個人情報保護法の目的と基本理念
「行政機関等の事務及び事業の適正かつ円滑な運営を図り、並びに個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする」
「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることに鑑み、その適正な取扱いが図られなければならない」
見直しの経緯とプロセス
個人情報保護法 成立(2005年4月施行)
個人情報保護法 改正(2017年5月全面施行)
個人情報保護法 改正(2022年4月全面施行)
「3年ごと見直し規定」が附則第10条に規定
個人情報保護制度の官民一元化
「中間整理」の公表・意見募集
「個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しの検討の充実に向けた視点」公表
事務局ヒアリングの実施(有識者11名、団体17団体)
個人の権利利益を保護するために考慮すべきリスク
評価・選別及びこれに基づく影響を与えるリスク
本人に係る情報が自身の想定を超えて取得され利用され、そのデータ処理に基づく評価・働きかけにより、想定外の影響が生じる
直接の働きかけを行うことのリスク
住所、電話番号等を想定外の事業者が入手し、勧誘等の直接的働きかけにより平穏な生活が害される
秘匿領域が他人に知られるリスク
本人が秘匿したい情報が、認識できない形で利用される可能性が排除できず不安に
自身のデータを制御できないリスク
本人の気づかない間に又は意思に反して個人情報が取得・集積・利用される
ヒアリング結果:上記リスクをバランスよく対応すべきという指摘が大半。ただし、A〜Cは事業者による取扱いに由来するリスク、Dは本人に関わる情報の取扱いを本人が決定する権利に関わるリスクであり、位置付けが異なるとの指摘も
個人データ利用における本人の関与
個人の認知限界や事業者との情報・交渉力等の非対称性が存在
個別の権利利益に直接影響がない場合は本人関与は必須ではないとの考えが共有
様々な見解があり、以下の両極端の間に位置
データポータビリティの権利も検討すべきとの指摘
事務局ヒアリングでは、生成AIの学習データ利用について、「個別の個人の権利利益への直接的な影響が想定されない個人データの利用」として本人の関与は必要ないとする指摘が大半
一方で、情報に対する権利性を強調する観点から、自分の情報のAI学習利用について関与できることが必要との意見も
事業者のガバナンス
個人の認知限界や事業者との情報量・交渉力等の非対称性から、事業者の取扱いの改善を本人関与に期待することは現実的に困難
消費者等の個人が全ての個人情報の取扱いを監視することは負担が重い
事業者がデータベース構築やデータ処理を第三者に依存するケースが拡大
委託先管理等を通じた安全管理義務の実効性に疑問(否定的な考えが示される)
個人データの取扱いの実態に即し、適正な取扱いの義務を負うべき者とそれぞれの義務の内容等に加え、認定個人情報保護団体やプライバシーガバナンスなどの自主的な取組等を織り交ぜた全体のガバナンスの在り方について議論を深めることが必要
官民を通じたデータ利活用
準公共的な分野での事業者と行政機関等が連携した個人情報利用を念頭に置いた整理が必要
社会的なニーズ等を考慮しながら、個人情報保護法の目的・理念に即した全体としてバランスのとれた法の見直し・運用が必要
個人情報保護法はあくまで一般法
医療分野等の特定分野や、AIなどの特定の取扱い等については、実態や社会的な影響等を踏まえた特別法等での規律も有用との意見
短期的に検討すべき追加論点
「本人の権利利益への直接の影響の有無等」を切り口とした規律の内容を検討
以下の場合は同意不要と整理できるのではないか
- 統計作成等、特定の個人との対応関係が排斥された一般的・汎用的な分析結果の獲得と利用のみを目的とした取扱い
- 取得の状況からみて本人の意思に反しない取扱い
- 生命等の保護又は公衆衛生の向上等のために個人情報を取り扱う場合であって本人同意を得ないことに相当の理由があるとき
本人への通知が行われなくても本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合は本人通知不要と整理できるのではないか
個人情報の取扱いに関わる実態を踏まえた規律の検討
制度的な論点の再整理
- 個人の権利利益への影響という観点も考慮した同意規制の在り方
- 漏えい等発生時の対応の在り方
- 子供の個人情報等の取扱い
- データ処理等の委託を受けた事業者に対する規律
- 特定の個人に対する働きかけが可能となる個人関連情報に関する規律
- 身体的特徴に係るデータ(顔特徴データ等)に関する規律
- オプトアウト届出事業者に対する規律
- 勧告・命令等の実効性確保
- 悪質事案に対応するための刑事罰の在り方
- 経済的誘因のある違反行為に対する実効的な抑止手段(課徴金制度)
- 団体による差止請求制度、被害回復制度
- 漏えい等報告等の在り方