日本ソフトウェア科学会第21回大会の併設チュートリアルで、「P2P コンピューティング−基盤技術と社会的側面−」というのがあるもよう。
概要: 日本ソフトウェア科学会では,最近大きな話題を集めているP2P(Peer-to-Peer)コンピューティングについて、チュートリアル「P2Pコンピューティング −基盤技術と社会的側面−」を開催いたします。
本チュートリアルでは、P2P コンピューティングの基礎から最新の技術・研究動向の解説に加えて、P2P技術に関わる社会・法律面の基礎や問題点に関しても解説が行われます。また、講演による解説の後にパネルディスカッションを開催し、今後 P2P 技術をどのように発展させていくべきかを参加者と一緒になって議論することで、P2Pコンピューティングに対してより深く理解することを目指します。
日時: 2004年9月14日 13:00〜17:00
一昨日の日記「キャッシュと嘘とファイル放流」に対して、トラックバック付きでコメント頂いた点について、まずは簡単なことだけ指摘を。
「BENLI」の「キャッシュと暗号と幇助」の中で、事実関係について次の仮定がおかれている。
逆に、Winnyを違法ファイルを「放流」するためのシステムとして位置付けたときは、却って、キャッシュファイルを暗号化しないような仕様にするのではないかという気がします。このような仕様であれば、アップロード用のフォルダに暗号化されていない違法ファイルが蔵置されていた場合に、そのコンピュータの使用者が積極的にその電子ファイルを送信するためにアップロード用のフォルダに蔵置したのか、キャッシュファイルとして知らない間に自動的に生成されてしまったものか区別が付かない方が都合がよいからです。
そう考えると、(略)
「暗号化しない仕様の方が、Upフォルダに置いているのか、単にキャッシュにあるのかの区別がつかなくてよい」とのことであるが、理由がない。
Winnyの場合、Upフォルダに置かれたファイル(放流用の原本なので暗号化されていない)は、他のノードからの要求によって通信路を流れ出ていくときに、自動的に暗号化されるようになっている*1。(暗号化はそのときに一度行われるのみで、あとはそれがそのままキャッシュファイルとなり、コピーされていく。)
接続された他のWinnyノードのコンピュータから見ると、受信しているデータが、相手ノードのキャッシュから取り出しているものなのか、それとも、相手ノードのUpフォルダから暗号化と同時に取り出しているのかは、区別できない。そのようにプロトコルが設計されている。
よって、外部から見る限りにおいては、キャッシュファイルを暗号化した状態で置くか、暗号化しない状態で置くかは、「区別が付かない方が都合がよい」ということに関係しない。
内部から見た場合についてまで言及されているのか、わからないが、一応検討してみると、内部から見た場合を心配するというのは、捜査員にパソコンを押収されたときのことであろう。Upフォルダにファイルが入っているなら、それは暗号化の有無に関係なく、そこにファイルが入っているのはあきらかである。
それを防ぐためにUpフォルダを廃止するという設計もあり得る。この場合、直接キャッシュに原本ファイルを投げ込むことになる*2が、このとき、キャッシュファイルを暗号化しておくなら、暗号化して投入することになるし、暗号化しないでおくなら、そのまま投入することになるだけであり、暗号化の有無が設計に影響を及ぼさない。
よって、暗号化の有無は「区別が付かない方が都合がよい」ということに関係しない。
次に、「NetWind」の「高木氏が答えていない点。」において、次のように書かれている。
高木氏が求めていることは、(略)他人が「放流」したものであっても、自分の計算機に放置されたもので削除すべきものは削除しなければならないというモラルを持っているように思えるからである。
そのようなことは言っていない。MARIEの作者が、「違法と思われるファイルがキャッシュに入っているのに気付いた場合,削除してください」と言っているので、ならば暗号化しなければよいのではないか? と言っているのであり、逆に、「違法と思われる……場合,削除してください」と注意書きするのを取り止めるという選択肢もある。(その場合は、なぜ当初その注意書きをしていたのかが議論の対象となる。)
私は、できるだけ価値に対して相対的な書き方となるよう心がけているつもりだ。ある背景を前提としたときに、いくつかの事実に基づいた分析を加えて推論すると、こういう結果が導かれる――ということの積み重ねをしているだけだ。積み重ねからどのような方向性を感じ取るかは読者しだいであり、当然ながら他の主張と結合されたうえで判断されるだろう。また、私自身がそうした読者と同じ位置で方向性を模索しているところである。
そういう基本的なことを理解していない人とは議論するに値しない。
次に、「6"(ログ)」の「知財ウォッチ」では次のように書かれている。
誰かがWinnyに簡単な機能追加を施すとします。それは、ファイルを未暗号化状態で放流することもできる、という機能です。(略)
そして、あくまで仮定ですが、もしデータの大部分、あるいはある程度大きな量が暗号化状態で流通すると仮定すると、結果として現れる著作権侵害事態は現行Winnyと基本的に何も変わりません。
(略)
暗号化と中継を別レイヤと考えれば、単なる中継は特殊な機能でも何でもなく、NetNewsやIRCでも可能なことです。実際、暗号化されたファイルをNetNews等で放流されれば、中継ノードの管理者はその中身を見ることはできませんね。もちろん中身を見ずに一律削除することなら可能ですが、それならWinnyでもできます。
機械的動作はその通りだが、実際には、そのような利用方法が人々の間に普及しないからWinnyが作られたのだろうから、そんな話をして「何も変わりません」などと主張しても意味がない。
47氏が書いたとされている2ちゃんねるでの書き込みを引用しておく。(5月30日の「P2Pの価値とは何なのだろうか」でも既に引用しているのだが。)
117 名前:47 投稿日:02/04/16 15:18 ID:mPL0z40j Winnyはぶっちゃけたこと言えば、必ず串経由でMX使って ファイルは自分で全部暗号化してファイル名を適当なルールつけて そのままじゃ中身が分かり難くしてやり取りするという文化が広まれば 今のMXそのまま使えばいいんですけど、そうはならんだろうから それを目指した専用ツールを作ろうってことですね。
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