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高木浩光@自宅の日記

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2015年07月02日

国会会議録から重要部分を抜粋(パーソナルデータ保護法制の行方 その17)

個人情報保護法の改正案は、衆議院で可決し、参議院で採決寸前のところで、年金機構事件が発覚したため審議が凍結され、成立は先送りされている状況となっている。そのため、未成立ながら、そこまでの国会会議録の全部がすでに公開(衆議院参議院)されている。

論点の確認のため、すべての会議録に目を通し、重要な部分にマーキングしたので、これをテーマ別に分割し、以下に転載しておく。色分けは以下の通り。

  • 黄色: 質問(橙色: そのうち特に重要な部分)
  • 紫: 向井審議官答弁(ピンク: そのうち特に重要な部分)
  • 水色: その他の答弁(青: そのうち特に重要な部分)
  • 緑: 参考人発言、転載者コメント

  1. 個人情報定義関係
  2. 容易照合性関係
  3. 匿名加工情報関係
  4. 第三者提供に係る記録作成等義務関係
  5. オプトアウト・名簿屋業法関係
  6. 相当の関連性関係
  7. 第三国移転・EU十分性・域外適用関係
  8. 小規模事業者・過剰反応関係
  9. 要配慮情報関係

今後これを元に解説ができると考えているが、とりあえず今日のところは「2. 容易照合性関係」の一部を紹介しておく。

2. 容易照合性関係」は前半と後半に分かれる。前半では、容易照合性のこれまでの解釈では困ったことになるのでなんとかしてほしいとする質問が、2人の委員から出ている。これは「行方その3」(日記予定)の中で書くつもりだった「Q14問題」に関わる論点である。このお二方の質問が、興味深いことに、一見同じことを指摘しているようで実は正反対の立場、前提で質問されているようであり、「Q14問題」を理解するうえで実に好都合な格好となっていた。このまま国会で議論が進むとあらぬ方向へ結論が行きかねず危ういと心配した(それがどういうことなのかについてはいずれ書く予定)が、国会では(別の論点の方が重要であることが認識されたためか)この議論は深まることなく終わっている。

今回注目するのは、「どのような場合に容易照合性があると言えるのか」との質問に対し、消費者庁審議官の答弁で、「容易照合性でございますが、当該情報を保有する事業者において、他の情報との照合により特定の個人を識別することが可能か否かにより判断するものでございます。」とされた部分である。照合するのが誰にとってなのかが、「当該情報を保有する事業者において」であるとして明言された。照合の主体が取扱事業者自身であるという政府見解は、これまでは、公式記録としては内閣府行政刷新会議規制制度改革委員会経済活性化WGでの消費者庁の説明(「行方その2」の「3. 第三者提供時の照合の主体」参照)しかなく、心もとないものだったのが、今国会で明確にされたことになる。

これは要するに「提供元基準」vs「提供先基準」の論争(「行方その2」の「3. 第三者提供時の照合の主体」参照)に終止符を打つものであるが、さらに、後半部分でこのことをズバリ指摘する答弁があった。

○政府参考人(向井治紀君) お答えいたします。

日本の個人情報の定義は、容易に照合できる、他のデータと合わせて個人が識別できるものというふうになっているところでございます。

その際に、情報を移転する際に、容易に照合するのは情報の移転元か移転先かという議論がございます日本の場合、これは情報の移転元で容易照合性があるということで解釈が統一されておりまして、そういたしますと、一旦個人情報となりますと、その情報の一部を提供する場合でも、これは大抵の場合、提供元において容易照合性はありますので、個人情報になってしまうという、そういうことはございます。

それは解釈で変更するか、いろんな手はあろうかと思いますけれども、今回はそういう意味で、匿名加工情報という新たな類型を設けることによって、法律に明確に個人情報を、そういう個人を識別できるデータを外して匿名化することによってその一部を移転することを明確化するというのが新たな試みであろうと思います。

(略)

この論点については単純に決着がついたと言える。

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