昨日のINTERNET Watchの記事「やじうまWatchで振り返る2008年」で、Amazon.co.jpの「ほしい物リスト」問題(「ほしい物リスト」=「Wish List」)の件が取り上げられた。「日米文化摩擦」という観点が挙げられているが、これは単にそういう問題というわけではなかった。米国でも過去に同様の懸念が指摘された経緯があり、米国版 Amazon.com では既にシステムが改善されてデフォルトで非公開になっていたのに対し、日本版 Amazon.co.jp では改善が行われていなかったのだ。
このことについては、3月12日の日記「Amazonで私の情報は私の意志に反してどう表示されていたか」で触れた後、説明が足りなかったので続編を書くつもりだったが、忙しくて結局書かなかった。改めて現在の状況を確認して書いておく。
まず、米国版 Amazon.com について。米国では2005年11月に次のニュース記事が出ていた。
Wish List 機能は、(略)この機能を利用すれば、友人や家族は、相手の本当に欲しいものを選んで購入し、プレゼントすることが可能だ。Wish List の作成は、いたって簡単だ。ユーザーは、登録するかサインインするかして商品を検索し、「Add to Wish List」(Wish List に加える) ボタンをクリックすればよい。
(略)どういうわけか Amazon.com は、Wish List を公開し、名前で探せるようにできることが重要だと思っているようで、あえて変更しない限り Wish List は公開する設定になっている。Amazon.com にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
(略)Wish List の内容を見れば、その人物の年齢もおおよそ分かるため、何らかの目的で子どもと接触を持とうとする人間が利用しかねない。(略)
(略)Enough Is Enough の会長 Donna Rice Hughes 氏は警告する。Enough Is Enough は、親と子にとって安全なインターネットの確立を目指す非営利団体だ。
本当にこの批判が影響して改善されていたのかまでは確認できていないが、2008年3月12日の時点で確認したところ、米国版 Amazon.com のシステムでは、アカウントを作成して最初に「Add to Wish List」ボタンを押したときは、非公開設定のWish Listが作成されて「This list is private.」と表示され、「Make this list public」ボタンを押さない限り公開されないようになっていた。
残念ながらそのときの画面キャプチャを私は持っていないのだが、以下に実験した人の記録が画面キャプチャ付きで掲載されている。
一部で「米Amazon.comのWish List(ほしい物リストの英語名)デフォルトで非公開になっている」という指摘があったが、同社は「米国もデフォルトで公開される仕様」と説明している。
とあったので、せっかくだから検証してみっかーwと酔った勢いでAmazon.comにアカウント作成してwish listに追加してみたよ。
とりあえずやったことは、
- アカウントの作成
- アイテムをwish listに追加
こんだけ。その状態で自分のwish listを見てみたら、赤枠にもあるけど "This list is private." だそうだ。また、そのwish listをpublicにするためには、下の赤枠にある "Make this list public" ボタンをクリックしなければダメっぽい (そこまでは試してない)。
以上を考慮すると、日本アマゾンの言ってることは間違っている、ということになるんだけど、そこらへんどうなんだろうね?
その一方で、
デフォルトpublicになったと書いてる人もいるので気になって調べたら
- ウィッシュリストが無い状態でウィッシュリストを開いて Create your Wish list → プライベート
- ウィッシュリストが無い状態で商品を Add to Wish List → パブリックという挙動でした。
という指摘もあったが、「Add to Wish List」を押すのがアカウント作成後に一度もまだWish Listを作っていない状態のときか否かで挙動が違うようだった。いろいろな手順を検証している途中でやり遂げずじまいとなってしまったため、今となっては証拠を示せない。
現在はどうなっているかを調べてみたところ、その後さらに仕様が変更されていた。
現在では、アカウントを作成した直後であってもそうでなくても、Wish Listがない状態で商品画面で「Add to Wish List」ボタンを押すと、以下の画面が出るようになっている。
このように、「Add to Wish List」を押すと、即座にWish Listを作成して「You just created your first Wish List.」(あなたはたった今、最初の欲しい物リストを作成しました)と説明するようになっている。そしてその下には「Your new list is public.」(あなたの新しいリストは公開状態です)という注意書きと、「That means your friends and family can now search for your list and find out what you really want.」(お友達やご家族があなたのリストを検索して、あなたが本当に欲しがっている物を見つけることができるようになったということです)という、現在起きている事態の意味の説明が表示されるようになっている。また、一番下に「I want my Wish List private」(私のWish Listは非公開にしたいです)というチェックボックスが用意されている。
つまりこういうことではないか。Amazonとしては、できるだけ簡単にWish Listを使ってほしく、デフォルトで公開設定としたいところだが、従来の仕様では「Add to Wish List」ボタンを押した後の説明が不十分だったため、わけもわからず使って事故となることが米国で問題視されていたためか、米国版ではとりあえずデフォルトを非公開設定に変更していた(遅くとも2008年3月の時点)のだが、その後、ちゃんとした説明の画面を加えることで、デフォルト設定を公開に戻したと。
この設計では、図1の画面で設定を変更せずにウィンドウを閉じてしまうと、望まない公開が起きてしまうので、私はまだ不適切だと思うが、まあどうにか許容される仕様だろうか。
また、米国版Amazon.comでは、図1の「Add to Wish List」を押した時点で、メールで、Wish Listが作成されたことが通知されるようになった。このメールにもWish Listの意味と非公開設定にもできる旨が説明されている。(3月の時点ではこの通知はなかったと記憶している。)
では、日本版のAmazon.co.jpはどうなっているか。同じ手順で、アカウントを作成した直後に「ほしい物リストに追加する」ボタンを押した場合、以下のようになる。
つまり、3月の騒動の直後から全く変わっていない。
この画面を見ても何が起きたか普通わからないだろう。ここが一番の問題点と指摘されたのに、アマゾンジャパンは9か月経っても改善せず、放置した。
アマゾンジャパンが3月の騒動の際にやった対処は、上の画面でさらに「ほしい物リスト」のリンクをクリックしたときに現れる以下の画面(機能を理解するまで普通は見ないところ)で、赤い文字の注意書きを書き加えただけだった。
これについて、3月13日の朝日新聞朝刊と読売新聞朝刊に記事が出ていた。アマゾンジャパンの広報担当者が次のようにコメントしているが、まるっきり大嘘だ。
アマゾンジャパンの広報担当者は「そもそも米国の文化で、プレゼントしてほしい物をリストにして公開するのが前提。公開という説明は、目につく場所につけている」と説明している。
同社は「このような利用のされ方は想定していなかったが、リストなどを公開するかどうかは登録時に選択できるし、十分に説明している」としている。
翌週の3月21日には、ITmediaの記事でアマゾンジャパンの広報が以下のように言っていたが、これも口から出任せだったということだ。米国版では次々と対処されているのに、日本版では放置。新聞で批判されても放置だ。ユーザの声なんか聞きもしないし、改善もしない。
同社は「ユーザーの声を聞きながら機能を改善していく。デフォルトで非公開にするべきという声が多ければ、仕様変更を検討する」としている。
この問題の本質は「日米文化摩擦」というより、外国会社の日本法人は幹部が無能というところにあるのではないか。このことは、その後8月に起きたストリートビュー問題でのグーグル株式会社の対応でも共通する。これは私が言っているという話じゃなく、いろんな人たちが口々にそう言っている。
(アマゾンジャパンの人がグーグル株式会社に移ったという噂も耳にしたが)外国会社のそういう人たちは、会社をよくしようなんてこれっぽっちも思っていないんじゃないのか。嫌になったらまた別の外国会社に移ればいいと。そういう連中ホントどうにかならないのか。いつまでこういうことに日本は振り回され続けるのか。
Amazon の「Wish List」で情報漏れの恐れがある、という話があった。それについてコメントしておこう。