8月24日の日記で参照した大阪北摂霊園内のストリートビューは、9月2日の朝日新聞朝刊で取り上げれたためか、9月3日に写真が削除された(正確には削除されたどうかは不明で、少なくとも非表示状態になった)ようだ。削除された範囲は以下の赤で示した部分となっている(図1)。
つまり、地図上で灰色で示されている領域に隣接した道路を削除したようだ。これでよいのだろうか?
霊園の北側の出入り口付近を見てみると、以下の緑で示した部分が削除されていないのだが、ここは明らかに敷地内である(図2)。
ここは墓地の駐車場用道路だ。「北西」に進むと駐車場内に入って撮影していることがわかる。ゲートで遮断されており、目的外で入る場所でないことは誰の目にも明らかである。
ストリートビューで写真を見てみれば、これが不適切な写真だとわかるはずだ。グーグル株式会社は、その程度のチェックすらしていない。削除についてグーグル株式会社は朝日新聞に対し次の通りコメントしている。
グーグル日本法人の広報担当者は「一部公道と私道の区別がつきづらいところで、誤って撮影している場所が確認されている」と認めたうえで「ユーザーからの連絡や当方の再確認によって、削除している」と説明している。
無断撮影 公表に波紋 路上から見た画像、ネット上に, 朝日新聞2008年9月2日朝刊
「再確認」などとまるで確認してから公開したような口ぶりだが、確認なんて何もしていないも同然なのは明らかではないか。
念のため、霊園の管理事務所にこのような削除方法を依頼したのか確認したところ、そのような依頼はしていないとのことだった。この地図上のグレーの領域に何か意味があるのかについても尋ねたところ、グレー部分以外も霊園の私有地であり、図3の緑で示した道路も私道であるとのことだった。グレー部分が何を表しているのかについては心当たりがないとのこと。
ストリートビューの何が問題かといえば、このように何ら人間的配慮がなされないところにある。たまたま撮影された静止画写真がたとえどんな非道な写真であろうともノーチェックで公開される。それが今後もいつまた起きるともわからないまま永遠にその可能性が続く。従来からあった写真の撮影・公開と根本的に異なる点だ。この存在が人々の生活に漠然とした不安をもたらしていく。
ところで、これだけストリートビューについて様々な声が挙っているというのに、ネット系のメディアはいったい何をやっているのか。INTERNET Watchの記事やITmediaの記事によれば、グーグル株式会社は毎週月曜日に「報道関係者向けの定例説明会」を開いているそうじゃないか。東京新聞が取材拒否される中、ネット系メディアは毎週グーグル広報と顔を合わせているわけだ。聞き出すべきことはいくらでもあるんじゃないのか。たとえば、これまでに何枚の写真が削除されたのか。削除の申し込み件数は何件になったのか。そんな基本的な情報さえ聞こえてこない。言われたことを右から左へ流すだけで何が報道か。