今日は、佐藤さん、山川さんとRFIDのセミナーだった。佐藤さんはRFIDタグの能力と特性を担当、私は技術面からプライバシーを、山川さんは法律面からのプライバシーを担当した。「RFID反応リンク集」のことをご存知という方に挙手をお願いしたところ、4〜5名程度だった。意外に少ない……と感じたが、世の中一般からすれば十分に多いか。
講演後、ご来場の方々と貴重なお話ができた。耳にしたのは、現場の個々の研究者や技術者には問題を認識している人も結構いるようだが、それがまとまった力になっていないという声。各社にばらばらに存在するそうした人材を活さねばという話。もうひとつは、法学者と技術系研究者の間の溝がとても深いという声。法学者も個人情報保護法のこともあり、RFIDのプライバシーについて議論することがあっても、理解がとんでもなくずれていることがあるという話。他には、研究部門と事業部に交流がなく、研究部門が問題解決を図っていても事業部が関心を示さないという話。残りの話は秘密だ。
日経バイトから「カバンの中身が外から分かるICタグ 個人のプライバシは守れるか」という記事が出た。プライバシーの懸念には2つがあり、暗号化したIDでは一方しか解決しないこと、もう一方の解決には暗号回路が必要でコストが現実的でないこと、事実を周知する必要性について書かれている。
「IDを読み取るのにパスワードを設定する」というのは、スキャナ側が秘密情報を送って、それがタグ内蔵の値にマッチする場合だけ、応答をするという方式なのだろうか。
「(低価格路線で進める場合には)運用でプライバシを守ることを考えるべき」という文脈で、「ユーザー側で危険を避ける工夫もできる」を挙げているのは感心しない。セキュリティホールを指摘されたときに「ファイアウォールで防げるので告知だけして修正はしません」と開き直るのに近い。
電波到達範囲を短くするという対策案が書かれていないのはなぜなのだろう。アンチコリジョン機能を入れる場合に問題解決にならないからなのだろうか。
「スキャナの設置に規則を設ける」というのはどうなのだろうか。ユビキタスコンピューティングの研究者達は、街中にセンサーが遍在して、シームレスにその恩恵を受けられる世界を夢想しているわけで……。「スキャナを設置した場所はポスターなどでそれを明示する」というのは、販売店に設置する用途など、ごく一部のRFID用途だけを想定したもので、短期的な展望でしかないように思える。