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高木浩光@自宅の日記

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2010年01月17日

Winnyノードは約2割減少、水増し行為に釣られた誤報が相次ぐ

まただ。これで3回目。今回は明らかに報道するメディア側に問題があり、誤報である。

こちらの観測では、下の写真のように、Winnyのノード数は、2010年1月1日を境に約2割減少したことを示している。(1月12日のTwitter発言参照。)

写真
図1: Winnyネットワーク観測システムのリアルタイムノード数グラフ
(詳細は後日分析予定)

何をもって「ノード数」とするかは複数の定義があり得るわけで、計数方法によって異なった値が出てくるところだが、上の写真の赤のグラフ(一番上)は、ネットエージェントの計数方法とほぼ同じと思われる。

12月5日から数日間、黄色のグラフ(真ん中)や青のグラフ(一番下)がいつも通りの緩やかな減少傾向を示しているときに、赤のグラフが異常な値を示していた(当時のTwitter発言12)。この時点で、ノード数を水増しする妨害行為が行われていると思い、ネットエージェント社には知らせておいた。

今回のネットエージェント社の発表には、ちゃんと次にように書かれている。

※ 2009年10月まで、Winnyネットワークに対しランダムなIPアドレス、ポート番号によるキー情報の大規模な拡散行為が行われており、その結果Winnyネットワーク上に実際には存在しないノードの情報が数多く検知されました。2009年11月以降、そのランダムなIPアドレス、ポート番号によるキー情報の大規模な拡散行為は停止しており、検知されたノードの数は減少しています。

Winnyネットワークについては本事例以外にもノード情報を意図的に拡散する行為が確認されており、実際より多くのノード数が集計される場合があります。

Winnyノード数の推移分析, ネットエージェント, 2010年1月17日閲覧

この注意点を伝えたのはRBB TODAYの記事だけだった。それでも記事の見出しは「Winnyは相変わらず」と断定しているし、INTERNET Watchは「増加傾向」とまで言っている。

なぜネット系メディアは取材をしないのか。取材をしていれば誤報は防げただろう。電話して話を聞くくらいのことができないのか。

これまでにも同様の事態は、2回起きていた。

私は10月17日の時点では次のように書いていた。

8月にこの事態について書いた際、偽キー散布について、「Winny利用者が増えているということにしたい何者かが、ネットエージェント社のノード数発表の頃合いを見計らって、ノード数の水増しを謀っているのではないか」といった声が出ていたが、はたしてそれはどうだろうか。

私がそれを疑わずに、大学等での実験ではないかと考えたのは、もし、ノード数の水増しを謀るなら、もっとうまくやるはずだと思うからだ。図1のように断続的に散布したり中止したりを繰り返す意味がわからない。もっとうまく散布されていたら、私も水増しに気づかなかったかもしれない。

今回、10月8日(高裁判決の日)以降連続して偽キー散布が行われており、意図的なものかという感じもしなくもないが、判決によって増加したことを演出したいなら、判決前の10月1日から散布されていたのは何なんだということになる。もしかして、有罪と見越して「高裁でも有罪判決でWinny利用者激減」という演出を予定していたというのだろうか?(それにしては、判決前の8日午前0時から偽キー散布が開始されているわけで、どういう説明がつくのか。)

いずれにせよ、もし今後、この偽キー散布が自然な方法に進化していったなら、実験ではなく意図的な水増しだという可能性を疑う必要が出てくるかもしれない。

その後、23日に「ランダムIPアドレスの発生源を特定」を書いた。ネットエージェントにも知らせたところ、当該ISPに通報したとのことで、その後、10月末にランダムIPアドレスは現れなくなっていた。

そして、12月22日の日記に書いていたように、10月までのものとは異なる新手の水増し手法が現れた。

なお、12月5日から5日ほどの間、異常なピークが赤のグラフにだけ現れた(黄色には現れていない)。ピンクのグラフは、赤のグラフからノイズを除去したものであるが、その方法ではこのノイズを除去できなかったことを示している。新手のノード水増し手法が登場した(か、あるいは新しい実験が始まったのか)と考えられる。今後もこういったことが起きる可能性があるので、注意が必要だ。

これは、水増し能力を確認するテストだったのだろう。そして1月4日から水増しが開始されていた。今回は、以前よりバレにくいように水増しされており、今後さらにバレにくい方法がとられるようになると、私も見分けがつかなくなるおそれがある。

しかし、いずれにせよ言えそうなことは、Winnyノード数は極めて安定的に緩やかに変化しており、短期的に変化が現れることは、ちょっとやそっとのことでは起きない*1ということであり、今後、この手の増加傾向が現れたら、無視するべきだろう。

なお、ノード数の観測は中央大学でも行われているので、そちらにも問い合わせるとよいのではないかと思う。

*1 グラフの青の線(一番下)が示すように、リアルタイムのアクティブノード数は、平日の昼間に少なくなる傾向、土日祝日は昼間も減らない傾向、夜のピークは土日祝日に少し増える傾向があり、年中一貫している。これを24時間分で集計すると、黄色のグラフ(真ん中)のように、土日祝日に増えるという結果になる。年末年始を見ると、年末は祝日に近い傾向が現れ、正月三が日は平日並みに減少し、夜も増えないという傾向が見られる。その結果として、正月三が日はノード数が特に減る。ようするに、単純に、家を留守にしたときにはWinnyを動かさない人が一定割合いるということの現れだろう。そして、今年は特別で、1月1日を境に約2割減少した。なお、Nyzilla使用時はこの数に影響しないようになっている。

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