6月20日のこと、Twitterで @librahack から言及された。見に行ってみると http://librahack.jp/ というサイトが出現していた。なんと、岡崎図書館事件で逮捕された方は不起訴処分になっていた。@librahack からフォローされていたのでダイレクトメッセージで連絡が欲しいとコンタクト。メールで何があったのか事実関係を聞かせてほしいとお願いしたところ、数日後、ご本人からのメールが到着した。
当時の中川氏は、警察にまだ何されるかわからないと恐れている様子だった。起訴猶予処分だから今後起訴される可能性も残っていると思っていたようで、ご家族への配慮や業務への影響から、「正直あまり警察を刺激したくない」とのことだった。それでも、http://librahack.jp/ を立ち上げたのは、「問題点を電話してくださった皆様に対する最低限の責任を果たす意味で、事実だけをできるだけ正確にサイト上に示す」という趣旨からとのことだった。
私は、心配ないよということを伝えるとともに、いくつか疑問点を質問した。すると、数日後に、時系列で事実関係をメモしたExcel表が送られてきた。既に朝日新聞神田記者の取材が始まっていたようで、取材で知ったことなどを含め*1思い出ししだい書きとめているとのことだった。
その内容は、7月の時点でご本人の了解を得て、「技術屋と法律屋の座談会」の場で主要部分を紹介し、Twitterでも一部を伝え、「岡崎市立中央図書館事件等 議論と検証のまとめ - 時系列」にまとめられたものである。
そのExcel表の完全版が、先日、librahack.jp で公開された。
かなりの分量があるが全体を通して一読する価値があると思う。
といっても全部読む気が起きないという方々のために、以下、ハイライトシーン、特に警察と検察の対応のところを抜粋してみる。
- 7:30頃、妻と食事中、インターホンが鳴った。こんな時間に誰だろう?と思って、インターホンのカメラを覗くと、男が数人いた。驚いてドアを開けると、「○○○○(本人名前)、岡崎図書館のホームページにアクセスしているな。大問題だよ、ちょっと悪質だよ、大変なことになっているよ。」などと警部補Aが言いながら令状を広げ読み上げた。警察官7・8人が上がりこんできた。
- 強制捜査時にいた警察官:警部補A(愛知県警本部、推定45歳)、警部補B(岡崎署、推定40歳)、技術系警察官C(愛知県警本部、推定35歳)、その他警察官D、E、F、G、H(岡崎署と愛知県警本部、推定30前後)。技術系警察官C以外はIT知識に明るくない。
(略)
- 自宅前の駐車場に止めてあった自家用車の前で警察官2人に腕をつかまれて写真を撮られた。自宅への移動手段の証拠写真だろうか。近所のおばさんたちにその様子をじっと見られていた。
(略)
- 10:30頃、実家での強制捜査を終え、岡崎署へ連行された。ワンボックスの最後列に警部補Bと座った。
- 連行される車の中での会話その1:
本人「何も(連絡)なしに、いきなり強制捜査ですか?サーバがダウンしているなんて、知りませんでした。」
警部補B「(さくらインターネットの)IPアドレス制限の時点で気づくべきだったね。気づかなかった?」
本人「制限なんて知りません。(プロセスの実行時間が長すぎたので)さくらインターネットに(プロセスを)止められたと思って、自分のThinkpadで様子を見ていました。(CPU使用量が多くなると)さくらインターネットはすぐにプロセスを止めますから。」
- 連行される車の中での会話その2:
本人「(あの程度のアクセス数で)Webサーバがダウンするのはおかしいです。本当にダウンしたんですか?」
警部補B「ダウンした。」
本人「今までにもいくつか(クローリングを)やっていますし、(AmazonやYahoo!などの)Web APIを呼ぶときよりも気をつかったつもりでしたが。」
警部補B「図書館は営利目的の大企業と違って少ない予算で運営されているから、(サーバに)お金をかけられないので(サーバの能力が低い)。」
本人「(えぇー!何を言ってるんだこの人は。ほとんどお金をかけなくても、あの程度のアクセス数は余裕で捌けるのに。まったく分かってない。)〔以降、カギ括弧内の括弧書きは、口にしていないが頭の中で思ったことを表す〕」
本人「(図書館のサーバは)レンタルサーバかなにかの共有サーバで運営されている訳ではないですよね?」
警部補B「そんなことはない。図書館にサーバはある。」
本人「(そういえば、どこかの市役所でプログラムが得意な職員がWebサイトを作ったとかいうニュースがあったな。図書館のWebサイトはログイン機能などなく素人っぽいし、もしかしたら図書館の職員がプログラムを作ってバグを作りこんだのかな?)」
本人「もしかして、プログラムを図書館の人が作ったとか?」
警部補B「いやいや、ちゃんとした業者が作っている。」
本人「(えぇー!どこが作ったのかな?)」
本人「有名な会社ですか?」
警部補B「みんな聞けば分かると思う。」
本人「(おかしいなぁ。自分のプログラムにミスがあったのかな?)」
- 連行される車の中での会話その3:
本人「やっていることの内容や目的、理由を聞かれずに、いきなり強制捜査されて連れて行かれるのは(いかがなものかと)。」
警部補B「それは調べてみないと分からない。サイバーテロの練習をしているかもしれないし。」
本人「(よくわからんが、警察署に行ってやっていたことを説明すれば、すぐに誤解が解けるだろう。)」
「サイバーテロの練習」というのはどういうことだろうか。たしかに、昨年あたりから本物のDoS攻撃が頻発して情報セキュリティ界で話題になっていたし、奇遇にもIPAでも、関係有識者を集めた「サービス妨害攻撃対策検討会」(@ITの記事参照)が開かれようとしているところだった*2くらいなので、もしかしたら、警察庁から各都道府県警に「DoS攻撃の摘発に力を入れるように」といったたぐいの号令がかかっていたとか、そういう背景があったのではないかと思ってしまうが、どうなんだろうか。(そういった情報は知らないが。)
- 11:30頃からお昼休みを挟んで14:30頃まで、岡崎署で警部補Bによる取り調べが行われた。取り調べは警部補Bが1人で行った。
- 取り調べの調書は自宅での強制捜査、自宅から実家へ移動中の会話、実家での強制捜査、実家から岡崎署へ移動中の会話を参考にして警部補BがノートPCで作文した。
(略)
- 調書の完成が近づくと、警部補A、他警察官2・3人が取調室に入ってきた。
- 取り調べ時の会話1:
警部補A「どうやってプログラムを動かしたんだ?」
本人「どうやってとは(どういう意味)?」
警部補A「ボタンを押すと動くんだろ?」
本人「(強制捜査の時、動かし方を説明したEclipseの実行ボタンのことを言ってるのかな?)」
本人「そうですね。」([注]後日、何方かに教えてもらったことだが、調書には行為の具体的方法が必要らしい。)
- 取り調べ時の会話2:
警部補A「どれぐらいのスピードでアクセスしたんだ?」
本人「(2ヶ月以上前にサクッと作ったプログラムだし、憶えてないなぁ。)」
本人「よく分かりません。」
警部補A「大体でいいよ。」
本人「1秒に1回ぐらいですかね?でもやっぱり憶えていません。」
警部補A「いいよ、いいよ、約(やく)だから。」
本人「じゃぁ約1秒に1回ぐらいですかね。」([注]後日、何方かに教えてもらったことだが、調書には数値的表現が必要らしい。)
- 取り調べ時の会話3:警部補Bが調書を印刷した。調書には一言も発していない『DOS攻撃をしてしまいました。』の表現があって驚いた。
本人「(DoS攻撃って、久しぶりに聞いたな。まさかDoS攻撃と思われてるのかな?どう考えてもぜんぜん違うのに。しかも、o(オー)が大文字だし。ひょっとして全員素人か?この先ヤバいことになるかも。技術系警察官Cがいるのに間違いを指摘しなかったのかな?おかしいなぁ。)」
本人「DoS攻撃とは違いますが。」
本人「(サーバがダウンしたということなら)結果的に同じ現象になったかもしれませんが。」
警部補A「そうだよね、結果的に。結果的に。」
警部補Bが調書を修正した。
- 逮捕前取り調べ調書(本人覚え)「私は4月2日から4月15日にかけて岡崎市立中央図書館のホームページに自作のプログラムを使って自宅ほか1カ所から約33,000回アクセスしました。そのプログラムはボタンを1回押すと自動的に新刊図書ページのデータを取得するために約1秒間に1回のリクエストを送信するものでした。結果的にDOS攻撃になってしまいました。業務を妨害しました。迷惑をかけた責任は償いたいと思います。」
- 「DOS攻撃」「業務を妨害しました。」「迷惑をかけた責任は償いたいと思います。」など言った憶えはない。
- 「DOS攻撃」という言葉には引っ掛かったが、表現を「DOS攻撃をしてしまいました。」から「結果的にDOS攻撃になってしまいました。」に変更してもらったので(『結果的にDOS攻撃になってしまった。』という一文は悪意も故意もないことを示していると考えていた)、この調書にサインした。
- 調書にサインした理由:「結果としての現象は正しかった」「2ヶ月前に作成したプログラムの内容をよく憶えていなかったので、強く否定できなかった」「早朝からの強制捜査で気が動転していて、自分の置かれている状況を冷静に把握することができなかった」「図書館に被害が出ていて申し訳なく思い、言われたことを認めないことができなかった」「素直に謝ればすぐに帰れると思った」「合法な利用をしていると考えていたので、まさか逮捕されるとは思わなかった」「法律、刑法・刑事訴訟法に無知だった」「『結果的にDOS攻撃になってしまった。』という一文は悪意も故意もないことを示していると考えていた」「技術系警察官Cがプログラムを解析しているので、すぐに疑いが晴れると思った」
- 偽計業務妨害罪について、構成要件について、故意について、などの説明はなかった。法律に詳しくなかったので、自分がどんな罪で容疑をかけられているのか理解できなかった。
中川氏によると、取り調べは警部補Bが1人ですることが多かったとのことで、この警部補Bは、優しい語り口の人だったとのこと。たしかに、私も6月下旬に岡崎署に電話で取材をかけたとき、電話に対応してくださったK警部補(=警部補B)は、とても優しい語り口の人だった。まさか、そういう電話に、直接捜査を担当した方が対応してくださるとは思っていなかったので、そのときはあまり深く聞き出すことをしなかったのが、今となっては悔やまれるところ。
- 取り調べ調書にサインした後、裁判所が逮捕状を出すまでの間、取調室で待機していた。強制捜査時にいたその他警察官D、F、Gが1人づつ交代で付いていた。待機中は何もせずにじっとしているか、警察官と雑談していた。
- 待機中の会話1:
本人「技術系警察官Cは岡崎署の方ですか?コンピュータに詳しいようですが。」
警察官D「(愛知県警)本部から応援で来ている。ヘッドハンティングされてきた(すごい人)。」
本人「ヘッドハンティング?すごいですね。」
警察官D「Winny事件の時、活躍した(そうだ)。」
この「技術系警察官C」は、どういう役職の人なんだろうか。「Winny事件」とは? 金子勇氏事件のことだろうか? 京都府警からヘッドハンティング? 近畿管区警察局から中部管区警察局へヘッドハンティングされてきた管区警察局情報技術解析課の技術吏員の方だろうか?(そういったことがあるものなのか知らないが。)
- 一晩かけて、すっかり忘れていたプログラムの仕組みや作成時に考えたことなどを思い出した。妥当な動機があったこと(使いにくかったからプログラムを作った)、負荷対策してあること(シリアルアクセスとウェイトタイマー)、DoS攻撃(同時にできるかぎり多くのリクエストを送信する)とは異なること、図書館サーバにデータベース接続が解放されない不具合が考えられること(自分が行ったアクセス方式で図書館サーバに問題が発生したとすれば、この可能性が最も高そうだと考えた)、など主張するポイントを考えた。そして今後、逮捕前の調書の内容が間違いだったことを説明し、容疑を否認しようと決めた。本件に関わった警察官はコンピュータやネットのことをよく分かっていないので、コンピュータの仕組みを説明して疑いを晴らそうと思った。この時、刑法に無知だったので、刑事事件としては故意がなかったことを説明することが重要ということが分かっていなかった。
(大幅に略)
- 検察官による取り調べを受けた。前日の警察官による取り調べ調書の内容(DoS攻撃、業務妨害)は間違いであることを主張した。妥当な動機があったこと、負荷対策してあること、DoS攻撃とは異なること、図書館サーバにデータベース接続が解放されない不具合が考えられること、などを主張した。
- 否認する内容の調書を作成してもらった。
- 取り調べ調書(本人覚え)「私は4月2日から4月15日にかけて岡崎市立中央図書館のサイトに自作のプログラムを使って自宅ほか1カ所から約 33,000回アクセスしました。そのプログラムは自動的に新着図書ページのデータを取得するために約1秒間に1回のリクエストを送信するものでした。これはリクエストを同時に大量に送信するようなDoS攻撃ではありません。悪意はありませんでしたし、そのプログラムはリクエストを受信した後に次のリクエストを送信したり、リクエストとリクエストの間に適当な待ち時間を作ったりして、負荷対策をしてあります。Libraのサーバにも問題があると思います。」
- 検察官が勾留請求したので、裁判官による面接のため、名古屋地方裁判所 岡崎支部 岡崎簡易裁判所へ移動した。ここでも検察調べを同じ部屋で待っていた4名といっしょに行動した。
- 裁判官面接を待っている部屋(鉄格子はない普通の部屋)に当番弁護士制度について書かれた紙が貼ってあった。
- 裁判官との面接では、逮捕前に警察で取られた調書は間違いで、当日検察で取られた調書が正しい旨を述べた。
- 裁判官に私選弁護士の選任を依頼したところ、まずは当番弁護士制度を利用して無料で当番弁護士に相談することを勧められたので、それに従った。
(略)
(略)
- 留置場の六法全書を借りて業務妨害罪とその他関係のありそうな所を調べて取り調べに望んだ。(信用毀損及び業務妨害)(略)
- 警部補Bとの会話1:
本人「威力業務妨害罪って、どんなものですか?」
警部補B「今回は、威力業務妨害罪ではない。」
本人「どこかで(逮捕された日に見せられた書類の中に)威力という漢字を見た憶えがあり、てっきり威力業務妨害罪で捕まったと。」
警部補B「初めから威力ではやっていない。一般的に業務妨害と言ったら、偽計業務妨害罪のこと。」
本人「今回、何が『偽計』だったんですか?」
警部補B「図書館の想定していないアクセス(プログラムによるアクセス)をしたこと。」
- 地元ISPからIPアドレスのレンタル履歴などを開示請求する時の容疑は電子計算機損壊等業務妨害罪だった。
- 警部補Bとの会話2:(警部補Bが逮捕前の調書のような業務を妨害しましたという調書を作ろうとした。)
本人「あれは業務妨害ではありません。悪意はありませんし、正当な行為だと思っています。」
警部補B「・・・」
本人「昨日きた弁護士もそのようなことを言っていましたし。不起訴の可能性があると。」
警部補B「それは弁護士の判断であって、裁判官は偽計業務妨害と判断している。」
- 警部補Bとの会話3:
本人「図書館のサーバに問題があります。」
警部補B「自分のプログラムは正しいのだから何が起こっても問題ないと言うの?(図書館のサーバにエラーが発生して)図書館員がどうしたらよいのか分からず右往左往するのに、君は何とも思わないの?俺しらねでいいの?(そんな態度だと検察官は)どういう人かと思うよ。」
- 何も分からない図書館員には迷惑をかけて申し訳ないと思ったが、逮捕前の調書では警察官の言うなりになって失敗したと思っていたので、「業務妨害罪ではないとの主張は譲れない」と言った。
- 相手のことをまったく考えず、自分の行為の正当性をだけを主張した場合、被疑者は反省していないと検察官が判断し、公判に持ち込まれる可能性があるのでは?と考えた。裁判官は心証も考慮するようだから有罪判決が出る可能性もあるのでは?と考えた。公判になれば1ヶ月や2ヶ月は拘置所で待たされると同室の男性から聞いていた。妻の出産が近く、こんなところで捕まっている場合じゃないと思ったので、もし反省するとすれば?という点を警察官に言った。今回の業務妨害とは直接関係ないと思ったが、自分の反省点として考えられることの中から警察官と検察官が理解できそうなものを挙げていった。
何を「偽計」としたかという点、ここでは「図書館の想定していないアクセスをしたこと」となっているが、私が朝日新聞神田記者の取材を受ける過程で神田記者から聞いた話では、愛知県警生活経済課の小竹課長補佐は6月下旬か7月上旬の時点で、「膨大な数の閲覧要求が行われており、すべてを実際に見られるわけではなく、この要求が偽計」という説明をしたらしい。人が見るアクセス以外は異常扱いとでも言うのだろうか。
当初の容疑が電子計算機損壊等業務妨害罪だったという点も興味深い。どの時点で何を理由に偽計に変更されたのだろうか。神田記者の愛知県警への取材では、警察は逮捕前の段階で中川氏のプログラムがクローラとわかっていたかという問いに対し、「わかっていなかった」と答え、「DoS攻撃だったのかクローラだったのかは問題でない」「サーバがダウンした結果が問題」と答えたのだそうだ。
- 取り調べの時にWebサーバのアクセスログを見せてもらった。ログを見たのはこれが最初。Webサーバがダウンしたのではなく、データベースサーバの接続資源がなくなり、WebサーバはHTTPレスポンス500(内部サーバエラー)を返していた。図書館サーバにデータベース接続が解放されない不具合があると確信した。
- すべてのリクエストに対して正常にレスポンスを送信できている(と推測できる)日があった。約90%ぐらいのリクエストについては正常にレスポンスを送信、あるリクエストを境にWebサーバ(APサーバ)がデータベースサーバとのセッションを確保できず、HTTPレスポンス500(内部サーバエラー)を送信していた。Webサーバは正常に動作していた。データベースサーバのセッションが確保できない状態になっていた。
- 警部補Bが作成したExcel表には「停止日時」のカラムがあり、HTTPレスポンス500(内部サーバエラー)が当日最初に発生した時刻が記入されていた。警察はHTTPレスポンス500(内部サーバエラー)発生を「サーバ停止」と解釈していた。「これ、サーバは落ちてませんよ。サーバが落ちたら、ログが出ないのでは。」と伝えた。
- 警部補Bとの会話:
本人「HTMLから必要なデータを探す処理にCPU資源を多く使っていると思いました。(約2,000回繰り返しで)プロセスが長く動くので、CPU使用量が上がって、さくらインターネットに使用を制限されたと思いました。だから、Thinkpadで様子を見たんです。プログラムの開発の続きもやりたかったし。」
警部補B「あー、そういう理由だったの。その後(または、その時期に)IPアドレスを制限していたんだよ。」(後の文は多分そんな話をしていたような記憶。)htmlSQLライブラリの中を詳しく見たわけではなかったが、処理は重そうだなと予想していた。
- アクセスログのHTTPレスポンス500には「…|19|800a01a8|オブジェクトがありません。:_’Session(…)’」などの言葉と意味不明のコードがあった。警部補Bに「このコードはどんな意味ですか?データベースに接続できなかったということですか?とベンダーに聞いてください。」とお願いした。翌日、「コードに意味はない。データベースに接続できなかったエラー。」との回答がベンダーからあったと聞かされた。
- 警部補Bに「Webサーバがデータベースサーバとの接続を解放していない可能性が高いと予測されますが、そういった不具合はありませんか?とベンダーに聞いてください。」とお願いした。これについては特に回答はなかったと記憶している。この問い合わせはどこまで伝わったのか?も不明。もしかするとベンダーは不具合はないと言ったのかもしれない。
- 警部補Bとの会話:
警部補B「プログラムを解析した技術系警察官Cは『解析の結果、中川さんのプログラムに問題はなかった。図書館のプログラムにも問題ないとすると、相性の問題ですね。』と言っているけど、相性の問題ってあるの?」
本人「(相性?はぁ?)」
本人「・・・」
- 技術系警察官Cが押収したThinkpadを解析して、3月13日に作成したLibrahackロゴの画像ファイルを発見。その報告を受けた警部補Bは「(ハッキング?)やっぱりやっていたのか?」と一瞬思ったそうだ。 しかし、この時点で既に業務を妨害する目的でアクセスを行っていたのではないと判明していたので、「hack」の意味をネットで調べて、「クラック」と「(良い意味で使われる)ハック」の違いを理解したそうだ。取り調べでは、ここでの「hack」の意味は「ライフハック」とかオライリー本によくある「○○hacks」という意味で、ということを説明して納得してもらった。検察官にこのロゴのことを突っ込まれるかもしれないから、その時はちゃんと説明できるように心の準備をしておくように言われた。
中川氏に聞いたところでは、この時点で警部補Bは、業務を妨害するものでないことをわかっていたような感じ(なので「検察官にちゃんと説明できるよう心の準備を」と助言している)だったという。
しかし、Winny事件で名を挙げたという「技術系警察官C」も、いかほどのものなのやら。
- 逮捕翌日の検察調べ時とは別の検察官が取り調べを行った。この日は調書を作らなかった。主張したことは次の4点、1. シリアルアクセスなので図書館サーバの負荷は限定的(時間あたりの負荷は高々1リクエスト分である)であり、自分のアクセスが原因でサーバにエラーが発生するとは思わなかったし、サーバにエラーが発生したことに気付かなかった、2. レスポンスエラーをハンドリングせずに単にスキップしていたのでサーバのエラーに気付かなかった、3. 図書館サーバ側にデータベース接続を解放していない不具合の可能性がある、4. 一日約2,000回のアクセスは常識の範囲内である。
- 岡崎署の一室で実況見分を行った。押収されていたThinkpadを使って、プログラムの作動方法を説明した。また、PC内データベースの確認方法も説明した。
- 実況見分の時にいた警察官:警部補A、警部補B、技術系警察官C、その他警察官D、I
- 警部補Aと技術系警察官Cの会話:
警部補A「それ(図書館サーバ?)、こっちに持ってこれないか?」
技術系警察官C「セキュリティの関係で無理では?(図書館が拒否するのでは?)」
警部補A「中身だけでも(持ってこれないか?)どうすれば持ってこれる?」
技術系警察官C「ハードディスクを使えばできます。」
警部補A「それ(HDD)、いくらするの?」
- Thinkpadで再現実験を行った模様(PC内データベースで6月9日のデータを確認)。再現実験は技術系警察官Cが行ったそうだ。実際に図書館にアクセスして、データベースにデータが数件取得できたところでプログラムを中止し、被害が出るところ(HTTP500エラー発生)まではやらなかったようだ。
何のための再現実験だったのだろうか。ただ動くということを念のため確かめたというだけなのか。
(略)
- 6月4日と同じ検察官が取り調べを行った。主張したことは次の6点、1. シリアルアクセスなので図書館サーバの負荷は限定的(時間あたりの負荷は高々1リクエスト分である)であり、自分のアクセスが原因でサーバにエラーが発生するとは思わなかった、2. レスポンスエラーをハンドリングせずに単にスキップしていたのでサーバのエラーに気付かなかった、3. あのサーバ構成なのに2,000回のアクセスでサーバエラーは考えられないので、図書館サーバ側にデータベース接続を解放していない不具合の可能性がある、4. 一日約2,000回のアクセスは常識の範囲内である、5. DoS攻撃とは目的と動きが異なる、6. 負荷対策を行っていた。
- 検察官との会話1:
本人「あの(方式の)アクセスでサーバがエラーを発生するとは(普通)思いませんよ?」
検察官「でもプロなんだからそれぐらい気付かないの?」
本人「いやいや(予想できません)。リクエストに対するレスポンスが返ってきてから次のリクエストを送信するのでサーバにかける負荷は高々1リクエスト分です。だから自分のアクセスが原因でサーバにエラーが発生するはずはないと考えますよ、普通。」
検察官「でも君が何回もアクセスしたから問題が起きたわけでしょ。」
本人「それは図書館のサーバの不具合が原因ですよ。」
検察官「・・・」
検察官「でも他の利用者はそんなことする(プログラムを使ったアクセス)と思う?」
- 検察官との会話2:
本人「サーバは同時にリクエストされるのが一番(負荷がかかって)困るんです。例えばT社さんの社内システムを作った場合、お昼休みが終わる頃、急にサーバにリクエストが増えることがあるんですけど。そこで閲覧が遅いと苦情があった場合、ベンダーは対策を考えます、とか言うんですけど。なぜ今回は(高々1リクエスト分しか負荷をかけていない)利用者である私を訴えることになっちゃうんですか?ベンダーは不具合の原因を調べてないでしょ。」
検察官「・・・」
- 取り調べ調書(本人覚え)「私は岡崎市立中央図書館のホームページにアクセスするプログラムを使って、新着図書のデータベースを作成した。Web サーバからの応答を受信した後、次のリクエストを送信していたので、負荷は高々1リクエスト分であった。Webサーバはデータベースサーバとの接続を解放していないため、新たにリクエストを受け付けた時、データベースサーバとの接続が不可能になりエラーを発生した。」
ここがキモだと思うが、どうしてこれで故意があったことになってしまうのか、謎だ。検察は結局、これだけのことしかしていないっぽい。
- 朝、釈放されると連絡があった。留置場の刑務官によると、通常どうなる予定か伝わってくるものだが、今回は当日まで分からなかったそうだ。
- 警察官との会話1:
警部補A「君は人に迷惑をかけて罪を犯したけど、自分のプログラムのミスを認め、反省しているので、検察が起訴猶予にしてくれたよ。」
本人「(プログラムのミス?やっと、図書館のプログラムを解析してくれたのかな?ベンダーがプログラムのミスを認めたのかな?)」
本人「プログラムとは?図書館のプログラムですか?私のプログラムですか?」
警部補A「君の(プログラム)。」
- 警察官との会話2:
本人「起訴猶予ってどういうものですか?」
警部補B「不起訴には…その中で最も起訴に近い処分。新に証拠が見つかった場合などは起訴されることがある。」
本人「その起訴されるという期限(時効みたいなもの)はありますか?」
警部補B「期限はないが、基本的にはこれで終わり。」
警部補A「事件には警察止まりとか検察止まりとかある。今回は検察止まりってやつだ。」
- 警察官との会話3:
警部補A「図書館には(謝りに)行かなくていいから」
本人「・・・」
警部補A「本人は十分に反省していて、『(図書館に)謝りに行きたい』と言っているけど、『俺が代わりに(図書館に)伝えておいてやるから、行かなくていいよ』と本人に言って行かないようにさせたと、図書館には言っておくから。」
本人「ありがとうございます。」
警部補A「図書館には行かなくていいからね」 ([注]10月18日、図書館の方に聞いて分かったことだが警部補Aからそのような話は聞いていないそうだ。今になって思えば、警部補Aはこのときどういうつもりだったのかと不審を感じる。)
- 釈放後、銭湯ですっきりしてから、岡崎市立中央図書館へ謝罪に行こうと思っていた。どうしてこうなってしまったのか知りたかったし、ベンダーはどこなのかなどの情報を集めたかった。しかし、行かなくていいと言われたので、いまは行かない方が良いのかな?と図書館へ行くのは保留した。(銭湯は岡崎署から検察庁へ移送されるマイクロバスからいつも見ていて、釈放後直ぐに行くと決めていた。)
(略)
「君のプログラムのミス」というのならそれは過失であるわけで、過失犯のない業務妨害罪容疑で、「君は罪を犯した」というのはどういうことなのか?
この警部補Aは、私が最初に岡崎署に電話したときに対応してくれたO警部補(7月10日の日記に書いた件)であり、あのときに、「業務妨害罪は、過失罰の規定はあるんでしたかね」という私の問いに「ないですね」と即答し、私の言い分に対してハキハキと「はい」と答えていたのに、これはいったいどういうことなのか。
今からこのO警部補の話を聞こうとしても、たぶん願いは叶わないだろう。
*1 当初の版では、記者から聞いたことは私に伝わらないようにとマスクされていた。その律儀さや、メモの内容の精密さから、信頼できる内容だと感じた。
*2 私のところへは5月末に依頼が来た。3月の時点で「サービス妨害攻撃の対策等調査」に係る一般競争入札」が出ていたようなので、けして、岡崎図書館事件を扱うために開かれたわけではなく、もともと一般的なDoS攻撃対策のとりまとめの需要があったようだ。
「警察と検察と裁判所で何があったか 岡崎図書館事件(2の1)」より気になった点を。 「技術系警察官C以外はIT知識に明るくない」 『本人「(えぇー!何を言ってるんだこの人は。ほとんどお金をかけなくても、あの程度のアクセス数は余裕で捌けるのに。まったく分かってな…
高木浩光@自宅の日記 - 警察と検察と裁判所で何があったか 岡崎図書館事件(2の1)