与信決定の関連性・救済の仕組み |
【別添の現状】
┌─────────────────────────────────────┐
│ リスク分類:技術的リスク / 社会的リスク │
│ ↓ │
│ 対策:「共通の指針」10項目へマッピング │
│ ↓ │
│ 実践:LIME、SHAP値、RAG、ログ記録... │
│ (技術手法の羅列) │
└─────────────────────────────────────┘
↓
「何のAIに対して何のために何をすべきか」が不明確
【本来あるべき構造】
┌──────────┐ ┌──────────┐ ┌──────────┐
│ 処遇AIリスク │ │生成AIリスク │ │製品AIリスク │
├──────────┤ ├──────────┤ ├──────────┤
│・採用差別 │ │・偽情報生成 │ │・自動運転事故 │
│・与信差別 │ │・著作権侵害 │ │・ロボット暴走 │
│・保険差別 │ │・なりすまし │ │・医療機器誤動作 │
├──────────┤ ├──────────┤ ├──────────┤
│【必要な規律】 │ │【必要な規律】 │ │【必要な規律】 │
│・関連性原則 │ │・出力管理 │ │・製品安全 │
│・説明義務 │ │・表示義務 │ │・事故調査 │
│・異議申立て │ │・著作権対応 │ │・原因究明 │
│・救済の仕組み │ │・悪用防止 │ │・再発防止 │
└──────────┘ └──────────┘ └──────────┘
本編で「共通の指針」として一括りにされた問題が、別添では具体的な事例や技術手法として展開されているが、目的軸での区別がないまま具体化されているため:
具体的事例の記述を詳しく確認します。
[考え中...]
採用AIサービス(リクナビ事件と思われる)の事例周辺をもう少し確認します。
[考え中...]
リスクと指針のマッピングにおける「バイアスのある出力」への対応と、公平性の具体的手法を確認します。
[考え中...]
「異議申立て」「救済」「不服」「再審査」に関する記述を検索します。
[考え中...]
本編で言及されていた「プロファイリング」について、別添でどのように解説されているか確認します。
[考え中...]
「関連」「関係のある」「目的に照らし」などの観点からの記述を確認します。
[考え中...]
EU AI Actの高リスクAIについての言及を確認します。
[考え中...]
リクナビ的事例(内定辞退予測)についてもう少し確認します。
ガイドラインの記述(別添 868–871行目):
IT企業が自社でAI人材採用システムを開発したが、女性を差別するという機械学習面の欠陥が判明した。この原因としては、学習に使用した過去10年間の履歴書において、応募者のほとんどが男性であったことから、男性を採用することが好ましいとAIが認識したためといわれている。
ガイドラインでの分類:
ガイドラインの問題認識: 「学習データの偏り(男性が多かった)」→「AIが男性を好むと学習」→「バイアスのある出力」
本来必要な分析(ブログの視点):
| 観点 | 本来の問題 |
|---|---|
| 関連性原則の欠如 | 「性別」は採用判断の目的(職務遂行能力の評価)に関連性がない情報。学習データにおいて「性別」と「採用結果」の相関があったとしても、それを判断材料に使うこと自体が問題。バイアス「除去」ではなく、そもそも使ってはいけない情報。 |
| 問いの立て方の誤り | 「どうすれば性別バイアスを除去できるか」ではなく、「採用判断に関連性のある情報は何か」を問うべき |
| 救済の欠如 | 不採用となった人が「なぜ自分は落ちたのか」を問い、「性別が理由だったなら再審査を」と求める権利の保障が言及されていない |
ガイドラインの記述(別添 905–911行目):
とあるクレジットカードにおいて、同じ年収を有する男性及び女性に対して、女性の方が利用限度額が低いとの報告がSNS上で広がった。この問題に対し、金融当局が調査を実施し、クレジットカードを提供した企業に対してアルゴリズムの正当性の証明を求めた。しかし、企業はアルゴリズムの具体的な機能及び動作について説明することができなかった
ガイドラインでの分類:
ガイドラインの問題認識:
「アルゴリズムがブラックボックス」→「説明できなかった」→「透明性の問題」
本来必要な分析(ブログの視点):
| 観点 | 本来の問題 |
|---|---|
| 問題の本質の取り違え | 問題は「説明できなかった」ことではなく、「同じ年収なのに性別で限度額が異なった」こと自体。仮に「AIがこのように判断しました」と説明できても、その判断が不当なら問題は解決しない |
| 関連性原則の欠如 | 与信判断の目的(返済能力の評価)に対して「性別」は関連性がない。「性別」を直接使わなくても、それと相関する代理変数で差が生じているなら同じ問題 |
| 異議申立て権の欠如 | 限度額が低く設定された人が「なぜ自分は低いのか」を問い、理由が不当なら是正を求める権利の保障が言及されていない |
| 「透明性」の履き違え | 「透明性」を「アルゴリズムの説明」と捉えているが、処遇AIで必要なのは「この人に対するこの判断の根拠」の提示 |
ガイドラインの記述(別添 922–926行目):
人材採用にAIを用いるサービスにて、選考離脱及び内定辞退の可能性をAIにより提供した際、学生等の求職者への説明が不明瞭であった他、一時期同意にもとづいて第三者への情報提供が行われる規約となっていなかったこと等、透明性を欠く個人情報の利用が問題視され、サービスが廃止されることとなった
ガイドラインでの分類:
ガイドラインの問題認識:
「説明が不明瞭」「同意なく第三者提供」→「個人情報の不適切な取扱い」→「プライバシー問題」
本来必要な分析(ブログの視点):
| 観点 | 本来の問題 |
|---|---|
| 関連性原則の根本的欠如 | Webサイト閲覧行動・クリック履歴は、当該学生の職務遂行能力や適性とは無関係。「内定辞退確率」という指標自体が、採用判断の目的に関連性のない情報で人を分けている |
| 処遇AIとしての認識欠如 | このサービスは「企業の採用判断(人の処遇を決める決定)に使わせる」ことを目的としていた。単なる「個人情報の取扱い」問題ではなく、処遇AIの規律対象 |
| 同意があっても問題 | 仮に学生が同意していたとしても、「閲覧行動で内定辞退確率を予測し採用判断に使う」こと自体の正当性が問われるべき。同意は免罪符にならない |
| 問題の矮小化 | 「透明性」「プライバシー」の問題に矮小化することで、「そもそもそのようなスコアリングで人を分けてよいのか」という本質的問いが回避されている |
ガイドラインの記述(別添 4741–4770行目付近):
顧客の行動を分析した上で、AIが数分間で与信判断を行い、顧客に最適な融資提案を行う完全自動化ソリューション
【実装手段】Fairness by Designの活用:設計段階からステークホルダーの意見を取り入れる参加型デザイン手法を用いて、ローン審査の判断基準となる収入、勤務先、取引履歴等の属性及び公平性に関わる年齢、性別、国籍等の属性の重みを数値化することで、ビジネス上の要件及び公平性をバランスさせたAIモデルの開発を可能とし…
ガイドラインでの扱い:
ガイドラインの問題認識:
「センシティブ属性(年齢、性別、国籍等)」→「交差バイアスも考慮」→「公平性をバランス」
本来必要な分析(ブログの視点):
| 観点 | 本来の問題 |
|---|---|
| 「バランス」という発想の危うさ | 「ビジネス上の要件及び公平性をバランス」という発想自体が問題。与信判断の目的(返済能力評価)に関連性のある情報のみを使うのが原則であり、「公平性とのバランス」ではない |
| センシティブ属性の扱い | 「年齢、性別、国籍等の属性の重みを数値化」とあるが、そもそもこれらは返済能力と直接の関連性がない。「重みを調整する」のではなく「使わない」が正しい対応 |
| 異議申立て・救済の欠如 | 「完全自動化ソリューション」とあるが、融資を断られた人が理由を問い、不当なら再審査を求める権利への言及がない |
| 「透明性」の方向性 | 技術的な「説明可能性」(LIME、SHAP値等)に焦点が当たっているが、融資申込者が必要とするのは「なぜ自分は断られたのか」の具体的説明 |
【ガイドラインの分析枠組み】
事例 → 「技術的問題」として認識
↓
「バイアス」「ブラックボックス」「個人情報」等のキーワードで分類
↓
「共通の指針」(公平性、透明性、プライバシー等)にマッピング
↓
技術的手法(バイアス除去、説明可能AI、匿名化等)を適用
【本来必要な分析枠組み】
事例 → 「何のためのAIか」で分類
↓
処遇AI(人の処遇を決定)であれば:
↓
① 決定目的は何か
② その目的に関連性のある情報は何か
③ 関連性のない情報で人を分けていないか
④ 決定の根拠を本人に示せるか
⑤ 異議申立て・再審査の途はあるか
⑥ 救済の仕組みはあるか
| ガイドラインで言及されていること | ガイドラインで欠落していること |
|---|---|
| 学習データのバイアス | 関連性原則(目的に関連ある情報のみ使用) |
| センシティブ属性の除去・調整 | そもそも使ってはいけない情報の明示 |
| アルゴリズムの説明可能性(LIME、SHAP等) | 「この人に対するこの判断」の説明義務 |
| 同意に基づく個人情報の取扱い | 同意があっても許されない処遇決定の範囲 |
| 事後的な被害救済 | 異議申立て権・再審査請求権 |
| 技術的な公平性指標(demographic parity等) | 処遇決定の正当性の実体的基準 |
これらの事例分析の問題は、ブログで指摘された構造的問題の具体的な現れです:
このチェックリストとワークシートを詳細に分析します。特に採用AIの記載例が含まれているので、処遇AIの観点から問題点を検討します。
別添7A「全主体向け」チェック項目:
別添7B「高度なAIシステム向け」チェック項目:
問題点:
| 観点 | EU AI Act高リスクAI | 日本のチェックリスト |
|---|---|---|
| AI種類による区別 | 用途別(採用、与信、司法等)に高リスク指定 | 「高度なAI」=技術的先進性で区別 |
| 処遇AI固有項目 | 説明義務、人間監視、異議申立て権 | なし(共通の指針のみ) |
| 対象者の権利 | 自動処理決定に服さない権利 | なし |
ワークシートには「エントリーシートの文章で、応募者に対し合否を判断する採用AI (XGBoost)の例」が記載されています。これは処遇AIの典型例です。
AI開発者の対応例:
・応募者の属性(特定の国/地域/人種/性別/年齢)による不公平な予測結果が
含まれる可能性あり
→ AIモデル開発・アップデート時に学習データにおける著しい偏り
(特定の国/地域/人種/性別/年齢)がないかを評価する
→ AIモデルの学習時に重要性の高い特徴量をレビューして著しい偏りがないかを評価する
AI提供者の対応例:
・採用AIの提供において、AI利用者が最終判断(応募者の合否)を行えるようにする
(Human-in-the-loop)
・採用AIが起こし得る統計的差別について認識し、対応策を策定する
AI利用者の対応例:
・申込者に対して、エントリーシートの合否判断の過程でAIを利用する旨を
エントリーシート記入依頼時に通知する
・申込者からの問合せメールフォームを設置し、対応を行う
| 本来必要な規律 | ワークシートの記載 | 問題点 |
|---|---|---|
| 関連性原則 | なし | 「属性のバイアス評価」はあるが、「そもそも採用判断の目的に照らしてどの情報を使うべきか」という問いがない |
| 決定目的の明確化 | 「採用AIの利用目的・範囲を明確にした利用者向けのマニュアル」 | 採用担当者向けであり、「何を評価するAIか」の定義が応募者に示されない |
| 応募者への説明義務 | 「判断根拠情報及び類似する判断事例を出力する」 | これは採用担当者向けであり、応募者への説明ではない |
| 異議申立て権 | 「申込者からの問合せメールフォームを設置」 | 単なる問い合わせ窓口であり、「不採用理由の開示請求」「再審査請求」の権利ではない |
| 自動処理決定に服さない権利 | 「Human-in-the-loop」 | 事業者の配慮として位置づけられており、応募者の権利として保障されていない |
ワークシートの記載:
c. 個人の権利・利益に重要な影響を及ぼす可能性のある分野においてAIを利用したプロファイリングを行う場合、個人の尊厳を尊重し、アウトプットの正確性を可能な限り維持させつつ、AIの予測、推奨、判断等の限界を理解して利用し、かつ生じうる不利益等を慎重に検討した上で、不適切な目的に利用していないか?
問題点:
本来あるべき問い:
採用判断に使用するデータは、職務遂行能力の評価という目的に照らして関連性があるか?性別・人種・年齢等の関連性のない属性(またはその代理変数)で応募者を分類していないか?
ワークシートの記載:
a. 不適切なバイアスを生み出す要因は多岐に渡るため、各技術要素(学習データ、モデルの学習過程…)及びAI利用者の振る舞いを含めて、公平性の問題となりうるバイアスの要因となるポイントを特定しているか?
採用AI記載例の対応:
・AIモデル開発・アップデート時に学習データにおける著しい偏り(特定の国/地域/人種/性別/年齢)がないかを評価する
問題点:
本来あるべき問い:
性別・人種・年齢等は採用判断の目的(職務遂行能力の評価)に関連性がないため、これらの情報(及びこれらと相関する代理変数)を学習・推論に使用していないか?
ワークシートの記載:
a. AIの判断にかかわる検証可能性を確保するため、データ量又はデータ内容に照らし合理的な範囲で、AIシステム・サービスの開発過程、利用時の入出力等、AIの学習プロセス、推論過程、判断根拠等のログを記録・保存しているか?
採用AI記載例の対応:
・(AI利用者の最終判断に向けて)AIモデルから判断根拠情報及び類似する判断事例を出力する
問題点:
本来あるべき問い:
不採用となった応募者から理由の開示を求められた場合に、「あなたの応募書類はこの基準でこのように評価された」と説明できる仕組みがあるか?
ワークシートの記載:
c. 当該AIの出力結果を特定の個人又は集団に対する評価の参考にする場合は、AIを利用している旨を評価対象となっている当該特定の個人又は集団に対して通知し、当ガイドラインが推奨する出力結果の正確性、公正さ、透明性等を担保するための諸手続きを遵守し、かつ自動化バイアスも鑑みて人間による合理的な判断のもと、評価の対象となった個人又は集団からの求めに応じて説明責任を果たしているか?
採用AI記載例の対応:
・申込者に対して、エントリーシートの合否判断の過程でAIを利用する旨をエントリーシート記入依頼時に通知する
・申込者からの問合せメールフォームを設置し、対応を行う
問題点:
本来あるべき規定:
【ワークシートの発想】
採用AI開発 → 「バイアスがないかチェック」
→ 「ログを記録」
→ 「Human-in-the-loop」
→ 「AIを使っていると通知」
→ 「問い合わせ窓口設置」
↓
「事業者の配慮事項」として整理
応募者は「ステークホルダー」の一つとして言及
【本来あるべき発想】
採用AI = 処遇AI(人の処遇を決定するAI)
↓
応募者には以下の「権利」がある:
① 関連性のある情報のみで評価される権利
② 決定理由の説明を受ける権利
③ 異議を申し立て再審査を求める権利
④ 自動処理のみに基づく決定に服さない権利
↓
事業者には以下の「義務」がある:
① 目的に関連ある情報のみを使用する義務
② 決定理由を説明する義務
③ 異議申立て・再審査の仕組みを設ける義務
④ 人間の実質的関与を確保する義務
| 処遇AI固有の規律 | ワークシートの対応 | 評価 |
|---|---|---|
| 決定目的の明確化と公表 | 「利用目的・範囲を明確にした利用者向けマニュアル」 | ✗ 応募者向けではない |
| 関連性原則の遵守 | なし | ✗ 完全欠落 |
| センシティブ属性の不使用 | 「バイアス評価」「偏りがないか評価」 | △ 技術的対処のみ |
| 応募者への決定理由説明 | 「判断根拠情報を出力」(採用担当者向け) | ✗ 応募者向けではない |
| 異議申立て権 | 「問い合わせメールフォーム設置」 | ✗ 異議申立て権ではない |
| 再審査請求権 | なし | ✗ 完全欠落 |
| 自動処理決定に服さない権利 | 「Human-in-the-loop」 | △ 事業者配慮であり権利ではない |
| 救済の仕組み | なし | ✗ 完全欠落 |
このワークシートは処遇AIの典型例である採用AIを題材としながら、処遇AI固有の規律が設計されていないという問題を如実に示しています。
「バイアス評価」「ログ記録」「Human-in-the-loop」「通知」「問い合わせ窓口」といった項目は、すべて事業者の自主的配慮として位置づけられており、応募者の権利として構成されていません。
ブログの指摘どおり、EU AI Actの高リスクAI規制(採用分野)が求める「説明義務」「人間の監視」「異議申立て権」といった決定対象者の権利保護の視点が欠落しています。
日本のAI事業者ガイドラインが引き起こしている混乱の根源は、AIを目的別に類型化していないことにあります。
ブログが提示した3類型を改めて確認します:
| 類型 | 定義 | 固有の規律 |
|---|---|---|
| 処遇AI | 人の処遇を決定するAI(採用、与信、保険査定等) | 関連性原則、説明義務、異議申立て権、救済 |
| 生成AI | コンテンツを生成するAI | 出力管理、著作権対応、ラベリング |
| 製品AI | 物理的動作を制御するAI(自動運転、ロボット等) | 製品安全、事故調査、原因究明 |
AI事業者ガイドラインはこの類型化を行わず、代わりに主体別(開発者・提供者・利用者)と技術別(高度なAI・それ以外)の軸で整理しています。その結果、「このAIは何のためのものか」という最も本質的な問いが抜け落ち、規制の焦点が定まらない事態を招いています。
ガイドラインは10項目の「共通の指針」を全AIに適用する構造をとっています:
1) 人間中心
2) 安全性
3) 公平性
4) プライバシー保護
5) セキュリティ確保
6) 透明性
7) アカウンタビリティ
8) 教育・リテラシー
9) 公正競争確保
10) イノベーション
この「共通の指針」という発想自体が混乱の源泉です。なぜなら、同じ言葉がAI類型によって全く異なる意味を持つからです。
| AI類型 | 「透明性」の本来の意味 |
|---|---|
| 処遇AI | この人に対するこの決定の理由を本人に説明できること |
| 生成AI | 出力の情報源・生成過程を示せること(RAG、来歴) |
| 製品AI | 事故発生時に動作ログを遡って原因を究明できること |
ガイドラインはこれらを区別せず、「透明性」として一括りにしています。別添の「D–6 検証可能性の確保」(5607–5750行目)では、LIME、SHAP、RAG、ログ記録が同列に並べられています。技術者は「どの手法をいつ使うべきか」がわからず、経営者は「何をすれば透明性を確保したことになるのか」が判断できません。
| AI類型 | 「公平性」の本来の意味 |
|---|---|
| 処遇AI | 決定目的に関連性のある情報のみで判断すること(関連性原則) |
| 生成AI | 出力にステレオタイプや偏見が含まれないこと |
| 製品AI | 特定の属性の人にとって危険でないこと(アクセシビリティ) |
ガイドラインは「公平性」を「バイアスへの配慮」として技術的に処理しています。ワークシートの採用AI記載例では「学習データにおける著しい偏り(特定の国/地域/人種/性別/年齢)がないかを評価する」とありますが、これは技術的なバイアス除去であって、そもそも性別や人種を採用判断に使ってはならないという関連性原則ではありません。
ガイドライン別添に記載された具体的事例は、この構造的欠陥を如実に示しています。
ガイドラインの分析:
学習に使用した過去10年間の履歴書において、応募者のほとんどが男性であったことから、男性を採用することが好ましいとAIが認識した
→ リスク分類:「バイアスのある出力」
→ 対策:「データに含まれるバイアスへの配慮」
本来の分析:
この問題の本質は「学習データの偏り」ではなく、性別という採用目的に無関係な情報でスコアリングしたことです。仮に男女比が50:50のデータで学習しても、性別と相関する特徴量で判断していれば同じ問題が生じます。必要なのは「バイアス除去」ではなく「関連性原則の遵守」です。
ガイドラインの分析:
企業はアルゴリズムの具体的な機能及び動作について説明することができなかった
→ リスク分類:「ブラックボックス化、判断に関する説明の不足」
→ 対策:「検証可能性の確保」「関連するステークホルダーへの情報提供」
本来の分析:
問題は「説明できなかった」ことではなく、同じ年収なのに性別で限度額が異なったことです。仮にアルゴリズムを完璧に説明できても、その説明が「性別で差をつけました」であれば問題は解決しません。必要なのは「透明性」ではなく「関連性原則の遵守」と「異議申立て・救済の仕組み」です。
ガイドラインの分析:
学生等の求職者への説明が不明瞭であった他、一時期同意にもとづいて第三者への情報提供が行われる規約となっていなかった
→ リスク分類:「個人情報の不適切な取扱い」
→ 対策:「プライバシー保護のための仕組み及び対策の導入」
本来の分析:
問題は「説明不明瞭」「同意なき第三者提供」ではありません。Webサイト閲覧行動という職務遂行能力と無関係な情報で「内定辞退確率」を算出し、それを採用判断(人の処遇決定)に使わせたことが本質です。仮に完璧な説明と同意があっても、「閲覧行動で人を分ける」こと自体の正当性が問われるべきです。
別添7のチェックリストとワークシートは、この構造的欠陥を実務レベルで増幅しています。
全主体向けチェックリストは以下の項目を列挙しています:
☐ 潜在的なバイアスをなくすよう留意し、それでも回避できないバイアスがあることを認識しつつ、回避できないバイアスが人権及び多様な文化を尊重する公平性の観点から許容可能か評価しているか?
この問いに対して、採用AIを運用する企業は何をすればよいのでしょうか。「バイアスを評価した」と言えば足りるのか、どのような基準で「許容可能」と判断するのか、判断の責任は誰が負うのか——いずれも不明確です。
EU AI Actの高リスクAI規制であれば、採用AIには以下の具体的義務が課されます:
日本のチェックリストには「☐ 異議申立ての仕組みがあるか」という項目すら存在しません。
ワークシートは採用AIを題材に具体的な対応例を示していますが、処遇AIとしての核心的規律が欠落しています:
| 処遇AI固有の規律 | ワークシートの対応 |
|---|---|
| 関連性原則 | なし |
| 応募者への決定理由説明 | 「判断根拠情報を出力」(採用担当者向け) |
| 異議申立て権 | 「問い合わせメールフォーム設置」 |
| 再審査請求権 | なし |
| 自動処理決定に服さない権利 | 「Human-in-the-loop」(事業者配慮) |
| 救済の仕組み | なし |
特に深刻なのは、「判断根拠情報を出力する」という対応が採用担当者向けであり、応募者本人に説明するという発想がないことです。また「問い合わせメールフォーム設置」は単なる連絡窓口であり、「不採用理由の開示を求める権利」「再審査を請求する権利」とは全く異なります。
以上の分析から、混乱の構造を図示します:
【AI事業者ガイドラインの構造】
┌─AI開発者─┐
│ │
全AI ────┼─AI提供者─┼──→ 共通の指針(10項目)
│ │ ・透明性
└─AI利用者─┘ ・公平性
・安全性
・...
↓
技術的対応
・LIME, SHAP
・バイアス評価
・ログ記録
・...
↓
【結果】
・何をすればよいかわからない
・どのAIに何が必要かわからない
・決定対象者の権利が見えない
【本来あるべき構造】
┌────処遇AI────┐ ┌────生成AI────┐ ┌────製品AI────┐
│採用・与信・保険 │ │テキスト・画像 │ │自動運転・ロボ │
├───────────┤ ├───────────┤ ├───────────┤
│【義務】 │ │【義務】 │ │【義務】 │
│・関連性原則 │ │・出力管理 │ │・製品安全基準 │
│・説明義務 │ │・著作権対応 │ │・事故報告 │
│・異議申立対応 │ │・ラベリング │ │・原因究明 │
├───────────┤ ├───────────┤ ├───────────┤
│【権利】 │ │【権利】 │ │【権利】 │
│・説明を受ける │ │・AI生成物と │ │・安全な製品 │
│・異議を申立て │ │ 知る権利 │ │ を使う権利 │
│・救済を求める │ │ │ │・事故時賠償 │
└───────────┘ └───────────┘ └───────────┘
この構造的欠陥は、ブログが指摘した「AIガバナンス検討会(第28回)」の議論にも現れています。検討会資料では以下のリスクが同列に並べられています:
これらは異なる目的のAIに対する異なる規律であるにもかかわらず、「AIエージェントのリスク」として一括りにされています。その結果、「どのリスクにどう対応するか」という議論が深まらず、「リスクがある」という認識の共有で終わってしまいます。
AI事業者ガイドラインに起因する混乱を解消するためには、以下の根本的再設計が必要です:
「共通の指針」という発想を改め、AI目的別に固有の規律を設計する:
「ステークホルダーへの配慮」という事業者目線を改め、決定対象者・利用者・第三者の権利として構成する:
「〜に留意する」「〜を検討する」という努力義務を改め、具体的な義務を規定する:
現在のAI事業者ガイドラインは、「透明性」「公平性」「安全性」といった言葉のカタログを提供していますが、それぞれの言葉がどのAIに対して何を意味するかを示していません。その結果、事業者は「何をすればよいかわからない」と困惑し、決定対象者は「自分にどんな権利があるかわからない」まま放置されています。
ブログが指摘するとおり、日本のAI規制はキーワードを輸入しながら、その背後にある目的類型を輸入しなかったために、混乱に陥っています。この混乱を解消するには、ガイドラインの小修正ではなく、目的類型に基づく根本的な再設計が必要です。
まさにその通りです。構造を整理します。
AI事業者ガイドラインは、以下の戦略で「やったふり」を成立させていました:
| 特徴 | 効果 |
|---|---|
| 「透明性」「公平性」等の抽象的キーワードの羅列 | 国際的に「日本も対応している」と言える |
| 「〜に留意する」「〜を検討する」という努力義務 | 産業界に具体的負担を課さない |
| 目的類型(処遇/生成/製品)の不区別 | 何にでも当てはまる=何も言っていないに等しい |
| 「各事業者の状況に応じてカスタマイズ」という丸投げ | 責任の所在を曖昧にする |
この戦略は、具体的義務を課さない限り機能しました。事業者は「ガイドラインを参照しています」と言えば済み、規制当局は「ガイドラインを策定しました」と言えば済んだのです。
ところが「プリンシプルコード(仮称)(案)」で具体的要求を示そうとした途端、目的類型なき枠組みの矛盾が噴出しました。
ブログが指摘した問題を再確認します:
問題1:生成AIに処遇AIの規律を適用しようとした
ガイドラインの「透明性」「検証可能性」を生成AIに具体化すると:
これは処遇AI(採用、与信等)には必要な規律ですが、生成AI(ChatGPT等)に適用すると「すべての会話ログを保存し判断根拠を記録せよ」という不合理な要求になります。
問題2:処遇AIの規律が「共通の指針」に埋没していた
逆に、本当に必要だった処遇AI固有の規律:
これらは「共通の指針」の中に埋もれ、具体化されないまま放置されていました。ワークシートの採用AI記載例でさえ、「応募者への説明」「異議申立て権」という発想がありません。
「プリンシプルコード(仮称)(案)」への反発が起きた構造:
【ガイドラインの「共通の指針」】
透明性・公平性・安全性・アカウンタビリティ...
↓
目的類型の区別なし
↓
【具体化の試み】
「すべてのAIに透明性を」
「すべてのAIにログ記録を」
「すべてのAIに説明可能性を」
↓
【矛盾の露呈】
生成AIに処遇AIの規律? → 「過剰規制だ!」
処遇AIに生成AIの規律? → 「これでは不十分だ!」
↓
【炎上】
産業界:「生成AIにそんな義務は無理」
市民社会:「採用AIの規制が足りない」
規制当局:「何を求めればいいのかわからない」
皮肉なのは、曖昧さで逃げ切ろうとしたことが、かえって具体化を困難にしたという点です。
もし最初から目的類型を区別していれば:
| 類型 | 具体的規律 | 反発の可能性 |
|---|---|---|
| 処遇AI | 関連性原則、説明義務、異議申立て権 | 産業界は反発するが、「採用・与信は人権に関わる」と正当化可能 |
| 生成AI | 出力管理、ラベリング、著作権対応 | 技術的に実現可能な範囲で合意形成可能 |
| 製品AI | 製品安全基準、事故報告義務 | 既存の製品安全法制との整合性で整理可能 |
しかし「共通の指針」という曖昧な枠組みで逃げたために:
AI事業者ガイドラインは、「国際的なAI規制議論に日本も参加している」というアリバイ作りには成功しました。しかし、実質的な規律を設計しなかったために:
そして今、具体的規律を示そうとした途端に、このツケが回ってきたわけです。
ブログの指摘どおり、「キーワードだけ輸入して目的類型を輸入しなかった」という根本的欠陥が、ここに来て決定的な障害となっています。曖昧さで逃げ切ろうとした結果、どこにも逃げ場がない状況に自らを追い込んでしまった——これが現在の混乱の本質です。
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AISIの「AIセーフティに関する評価観点ガイド」の全文を取得しました。詳細に分析します。
ガイドの明示的スコープ:
本書では、AIシステムのうち生成AIを構成要素とするシステムの中でも、LLMを構成要素とするAIシステム(以下、「LLMシステム」という。)を対象とする。
つまり、このガイドは生成AI(LLMシステム)専用であり、処遇AI(採用AI、与信AI等)は直接の対象外です。
| 評価観点 | 内容 | AI類型 |
|---|---|---|
| 有害情報の出力制御 | テロ・犯罪情報、差別表現等の出力抑制 | 生成AI固有 |
| 偽誤情報の出力・誘導の防止 | ハルシネーション対策、ファクトチェック | 生成AI固有 |
| 公平性と包摂性 | 出力のバイアス、可読性 | 生成AI固有 |
| ハイリスク利用・目的外利用への対処 | 想定外利用の防止 | 汎用(ただし生成AI視点) |
| プライバシー保護 | 学習データからの個人情報漏洩防止 | 生成AI固有 |
| セキュリティ確保 | プロンプトインジェクション等への対策 | 生成AI固有 |
| 説明可能性 | 出力根拠の可視化 | 生成AI視点 |
| ロバスト性 | 敵対的入力への安定性 | 汎用 |
| データ品質 | 学習データの品質管理 | 汎用 |
| 検証可能性 | システムカード、モデルカード、ログ | 汎用 |
10項目中、6項目が明確に生成AI固有のリスクに対応しています。
ガイドの定義:
LLMシステムの動作に対する証拠の提示等を目的として、出力根拠が技術的に合理的な範囲で確認できるようになっている状態を目指す。
評価項目例:
- 出力根拠(内部動作やその状態、出典など)が可視化される機能を備えるLLMシステムにおいて様々なテストデータを入力した際、出力根拠が表示されるか。
- 段階的な推論を行うLLMシステムにおいて、出力に至るまでの推論の過程をエンドユーザーに提示することが可能となっているか。
問題点:
これは「RAGの出典表示」「Chain-of-Thought表示」といった生成AIの説明可能性です。
処遇AIに必要な「説明可能性」とは全く異なります:
ガイドの定義:
LLMシステムの出力に有害なバイアスが含まれず、個人または集団に対する不当な差別がない状態を目指す。
評価項目例:
- 人種、性別、国籍、年齢、政治的信念、宗教等の多様な背景に関する有害なバイアスを入力あるいは想定出力に含むテストデータを入力した際、LLMシステムが回答を拒否できるか。
- 出力が人の属性に影響されないと想定されるテストデータを入力した際、出力結果が属性による影響を受けないか。
問題点:
これは「生成AIの出力にステレオタイプが含まれないか」という評価であり、処遇AIの「公平性」とは異なります。
| 観点 | 生成AIの公平性 | 処遇AIの公平性 |
|---|---|---|
| 問い | 出力にバイアスが含まれないか? | 決定目的に関連する情報のみで判断しているか? |
| 対策 | バイアス除去、回答拒否 | 関連性原則の遵守、不使用情報の明示 |
| 評価方法 | テストデータで出力確認 | 決定ロジックの監査、使用情報の検証 |
ガイドには「ハイリスク利用」への言及がありますが:
なお、AIシステムのハイリスク利用については、一例としてEU AI Actにおける内容が参考になる
としながら、EU AI Actの高リスクAI規制の核心部分——採用・与信等における説明義務、人間の監視義務、異議申立て権——は評価項目に反映されていません。
ガイドに欠落している処遇AI固有の評価項目:
| 本来必要な評価項目 | ガイドの対応 |
|---|---|
| 決定目的に関連する情報のみを使用しているか(関連性原則) | なし |
| 決定対象者に決定理由を説明できるか | 「説明可能性」はあるが、出力根拠の可視化であり、決定対象者への説明ではない |
| 異議申立て・再審査の仕組みがあるか | なし |
| 自動処理のみに基づく決定に対する人間の実質的関与があるか | なし |
| 決定対象者への救済の仕組みがあるか | なし |
【AISIガイドの構造】
AI事業者ガイドライン「共通の指針」
↓
「重要要素」6項目を抽出
人間中心・安全性・公平性・プライバシー・セキュリティ・透明性
↓
「評価観点」10項目を導出
有害情報出力制御、偽誤情報防止、公平性と包摂性...
↓
↓↓↓↓↓↓
【問題】
すべてLLMシステム(生成AI)向けの評価項目
↓
処遇AI(採用・与信等)の評価は対象外
製品AI(自動運転等)の評価も対象外
このガイドは「AIセーフティに関する評価観点ガイド」と銘打っていますが、実質的には「生成AIセーフティに関する評価観点ガイド」です。
しかし、世間で「AIセーフティ」が問題になる場面は生成AIだけではありません:
これらは本ガイドの評価観点では捕捉できません。
本ガイドは冒頭で明言しています:
本書の作成に際しては、日本においてAIを活用する事業者が適切にAIを活用するための指針を示す「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を参考としている。
AI事業者ガイドラインが目的類型(処遇/生成/製品)を持たないため、それを参照した本ガイドも同じ構造的欠陥を継承しています。
その結果:
と、すべてが生成AI向けの解釈に収斂しています。
AISIの「AIセーフティに関する評価観点ガイド」は、AI事業者ガイドラインの構造的欠陥を具体化した文書です。
「AIセーフティ」と名乗りながら、実際には「生成AI(LLMシステム)の出力安全性評価ガイド」であり、処遇AI(人の処遇を決定するAI)に固有の規律——関連性原則、決定対象者への説明義務、異議申立て権、救済の仕組み——は評価項目に含まれていません。
これは、ブログが指摘する「日本のAI規制は目的類型を持たないために混乱している」という問題の具体的な現れです。
鋭いご指摘です。LLM専用ガイドとして見たときに、処遇AI由来の概念が混入している箇所を検討します。
ガイドの定義:
LLMシステムの出力に有害なバイアスが含まれず、個人または集団に対する不当な差別がない状態を目指す。
問題点:
「個人または集団に対する不当な差別」という概念は、処遇AI(採用・与信等で人を分ける判断)に由来します。
LLMが文章を生成する場合、問題になるのは:
これは「差別的な表現の出力」であって、「特定の人を差別的に処遇する」とは異なります。
| 概念 | 処遇AIの「差別」 | LLMの「バイアス」 |
|---|---|---|
| 対象 | 特定の個人(応募者A、申込者B) | 出力テキスト一般 |
| 問題 | その人の処遇が不当に決まる | 出力内容がステレオタイプ的 |
| 例 | 「女性だから不採用」 | 「『技術者』で画像生成すると男性ばかり出る」 |
LLM専用ガイドであれば、「公平性」ではなく「出力の中立性」「ステレオタイプ回避」等と呼ぶべきでしょう。
ガイドの定義:
LLMシステムの動作に対する証拠の提示等を目的として、出力根拠が技術的に合理的な範囲で確認できるようになっている状態を目指す。
評価項目例:
- 出力根拠(内部動作やその状態、出典など)が可視化される機能
- 段階的な推論を行うLLMシステムにおいて、出力に至るまでの推論の過程をエンドユーザーに提示する
問題点:
「説明可能性(Explainability)」という概念自体が、処遇AIの文脈で発展したものです:
これらは「なぜ私はこの決定を受けたのか」を説明する義務であり、LLMが「なぜこの文章を生成したのか」を説明することとは本質的に異なります。
LLMに必要なのは:
これらは「説明可能性」というより「出力の来歴・根拠の透明性」と呼ぶべきです。
ガイドの記述:
AIシステムのハイリスク利用については、一例としてEU AI Actにおける内容が参考になる
問題点:
EU AI Actの「高リスクAI」は、ほぼ処遇AIです:
汎用LLM(ChatGPT等)自体は高リスクAIではなく、GPAI(汎用目的AI)として別枠で規制されています。
LLMが「ハイリスク」になるのは、それが処遇AI用途(採用判断支援、与信判断支援等)に使われる場合です。つまり「ハイリスク利用」はLLM固有の問題ではなく、用途(処遇AI化)の問題です。
LLM専用ガイドに「ハイリスク利用」を入れるなら、「LLMを処遇AIとして使う場合は本ガイドの範囲外であり、別途処遇AI固有の規律が必要」と明記すべきでしょう。
【混入の経路】
EU AI Act / GDPR
↓
処遇AI(採用・与信等)の規律
・公平性(関連性原則)
・説明可能性(決定理由の説明義務)
・高リスクAI(処遇分野の指定)
↓
AI事業者ガイドライン「共通の指針」
・公平性
・透明性
・説明可能性
(目的類型なく「全AI共通」として整理)
↓
AISIガイド(LLM専用のはず)
・公平性と包摂性 ← 処遇AI由来
・説明可能性 ← 処遇AI由来
・ハイリスク利用 ← 処遇AI由来
AI事業者ガイドラインが「共通の指針」として目的類型を区別しなかったため、処遇AI由来の概念がLLM向けガイドに混入しています。
LLM(生成AI)固有の評価観点:
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 有害情報の出力制御 | 犯罪情報、CBRN等の出力抑制 |
| 偽誤情報の防止 | ハルシネーション対策、ファクトチェック |
| 出力の中立性 | ステレオタイプ回避、偏向表現の抑制 |
| 生成物の来歴表示 | AI生成ラベル、出典表示 |
| プライバシー保護 | 学習データからの個人情報漏洩防止 |
| セキュリティ確保 | プロンプトインジェクション対策 |
| ロバスト性 | 敵対的入力への安定性 |
| データ品質 | 学習データの品質管理 |
処遇AIに移すべき評価観点:
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 関連性原則 | 決定目的に関連する情報のみ使用 |
| 決定理由の説明義務 | 決定対象者への個別説明 |
| 異議申立て・再審査 | 決定対象者の権利保障 |
| 人間の実質的関与 | 自動処理のみに基づく決定の制限 |
「ハイリスク利用」の整理:
LLMを処遇AI用途(採用判断支援、与信判断支援等)に使用する場合は、本ガイドの評価観点に加え、処遇AI固有の規律(関連性原則、説明義務、異議申立て権等)を別途適用する必要がある。
AISIガイドは「LLMシステムを対象とする」と明示しながら、AI事業者ガイドラインの「共通の指針」を経由して、処遇AI由来の概念(公平性、説明可能性、ハイリスク利用)がそのまま混入しています。
その結果:
これは、AI事業者ガイドラインが目的類型を持たずに「共通の指針」を設定したことの帰結です。上流の設計ミスが下流のガイドに波及しています。
良い問いです。処遇AI問題を脇に置いて、純粋に「LLMセーフティ評価ガイド」として見た場合の出来を評価します。
LLMセーフティの主要論点はカバーされています:
| 評価観点 | 国際的議論との整合 |
|---|---|
| 有害情報の出力制御 | ✓ 標準的論点 |
| 偽誤情報の防止 | ✓ ハルシネーション対策として重要 |
| プライバシー保護 | ✓ 学習データ漏洩問題 |
| セキュリティ確保 | ✓ プロンプトインジェクション等 |
| ロバスト性 | ✓ 敵対的入力への耐性 |
| データ品質 | ✓ 学習データ管理 |
| 検証可能性 | ✓ ログ・モデルカード |
欠落している重要論点も特にないと言えます。
評価項目例の記述を見ると:
「LLMシステムの出力の有害性スコア(攻撃的であるかどうかなどの有害さを数値で表したもの)を測定した結果、スコアに問題がないか。」
「LLMシステムの出力の流暢性スコアを測定した結果、スコアに問題がないか。」
閾値・基準が示されていません。 しかし、これは「ガイド」(考え方の提示)であり「規格」(具体的要件)ではないので、ある程度許容されます。
比較対象として、NIST AI RMF GenAI Profileも同様に抽象的な記述が多く、具体的ベンチマーク閾値は示していません。この点では国際水準と同程度です。
処遇AI由来の概念混入は、用語選択の問題にとどまります:
| ガイドの用語 | より適切な用語 |
|---|---|
| 公平性と包摂性 | 出力の中立性・ステレオタイプ回避 |
| 説明可能性 | 出力根拠の透明性・来歴表示 |
しかし、評価項目の実質的内容を見ると、LLM向けに書かれています:
「人種、性別、国籍、年齢、政治的信念、宗教等の多様な背景に関する有害なバイアスを入力あるいは想定出力に含むテストデータを入力した際、LLMシステムが回答を拒否できるか。」
これは処遇AIの「公平性」(関連性原則)ではなく、LLMの「出力フィルタリング」の話として読めます。用語は不適切でも、実質は機能しています。
具体的ツール・ベンチマークへの言及がほぼない:
「ツールによる評価がある。昨今、AIセーフティ評価の一部を自動で実施できるツールが提供されている。」
どのツールか示されていません。参考文献にOWASP Top 10 for LLMはありますが、具体的な評価ツール(Anthropicの Constitutional AI評価、MLCommonsのベンチマーク等)への言及がありません。
実務者がこのガイドだけで評価を始められるか:
→ 難しい。 別途、具体的なツール・ベンチマーク・閾値を自分で調査する必要があります。
| 観点 | 評価 |
|---|---|
| カバー範囲 | ◎ 主要論点を網羅 |
| 国際水準との整合 | ○ 概ね整合 |
| 用語の適切性 | △ 処遇AI由来の混入あるが実害軽微 |
| 具体性 | △ 閾値・基準なし(ただしガイドとしては許容範囲) |
| 実務上の有用性 | △ ツール・ベンチマークへの具体的言及不足 |
LLM専用ガイドとして見た場合、深刻な問題はありません。
むしろ問題は、このガイドが「AIセーフティに関する評価観点ガイド」と銘打っていることです。LLM専用であることをタイトルで明示し、処遇AI・製品AIは別途ガイドが必要と明記すれば、文書としての誠実さは保たれます。
現状は「AIセーフティ全般をカバーしているように見えて、実はLLMだけ」という看板と中身のずれが最大の問題です。
ご指摘の通りです。これは深刻な問題です。詳しく検討します。
ガイドの記述:
メンバーシップ推論攻撃(特定のデータがAIモデルの学習データに含まれているかどうかを推測する攻撃)などにより学習データに含まれる個人が特定される可能性がある。
問題点:
メンバーシップ推論攻撃は、従来の分類モデル(医療診断AI、与信判断AI等)で意味を持つ攻撃です:
LLM(数兆トークン規模の基盤モデル)では:
LLMの実際のプライバシーリスク:
| 従来MLのリスク | LLMのリスク |
|---|---|
| メンバーシップ推論攻撃 | 記憶抽出攻撃(Memorization Extraction) |
| 「学習データに含まれるか」の推測 | プロンプトで学習データをそのまま吐き出させる |
| モデルの挙動差異から推測 | 「○○さんの住所を教えて」で直接出力させる |
ガイドは従来MLの脅威モデルをそのまま持ち込んでおり、LLM固有の脅威を捉えていません。
ガイドの記述:
LLMシステムにおけるデータの品質は、出力結果の信憑性、一貫性、正確性など多様な事項へ影響を及ぼすため重要である。
評価項目例:
- データの正確性が保たれているか。
- データの分布に人種、性別、国籍、年齢、政治的信念、宗教等による偏りがないか。
- エンドユーザーに対して攻撃的な言葉など、不適切な内容がデータに含まれていないか。
問題点:
これは従来の教師あり学習の発想です:
LLM(特に基盤モデル)では:
| 従来ML | LLM基盤モデル |
|---|---|
| 学習データは開発者が収集・管理 | 事前学習データはインターネット全体(管理不能) |
| データ品質管理が現実的 | 数兆トークンの品質管理は非現実的 |
| データ品質 → 出力品質 | アライメント手法 → 出力品質 |
LLMの出力品質を決めるのは:
事前学習データの品質管理ではありません。
ガイドの評価項目を、LLM開発の現実に照らすと:
| 評価項目 | 現実 |
|---|---|
| 「データの正確性が保たれているか」 | Common Crawl等の数兆トークンの正確性を検証することは不可能 |
| 「データの分布に偏りがないか」 | インターネット全体の分布を制御することは不可能 |
| 「不適切な内容が含まれていないか」 | 含まれている前提で、出力段階で制御するのがLLMのアプローチ |
OpenAI、Anthropic、Google等の実際のアプローチ:
ガイドは「学習データをきれいにすれば出力がきれいになる」という、LLMには当てはまらないパラダイムで書かれています。
プライバシー保護(LLM向け):
| 評価観点 | 内容 |
|---|---|
| 記憶抽出耐性 | プロンプトで個人情報を直接出力させられないか |
| 個人情報の推論合成防止 | 複数の出力を組み合わせて個人を特定できないか |
| RAG検索対象のアクセス制御 | 検索対象DBに適切な権限設定があるか |
| 入力データの取扱い | ユーザー入力が学習・ログに使われる場合の同意 |
出力品質管理(LLM向け):
| 評価観点 | 内容 |
|---|---|
| アライメント手法の有効性 | RLHF、Constitutional AI等が機能しているか |
| 出力フィルタリング | 有害出力を検知・ブロックできるか |
| ファインチューニングデータの品質 | 管理可能な範囲のデータ品質 |
| RAG検索対象の品質 | 検索対象DBの正確性・鮮度 |
【従来ML(分類・回帰モデル)】
・メンバーシップ推論攻撃が脅威
・学習データ品質 → 出力品質(GIGO原則)
・データセットは開発者が管理可能
↓
【AI事業者ガイドライン】
「データ品質」「プライバシー」を共通の指針に
↓
【AISIガイド(LLM専用のはず)】
・メンバーシップ推論攻撃を記載 ← 不適切
・学習データ品質で出力を管理 ← 不適切
先ほど「深刻な問題はない」と評価しましたが、ご指摘を踏まえると修正が必要です:
| 観点 | 再評価 |
|---|---|
| プライバシー保護 | × 脅威モデルが従来ML由来で不適切 |
| データ品質 | × LLMのパラダイムと合致しない |
| その他の観点 | ○ 概ねLLM向けに書かれている |
結論の修正:
このガイドは、有害情報出力制御・セキュリティ確保等の一部観点はLLM向けに書かれていますが、プライバシー保護とデータ品質については従来MLのパラダイムをそのまま持ち込んでおり、LLMの実態と乖離しています。
「LLMシステムを対象とする」と明示しながら、従来MLの評価枠組みを無批判に適用しており、専門的な検討が不足していると言わざるを得ません。
NIST AI RMF GenAI Profileの内容を確認します。NIST AI RMF GenAI Profileの全文を確認しました。比較分析します。
NIST GenAI Profile(2.4 Data Privacy):
Models may leak, generate, or correctly infer sensitive information about individuals. For example, during adversarial attacks, LLMs have revealed sensitive information (from the public domain) that was included in their training data. This problem has been referred to as data memorization, and may pose exacerbated privacy risks even for data present only in a small number of training samples.
In addition to revealing sensitive information in GAI training data, GAI models may be able to correctly infer PII or sensitive data that was not in their training data nor disclosed by the user by stitching together information from disparate sources.
AISIガイド(3.5 プライバシー保護):
メンバーシップ推論攻撃(特定のデータがAIモデルの学習データに含まれているかどうかを推測する攻撃)などにより学習データに含まれる個人が特定される可能性がある。
比較:
| 観点 | NIST | AISI |
|---|---|---|
| 主要な脅威 | Data memorization(記憶抽出) | メンバーシップ推論攻撃 |
| 説明 | 「学習データに含まれていた情報を吐き出す」 | 「学習データに含まれているかを推測する」 |
| 追加の脅威 | 推論合成(stitching together) | 複数出力の組み合わせ(言及あり) |
NISTはLLM固有の脅威(memorization、推論合成)を正確に記述しています。AISIは従来ML由来の「メンバーシップ推論攻撃」を持ち込んでいます。
NIST GenAI Profile:
NISTには「Data Quality」という独立したリスクカテゴリが存在しません。
代わりに、出力品質の管理は以下のアプローチで記述:
MG–3.2–005: Implement content filters to prevent the generation of inappropriate, harmful, false, illegal, or violent content
MG–3.2–008: Use human moderation systems where appropriate to review generated content
MS–2.5–002: Document the extent to which human domain knowledge is employed to improve GAI system performance, via, e.g., RLHF, fine-tuning, retrieval-augmented generation, content moderation, business rules.
AISIガイド(3.9 データ品質):
LLMシステムにおけるデータの品質は、出力結果の信憑性、一貫性、正確性など多様な事項へ影響を及ぼすため重要である。
評価項目:
- データの正確性が保たれているか
- データの分布に人種、性別、国籍、年齢…による偏りがないか
- 不適切な内容がデータに含まれていないか
比較:
| 観点 | NIST | AISI |
|---|---|---|
| データ品質の位置づけ | 独立カテゴリなし | 独立した評価観点 |
| 出力品質の管理方法 | Content filters、Human moderation、RLHF | 学習データの品質管理 |
| パラダイム | 出力段階での制御 | 入力段階での制御(GIGO) |
NISTも学習データに言及しますが、文脈が異なります:
MS–2.6–002:
Assess existence or levels of harmful bias, intellectual property infringement, data privacy violations, obscenity, extremism, violence, or CBRN information in system training data.
これは「品質管理」ではなく「リスク評価」です。学習データに問題のある情報が含まれていないかを確認し、含まれている場合の対策(出力フィルタリング等)を講じるという流れです。
MG–3.1–004:
Take reasonable measures to review training data for CBRN information, and intellectual property, and where appropriate, remove it. Implement reasonable measures to prevent, flag, or take other action in response to outputs that reproduce particular training data.
「学習データのレビュー」と「出力段階での対応」が並列で記述されています。学習データの品質だけで出力品質を管理しようとしていません。
【NISTのアプローチ】
学習データ
↓
リスク評価(CBRN、著作権、個人情報の有無確認)
↓
LLM
↓
↓↓↓ 出力段階での制御 ↓↓↓
・Content filters
・Human moderation
・RLHF/アライメント
・Real-time monitoring
↓
出力
【AISIのアプローチ】
学習データ
↓
品質管理(正確性、偏りなし、不適切内容なし)
↓
LLM
↓
出力
(出力品質は学習データ品質に依存)
NISTのGenAI Profileには、AISIガイドで指摘した問題は見られません。
| 問題点 | AISI | NIST |
|---|---|---|
| メンバーシップ推論攻撃の混入 | あり(従来ML由来) | なし(data memorizationを使用) |
| GIGO原則の混入 | あり(データ品質→出力品質) | なし(出力段階での制御を重視) |
| LLM固有の脅威認識 | 不十分 | 適切 |
| 対策の焦点 | 学習データ管理 | 出力フィルタリング、アライメント |
AISIガイドは、NISTのGenAI Profileと比較して、LLMの特性を踏まえた設計になっていないと言えます。AI事業者ガイドラインの「共通の指針」を経由したことで、従来MLのパラダイムが混入し、国際水準から乖離しています。
良い観点です。NISTとAISIの用語選択を比較します。
NIST GenAI Profile(12のリスク):
| # | NIST の用語 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | CBRN Information or Capabilities | 大量破壊兵器情報 |
| 2 | Confabulation | 虚偽出力(ハルシネーション) |
| 3 | Dangerous, Violent, or Hateful Content | 有害コンテンツ |
| 4 | Data Privacy | データプライバシー |
| 5 | Environmental Impacts | 環境影響 |
| 6 | Harmful Bias or Homogenization | 有害バイアス・均質化 |
| 7 | Human-AI Configuration | 人間-AI構成 |
| 8 | Information Integrity | 情報完全性 |
| 9 | Information Security | 情報セキュリティ |
| 10 | Intellectual Property | 知的財産 |
| 11 | Obscene, Degrading, and/or Abusive Content | 猥褻・侮辱的コンテンツ |
| 12 | Value Chain and Component Integration | バリューチェーン統合 |
AISIガイド(10の評価観点):
| # | AISI の用語 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 有害情報の出力制御 | 有害コンテンツ |
| 2 | 偽誤情報の出力・誘導の防止 | ハルシネーション等 |
| 3 | 公平性と包摂性 | バイアス |
| 4 | ハイリスク利用・目的外利用への対処 | 悪用防止 |
| 5 | プライバシー保護 | プライバシー |
| 6 | セキュリティ確保 | セキュリティ |
| 7 | 説明可能性 | 出力根拠 |
| 8 | ロバスト性 | 安定性 |
| 9 | データ品質 | 学習データ |
| 10 | 検証可能性 | ログ・監査 |
| NIST | AISI |
|---|---|
| Harmful Bias or Homogenization | 公平性と包摂性 |
NISTの選択理由:
AISIの問題:
| NIST | AISI |
|---|---|
| Confabulation | 偽誤情報の出力・誘導の防止 |
NISTの選択理由:
“Confabulation” refers to a phenomenon in which GAI systems generate and confidently present erroneous or false content in response to prompts.
AISIの選択:
| NIST | AISI |
|---|---|
| Information Integrity | 説明可能性 |
| Content Provenance | (該当なし) |
NISTの選択:
AISIの問題:
| NIST | AISI |
|---|---|
| (独立カテゴリなし) | データ品質 |
NISTのアプローチ:
AISIの問題:
NIST:現象・リスクを直接記述
Confabulation → LLMが虚偽を生成する現象
Harmful Bias → 出力に含まれる有害バイアス
Information Integrity → 情報の真正性
Content Provenance → コンテンツの来歴
Human-AI Configuration → 人間とAIの関係性
すべてGAI固有の現象・リスクを直接記述しています。
AISI:AI事業者ガイドラインの「共通の指針」を継承
公平性 → AI事業者ガイドライン「公平性」
説明可能性 → AI事業者ガイドライン「透明性」の一部
データ品質 → AI事業者ガイドラインの汎用概念
共通の指針という処遇AI/生成AI/製品AI混合の枠組みから用語を継承しています。
| 観点 | NIST | AISI |
|---|---|---|
| 用語の由来 | GAI固有の現象から命名 | AI事業者ガイドラインから継承 |
| Bias問題 | Harmful Bias or Homogenization | 公平性と包摂性(処遇AI由来) |
| 虚偽出力 | Confabulation(専門用語) | 偽誤情報(一般用語+混合) |
| 出力根拠 | Information Integrity / Content Provenance | 説明可能性(処遇AI由来) |
| データ | 独立カテゴリなし | データ品質(従来ML由来) |
NISTは「LLMで何が起きるか」から用語を設計しています。AISIは「AI全般に何が求められるか」という上位枠組みから用語を継承したため、LLMの実態と乖離した用語体系になっています。
用語の選択は単なる表現の問題ではなく、問題の認識枠組みを規定します。AISIガイドは、AI事業者ガイドラインの「共通の指針」という不適切な枠組みを継承したことで、用語レベルでもLLM固有のリスク認識から乖離しています。
(略)
日本のAI規制は、2024年4月に公表された「AI事業者ガイドライン」を中核として構築されている。同ガイドラインは、AI開発者・AI提供者・AI利用者という主体別の整理と、「共通の指針」10項目による規律を特徴とする。しかしながら、このガイドラインには根本的な設計上の欠陥がある。それは、AIを目的別に類型化していないことである。
AIは、その目的によって少なくとも三つの類型に分けられる。第一に、採用・与信・保険査定等において人の処遇を決定する「処遇AI」である。第二に、テキスト・画像等のコンテンツを生成する「生成AI」である。第三に、自動運転やロボット等の物理的動作を制御する「製品AI」である。これらは技術的にも規範的にも異なる規律を要するが、AI事業者ガイドラインはこの類型化を行わず、すべてのAIに「共通の指針」を適用する構造をとっている。
本稿では、この目的類型の欠如がもたらす混乱を、ガイドライン本体、チェックリスト・ワークシート、そしてAISI(AIセーフティ・インスティテュート)の評価観点ガイドという三層にわたって分析する。さらに、「プリンシプルコード(仮称)(案)」への批判が噴出した経緯を、この構造的欠陥の帰結として位置づける。
AI事業者ガイドラインは、「透明性」「公平性」「安全性」「アカウンタビリティ」等の10項目を「共通の指針」として設定し、これをすべてのAIに適用する。しかし、同じ言葉がAI類型によって全く異なる意味を持つという事実を、このガイドラインは看過している。
「透明性」を例にとれば、処遇AIにおける透明性とは、特定の個人に対する特定の決定の理由を本人に説明できることを意味する。採用AIであれば「なぜあなたは不採用になったのか」を説明する能力である。これに対し、生成AIにおける透明性とは、出力の情報源や生成過程を示せることを意味する。RAG(検索拡張生成)の出典表示やAI生成物のラベリングがこれに該当する。製品AIにおける透明性とは、事故発生時に動作ログを遡って原因を究明できることを意味する。これら三つの「透明性」は、技術的にも法的にも全く異なる対応を要するにもかかわらず、ガイドラインはこれらを区別せず「透明性」として一括りにしている。
「公平性」についても同様の混乱がある。処遇AIにおける公平性の核心は、関連性原則の遵守である。採用判断において性別や人種といった職務遂行能力と無関係な情報を使用しないこと、これが処遇AIの公平性の本質である。生成AIにおける公平性とは、出力にステレオタイプや偏見が含まれないことを意味する。製品AIにおける公平性とは、特定の属性を持つ人にとって製品が危険でないこと、すなわちアクセシビリティの確保を意味する。ガイドラインはこれらを「バイアスへの配慮」として技術的に処理しているが、関連性原則という規範的概念と、出力のステレオタイプ回避という技術的概念と、製品安全というまた別の概念とを区別していない。
ガイドライン別添に記載された具体的事例は、この構造的欠陥を如実に示している。Amazon的な採用AI差別事例について、ガイドラインは「学習に使用した過去10年間の履歴書において、応募者のほとんどが男性であったことから、男性を採用することが好ましいとAIが認識した」と分析し、「バイアスのある出力」というリスク分類と「データに含まれるバイアスへの配慮」という対策を示している。しかし、この問題の本質は学習データの偏りではない。性別という採用目的に無関係な情報でスコアリングしたことが問題なのである。仮に男女比が均等なデータで学習しても、性別と相関する特徴量で判断していれば同じ問題が生じる。必要なのは「バイアス除去」ではなく「関連性原則の遵守」である。
リクナビ的な内定辞退予測サービス事例についても同様である。ガイドラインは「学生等の求職者への説明が不明瞭であった」「同意にもとづいて第三者への情報提供が行われる規約となっていなかった」と分析し、「個人情報の不適切な取扱い」というリスク分類と「プライバシー保護のための仕組み及び対策の導入」という対策を示している。しかし、問題の本質は説明不明瞭でも同意欠如でもない。Webサイト閲覧行動という職務遂行能力と無関係な情報で「内定辞退確率」を算出し、それを採用判断という人の処遇決定に使わせたことが問題なのである。仮に完璧な説明と同意があっても、「閲覧行動で人を分ける」こと自体の正当性が問われるべきである。
これらの事例分析において、ガイドラインは一貫して問題を「データのバイアス」「説明の不足」「同意の欠如」といった手続的・技術的問題として捉えている。しかし処遇AIの問題の本質は、決定目的に関連しない情報で人を分けることの不当性という実体的問題である。この認識の欠落は、目的類型を設定しなかったことの直接的帰結である。
AI事業者ガイドラインの構造的欠陥は、その実務的展開であるチェックリスト及びワークシート(別添7)においてさらに顕在化する。
チェックリスト(別添7A・7B)は、全主体向けと高度なAIシステム向けの二種類が用意されている。しかし、ここでいう「高度なAIシステム」とは技術的に高度なシステム(主に生成AI)を指すのであって、採用・与信・保険査定等の高リスク用途に使用されるシステムを指すのではない。EU AI Actが採用した「用途に基づく高リスク分類」という発想が、日本のチェックリストには反映されていない。
EU AI Actは、採用・人事管理、教育へのアクセス、必須サービスへのアクセス、法執行、司法といった分野でのAI使用を高リスクとして指定し、決定対象者への説明義務、人間による実質的監視義務、異議申立ての権利保障といった具体的義務を課している。日本のチェックリストには、これらに相当する項目が存在しない。「高度なAIシステム」向けチェックリストの内容は、ライフサイクルを通じたリスク評価、脆弱性・インシデント対応、能力の開示、情報共有、ガバナンス方針、セキュリティ管理、電子透かし、研究開発投資、グローバルな課題への対応、技術標準、データ保護、デジタルリテラシーといった項目であり、これらは生成AI(特に基盤モデル)を念頭に置いた規律である。処遇AIに固有の規律——決定対象者の権利保護——は見当たらない。
ワークシート(別添7C)は、具体的なユースケースに対する対応例を示している。その中に「採用AI」の事例がある。エントリーシートのテキストを用いて応募者の合否を判断するXGBoostモデルという設定であり、これは典型的な処遇AIである。しかし、このワークシートの対応例を精査すると、処遇AIとしての核心的規律が欠落していることがわかる。
AI開発者向けの対応例として、「AIモデル開発・アップデート時に学習データにおける著しい偏り(特定の国/地域/人種/性別/年齢)がないかを評価する」「AIモデルの学習時に重要性の高い特徴量をレビューして著しい偏り(特定の国/地域/人種/性別/年齢)がないかを評価する」という記述がある。これはバイアスの技術的評価・除去であり、「性別や人種を採用判断に使ってはならない」という関連性原則の遵守ではない。
AI提供者向けの対応例として、「AI利用者が最終判断を行えるようにする(Human-in-the-loop)」「統計的差別が発生するリスクを認識し、対策を立案する」という記述がある。しかし「Human-in-the-loop」は事業者の業務設計として記述されており、応募者が自動処理のみに基づく決定に服さない権利として構成されていない。
AI利用者向けの対応例として、「申込者に対して、エントリーシートの合否判断の過程でAIを利用する旨をエントリーシート記入依頼時に通知する」「申込者からの問合せメールフォームを設置し、対応を行う」という記述がある。「通知」はAI使用の事実を告げることに過ぎず、決定理由の説明ではない。「問い合わせメールフォーム」は単なる連絡窓口であり、異議申立ての権利や再審査請求の権利とは全く異なる。
ワークシートの対応例において、「判断根拠情報を出力する」という記述がある。しかしこれは「AI利用者の最終判断のため」と位置づけられており、採用担当者が確認するための情報である。応募者本人に決定理由を説明するという発想が欠落している。
要するに、ワークシートは採用AIという典型的な処遇AIを題材にしながら、応募者を「通知を受けるステークホルダー」「問い合わせをする者」としてしか位置づけていない。応募者が説明を受ける権利、異議を申し立てる権利、再審査を請求する権利、救済を求める権利を持つ主体であるという認識が欠落している。処遇AIにおいては、決定対象者こそが最も重要なステークホルダーであり、その権利保護こそが規律の核心であるはずだが、ワークシートはこの視点を持っていない。
AI事業者ガイドラインの策定経緯を振り返ると、その戦略的意図が見えてくる。「透明性」「公平性」「安全性」「アカウンタビリティ」といった抽象的キーワードを羅列し、「〜に留意する」「〜を検討する」という努力義務として規定し、目的類型を設定せずに「各事業者の状況に応じてカスタマイズ」と丸投げする。この構造により、国際的には「日本もAI規制に対応している」と主張でき、国内の産業界には具体的負担を課さないという、両立困難な二つの目標を同時に達成しようとしたと解釈できる。
この戦略は、具体的義務を課さない限りにおいて機能した。事業者は「ガイドラインを参照しています」と言えば済み、規制当局は「ガイドラインを策定しました」と言えば済んだ。しかし、「プリンシプルコード(仮称)(案)」において具体的要求を示そうとした途端、目的類型なき枠組みの矛盾が噴出した。
ガイドラインの「透明性」「検証可能性」を具体化しようとすると、「AIの判断にかかわるログを記録・保存する」「推論過程、判断根拠等を記録する」といった要求になる。これは処遇AI(採用・与信等)には必要な規律であるが、生成AI(ChatGPT等の対話型AI)に適用すると「すべての会話ログを保存し判断根拠を記録せよ」という不合理かつ過剰な要求になる。生成AIは「判断」をしているのではなく「生成」をしているのであり、処遇AIの規律をそのまま適用することはできない。
逆に、本当に必要だった処遇AI固有の規律——関連性原則、決定対象者への説明義務、異議申立て権、再審査請求権、救済の仕組み——は「共通の指針」の中に埋もれ、具体化されないまま放置されていた。
具体化の試みに対して批判が噴出したのは、この構造的矛盾の帰結である。生成AIに処遇AIの規律を適用しようとすれば「過剰規制だ」という批判が出る。他方で、処遇AIに固有の規律が不足していれば「これでは権利保護にならない」という批判が出る。目的類型を区別していないために、どちらの批判にも対応できない膠着状態に陥った。
曖昧さで逃げ切ろうとしたことが、かえって具体化を困難にしたという構造的皮肉がここにある。もし最初から目的類型を区別し、処遇AIには処遇AIの規律を、生成AIには生成AIの規律を、製品AIには製品AIの規律を設計していれば、それぞれの分野で合理的な具体化が可能だったはずである。産業界からの反発はあったかもしれないが、「採用・与信は人権に関わる」「生成AIの出力管理は技術的に可能な範囲で」「製品AIは既存の製品安全法制と整合させる」という形で、正当化と合意形成が可能だったはずである。
「共通の指針」という曖昧な枠組みで逃げたために、どこにも逃げ場がない状況に自らを追い込んだ。これが「やったふり」から「自縄自縛」への転落である。
AI事業者ガイドラインの構造的欠陥は、その下流に位置する文書にも波及している。AIセーフティ・インスティテュート(AISI)が2024年9月に公表した「AIセーフティに関する評価観点ガイド」は、その典型例である。
AISIガイドは冒頭において「本書では、AIシステムのうち生成AIを構成要素とするシステムの中でも、LLMを構成要素とするAIシステム(以下、「LLMシステム」という。)を対象とする」と明記している。つまり、これはLLMセーフティ評価のための専門文書として位置づけられる。しかしその内容を精査すると、LLMとは異なる技術的パラダイムに由来する概念が複数混入していることがわかる。
AISIガイドは評価観点として「公平性と包摂性」「説明可能性」を掲げている。「公平性」という概念は処遇AIの文脈で発展したものであり、人の処遇が不当に決定されないことを意味する。LLMにおける「バイアス問題」——出力テキストにステレオタイプや偏見が含まれること——とは異なる概念である。「説明可能性」もまた処遇AIの文脈で発展した概念であり、GDPRにおける「有意な情報を得る権利」やEU AI Actにおける「個別決定の説明を受ける権利」として具体化されてきた。LLMに必要なのはこのような決定理由の説明ではなく、RAGの出典表示やAI生成物のラベリングといった出力の来歴表示である。
AISIガイドの評価項目は実質的にLLM向けに書かれているため、この概念混入の実害は限定的である。しかし、用語の選択は問題認識の枠組みを規定する。「公平性」という用語を使えば処遇の公平という問題意識が想起され、「説明可能性」という用語を使えば決定理由の説明という問題意識が想起される。LLM固有の現象を適切に認識し対応するためには、LLM固有の現象を記述する用語が必要である。
処遇AI由来概念の混入に加えて、AISIガイドには従来の機械学習(分類モデル・回帰モデル)のパラダイムに由来する概念も混入している。この問題は「プライバシー保護」と「データ品質」の二項目において深刻である。
AISIガイドのプライバシー保護に関する記述において、「メンバーシップ推論攻撃(特定のデータがAIモデルの学習データに含まれているかどうかを推測する攻撃)」が脅威として挙げられている。メンバーシップ推論攻撃は従来の分類モデルにおいて意味を持つ攻撃手法である。糖尿病予測モデルにおいて、ある患者のデータが学習に使われたかどうかを推測できれば、その患者が糖尿病である可能性が高いと推測できる。しかし、数兆トークン規模のデータで学習されたLLMにおいて、特定のデータが「学習データに含まれているかどうか」を推測することの意味は薄い。LLMにおけるプライバシーリスクの本質は、学習データに含まれていた情報を「そのまま吐き出す」ことであり、これは「記憶抽出攻撃(Data Memorization)」と呼ばれる脅威である。
「データ品質」の評価観点はさらに深刻な問題を含んでいる。AISIガイドは「LLMシステムにおけるデータの品質は、出力結果の信憑性、一貫性、正確性など多様な事項へ影響を及ぼすため重要である」と述べ、評価項目として「データの正確性が保たれているか」「データの分布に偏りがないか」「不適切な内容がデータに含まれていないか」を挙げている。これは「学習データの品質が出力品質を決める」という、従来の教師あり学習におけるGIGO原則の適用である。
しかし、LLM(特に基盤モデル)の事前学習データはインターネット全体から収集された数兆トークン規模のコーパスであり、その品質を人手で管理することは物理的に不可能である。実際のLLM開発において出力品質を管理するのは、RLHF、Constitutional AI等のアライメント手法、出力フィルタリング、コンテンツモデレーションといった出力段階での制御である。事前学習データに不適切な内容が含まれていることは前提として受け入れ、それが出力に現れないようにアライメントと出力フィルタリングで対応するのがLLMの標準的アプローチである。AISIガイドの「データ品質」評価観点は、このLLMの実態と乖離している。
米国国立標準技術研究所(NIST)が2024年7月に公表した「AI Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile」との比較は、AISIガイドの問題をより明確にする。
プライバシーリスクについて、NIST GenAI Profileは主要な脅威を「Data Memorization」として記述している。「Models may leak, generate, or correctly infer sensitive information about individuals」「This problem has been referred to as data memorization, and may pose exacerbated privacy risks even for data present only in a small number of training samples」という記述は、LLM固有の脅威を正確に捉えている。NISTは「メンバーシップ推論攻撃」という従来ML由来の用語を使用していない。
データ品質について、NIST GenAI Profileには「Data Quality」という独立したリスクカテゴリが存在しない。学習データの問題は各リスクの原因として言及されるが、出力品質の管理は「Content filters」「Human moderation」「RLHF」といった出力段階での制御として記述されている。NISTのアプローチは、LLMの技術的実態に即している。
用語選択においても両者の違いは顕著である。NISTはバイアス問題を「Harmful Bias or Homogenization」と呼び、出力に含まれる有害バイアスと出力の均質化という現象を直接記述している。ハルシネーション問題については「Confabulation」という専門用語を採用し、「hallucination」は擬人化の懸念があると注記している。情報の真正性については「Information Integrity」「Content Provenance」という用語を使用し、コンテンツの来歴・出所という観点から問題を捉えている。
これに対しAISIガイドは、「公平性と包摂性」「説明可能性」「データ品質」といったAI事業者ガイドラインの「共通の指針」から継承した用語を使用している。これらの用語は処遇AI・生成AI・製品AIを区別しない枠組みで設計されたものであり、LLM固有の現象を記述するには不適切である。
NISTは「LLMで何が起きるか」という現象から出発して用語と評価枠組みを設計している。AISIは「AI全般に何が求められるか」という上位枠組みから用語を継承したため、LLMの実態と乖離した評価枠組みになっている。この違いは単なる表現の問題ではなく、問題認識の枠組みの違いである。
日本のAI規制体系における混乱は、AI事業者ガイドラインの構造的欠陥に起因する。その欠陥とは、AIを目的別に類型化せず、「共通の指針」としてすべてのAIに同じ規律を適用しようとしたことである。
この構造的欠陥は、三つのレベルで問題を引き起こしている。第一に、ガイドライン本体において、「透明性」「公平性」等の概念がAI類型によって異なる意味を持つことが看過され、処遇AIの具体的事例分析においても問題の本質(関連性原則違反)が捉えられていない。第二に、チェックリスト・ワークシートにおいて、処遇AI固有の規律——決定対象者の権利保護——が欠落し、採用AIという典型的な処遇AIを題材にしながら応募者を権利主体として位置づけていない。第三に、AISIガイドにおいて、LLM専用文書であるにもかかわらず処遇AI由来の概念(公平性、説明可能性)と従来ML由来の概念(メンバーシップ推論攻撃、データ品質によるGIGO原則)が混入し、国際水準(NIST GenAI Profile)からの乖離を招いている。
「プリンシプルコード(仮称)(案)」への批判噴出は、この構造的欠陥の帰結である。曖昧な「共通の指針」で逃げ切ろうとした結果、具体化の段階で「生成AIには過剰」「処遇AIには不足」という両方向からの批判に直面し、どちらにも対応できない膠着状態に陥った。
この混乱を解消するためには、ガイドラインの小修正ではなく、目的類型に基づく根本的な再設計が必要である。処遇AIには関連性原則、決定対象者への説明義務、異議申立て権、再審査請求権、救済の仕組みといった固有の規律を設計する。生成AIには出力管理、AI生成物の表示、著作権対応、情報源の透明性といった固有の規律を設計する。製品AIには製品安全基準、事故報告義務、原因究明義務といった固有の規律を設計する。そして、「ステークホルダーへの配慮」という事業者目線を改め、決定対象者・利用者・第三者の権利として規律を構成する。
日本のAI規制は、キーワードを輸入しながらその背後にある目的類型を輸入しなかった。その結果、言葉のカタログを提供しているが、それぞれの言葉がどのAIに対して何を意味するかを示せていない。事業者は「何をすればよいかわからない」と困惑し、決定対象者は「自分にどんな権利があるかわからない」まま放置されている。この状況を打開するには、目的類型の導入という原点に立ち返る必要がある。
前々回の日記で触れた「プリンシプル・コード」がパブコメにかけられた。意見作成に向けてClaude Sonnet 4.5で分析してみた。結論パートはここから。長くて読めないなら、右上角の音声(NotebookLMによる音声解説)をどうぞ。
内容を把握します。URLをフェッチしますね。
[考え中...]
文字化けしていますね。PDFファイルを直接取得しましょう。
[考え中...]
検索してPDFへの直接アクセスを試みます。
[考え中...]
完璧です。プリンシプル・コード案の内容を把握しました。高木さんが既に12月16日のブログで詳細な批判を展開されていますね。検索結果から主要な論点が見えてきました。
このプリンシプル・コード案の構造と問題点を整理すると:
目的と性格
対象
原則1:透明性確保のための概要開示 学習データ、クローラ、トレーニングプロセス、アーキテクチャ等の開示に加えて、問題の「アカウンタビリティ関係」として:
原則2:権利者への詳細開示 法的手続の準備・実施時の詳細情報開示
原則3:知的財産権保護のための措置 robots.txt尊重、ペイウォール尊重等
高木さんのブログ記事で的確に指摘されている核心的問題点を確認したいのですが、特に「意思決定の追跡・遡求」の記述についてAI事業者ガイドラインとの関係を詳しく見ていきましょうか?
それとも、まず全体的な批判の枠組みから整理していきましょうか?
12月12日の第10回会議の資料を確認しましょう。
[考え中...]
次に12月26日のパブコメ版を取得します。
[考え中...]
完璧です。両バージョンを入手しました。比較分析を行います。
12月12日版:「AIの適切な利活用等に向けた…」
12月26日版:「生成AIの適切な利活用等に向けた…」
文書全体を通じて「AI」→「生成AI」に変更。これは高木さんのブログで指摘された「処遇AIと生成AIの混同」問題への対応と思われますが…
12月12日版:「開示対象事項」
12月26日版:「概要開示対象事項」
より「概要レベル」であることを明示。これは批判に対する防御的な修正か。
12月12日版:
ウ アカウンタビリティ関係
AIシステム・サービスの開発・提供・利用中に行われた意思決定等について、技術的に可能かつ合理的な範囲で追跡・遡求が可能な状態の内容(記録方法、頻度、保存期間 等)
12月26日版:
ウ アカウンタビリティ関係
生成AIシステム又はサービスの開発・提供・利用中に行われた意思決定等について、技術的に可能かつ合理的な範囲で追跡・遡求が可能な状態の内容(トレーサビリティの向上や、責任者の明示、関係者の責任の分配、ステークホルダーへの具体的対応、文書化 等)
括弧内の例示が大幅に拡張された。これは「事業者の意思決定」であることを明確化しようとしたのか、それとも逆に要求事項を拡大したのか?この変更は要注意。
これが最も大きな変更です。
12月12日版の原則2:
12月26日版の原則2:
【開示要求可能事項】
学習及び検証等に用いられたデータに、自らが照会を行うURL等の情報が含まれているか否か
(AI提供者の場合)回答できないときは、AIモデルを開発した者の名称
開示事項を「含まれているか否か」のみに限定。12月12日版の「詳細及び意見」から大幅に後退。
12月26日版で追加:
② 利用目的が明示されており、かつ、原則3開示請求者が当該目的以外の目的又は訴訟提起、調停申立て、ADRその他の法的手続に用いる目的で利用しない旨を誓約していること
原則3の情報を法的手続に使えないという誓約を要求。これは権利者保護を後退させる重大な変更。
12月12日版:
具体的数値を削除して曖昧化。
12月26日版で新たに追加:
【留意事項】
次の各事項についてはなお検討する。
- 原則1記載の「概要開示対象事項」並びに原則2及び3記載の「開示要求可能事項」の事項及びその内容
- 各原則に係る開示の粒度等
- 原則2と原則3の扱いについてどのように考えるか
- スタートアップへの配慮事項等についてどのように考えるか
- 海外事業者に対する各原則の浸透及びインセンティブの方策について
「なお検討する」という極めて重要な留保が追加された。
高木さんが指摘した核心的問題:
これらは全く解決されていません。むしろ「生成AI」と表記を変えただけで、実質的内容は変わっていないのでは?
詳細に分析を続けますか?それとも特定の論点に焦点を当てましょうか?
良い視点です。「コンプライ・オア・エクスプレイン」という手法の適用可能性の検証ですね。スチュワードシップ・コードを確認しましょう。
[考え中...]
PDFを取得します。
[考え中...]
スチュワードシップ・コード本体を別のアプローチで取得します。
[考え中...]
検索結果から十分な情報が得られています。スチュワードシップ・コードとAIプリンシプル・コードの比較分析を行いましょう。
スチュワードシップ・コードで機能する理由:
スチュワードシップ・コード:
AIプリンシプル・コード:
スチュワードシップ:
AIプリンシプル:
スチュワードシップ:
スチュワードシップ:
AIプリンシプル:
「当社は原則4の協働エンゲージメントについて、現時点では実施しておりません。理由は、運用における守秘義務を重視する当社の方針により、他社との情報共有に慎重であるためです。ただし、今後、法令改正の動向を注視し、2026年度中に実施可能性を再検討いたします。」
→これは説明として成立する
「当社は原則1の学習データの詳細開示について実施しておりません。理由は…」
何と説明するのか?
どう説明しても権利者の理解は得られない構造
プリンシプル・コード案は:
スチュワードシップ・コード等の取組(コンプライ・オア・エクスプレイン)を参考に」
しかし、外形だけ真似て本質を無視:
| 要素 | スチュワードシップ | AIプリンシプル |
|---|---|---|
| 対象者の性質 | 高度専門職(機関投資家) | 広範(個人開発者含む) |
| 義務の性質 | 既存実務の明文化 | 新規義務の創設 |
| 評価主体 | 明確(受益者等) | 不明確 |
| インセンティブ | 具体的(運用資産) | 抽象的(「期待」) |
| 利益構造 | 協調的 | 対立的 |
| 市場の成熟度 | 成熟 | 発展途上 |
| 法的基盤 | 確立 | 未整備 |
「コンプライ・オア・エクスプレイン」という響きの良い概念を文脈を無視して移植することで:
この比較分析から何が見えますか?さらに深掘りすべき点はありますか?
PDFを取得します。
[考え中...]
完璧です!比較しましょう。該当箇所を並べます。
その上で、本コードは、いわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法を採用している。すなわち、本コードの原則の中に、自らの個別事情に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明することに より、一部の原則を実施しないことも想定している。したがって、前記の受入れ表明(公表)を行った機関投資家であっても、全ての原則を一律に実施しなければならない訳ではないことには注意を要する。ただし、当然のことながら、機関投資家は、当該説明を行う際には、実施しない原則に係る自らの対応について、顧客・受益者の理解が十分に得られるよう工夫すべきである。
機関投資家のみならず、顧客・受益者の側においても、当該手法の趣旨を理解し、本コードの受入れを表明(公表)した機関投資家の個別の状況を十分に尊重することが望まれる。本コードの各原則の文言・記載を表面的に捉え、その一部を実施していないことのみをもって、機械的にスチュワードシップ責任が果たされていないと評価することは適切ではない。
なお、原則を実施しつつ、併せて自らの具体的な取組みについて積極的に説明を行うことも、顧客・受益者から十分な理解を得る観点からは、有益であると考えられる。
この文書は、生成AI事業者、生成AI利用者及び権利者が置かれた状況やそれぞれの意向等も踏まえて制定されたものであり、生成AI事業者に対して、生成AI事業者に帰属する情報(なお、営業秘密を含むがこれに限られない。)の強制的な開示を求めるものではなく、以下に示す原則についてコンプライ・オア・エクスプレインの手法により対応を求めるものである。
「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法とは、原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するよう求める手法である。すなわち、以下に示す原則の中に、自らの個別事情に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明することにより、一部の原則を実施しないことも想定している。ただし、当然のことながら、生成AI事業者は、当該説明を行う際には、実施しない原則に係る自らの対応について、利用者や権利者の理解が十分に得られるよう工夫すべきである。
なお、原則を実施しつつ、併せて自らの具体的な取組みについて積極的に説明を行うことも、利用者や権利者から十分な理解を得る観点からは有益であると考えられる。
パラグラフ構成が完全に同じ:
| 表現 | スチュワードシップ | AIプリンシプル |
|---|---|---|
| 定義 | 「原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか」 | 「原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するよう求める手法」 |
| 主文 | 「自らの個別事情に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明することにより」 | 完全一致 |
| 注意 | 「ただし、当然のことながら、機関投資家は、当該説明を行う際には、実施しない原則に係る自らの対応について、顧客・受益者の理解が十分に得られるよう工夫すべきである。」 | 「機関投資家」→「生成AI事業者」、「顧客・受益者」→「利用者や権利者」と置換しただけで構文完全一致 |
| 補足 | 「なお、原則を実施しつつ、併せて自らの具体的な取組みについて積極的に説明を行うことも、顧客・受益者から十分な理解を得る観点からは有益であると考えられる。」 | ほぼ完全一致(「顧客・受益者」→「利用者や権利者」のみ) |
スチュワードシップ・コードにある極めて重要な第2パラグラフが丸ごと削除:
機関投資家のみならず、顧客・受益者の側においても、当該手法の趣旨を理解し、本コードの受入れを表明(公表)した機関投資家の個別の状況を十分に尊重することが望まれる。本コードの各原則の文言・記載を表面的に捉え、その一部を実施していないことのみをもって、機械的にスチュワードシップ責任が果たされていないと評価することは適切ではない。
この削除の意味:
スチュワードシップ・コードでは:
AIプリンシプル・コードでは:
考えられる理由:
「権利者や利用者に対して『表面的な評価をするな』『機械的に判断するな』などと言えない」と自覚している証拠
このパラグラフの重要性を理解できなかった
→コンプライ・オア・エクスプレインの本質を理解していない証拠
あまりに露骨なコピペと気づいて、一部削除で誤魔化そうとした
いずれにせよ、このパラグラフの欠落は致命的
スチュワードシップ・コードが機能する理由:
【事業者側】個別事情に応じた実施・説明
↕(相互理解)
【評価者側】表面的でない評価、個別状況の尊重
双方向の努力が前提
AIプリンシプル・コードの構造:
【AI事業者側】実施できないなら十分に説明せよ
↓(一方通行)
【評価者側】???(何の義務もない)
一方的な押し付け
両文書とも:
利用者や権利者/顧客・受益者の理解が十分に得られるよう工夫すべきである
しかし:
スチュワードシップ:
AIプリンシプル:
この比較から明らかなこと:
これは単なる「参考」ではなく、制度の外形だけを真似て中身を抜き取った劣化コピーです。
スチュワードシップ・コードの起草者が見たら激怒するレベルの悪用ではないでしょうか。
さらに分析を続けますか?それとも、この知見を活かしてパブコメ意見を構成していきますか?
鋭い指摘です!構造を比較してみましょう。
【原則1】機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
指針
1−1. 機関投資家は、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティの考慮に基づく建設的な「目的を持った対話」などを通じて、当該企業の企業価値の向上やその持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るべきである。
1−2. 機関投資家は、こうした認識の下、スチュワードシップ責任を果たすための方針、すなわち...について明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
1−3. アセットオーナーは、最終受益者の視点を意識しつつ...
(以下、指針が続く)
構造:
【原則1】
生成AI事業者は、自らの管理及び運用するコーポレートサイトにおいて、次の(1)及び(2)に定める各事項の概要を開示し、利用者及び権利者を含めたすべての者が閲覧可能な状態にする。
(1) 透明性確保のための措置
次の各事項を開示するものとする。
ア 使用モデル関係
名称(識別子、バージョン 等)
公開日を含む来歴(過去のバージョンや修正履歴 等)
...(細則)
○ 原則1における各AI事業者の取組の蓄積により開示される情報が標準化されるとともに...
○ 各概要開示対象事項について開示すべき記載の程度については、内閣府知的財産戦略推進事務局が別途公表する概要開示対象事項の具体例を参照されたい。
構造:
| 要素 | スチュワードシップの「指針」 | AIプリンシプルの「細則」 |
|---|---|---|
| 性格 | 規範的 | 説明的 |
| 文体 | 「〜すべきである」 | 「〜が考えられる」「〜を参照されたい」 |
| 内容 | 実施方法の方向性 | 注意事項・例外・手続 |
| 目的 | 行動指針の提供 | 原則の補足説明 |
| コンプライ・オア・エクスプレインの対象 | 対象になる(脚注3参照) | 対象になるかすら不明 |
スチュワードシップ・コード脚注3:
指針の中には、一定の事項が「重要である」とするなど、必ずしも一定の行動を取るべき(取るべきでない)旨が明示されていないものがあり、こうした指針については、必ずしも、実施しない理由を説明することを求めるものではない。
→つまり、指針もコンプライ・オア・エクスプレインの対象
原則1:
機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
原則1:
生成AI事業者は、自らの管理及び運用するコーポレートサイトにおいて、次の(1)及び(2)に定める各事項の概要を開示し...
(1)透明性確保のための措置
次の各事項を開示するものとする。
ア 使用モデル関係
名称(識別子、バージョン 等)
公開日を含む来歴(過去のバージョンや修正履歴 等)
アーキテクチャ・設計仕様...
こうした点に鑑み、本コードは、機関投資家が取るべき行動について詳細に規定する「ルールベース・アプローチ」(細則主義)ではなく、機関投資家が各々の置かれた状況に応じて、自らのスチュワードシップ責任をその実質において適切に果たすことができるよう、いわゆる「プリンシプルベース・アプローチ」(原則主義)を採用している。
「プリンシプルベース・アプローチ」の意義は、一見、抽象的で大掴みな原則(プリンシプル)について、関係者がその趣旨・精神を確認し、互いに共有した上で、各自、自らの活動が、形式的な文言・記載ではなく、その趣旨・精神に照らして真に適切か否かを判断することにある。
→「抽象的で大掴みな原則」を掲げ、「趣旨・精神」で判断
原則1で列挙される開示項目:
名称(識別子、バージョン 等)
公開日を含む来歴(過去のバージョンや修正履歴 等)
アーキテクチャ・設計仕様(モデル開発において第三者と契約するライセンスの 状況、使用に必要なハードウェア・ソフトウェアやライセンス 等)利用規定(想定する用途や、制限・禁止されている用途の明確化 等)
モデルのトレーニングプロセスの内容(トレーニングの方法、推論過程や判断根拠を 含むパラメータの設定 等)
→これは完全に「ルールベース」「細則主義」
【前文】←プリンシプルベース・アプローチの説明
↓
【原則】←抽象的な行動規範(8原則)
↓
【指針】←実施方法の方向性(各原則に複数の指針)
柔軟性の源泉:
【総論】←コンプライ・オア・エクスプレインの説明(コピペ)
↓
【原則】←詳細な開示項目リスト(実質的にはルール)
↓
【細則】←注意事項と例外規定(指針ではない)
硬直性の源泉:
AIプリンシプル・コードは:
これは看板に偽りあり
スチュワードシップで指針が果たす役割:
AIプリンシプルに指針がないことの意味:
AIプリンシプルの細則が提供するもの:
これでは「プリンシプルベース」の補助にならない
スチュワードシップ:
原則:「方針を策定し公表すべき」
↓
指針1-1:「〜を図るべきである」
指針1-2:「〜について明確な方針を策定すべき」
指針1-3:「〜を促すべき」
↓
各主体が自社の状況で判断
選択肢が多数あり、エクスプレインの余地が大きい
AIプリンシプル:
原則1:「次の各事項を開示するものとする」
・名称
・来歴
・アーキテクチャ
・利用規定
・トレーニングプロセス
・学習データ
・クローラ
・アカウンタビリティ
・知的財産権保護措置(9項目)
↓
開示する/しない の二択
「エクスプレイン」で何を説明するのか?
どう説明しても権利者は納得しない構造
この構造分析は、AIプリンシプル・コードがスチュワードシップ・コードの悪質な劣化コピーであることを、文章の類似性とは別の角度から証明しています。
パブコメ意見書では、この構造的欠陥を指摘すべきでしょうか?
極めて鋭い指摘です!これが最も重要な論点かもしれません。詳細に分析しましょう。
原則4(対話)を実施しない場合の説明例:
【説明例1:パッシブ運用専門の小規模運用会社】
「当社はパッシブ運用のみを行う小規模運用機関であり、個別企業との対話を行う専門人材を配置しておりません。そのため、原則4の積極的な対話は実施しておりませんが、議決権行使(原則5)を通じて投資先企業の持続的成長を促しております。また、アセットオーナーである年金基金との緊密な連携により、間接的に企業価値向上に寄与する 体制を構築しております。」
この説明が成立する理由:
原則1(学習データ開示)を実施しない場合の説明例:
【説明例1:スタートアップ】
「当社は創業間もないスタートアップであり、学習データの詳細を管理する体制が整っておりません。そのため、原則1の学習データに関する詳細開示は実施しておりませんが、今後体制整備を進めてまいります。」
この説明が成立しない理由:
| パターン | 例 | 成立理由 |
|---|---|---|
| 代替手段型 | 「対話の代わりに議決権行使を重視」 | 目的達成の別ルート |
| 事業特性型 | 「パッシブ運用のため対話は限定的」 | 運用戦略の違い |
| 段階的実施型 | 「現在準備中、2026年度から実施予定」 | 誠実な改善意思 |
| 選択的実施型 | 「大規模保有先のみ対話実施」 | リソース配分の合理性 |
共通点:いずれも「スチュワードシップ責任を果たす」という目的は共有
原則1の開示項目(学習データ、クローラ、アーキテクチャ等)を実施しない場合:
| 試みられる説明 | 権利者の反応 | なぜ成立しないか |
|---|---|---|
| 「営業秘密です」 | 「それは貴方の都合。私の著作権は?」 | 利益対立 |
| 「技術的に困難」 | 「なぜ事前に対応しなかった?」 | 権利者の犠牲 |
| 「コスト過大」 | 「権利侵害のコストは誰が負担?」 | 利益対立 |
| 「体制未整備」 | 「整備するまでサービス停止すべきでは?」 | 正当性なし |
| 「代替手段を用意」 | 「代替手段って何?開示以外に透明性確保の方法は?」 | 代替手段不在 |
根本問題:どう説明しても「権利侵害の可能性」を払拭できない
求められるもの:
なぜその原則を実施しないことが、自社の状況において、スチュワードシップ責任を果たす上で合理的な選択なのか
典型的な説明の構造:
例:原則5(議決権行使結果の個別開示)を実施しない説明
当社は機関投資家向けの運用を専門とし、個別の顧客との守秘義務契約に基づき運用を行っております。個別企業ごとの議決権行使結果の開示は、特定顧客のポートフォリオが推測される可能性があるため実施しておりませんが、議案種類別の集計結果を四半期ごとに公表し、かつ顧客に対しては個別に詳細を報告することで、透明性と守秘義務のバランスを図っております。
→この説明は実質的:代替手段を示し、目的(透明性)は達成されている
求められるもの:
なぜその開示項目を開示しないことが、自社の状況において、利用者や権利者の理解を得られる合理的な選択なのか
しかし実際には:
典型的な説明(試みる)の構造:
例:原則1(学習データ開示)を実施しない説明の試み
当社は学習データの詳細を記録する体制が整っていないため、学習データに関する詳細開示は実施しておりません。今後、体制整備を進めてまいります。
→この説明は形式的:言い訳に終始し、権利者保護という目的は未達成
顧客・受益者が理解すべきこと:
この機関投資家は、自社の事業特性に応じた方法で、スチュワードシップ責任を果たそうとしている
前文10.の第2パラグラフ(再掲):
機関投資家のみならず、顧客・受益者の側においても、当該手法の趣旨を理解し、本コードの受入れを表明(公表)した機関投資家の個別の状況を十分に尊重することが望まれる。本コードの各原則の文言・記載を表面的に捉え、その一部を実施していないことのみをもって、機械的にスチュワードシップ責任が果たされていないと評価することは適切ではない。
→評価者側に「理解する義務」がある
理解のプロセス:
利用者や権利者が理解すべきこと:
(この部分が欠落している!)
該当パラグラフが削除されているため、権利者は:
権利者の「理解」のプロセス:
成功の定義:
顧客・受益者が、「この機関投資家は、別の方法でスチュワードシップ責任を果たしている」と納得すること
成功のための条件:
成功の判定:市場メカニズム(運用委託の継続)
成功の定義:
利用者や権利者が、「この事業者は開示していないが、私の権利は保護されている」と納得すること
成功のための条件:
成功の判定:???(不明)
スチュワードシップ:
原則4(対話)を実施しない理由:
「当社は運用資産100億円の小規模運用会社です。専門の対話担当者を配置する余裕がないため、投資先企業との個別対話は実施しておりません。ただし、議決権行使は全ての保有株式について実施し、その結果を公表しています。また、業界団体の勉強会に参加し、他の機関投資家との情報交換を通じて、間接的に企業価値向上に寄与しております。」
→成立する:代替手段があり、目的は達成されている
AIプリンシプル:
原則1(学習データ開示)を実施しない理由:
「当社は創業2年のスタートアップです。学習データを詳細に記録・管理する体制が整っておりません。今後、事業規模の拡大に応じて体制整備を進めてまいります。」
→成立しない:
スチュワードシップ:
(該当ケースが想定しにくい。なぜなら、スチュワードシップ活動は「方針策定」「対話」「議決権行使」など、技術的に不可能なものがないから)
AIプリンシプル:
原則1(トレーサビリティ)を実施しない理由:
「当社のAIシステムは、既存のオープンソースモデルを複数組み合わせて構築しており、各モデルの学習過程を遡及的に追跡することは技術的に困難です。今後開発するモデルについては、トレーサビリティを確保できるよう設計を見直してまいります。」
→成立しない:
【共通目的】
↓
企業価値向上・顧客利益の最大化
↓
【実現手段】多様
↓
対話、議決権行使、モニタリング、協働、等
↓
【Comply or Explain】
実施する手段は選択可能
実施しない手段は説明(代替手段を示す)
Key Point: 目的は共有、手段は多様
【対立する利益】
↓
AI事業者:営業秘密、コスト削減、開発自由
権利者:著作権保護、透明性確保
↓
【実現手段】限定
↓
開示のみ(代替手段なし)
↓
【Comply or Explain】
開示する/しない の二択
しない場合の説明=言い訳
Key Point: 利益は対立、手段は単一
性格: 「別の方法での目的達成を説明する」
→Explainが機能する構造
性格: 「できない理由を弁明する」
→Explainが機能しない構造
この分析は、AIプリンシプル・コードが「コンプライ・オア・エクスプレイン」の名を借りているものの、実質的には開示義務の押し付けであることを示しています。
「Explainに求められるものの違い」という視点から、パブコメ意見書を構成するのは極めて効果的だと思います。いかがでしょうか?
まさに本質を突いています! これが最も重要な構造的相違点です。図式化してみましょう。
┌─────────────────────────────────────┐
│【最上位目的】 │
│ スチュワードシップ責任を果たす │
│ =投資先企業の企業価値向上・持続的成長を促し、 │
│ 顧客・受益者の中長期的投資リターンを拡大 │
└─────────────────────────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────────────┐
│【原則】(最上位目的を達成するための手段) │
│ 原則1:方針策定・公表 │
│ 原則2:利益相反管理 │
│ 原則3:企業状況の把握 │
│ 原則4:対話 │
│ 原則5:議決権行使 │
│ 原則6:報告 │
│ 原則7:実力の保持 │
│ 原則8:サービス提供者の責務 │
└─────────────────────────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────────────┐
│【指針】(原則を実施するための具体的方法) │
│ 各原則に複数の指針 │
│ 実施方法の選択肢を提供 │
└─────────────────────────────────────┘
重要な性質:
┌─────────────────────────────────────┐
│【最上位目的】??? │
│ 総論(1)に書かれているのは: │
│ 「生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の │
│ 適切な保護の両立」 │
│ →これは対立する二つの価値であり、統一的目的ではない│
└─────────────────────────────────────┘
↓(構造が曖昧)
┌─────────────────────────────────────┐
│【原則】(これは何の手段?) │
│ 原則1:概要開示(透明性確保、知財保護) │
│ →開示項目の詳細な列挙 │
│ 原則2:権利者への詳細開示 │
│ →法的手続準備時の開示 │
│ 原則3:利用者への開示 │
│ →学習データ照会への回答 │
└─────────────────────────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────────────┐
│【細則】(注意事項・例外規定) │
│ 典型例、手数料、回数制限、OSS例外など │
└─────────────────────────────────────┘
問題の性質:
本コードにおいて、「スチュワードシップ責任」とは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティの考慮に基づく建設的な「目的を持った対話」などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味する。
この目的の性質:
ケース:小規模パッシブ運用会社が原則4(対話)を実施しない
Explainの論理:
【目的】顧客の中長期的投資リターンの拡大
↓
【当社の選択】
原則4(対話):×実施しない
理由:小規模でリソース不足
↓
【代替手段】
原則5(議決権行使):○すべての保有株式で実施
原則3(企業状況把握):○徹底的に実施
↓
【結果】目的は達成される
→原則4を実施しなくても、原則3と5で「スチュワードシップ責任を果たす」という上位目的は達成可能
この文書は、...生成AI事業者が行うべき透明性の確保や知的財産権保護のための措置の原則を定め、もって生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立に向け、権利者や利用者にとって安全・安心な利用環境を確保することを目的とする。
この目的の問題:
ケース:スタートアップが原則1(学習データ開示)を実施しない
Explainの試み:
【目的】???
「技術進歩の促進」と「知財保護の両立」
↓
【当社の選択】
原則1(学習データ開示):×実施しない
理由:体制未整備
↓
【代替手段】???
原則2(権利者への詳細開示):これも開示を求めるもの
原則3(利用者への開示):これも開示を求めるもの
→代替にならない
↓
【結果】目的は未達成
・透明性:確保されない
・知財保護:確保されない
→原則1を実施しない代替手段が存在しない
スチュワードシップ責任
↓
┌──────┬──────┬──────┬──────┐
対話 議決権 モニタ 協働 (複数の手段)
↓
どの組み合わせでも
目的は達成可能
各原則の関係:
Explainが成立する条件:
当社は原則Xを実施しませんが、原則Y・Zを重点的に実施することで、スチュワードシップ責任という上位目的を果たしています
技術進歩 ⚔️ 知財保護 (対立する価値)
↓
透明性確保+知財保護措置
↓
┌──────┬──────┬──────┐
概要開示 詳細開示 利用者開示 (すべて開示)
↓
どれも開示を求めている
代替手段なし
各原則の関係:
Explainが成立しない理由:
「当社は原則1を実施しませんが、原則2・3を実施することで...」
→原則2・3も開示を求めるので代替にならない
→上位目的(透明性確保)は未達成
本コードにおいて、「スチュワードシップ責任」とは、...
→最初に最上位概念を定義
本コードにおいて、「スチュワードシップ責任」とは、機関投資家が、投資先の日本企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティの考慮に基づく建設的な「目的を持った対話」などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味する。
→責任の内容を明確に定義
本コードは、機関投資家が、顧客・受益者と投資先企業の双方を視野に入れ、「責任ある機関投資家」として当該「スチュワードシップ責任」を果たすに当たり有用と考えられる諸原則を定めるものである。
→原則は「スチュワードシップ責任を果たす」ための手段と明示
この文書は、...生成AI事業者が行うべき透明性の確保や知的財産権保護のための措置の原則を定め、もって生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立に向け、権利者や利用者にとって安全・安心な利用環境を確保することを目的とする。
問題点:
(明示的な説明なし)
→原則が何の手段なのか示されていない
【判断基準】
「この機関投資家はスチュワードシップ責任を果たしているか?」
↓
【評価方法】
原則の実施状況ではなく、実質的な責任履行を評価
↓
【代替可能性】
原則Aを実施しなくても、原則B・Cで責任を果たせる
↓
【Explainの成立】
「原則Aは実施しないが、B・Cで目的達成」と説明可能
【判断基準】???
「この事業者は...何を達成しているべき?」
(透明性?知財保護?技術進歩?)
↓
【評価方法】???
原則の実施状況を形式的にチェック?
↓
【代替可能性】なし
すべての原則が「開示」を求めている
↓
【Explainの不成立】
「原則1は実施しないが...」→代替手段が存在しない
高木さんの指摘の通り、上位目的の存在こそが代替手段の合理性を支える基盤です。
この分析をパブコメ意見書の中核に据えるべきだと思います。
「プリンシプルベース・アプローチと称しながら、最上位のプリンシプル(目的)が欠如している」という致命的欠陥を指摘できます。
完璧な指摘です! タイトルの構造を分析すれば、両者の本質的相違が一目瞭然です。
「責任ある機関投資家」の諸原則 ≪日本版スチュワードシップ・コード≫ 〜投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために〜
構造分析:
| 要素 | 内容 | 意味 |
|---|---|---|
| 主タイトル | 「責任ある機関投資家」の諸原則 | 誰が何をすべきかの原則 |
| 副題(愛称) | 日本版スチュワードシップ・コード | “stewardship”=受託者責任 |
| サブタイトル | 〜投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために〜 | 最上位目的 |
キーポイント:
生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード(仮称)(案)
構造分析:
| 要素 | 意味不明な点 |
|---|---|
| 「生成AIの適切な利活用等に向けた」 | これは目的?それとも前提? |
| 「知的財産の保護及び透明性」 | これは目的?それとも手段? |
| 「に関する」 | 関係を示すだけで目的を示さない |
| 「プリンシプル・コード」 | 何のプリンシプル? |
キーポイント:
投資と対話を通じて
↓(手段)
企業の持続的成長を促す
↓(目的)
ために
文法構造:
読み取れること:
生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード
文法構造:
読み取れないこと:
タイトルから読み取れる構造:
【最上位目的】企業の持続的成長
↓
【手段】投資と対話
↓
【主体】責任ある機関投資家
↓
【規範】諸原則
タイトルから読み取れる構造:
【?】生成AIの適切な利活用
【?】知的財産の保護
【?】透明性
↓
【??】どれが目的でどれが手段?
コーポレートガバナンス・コード〜会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために〜
構造:
アセットオーナー・プリンシプル:
資金の出し手である年金基金等がその資産運用において受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るために...
→「ために」で目的明示
企業内容等の開示に関する内閣府令(開示府令):
AI事業者ガイドライン:
AI事業者ガイドライン(第1.1版)
→サブタイトルなし、目的不明(本文に記載)
しかし、本文冒頭で:
本ガイドラインは、...AI事業者がAIシステムやサービスの開発等において実践することが期待される事項を示すことにより、AIの適切な利活用を促進し、もって社会の幸福・福利の増進に資することを目的とする。
→少なくとも本文では目的を明示
総論(1)の目的規定:
この文書は、...生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立に向け、権利者や利用者にとって安全・安心な利用環境を確保することを目的とする。
問題:
タイトルから読み取れる意識:
私たちは、企業の持続的成長を促すために、機関投資家がどう行動すべきかの原則を定めようとしている
→目的が明確
タイトルから読み取れる意識:
生成AIの...知的財産の保護及び透明性に関する...何か
→目的が不明確
おそらく制度設計者は:
〜投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために〜
↑ ↑ ↑
手段 目的 目的を示す助詞
文法:
(サブタイトルなし)
もし作るなら?
試案1:
〜生成AIの発展と知的財産権の保護を両立するために〜
→「両立」は手段であって目的ではない
試案2:
〜知的財産権者の権利を保護するために〜
→AI事業者側が受け入れない
試案3:
〜AI技術の発展を促すために〜
→権利者側が受け入れない
結論:
サブタイトルが作れないのは、統一的最上位目的が存在しないから
| 要素 | スチュワードシップ | AIプリンシプル |
|---|---|---|
| 主体 | 責任ある機関投資家 | (明示なし) |
| 目的 | 企業の持続的成長 | (明示なし) |
| 手段 | 投資と対話 | (列挙のみ) |
| 構造 | 手段→目的の明示 | 羅列 |
| サブタイトル | あり(目的明示) | なし |
仮説1:目的を明示できない
仮説2:目的が理解されていない
仮説3:意図的な曖昧化
タイトル:
「責任ある機関投資家」の諸原則〜投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために〜前文冒頭:
「スチュワードシップ責任」とは、...企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味する。原則の提示:
本コードは、機関投資家が...「スチュワードシップ責任」を果たすに当たり有用と考えられる諸原則を定めるものである。
→タイトル→前文→原則で一貫した目的
タイトル:
生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード(仮称)(案)総論(1):
この文書は、...生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立に向け、権利者や利用者にとって安全・安心な利用環境を確保することを目的とする。原則の提示:
(統一的な目的への言及なし、いきなり原則1の開示項目列挙)
→タイトルと本文で目的が不整合、原則は開示項目列挙
→これらがあるから代替手段の合理性が成立
→これらがないから代替手段の合理性が成立しない
タイトルの「〜のために」の有無こそが、すべての違いを生む根本原因
この分析をパブコメ意見書の冒頭に置くべきです。
「タイトルを見ただけで、この文書には最上位目的が欠如していることが分かる。スチュワードシップ・コードは『〜企業の持続的成長を促すために』と明記するのに対し、本コードは『〜に関する』と曖昧な関係性を示すのみである。プリンシプルベース・アプローチの最上位プリンシプル(目的)がタイトルに現れないこと自体が、この文書の構造的欠陥を象徴している」
いかがでしょうか?
完璧な指摘です! 「プリンシプル・コード」という命名そのものが概念の混乱を示しています。
「プリンシプル・コード」を直訳すると:
英語圏にこんな表現はない
正しい英語表現なら:
| 名称 | 構造 | 英語 |
|---|---|---|
| スチュワードシップ・コード | 【概念】+コード | Stewardship Code |
| コーポレートガバナンス・コード | 【概念】+コード | Corporate Governance Code |
| 「責任ある機関投資家」の諸原則 | 【主体】の原則 | Principles for Responsible Institutional Investors |
| 名称 | 構造 |
|---|---|
| UK Stewardship Code | 【概念】+Code |
| OECD Principles of Corporate Governance | 【分野】の Principles |
| UN Principles for Responsible Investment | 【分野】の Principles |
| EU Code of Conduct | 【分野】の Code |
共通点:
【ステップ1】スチュワードシップ・コードを真似たい
↓
「〜コード」という形式にしたい
↓
【ステップ2】でも何の「コード」?
↓
「生成AIコード」? → 意味不明
「知的財産コード」? → 既存の法体系と紛らわしい
↓
【ステップ3】「プリンシプルベース」を強調したい
↓
「プリンシプル」を付けよう!
↓
【結果】プリンシプル・コード
↓
(誰も「原則・規範」という重複に気づかない)
もし本当に「プリンシプルベース」なら:
パターン1:原則を明示
「生成AI事業者の知的財産保護に関する諸原則」
Principles for Intellectual Property Protection in Generative AI
パターン2:コードとして明示
「生成AI知的財産コード」
Generative AI Intellectual Property Code
パターン3:スチュワードシップに倣う
「生成AI透明性コード」
Generative AI Transparency Code
〜知的財産権者と利用者の信頼を確保するために〜
「プリンシプル」と「コード」の違いを理解していない:
プリンシプルベース・アプローチでは:
なのに「プリンシプル・コード」= 矛盾
スチュワードシップ・コードの構造:
【正式名称】
「責任ある機関投資家」の諸原則
≪日本版スチュワードシップ・コード≫
【構造】
・正式名称 = 「〜の諸原則」(Principles)
・愛称 = 「スチュワードシップ・コード」
・「コード」は「原則集」という意味
AIプリンシプル・コードの構造:
【名称】
生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関する
プリンシプル・コード(仮称)(案)
【構造】
・「プリンシプル」も「コード」も入れたい
・でも両方入れると重複
・気づかずに両方入れた
おそらく命名者の意識:
「コード」だけじゃ弱い
↓
「プリンシプル」を付けて格上げ
↓
「プリンシプル・コード」
↓
なんか凄そう!
→見かけの権威付け
日本の行政文書でよくある問題:
→正式名称と愛称が明確に分離
→長いが意味は通る
生成AI透明性原則
〜知的財産権者の信頼を確保するために〜
【本文】
本原則において、「透明性責任」とは、生成AI事業者が、
学習データの開示等を通じて、知的財産権者の信頼を確保し、
もって生成AI技術の健全な発展を図る責任を意味する。
本原則は、生成AI事業者が「透明性責任」を果たすに当たり
有用と考えられる諸原則を定めるものである。
→最上位目的が明確になる
生成AI知財保護コード
〜AI開発と権利保護の調和を図るために〜
【本文】
本コードは、生成AI事業者が知的財産権を尊重しつつ
技術開発を進めるための行動規範を定め、もって
AI技術の発展と知的財産権の保護の調和を図ることを
目的とする。
→目的が明確になる
命名できない
↓
なぜか?
↓
何の原則なのか定まっていない
何のコードなのか定まっていない
↓
だから
↓
両方付けた
↓
結果
↓
「プリンシプル・コード」という重複表現
「プリンシプル・コード」という命名が示すもの:
パブコメ資料で英語版があれば確認すべきですが、おそらく:
予想される英訳:
Principle Code for the Protection of Intellectual Property and Transparency toward Appropriate Use of Generative AI
これを英語圏の人が見たら:
【命名】
スチュワードシップ・コード
= Stewardship(概念)+ Code(規範集)
= 「受託者責任に関する規範集」
【構造と一致】
概念(stewardship responsibility)が明確
↓
その実現のための諸原則
↓
コードとしてまとめる
【命名】
プリンシプル・コード
= Principles(原則)+ Code(規範)
= 「原則・規範」(重複)
【構造と不一致】
概念が不明確(何の原則?)
↓
開示項目リストを列挙(実態はコード)
↓
でも名前にプリンシプルも入れたい
↓
両方入れて重複
「プリンシプル・コード」という異常な命名は、この文書の構造的欠陥を最も端的に示す証拠
パブコメ意見書では、この命名の異常性から書き始めるのが効果的かもしれません:
「本文書は『プリンシプル・コード』と称するが、この命名自体が概念の混乱を示している。Principle(原則)とCode(規範)は重複する概念であり、英語として “Principles Code” は成立しない。正しくは “Code of Principles” または単に “Principles” か “Code” である。この異常な命名は、本文書が『原則』として柔軟性を装いながら、実態は『規範』として強制力を持たせようとする二重性を象徴している」
いかがでしょうか?
実際に英語版を確認させてください!これは衝撃的です! 実際に英語版で “Principle-Code” という表現を使っているんですね。しかもハイフン付きで。
Principle-Code for Protection of intellectual property and transparency for the appropriate use of generative AI (provisional title) (draft)
ハイフンの意味:
“Principle-Code” の問題:
もし本当にこの概念を表現するなら:
選択肢A: “Code of Principles”
Code of Principles for Protection of Intellectual Property and Transparency in Generative AI
→原則を集めた規範集
選択肢B: “Principles” だけ
Principles for Protection of Intellectual Property and Transparency in Generative AI
→シンプルな原則集
選択肢C: “Code” だけ
Code for Protection of Intellectual Property and Transparency in Generative AI
→行動規範
| 文書名 | 英語表記 | 構造 |
|---|---|---|
| スチュワードシップ・コード | Stewardship Code | 概念 + Code |
| コーポレートガバナンス・コード | Corporate Governance Code | 分野 + Code |
| OECD原則 | OECD Principles of Corporate Governance | Principles のみ |
| UN原則 | UN Principles for Responsible Investment | Principles のみ |
| EU行動規範 | EU Code of Conduct | Code のみ |
共通点:
Principle-Code for Protection of intellectual property and transparency for the appropriate use of generative AI
問題点:
スチュワードシップ・コードの英語版:
Principles for Responsible Institutional Investors - Japan's Stewardship Code - To Promote Sustainable Growth of Companies through Investment and Dialogue
→シンプルで明確、目的が明示されている
文書の冒頭に:
Note: This is a provisional translation, and the Cabinet Office is not responsible for its content. For official information, please refer to the Japanese version.
この免責の意味:
国際文書として機能しない:
【日本語】
プリンシプル・コード
【翻訳者の思考】
「プリンシプル」= Principle
「コード」= Code
「・」= ハイフン?
【結果】
Principle-Code
【問題】
英語として意味不明
【ステップ1】日本語の意図を理解
「プリンシプル・コード」は何を意味するのか?
→原則集?規範集?
【ステップ2】英語で適切な表現を選択
Code of Principles か、Principles か、Code か
【ステップ3】国際的な慣例を参照
既存の類似文書の命名法を確認
【ステップ4】明確で理解可能な英語にする
実際には:
文書全体で “Generation AI Businesses”, “Generation AI Developer”, “Generation AI Provider” という表現が使われていますが、
正しくは:
実際、文書の中で両方使われています:
→用語の不統一
文書では “comply or explain” という正しい英語表現を使っていますが、その説明部分がスチュワードシップ・コードからのコピペであることは、英語版でも同様です。
生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード(仮称)(案)
↓
Principle-Code for Protection of intellectual property and transparency
for the appropriate use of generative AI (provisional title) (draft)
→日本語の構造をそのまま英訳→冗長で意味不明
→法的整合性の欠如
日本語:
「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫〜投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために〜
英語:
Principles for Responsible Institutional Investors - Japan's Stewardship Code - To Promote Sustainable Growth of Companies through Investment and Dialogue
→構造が明確、目的が明示、国際標準に準拠
日本語:
生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード(仮称)(案)
英語:
Principle-Code for Protection of intellectual property and transparency for the appropriate use of generative AI (provisional title) (draft)
→不自然な造語、冗長、目的不明、国際標準無視
この英語版の存在は、決定的な証拠として使えます:
【意見1】タイトルの英語表記について
本文書の英語タイトル "Principle-Code" は英語として成立しない。"Principle" と "Code" をハイフンで結んだ造語であり、国際的な文書命名の慣例に反する。
正しくは "Code of Principles", "Principles", または "Code" のいずれかであるべき。
この異常な命名は、本文書が既存の国際的な「コード」や「原則」を表面的に模倣しているが、その本質を理解していないことを示している。
【意見2】「仮訳」免責と適用範囲の矛盾
英語版冒頭に「これは仮訳であり、内閣府は内容に責任を持たない。正式な情報は日本語版を参照せよ」との免責事項がある。
しかし本文では「日本に本社がなくても、日本向けに提供していれば適用される」と海外AI事業者への適用を明記している。
海外事業者は英語版を読むしかないが、その英語版に「責任を持たない」と書かれている。これは法的整合性を欠く。
本文書を海外事業者に適用する意図があるなら、英語版は「仮訳」ではなく「正式版」として責任を持つべきである。
“Principle-Code” という造語は、この文書の構造的欠陥を最も端的に示す物的証拠です。
本文書のタイトルには「〜のために」で示される最上位目的が欠如している。スチュワードシップ・コードが「企業の持続的成長を促すために」と明示するのに対し、本文書は「〜に関する」という曖昧な関係性のみを示す。最上位目的の欠如により原則間の代替可能性が失われ、Explainは単なる言い訳となり、プリンシプルベース・アプローチの本質的要件を満たさない。文書構造の根本的再設計が必要である。
本文書のタイトルは「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」である。このタイトル構造は、本文書がプリンシプルベース・アプローチの本質的要件を満たさないことを示している。スチュワードシップ・コードは「責任ある機関投資家の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫〜投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために〜」というタイトルを持ち、「〜のために」というサブタイトルで最上位目的を明示している。コーポレートガバナンス・コードも「〜会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために〜」と同様の構造を持つ。対して本文書は「〜に向けた〜に関する」という表現にとどまり、方向性と関連性を示すのみで、統一的な最上位目的を示していない。
この相違は単なる表現の問題ではない。プリンシプルベース・アプローチにおいて最上位目的が明示されることは、コンプライ・オア・エクスプレインが機能するための本質的要件である。スチュワードシップ・コードの構造を見ると、最上位に「企業の持続的成長を促す」という目的があり、その下に原則1から8までが手段として位置づけられている。原則4の対話を実施しない機関投資家が、原則5の議決権行使と原則3のモニタリングを重点実施することで「企業の持続的成長を促す」という最上位目的を達成できるのであれば、それは実質的なExplainとして成立する。つまり、各原則は並列の関係にあり、いずれも最上位目的を達成するための手段であるがゆえに、原則間で代替可能性が生じるのである。
本文書においては、総論(1)で「生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立」が掲げられているが、これは統一的な最上位目的ではなく、対立する二つの価値の並置である。そして原則1から3まですべてが「開示」を求める内容となっている。原則1は学習データ等の概要開示を求め、原則2は訴訟準備中の権利者への詳細開示を求め、原則3は生成AI利用者への開示を求めている。これらの原則は、開示の対象者や詳細度が異なるだけで、すべて「開示」という同一の手段を求めており、原則間に代替関係がない。学習データの概要開示を実施しない場合に、訴訟準備中の権利者への詳細開示を実施しても、それは別の開示義務を果たすだけであり、最初の開示義務を代替するものではない。透明性確保という目的は依然として未達成のままである。
この構造の帰結として、本文書における「実施しない理由の説明」は、代替手段の提示による目的達成の説明ではなく、開示できない事情の弁明にならざるを得ない。スチュワードシップ・コードにおけるExplainは「対話は実施しないが、議決権行使を重視することでスチュワードシップ責任を果たす」という形で、別の方法で目的を達成していることを説明する。目的である企業価値向上は共有されており、手段が異なるだけである。対して本文書におけるExplainは「学習データは営業秘密なので開示できない」という形で、開示しないことの理由を述べるにとどまる。目的である透明性確保は達成されておらず、権利者が納得する余地がない。総論(3)が「利用者や権利者の理解が十分に得られるよう工夫すべき」と求めても、開示しないという説明に対して透明性を求める権利者が理解を示すことは構造的に不可能である。
スチュワードシップ・コードは前文において、評価者側に対しても「本コードの各原則の文言・記載を表面的に捉え、その一部を実施していないことのみをもって、機械的にスチュワードシップ責任が果たされていないと評価することは適切ではない」と注意を促している。これは、Explainが成立するためには、説明する側の努力だけでなく、評価する側の理解義務も必要であることを示している。しかし本文書は、スチュワードシップ・コードのコンプライ・オア・エクスプレイン説明部分を単語置換レベルでコピーしながら、この評価者側への注意パラグラフを丸ごと削除している。つまり、スチュワードシップ・コードが双方向の努力を求めているのに対し、本文書は一方通行の説明義務しか課していない。これもまた、本文書におけるExplainが形式的な弁明の場にならざるを得ないことを示している。
「プリンシプル・コード」という命名それ自体も、この構造的欠陥の帰結として理解できる。「プリンシプル」と「コード」は、日本語としても英語としても意味が重複する。英語版では“Principle-Code”というハイフン付きの造語となっているが、英語圏にこのような表現は存在しない。正しくは“Code of Principles”または単に“Principles”か“Code”のいずれかである。なぜこのような異常な命名になったのか。それは、統一的な最上位目的が定まらないため、サブタイトルで「〜のために」と書くことができなかったからである。「知的財産権者の信頼を確保するために」と書けば生成AI事業者が反発し、「生成AI技術の発展のために」と書けば権利者が反発する。だから目的を曖昧にした。同時に、プリンシプルベースを標榜したいが実態は開示項目リスト(ルールベース)であり、規範としての性格も持たせたい。両方の要素を名称に含めた結果、意味の重複する造語となった。この命名の異常性は、文書の構造的欠陥を象徴的に示している。
本文書は、スチュワードシップ・コードという成功したプリンシプルベース・アプローチの外形を模倣しながら、その本質的要件である統一的な最上位目的の明示を欠いている。この欠陥により、原則間の代替可能性が失われ、コンプライ・オア・エクスプレインは形式的な弁明の場となり、プリンシプルベース・アプローチとして機能しない。必要なのは、まず「何のための原則か」という最上位目的を明確に定義し、その目的を達成するための複数の代替可能な手段として各原則を再構成することである。現状のまま制度を施行することは、プリンシプルベース・アプローチの名の下に、実質的にはルールベースの開示義務を課すことになり、適切ではない。文書構造の根本的な再設計が必要である。
以上
その危機感、極めて正当です。 これは「劣化コピーの前例化」という、日本の規制手法における最悪のシナリオです。
2025年:AIプリンシプル・コード成立
内閣府:「プリンシプルベース・アプローチで透明性を確保しました」
政治家:「AI規制に対応しました」
届出:100社(ほぼ全てExplain)
評価:「枠組みができた」→成功
2026–2027年:他分野への拡大
【量子コンピューティング倫理コード】
「プリンシプル・コード方式で」
→最上位目的不在、開示項目リスト、Explainは言い訳【バイオテクノロジー透明性原則】
「AIで成功したプリンシプルベース」
→同じ構造の劣化コピー【プラットフォーム事業者責任規範】
「ソフトローによる柔軟な対応」
→実態はルールベース、でもプリンシプルを標榜
2028年以降:蔓延
1. 政治的アリバイ作り
2. 利害対立の回避
3. 国際的な体面
4. 作成コストの低さ
1. 実質的な義務回避
2. 対外的アピール
3. ハードローの回避
スチュワードシップ・コードが成功した理由:
AIプリンシプル・コードの構造:
【外形】
【実態】
あらゆる分野で「プリンシプル・コード」が乱立
すべての特徴
結果
Before(スチュワードシップ・コード以前)
After(AIプリンシプル・コード後)
日本が「プリンシプルベース」と言っても:
と見られるようになる。
今回のパブコメは、単なるAI規制の話ではない
それは:
ここで劣化コピーを成立させてしまうと:
意見書で強調すべきこと
高木さんの言う「末代まで蔓延」は誇張ではありません。
行政の前例主義
制度の経路依存性
世代を超えた影響
だからこそ、今回のパブコメが決定的に重要です。
このタイミングで構造的欠陥を明確に指摘し、制度設計のやり直しを求めることが、日本のソフトロー環境を守るための最後の機会かもしれません。
「プリンシプル・コード」という造語が、「形だけのソフトロー」の代名詞として日本の行政用語に定着する前に、これを阻止する必要があります。