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高木浩光@自宅の日記

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2004年06月14日

無題2

先日の続きになるが、崎山伸夫氏が「決別」なるものを書いている。

これまでに付き合いがあったかのように誤解させるものであり、迷惑である。私は崎山氏と何ら親しい関係を持ったことがない*1

高木さん、もう不誠実さへの憤りとか通り越して、哀れですよ。

崎山伸夫のBlog, 6月15日

なんら問題ない。

高木さん、刑事罰云々について

そんな話はしていない。
というが、ではあなたが今、現実にWinnyの作者が刑事裁判の被告であるという状況で、Winnyがいかに悪を助ける性質を持っているか、という形で議論を続けるのは、いったいいかなる意図なのか?

崎山伸夫のBlog, 6月15日

ようするに、たとえ真実であっても語らずにおけ、ということか。Winnyがどういう性質のものか、知ろうとするなと。(そもそもお前は知っているのか?と問いたいのだが。)

(個人的な心情を書くと、Winny作者の幇助の罪での立件は個人的に予想外であり、募金も考えたが、それとは関係がない。関係ないべきである。)

何人もの人たちが、「Winnyはすばらしい技術」だとか「画期的な技術」だと言ったり、「P2Pの芽が摘まれてしまう」などと言ったりしている。技術を知らない人たちはそれを真に受けている様子がある。(政治的な目的に囚われていない)プログラマーの認識はそれとは違うだろう。私はそれを、深く掘り下げて言葉でまとめているだけだ。

いかなる場合であれ、より豊富な真実を広く伝えることによって、人々の判断はより正しくなると考えるべきである。


高木さん、「そこそこ名を知られた人」が「有名人」でないなどという後出しジャンケン的否認が意味をもつと思うのですか?「上品でない」雑誌についてサーベイしたほうがいいのでは?

崎山伸夫のBlog, 6月15日

先日書いたとおり、本当に芸能人のその事例(雑誌掲載の事例も)が頭に浮かんだ上で、意図して避けたものだ。「後出しだ」などと嘘呼ばわりされても困る。

それに、芸能人の事例が不適切だとしてそれが何だというのか。「そこそこ名を知られた人」の事例や、月間アフタヌーン「アキバ署!」の事例が有効であれば、私の論は成立する。

高木さん、Usenetについて

システムのその時点での設計意図のことを言っている
と言ったり、
また、仮に当初の意図として目的に含まれていなかったとしても、後に結果的にその目的で機能していたことによって普及が確保できたのであればそれでよい。
と言ったり、ダブルスタンダードそのもの。

崎山伸夫のBlog, 6月15日

システムは改良を繰り返しながら様々な変化を遂げつつ人々に動かされてきたわけだから、改良時の設計意図も含まれる。何ら矛盾していない。先日述べたとおりだ。「ダブルスタンダード」という言葉の使い方が狂っていはしないか。

ソフト技術者は取り返しのつかないプログラムは動かさないという倫理観を漠然と持っているだろう

などと言えるほどの根拠は何も示されていない。

崎山伸夫のBlog, 6月15日

読者がどう思ってくれるかで十分だ。「取り返しのつかない」は、6月8日の「良心に蓋をさせ、邪な心を解き放つ ―― ファイル放流システム」にまとめたとおり。

ゲートウェイや、anonymous remailerが責任を問われ得るという点が異なる。もちろん、匿名性の提供を売りにして覚悟を持って運用するのはそれはそれでけっこう。

高木さん、あなたはremailerがメッセージに自動的につけるdisclaimerを読んだことがないんですね。

崎山伸夫のBlog, 6月15日

disclaimerなぞ関係がない。「もちろん」以降は、そのanonymous remailerのことを指しているわけではない。

また、USENETでは一度通過したものが逆流してくることがない。

高木さん、あなたは USENET 上の一部のニュースグループについて third party cancelに対抗するreplay botが存在していたことも知りませんね。

崎山伸夫のBlog, 6月15日

本論には影響しない。各ノードにreplay botが設置されていたわけではあるまい。

(「時として尻尾が2本ある犬が生まれることもある」ならそうかもしれないが。)

高木さん、多くのGUIベースのMUAで、複数のメッセージのテキストからバイナリを自動抽出・結合して画像等として表示するという機能が実装されていたり、あるいは逆にそのような形で(略)

崎山伸夫のBlog, 6月15日

どうでもよい。

当然ながらそうならないように「情報窃盗」を定義することにならざるを得ないだろう。定義に無理があるならこれまでのように見送られるだろう。

高木さん、あなたは内部通報者保護法の制定経過をみてもなお、そう単純に判断できるのですか?

崎山伸夫のBlog, 6月15日

情報窃盗と内部通報者保護法とは同一でなかろう。

私は、個々の事案について個々の論点をただ積み重ねているだけであって、原理的な原則論の朗読には全く興味がない。
高木さん、「個々の論点」なるものをいかにして選びとったかこそがあなたの意志表明であるわけであり、そこで「原則論」に「興味がない」とあなたが本気で述べているのであれば、あなたはRFIDについての中村修氏と同列に非難されるべきであろう。

崎山伸夫のBlog, 6月15日

ぜんぜん意味がわからない。私は中村氏を「非難」などしていないし。(崎山氏は人を非難するのが目的の人なのかもしれないからそう考えがちなのかもしれないが。)

区別することなく「もともとプライバシーがない」と表現するのは、これまた誠実な議論とは思われないのだが。

崎山伸夫のBlog, 6月15日

またゼロ・イチ論議か。すべてが程度問題、相対的な比較の論理なのだが。

正直、「失望している」などと言われるのは蕁麻疹が出る思いだ。

高木さん、私が失望しているのはあなたの「Winnyに対する」スタンスではなく、あなたが事実についての率直な指摘に対して認識を改めないスタンスだ。そしてもうその失望は覆らないものだという確信を私は抱いたし、あなたが不誠実さについても確信した。

崎山伸夫のBlog, 6月15日

気持ち悪いので蕁麻疹が出ると書いた。

加えておくと、昨年10月15日のこのときから既に吐き気がしていた。

崎山伸夫のBlog, 2003年10月16日, 「さらにもう一つの努力を」

なぜお前に「もう一つの努力を」などと言われなくちゃならんのかと。お前の期待に沿うために書いているわけではなかろうが。

説明をサボっても得られる共感は何を目的としたものか」と書いたのは、ようするに彼がやっていることは、自分たちの経典があって、もともと既にその経典を信仰している人々に対して、それを朗読したり、解説してみせて、仲間内で共感しあって満足しているだけ。だから、理由の説明もなしに人を非難して見せることが、妥当な行為だと彼は考えてしまうわけだ、ということを言いたかった。結局そのときは書くのをやめておいたが。

続・追記2

先日の追記2に対してHIKI'sに追記があった。

[追記2]2004.06.14

1.私は、P2Pの仕組みにおいて匿名性が失われることには反対です。

(略)

ここまでで、高木さんご自身も、IPv6を使うなどしてIPアドレスの数を増やすことでは、IPアドレスから個人を特定することを防げないこと、について自覚されていることがわかりますので、「IPv6を使うなどして・・・解決できる」と言い切ってしまったのはやや行き過ぎと思います。(略)

HSKI's, 6月9日

そこまでの文脈が理解されておらず、当該部分の言葉尻だけが取り出されているようだ。私のその部分は、発信者の匿名性のことを言っているのではなく、受信者の匿名性のことを言っている。文脈を紹介すると、まず、

だが、そうした目的の利用においては、最初の提供者に匿名性は不必要だろう。 コンテンツ提供者の匿名性と閲覧者の匿名性は別である。それについては去年の5月29日の日記に書いた。

市民の安全を深刻に害し得る装置としてのWinny

から始まり、

匿名性にも複数の段階がある。誰にも特定できないレベルの匿名性と、一定の条件がなければ特定されないレベルの匿名性がある。

(略)

そのIPアドレスからISPに契約者の連絡先を求めるというステップを踏むことになる。それぞれの場面で開示請求の妥当性がそれなりに判断されるので、つまらないことでなら、匿名性が暴かれる可能性は小さいといったバランスが形成される。

市民の安全を深刻に害し得る装置としてのWinny

という区分けをした上で、

閲覧者の匿名性は確保されるべきものだろうから、(略)

現在のWinnyでも隣のノードの人のIPアドレスは知ることができる。ISPに開示請求しなくても、たまたまそのIPアドレスの人が、別のアプリケーションでそのアドレスを公開してしまっている事態は有り得る。

市民の安全を深刻に害し得る装置としてのWinny

という文脈があって、

そういうこともあるので、IPアドレスは固定でなくするべきである。このことについては、去年の5月25日の日記などで書いてきた。さらに特定される可能性を避けるためには、2月8日の日記で書いたように、IPv6を使うなどして、ひとつのコンピュータで多数のIPアドレスを保有し、アプリケーションごとに別々のソースアドレスを使用することで解決できる。これが、将来の理想的なプライバシー維持型消費者向けインターネット環境であろう。 市民の安全を深刻に害し得る装置としてのWinny

と述べたものだ。

[追記2]2004.06.14

IPv6は一般の新聞でも取り上げられるなど、社会の関心もそれなりに高いようです。そのような状況の中で、高木さんの主張を読んだ人達が、「IPv6を使えば匿名性は確保できるのかぁ。それはよかった」という誤った認識を持ってしまいかねないことは、(略)

HSKI's, 6月9日

普通のIPv6利用がむしろプライバシーを損ねるという指摘は、昨年の5月25日の日記や、11月24日の日記に書いてきた。

2月8日の日記の話は、現在考えられている通常のIPv6の使い方ではなく、私が考えるそうあるべき使い方の話であって、このアイデアはIPv4では実現できないので、IPv6ならばそれが可能ということを言っている。

*1 強いて挙げれば、1998年ごろあったジョーク団体の「日本イソターネット協会」で、崎山氏が協会の名前を使って講演したり書いたりしはじめて主宰者が困りだしたときに、聞き分けのないことを言って場が凍ったときに、「いい加減にしろ」という趣旨のことを言って一喝したときくらいが、知人関係にあったといえるか。


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