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高木浩光@自宅の日記

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2010年12月22日

「ウイルス作成罪」と岡崎図書館事件(日記予定)

「岡崎図書館事件(15)」として「ウイルス作成罪」(不正指令電磁的記録作成等の罪)の件について書こうと思っていたところ、ちょうど今日、法務省の検討状況の続報が出た。

  • 法務省、ウイルス作成罪新設へ 来年、法案を提出意向, 共同通信, 2010年12月22日

    法務省は22日、インターネットを通じたハイテク犯罪防止のため、コンピューターウイルスの作成、保管などに対する刑事罰の新設や、電子データの差し押さえをしやすくする刑法や刑事訴訟法などの改正案を来年の通常国会に提出する方針を固めた。民主党法務部門会議で明らかにした。

ウイルス作成罪の件は頓挫しているとの噂を耳にしたばかりだったので、安堵した。

私は、ウイルス罪新設刑法改正は早く成立させるべきだと思っているが、ただし、これまでに提出されてきた法案のままでは危険であり、目的要件を修正することが必須だと考える。

具体的には、

人の電子計算機における実行の用に供する目的で、

人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える状態にする目的で、

第162回国会衆議院法務委員会第26号 大林政府参考人答弁より)

あるいは、

人の電子計算機における実行の用に供し、人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる目的で、

などと修正するべきである。

つまり、単なる「人の電子計算機における実行の用に供する」(プログラムを公開する)目的という目的犯としてではなく、「その意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる」ことを目的とした目的犯にするべきである。

これまでのこのような私の主張に対して、法律家の方あるいは法律を勉強していると思しき方から、何回か、杞憂だとする反論を頂いたが、それらのご指摘は次の2つにわけられる。

  • 不正指令電磁的記録作成罪は、文書偽造罪とパラレルに構成されており、「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」というのは、文書偽造罪における「(偽造文書の)行使の目的で」と同様の意味である。よって杞憂である。––(A)
  • 故意がなければ犯罪ではない。よって杞憂である。––(B)

どちらに対しても既に反論したつもりだが、プログラムを書いたことのない(法律家などの)方々には理解し難いようで、まだ説明が必要だと、ずっと考えてきた。今すぐこれを書きたいところだが、別の原稿の締め切りがあるので書く時間がない。次の土日には書くとして、とりあえず、これまでに書いたもののリンクを以下にまとめておく。


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