法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会第1回会議 議事録(転載)

転載者補足

以下は、法務省の許諾を得て、法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会の議事録をHTML形式に変換して全文転載するものである。法務省は(平成18年までのものについては)審議会議事録を「.exe」「.lzh」形式で公開しているため、通常のWeb検索でこれらの議事録がヒットしない状態にある。このままでは、国民がハイテク犯罪に対処するための刑事法について正しい理解を得る機会を損失し続けてしまうと考え、ここにHTML形式で転載するものである。転載元および他の回の議事録は以下の通りである。

転載元: http://www.moj.go.jp/SHINGI/030414-1.html

議事録一覧:

転載

法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会第1回会議 議事録

第1 日時 平成15年4月14日(月)自 午後1時30分 至 午後3時56分
第2 場所 法曹会館「高砂の間」
第3 議題 「ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備について」
第4 議事 (次のとおり)

議事

●ただいまから法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会の第1回会議を開催いたします。

●本日は,御多忙中のところを御審議のためにお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。

私の方から,本日,部会が開かれるに至りました経過等を説明させていただきます。

去る3月24日,法務大臣から,ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備に関する諮問第63号が諮問され,同日開催されました法制審議会第140回会議におきまして,同諮問については,まず部会において審議すべき旨決定されました。そして,同会議におきまして,同諮問を審議するための部会として,刑事法(ハイテク犯罪関係)部会を設けることが決定され,同部会を構成すべき委員,臨時委員及び幹事が法制審議会の承認を経て会長から指名され,本日,ここに御参集いただいたところでございます。

(部会長に大谷實委員が互選・指名された。)

●ただいま部会長に選ばれました大谷でございます。諮問の内容から判断いたしまして,責任の重さを痛感いたしますが,御指名でございますのでお引受けさせていただきたいと存じます。御協力のほど,何とぞよろしくお願いいたします。

(部会長代行に平良木登規男委員が指名された。)

(大野秀敏経済産業省商務情報政策局情報セキュリティ政策室長,須賀正広外務省国際社会協力部人権人道課企画官,手塚新樹警察庁情報通信局技術対策課長,松尾浩也法務省特別顧問及び吉田靖総務省総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課長の関係官としての出席が承認された。)

●それでは,先の法制審議会総会において当部会で審議するように決定のありました諮問第63号につきまして,審議を行いたいと思います。

まず,諮問を朗読していただきたいと存じます。

●諮問を朗読させていただきます。

諮問第六十三号

近年におけるハイテク犯罪の実情にかんがみ,この種の犯罪に対処するとともに,欧州評議会サイバー犯罪に関する条約(仮称)を締結するため,早急に,刑事の実体法及び手続法を整備する必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。

別紙

要綱(骨子)

第一 不正指令電磁的記録等作成等の罪の新設等

一 人の電子計算機における実行の用に供する目的で,人の使用する電子計算機についてその意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせる不正な指令に係る電磁的記録その他の記録を作成し,又は提供した者は,三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するものとすること。

二 一の不正な指令を与える電磁的記録を人の電子計算機において実行の用に供した者も,一と同様とすること。

三 二の未遂は,罰するものとすること。

四 一の目的で,一の不正な指令に係る電磁的記録その他の記録を取得し,又は保管した者は,二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処するものとすること。

五 電子計算機損壊等業務妨害の罪(刑法第二百三十四条の二)の未遂は,罰するものとすること。

第二 わいせつ物頒布等の罪(刑法第百七十五条)の改正

一 わいせつな文書,図画,電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し,又は公然と陳列した者は,二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し,又は懲役及び罰金を併科するものとすること。電気通信の送信により,わいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も同様とすること。

二 有償で頒布する目的で,一の物又は電磁的記録を所持し,又は保管した者も,一と同様とすること。

第三 電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法

一 差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは,差押状の執行をする者又は差押許可状により差押えをする捜査機関は,その差押えに代えて次の処分をすることができるものとすること。公判廷で差押えをする場合も,同様とすること。

1 差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写し,印刷し,又は移転した上,当該他の記録媒体を差し押さえること。

2 差押状の執行を受ける者又は差押許可状による差押えを受ける者に当該記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写させ,印刷させ,又は移転させた上,当該他の記録媒体を差し押さえること。

二 押収物が一の規定により電磁的記録を移転し,又は移転させた上差し押さえた他の記録媒体で留置の必要がないものである場合において,差押状の執行を受けた者又は差押許可状による差押えを受けた者と当該他の記録媒体の所有者,所持者又は保管者が異なるときは,還付に代えて差押状の執行を受けた者等に当該他の記録媒体を交付し,又は差押状の執行を受けた者等に当該電磁的記録を複写させた上,当該他の記録媒体の所有者等に当該他の記録媒体を還付しなければならないものとすること。

第四 記録命令差押え

一 裁判所は,記録命令差押え(電磁的記録を保管する者その他電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録させ,又は印刷させた上,当該記録媒体を差し押さえることをいう。)をすることができるものとすること。公判廷外において記録命令差押えを行う場合は,令状を発してこれをしなければならないものとすること。

二 捜査機関は,犯罪の捜査をするについて必要があるときは,裁判官の発する令状により,記録命令差押えをすることができるものとすること。

三 一及び二の令状には,電磁的記録を記録させ,又は印刷させるべき者及び記録させ又は印刷させるべき電磁的記録を記載しなければならないものとすること。

四 その他,記録命令差押えに関する所要の法整備を行うこと。

第五 電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体からの複写

一 裁判所は,差し押さえるべきものが電子計算機であるときは,当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって,当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから,その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上,当該電子計算機又は他の記録媒体を差し押さえることができるものとすること。

二 一の規定は,捜査機関が刑事訴訟法第二百十八条の規定によってする差押えについてこれを準用するものとすること。

三 一の差押状及び二の差押許可状には,差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって,その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならないものとすること。

第六 電磁的記録に係る記録媒体の差押状の執行を受ける者等への協力要請

一 差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは,差押状若しくは捜索状の執行をする者又は差押許可状若しくは捜索許可状により差押え若しくは捜索をする捜査機関は,差押状若しくは捜索状の執行を受ける者又は差押許可状若しくは捜索許可状による差押え若しくは捜索を受ける者に対して,電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができるものとすること。公判廷で差押えをする場合も同様とすること。

二 検証すべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは,裁判所又は裁判官の発する令状により検証をする捜査機関は,一と同様の協力を求めることができるものとすること。

第七 保全要請等

一 捜査については,電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者又は自己の業務のために不特定若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対して,その業務上記録し,又は記録すべき電気通信の送信元,送信先,通信日時その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し,九十日を超えない期間を定めて,これを消去しないよう求めることができるものとすること。

二 捜査関係事項照会及び一の保全要請を行う場合において,必要があるときは,みだりにこれらの要請に関する事項を漏らさないよう求めることができるものとすること。

第八 不正に作られた電磁的記録等の没収

一 不正に作られた電磁的記録又は没収された電磁的記録に係る記録媒体を返還し,又は交付する場合には,当該電磁的記録を消去し,又は当該電磁的記録が不正に利用されないようにする処分をしなければならないものとすること。

二 不正に作られた電磁的記録に係る記録媒体が公務所に属する場合において,当該電磁的記録に係る記録媒体が押収されていないときは,不正に作られた部分を公務所に通知して相当な処分をさせなければならないものとすること。

三 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法の適用については,被告人以外の者に帰属する電磁的記録は,その者の所有に属するものとみなすものとすること。

●それでは,事務当局の方から諮問事項についての説明をお願いしたいと思います。

●それでは,私の方から諮問第63号につきまして,提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等について御説明申し上げます。

近年,コンピュータの高性能化,低価格化,処理可能な情報の多様化が進み,コンピュータの利用者は急速に拡大しております。また,その利用形態も,従来の単独で用いる形態ではなく,ネットワークに接続して用いるものが一般的になり,世界的な規模のコンピュータ・ネットワークが形成されて,重要な社会的基盤の一つとなっております。そのため,政府におきましても,いわゆるIT革命を進展させるべく,各種の施策を行っているところでございます。

一方,これに伴いまして,いわゆるコンピュータ・ウイルスによるコンピュータへの攻撃や,コンピュータ・ネットワークを悪用した犯罪が増加しておりまして,我が国の治安や社会経済秩序を維持するためには,この種のハイテク犯罪に的確に対処するための法整備を行うことが不可欠でございます。

また,ハイテク犯罪は,容易に国境を越えて犯され得るという特色を有し,一国を基点とした犯罪が他国にも重大な影響を及ぼすものであることから,国際的に協調した対策が求められているところ,欧州評議会により「サイバー犯罪に関する条約」が起草され,平成13年11月23日,我が国もこれに署名を行いました。同条約は,世界初のコンピュータ犯罪対策条約でありまして,G7諸国はもとより,ヨーロッパ諸国の大多数が署名するなど,事実上のグローバルスタンダードとなっており,我が国としましてもその締結に向けた法整備を行うことが必要でございます。

そこで,このような状況に照らし,ハイテク犯罪に的確に対処するため,早急に刑事の実体法及び手続法について法整備を行う必要があると考え,今回の諮問に及んだ次第でございます。

今回の諮問に際しましては,事務当局において検討した案を要綱(骨子)としてお示ししてありますので,この案をもとに,具体的な御議論をお願いできればと思っております。

その内容の詳細は幹事に説明させますが,この諮問第63号につきましては,最近のハイテク犯罪の情勢や,条約の早期締結の必要性にかんがみ,今秋に臨時国会が開かれるようであれば,同国会に関係の法案を提出いたしたいと考えておりますので,よろしく御審議の上,できる限り速やかに御答申をいただきたくお願いする次第でございます。よろしくお願い申し上げます。

●それでは,私の方から,諮問に係る要綱(骨子)につきまして御説明申し上げます。

要綱(骨子)につきましては,配布資料の資料番号1としてお配りしていますが,御覧いただければお分かりのとおり,第一から第八までの項目に分かれております。

順に御説明いたします。

まず,要綱(骨子)の第一でありますが,このうち一から四までは,人の電子計算機における実行の用に供する目的で,人の使用する電子計算機についてその意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせる不正な指令に係る電磁的記録等を作成し,提供し,取得し,保管し,さらには,人の電子計算機において実行の用に供する罪を新設しようとするものであります。

今日,電子計算機が重要な社会的機能を有するに至っていることは,今,事務当局の方から申し上げたとおりでありますが,電子計算機による情報処理は,プログラムの実行によりなされるものでありますところ,電子計算機のプログラムは,作成されればこれを容易にかつ大量に複写することが可能である上,ネットワーク等を通じて容易に広範囲に拡散することが可能な状況にあります。また,電子計算機のプログラムは,これを実行する者がその機能を把握することが困難でありまして,電子計算機の使用者は,不正なプログラムであっても,その機能を認識することなく,これを実行させることになります。そのため,近時,いわゆるコンピュータ・ウイルス,すなわち人の使用する電子計算機についてその意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせる不正な指令を与える電磁的記録が,使用者の意図に反して広範囲の電子計算機で実行されて広く社会に被害を与えており,深刻な問題となっていますが,このような事態を放置しますと,人は,電子計算機による情報処理のためにプログラムを実行するに際して,そのプログラムを信頼して情報処理を行うことができなくなり,ひいては社会的基盤となっております電子計算機による情報処理が円滑に機能しなくなるということになります。したがいまして,このような不正プログラムによる不正行為につきましては,その作成,提供,供用,取得あるいは保管といった各段階の行為を処罰することにより,人のプログラムに対する信頼を保護し,電子計算機の社会的機能を保護する必要性が極めて大きいと考えたものであります。

サイバー犯罪に関する条約も,このような認識に立ちまして,その6条1項におきまして,データ妨害,システム妨害の犯罪を行うために使用する意図をもって,これらの犯罪を主として行うため設計され,あるいは調整されたコンピュータ・プログラムを含む装置を製造し,販売し,配布し,又はその他の方法によって利用可能とする等の行為の犯罪化を締約国に求めているところであります。

そこで,不正なプログラムによる不正行為に的確に対処できるようにするため,その作成,提供,供用,取得又は保管の行為を処罰する罪を新設しようとするものであります。

この(骨子)の中で,不正指令電磁的記録等の「作成」とは,当該電磁的記録等を新たに記録媒体上に存在するに至らしめる行為をいいます。また,「提供」とは,当該電磁的記録等を取得しようとする者が事実上利用できる状態に置く行為をいうものとして記載しております。それから,「取得」とは,当該電磁的記録等を自己の支配下に移す一切の行為でありまして,「保管」とは,これを自己の実力支配内に置いておくことを意味するものとして使っております。また,「実行の用に供する」という概念につきましては,当該電磁的記録を,電子計算機を使用している者が実行しようとする意思がないのに実行される状態に置く行為をいうものとして記載しております。

それから,不正指令電磁的記録等の作成,提供,取得,保管の各罪が成立するためには,「人の電子計算機における実行の用に供する目的」が必要でありまして,研究者あるいはアンチウイルスソフトの製造者などが,研究や実験のために自己の電子計算機でのみ実行させる目的で,これらの行為を行った場合には,犯罪は成立しないということになります。

法定刑につきましては,電磁的記録不正作出・供用の罪(刑法161条の2),あるいは電子計算機損壊等業務妨害の罪(刑法234条の2)等の法定刑を参考にしまして,作成,提供,供用の罪については3年以下の懲役又は50万円以下の罰金ということにし,供用,提供の前段階の行為であります取得,保管の罪につきましては,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金ということとしております。

次に,要綱(骨子)の第一の五でありますが,これは電子計算機損壊等業務妨害罪の未遂を処罰することとするものでございます。

これは,電子計算機損壊等業務妨害につきましても,今日,コンピュータ・ネットワークにより遠隔から敢行され,あるいは広範囲に被害を及ぼし得るものとなっておりまして,これを未然に防止する必要性が高いと考えられますところ,その未遂は,不正指令電磁的記録供用罪,あるいはその未遂罪に該当する場合も少なくないと考えられますが,これによる処罰のみでは必ずしも十分でないと考えられますことから,電子計算機損壊等業務妨害罪の未遂を処罰することとするものであります。

次に,要綱(骨子)の第二の一でありますが,これは,現行の刑法175条前段のわいせつ物頒布等の罪に加えまして,電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布する行為についても処罰できるようにするものであります。「電磁的記録その他の記録の頒布」といいますのは,不特定又は多数の者の記録媒体にこれらの記録を存在するに至らしめることをいい,具体的には電子メールによりわいせつ画像を不特定あるいは多数の者に送信するような行為などが想定されるものであります。

このような行為は,わいせつ物の頒布行為と実質的には同様の行為でありますが,コンピュータ・ネットワークの普及に伴いまして,刑法による的確な対応に疑義が生ずるに至っておりますことから,このような行為を処罰の対象として明確に規定する整備を行うものであります。

また,この改正に伴いまして,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体の頒布,あるいは公然陳列という行為が処罰の対象となるのかについて,解釈上の疑義が生じないように,わいせつ物の中にわいせつな電磁的記録に係る記録媒体が含まれることを明示することとしております。

次に,要綱(骨子)第二の二でありますが,これは,現行の刑法175条後段のわいせつ物所持の罪に加えまして,わいせつ電磁的記録保管の罪を設けるとともに,これらの罪の目的を,「販売の目的」から「有償で頒布する目的」に改めるものであります。従来は,わいせつ物はその物自体を販売することにより広範囲の者に拡散されていたわけでありますが,最近では,わいせつな電磁的記録を電気通信による送信により容易に頒布して拡散することが可能でありますし,また,わいせつな電磁的記録の記録媒体や,さらには,わいせつな写真集などの有体物につきましても,複写技術等の発達によりまして,当該有体物の所有権を移転しなくても,同じ内容の複製を容易に作成してこれを拡散することができるのが実情となっておりますことから,所持,保管の罪の成立に必要な目的につきましては,所有権の移転の有無にかかわらず,有償の頒布ということで処罰することとするのが相当であると考えたものであります。

このほか,同条の罪につきましては,利益獲得目的で行われるのがほとんどであるという実態にかんがみまして,罰金刑の任意的併科を可能とする改正を行うこととしております。

次に,要綱(骨子)の第三の一についてでありますが,これは,電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法を定めるものであります。

現行法上,電磁的記録に係る証拠の収集方法といたしましては,電磁的記録に係る記録媒体を差し押さえることが考えられますが,例えば,記録媒体が大型のサーバであるような場合に,これを差し押さえることによりまして,被差押者の業務に著しい支障を生じさせるなどする一方で,差押えをする者にとってもそのサーバ自体を差し押さえるまでの必要がなく,記録媒体をそのまま差し押さえないで捜査の目的を達成できると判断できるような場合には,そういったことを可能にすることが相当であると考えられます。

サイバー犯罪に関する条約19条3項も,このような認識に立ちまして,締約国に対し,必要なコンピュータ・データを確保するため,コンピュータ・データの複製を作成し,保持すること,及びコンピュータ・データを消去すること等を行う権限を当局に与えることを求めております。

そこで,差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは,差押状の執行をする者又は差押許可状により差押えをする捜査機関は,その差押えに代えて,差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写し,印刷し,又は移転した上,当該他の記録媒体を差し押さえることができるようにするなどの法整備を行うこととしております。

この要綱(骨子)第三の一の1は,捜査機関が自らこれを行う場合でありまして,2の方は被差押者をしてこれを行わせる場合について定めたものであります

ここで「複写」といいますのは,電磁的記録をディスク等の他の記録媒体にコピーをするということでありまして,「印刷」といいますのは,電磁的記録を紙媒体にプリントアウトするということと考えております。さらに,「移転」といいますのは,電磁的記録を他の記録媒体に移すこと,すなわち,電磁的記録をディスク等の他の記録媒体に複写した上で,元の記録媒体からは電磁的記録を消去することをいいます。

次に,要綱(骨子)第三の二でありますが,これは第三の一の法整備に伴う還付についての所要の法整備を行うものであります。

一の処分におきまして,被差押者が当該他の記録媒体の所有者,所持者,あるいは保管者である場合には,被差押者から当該他の記録媒体の占有を奪っておりますことから,留置の必要がなくなったときには,原状回復として被差押者に当該他の記録媒体を還付するということになります。これに対しまして,捜査機関側が当該他の記録媒体の所有者等である場合には,捜査機関は,被差押者から当該他の記録媒体の占有の移転を受けたものではありませんし,また,これを被差押者に返還するという関係にもないことから,被差押者には,当該他の記録媒体を還付することにはならないことになります。しかしながら,その場合でありましても,他の記録媒体に電磁的記録を移転してこれを差し押さえた場合には,被差押者のもとから電磁的記録が消去されているので,原状回復といたしまして,この二の規定により,当該他の記録媒体を被差押者に交付し,あるいは当該電磁的記録を複写させるということにしたものであります。

続きまして,要綱(骨子)の第四についてですが,これは,電磁的記録を保管する者等に命じて,必要な電磁的記録を記録媒体に記録等させた上で,当該記録媒体を差し押さえる記録命令差押えという制度を設けるものであります。

現行法上,電磁的記録に係る証拠の収集方法といたしましては,既に申し上げましたとおり,電磁的記録に係る記録媒体を差し押さえることが一般に考えられますが,今日,コンピュータ・ネットワークが高度に発展し,遠隔の電子計算機の記録媒体に電磁的記録を保管し,あるいは必要の都度,これをダウンロードするなどして利用することがかなり一般化していることから,従来の記録媒体を差し押さえるという方法だけでは,例えば電磁的記録が記録されている記録媒体を特定することが困難である場合,電磁的記録が複数の記録媒体に分散して保管されている場合等におきまして,捜査の目的を十分に達成できないおそれがあり,このような傾向は,今後ますます強まると考えられます。

他方,通信プロバイダ等の電磁的記録を保管している者等につきましては,裁判官の令状があれば,必要な電磁的記録を他のディスク等の記録媒体に記録した上,当該記録媒体を提出することを協力する場合も多いと考えられますところ,そのような場合であって,電磁的記録が記録されている記録媒体自体を特定して差し押さえなくても,必要な電磁的記録を取得すれば証拠収集の目的を達することができるような場合には,そのような方法をとることが合理的であると考えられます。

また,現代のコンピュータ・システムは極めて複雑でありまして,その操作には種々の専門的な知識等が必要でありますため,電磁的記録を記録媒体に記録する操作も,捜査機関が行うよりも,コンピュータ・システムの管理者等に行わせる方が効率的であり,また,コンピュータ・システムの保護にも資すると考えられます。

サイバー犯罪に関する条約18条も,締約国に対し,協力的な第三者が保管するような電磁的記録に係る証拠の収集に当たり,現代の複雑なコンピュータ・システム下における種々の専門的な電子計算機の操作等を捜査機関自らが行うことを回避するとともに,被処分者にとってもより侵害性の弱い方法によることを可能にするものとして,電磁的記録の保管者等にこれを自ら提出させる制度の創設を求めているところであります。

そこで,電磁的記録の保管者等に必要な電磁的記録を記録媒体に記録させた上,当該記録媒体を差し押さえる制度を設けることとしております。

捜査機関が記録命令差押えをする場合におきましては,裁判官の発する令状が必要となりますが,当該令状には,「電磁的記録を記録させ,又は印刷させるべき者」,それから,「記録させ,又は印刷させるべき電磁的記録」等を記載することとなります。

次に,要綱(骨子)第五でありますが,これは,電子計算機の差押えに際しまして,これに電気通信回線で接続している記録媒体からの複写を可能とする制度を設けるものであり,電子計算機を対象とする差押えの範囲を実質的に電子計算機と一体的に利用されている記録媒体にまで拡大しようとするものであります。

今日,コンピュータ・ネットワークが高度に発展し,遠隔の電子計算機の記録媒体に電磁的記録を保管し,あるいは必要の都度これをダウンロードするなどといった利用がかなり一般化しておりますことから,従来の記録媒体を差し押さえるという方法だけでは捜査の目的を十分に達成できないおそれがあることにつきましては,既に申し上げたところであります。

サイバー犯罪に関する条約も,19条2項におきまして,コンピュータ・システムの捜索等を行う場合において,対象となるデータが他のコンピュータ・システムの中に蔵置されていると信ずるに足りる理由があり,かつ,当該データに対して当初のシステムから合法的にアクセスが可能であるか,あるいは当初のシステムで利用可能であるときは,当該他のコンピュータ・システムの捜索等を行うことができるようにすることを締約国に義務づけているところであります。

そこで,差し押さえるべき物が電子計算機であるときは,当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって,当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから,当該電子計算機を操作して,必要な電磁的記録を当該電子計算機あるいは他の記録媒体に複写した上,当該電子計算機又は記録媒体を差し押さえることができることとするものであります。

「電子計算機に電気通信回線で接続をしている記録媒体であって,当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるもの」の例といたしましては,電子計算機で処理すべき文書ファイルを保管するために使用されているリモートストレージサービスの記録媒体等が想定されます。

また,「電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認められる状況にある」というのは,差し押さえるべき電子計算機の使用状況等から,当該記録媒体が,当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されている蓋然性が認められるということでありまして,具体的には,例えば,差し押さえるべきパソコンにリモートストレージサービスのアカウントの設定がなされている場合などがこれに当たると考えております。

また,要綱(骨子)第五の処分を行う場合におきましては,令状主義の要請を満たすために,差押状又は差押許可状に,差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって,その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならないこととしております。

次に,要綱(骨子)第六でありますが,これは,差し押さえるべき物又は検証すべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは,差押え等を行う者は,被処分者に対して,電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができることとするものであります。

電磁的記録に係る記録媒体の差押え等を行うに当たりましては,コンピュータ・システムの構成,システムを構成する個々の電子計算機の役割・機能や操作方法,セキュリティーの解除方法,差し押さえるべき記録媒体や必要な電磁的記録が記録されているファイルの特定方法等について,技術的,専門的な知識が必要な場合が多いと考えられますことから,差押え等を実施する捜査機関等があらゆる面で自力執行することは困難な場合が多く,また,被処分者の利益の保護等の面からも適当でないことがあります。したがいまして,電磁的記録に係る記録媒体の差押え等に当たりましては,これらについて最も知識を有すると思われる被処分者の協力を得ることが必要になると考えられますし,また,被処分者の中には,記録媒体に記録されている電磁的記録について権限を有する者との関係で,これを開示しない義務を有する者もあることなどから,捜索・差押えを実施する者が協力を求め,また,これに協力することができる法的根拠を明確にしておくことが望ましいと考えられます。

サイバー犯罪に関する条約でも,19条4項等におきまして,締約国に対し,コンピュータ・システムの機能,又はコンピュータ・システム内のコンピュータ・データの保護措置に関する知識を有する者に,コンピュータ・システムの捜索・差押え等の執行を可能にするために必要な情報を合理的な範囲で提供するように命ずることができるようにすることなどを求めております。

要綱(骨子)第六は,これらの理由から,被処分者に対する協力要請の制度を設けることとするものでございます。

次に,要綱(骨子)第七でありますが,まず,一は,捜査については,電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者等に対して,その業務上記録し又は記録すべき電気通信の送信元,送信先,通信日時その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定して,90日を超えない期間を定めて,これを消去しないよう求めることができることなどを定めるものであります。

コンピュータ・ネットワーク等の電気通信を利用した犯罪の捜査におきましては,その匿名性といった特徴から,犯人の特定等のために通信履歴の電磁的記録を確保することが非常に重要でありますが,通信履歴の電磁的記録は,一般的に短期間で消去されていくことになる場合が多いという事情にございます。捜査の実務では,差押許可状を取得する前の段階において,通信履歴の電磁的記録の任意の保全を求めている場合がありますが,通信履歴の電磁的記録は,通信の当事者の利益にもかかわるものでありまして,その保全を求める法律上の根拠を明確にしておくことが望ましいと考えられますことから,このような保全要請の規定を設けることとするものであります。

サイバー犯罪に関する条約16条1項も,締約国に対しまして,特定の捜査との関係で,既に記録・蔵置された既存のデータを削除せず維持しておくことを命ずる保全命令,あるいはこれに類する方法により確保できるようにすることを求めておりまして,要綱(骨子)第七の一は,迅速に保全する必要性が特に大きい通信履歴の電磁的記録について,条約が求める法整備を行うというものであります。

「電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者」といたしましては,例えば,インターネット・サービス・プロバイダがこれに当たりますし,「自己の業務のために不特定若しくは多数の者の通信を媒介することができる電気通信を行うための設備を設置している者」といたしましては,例えば,LANを設置している会社等がこれに当たることになります。

要綱(骨子)第七の二は,一の保全要請と,それから捜査事項照会に関する事項の秘密保持を求めることができることとするものであります。

保全要請や捜査事項照会は,その性質上,捜査の初期段階に行うことも多く,密行性が強く求められるため,これを受ける者に対しまして,これらに関する事項をみだりに漏らしてはならない法律上の義務を負わせる必要がある場合もあることから,このような規定を設けることとするものであります。

サイバー犯罪に関する条約16条3項も,締約国に対しまして,データを保全すべき者にデータを保全する手続がとられていることについての秘密保持義務を課することができるようにすることを求めております。

要綱(骨子)第七の二の規定を設けることによりまして,保全要請を受けたプロバイダや,捜査関係事項照会を受けた金融機関等が,その顧客等からこれらの要請に関する事項について問われても,みだりにこれに答えてはならないことが法律上明らかになります。

最後に,要綱(骨子)第八でありますが,これは,不正に作られた電磁的記録等の没収についての法整備を行うものであります。

電磁的記録の没収は,現行刑法において認められている文書偽造における偽造部分の没収と同様に,有体物の一部の没収としてこれを行うことが可能であると考えられますが,その執行方法は必ずしも明らかではないという状況にございまして,こうしたことから,刑事訴訟法498条と同様の規定といたしまして,不正に作られた電磁的記録あるいは没収された電磁的記録に係る記録媒体を返還等する場合に,当該電磁的記録を消去等しなければならない旨の規定を設けるほか,刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法の適用につきまして,所要の法整備を行うこととするものでございます。

以上,諮問に係る要綱(骨子)の内容について御説明させていただきました。

●それでは,続きまして,事務当局から配布資料につきまして説明をお願いいたします。

●本日の御審議の参考にしていただきますために,席上に配布資料4点と参考資料4点の合計8点を御用意させていただいておりますので,その内容等につきまして御説明申し上げます。

まず,配布資料でございますが,配布資料1は,先ほど朗読させていただきました諮問第63号でございます。

次の配布資料2は,「欧州評議会サイバー犯罪に関する条約(仮称)」の英語の正文と,その仮訳文でございます。訳文につきましては,今後,条約の締結のための手続が進められる中で作成されることとなりますので,正式なものではございませんが,仮訳文を御用意させていただきました。正式の訳文となる過程で文言が変更されることもあり得るところであり,あらかじめ御了承ください。

配布資料の3は,「欧州評議会サイバー犯罪に関する条約(仮称)」の注釈書でございます。この注釈書は,本条約と同時に採択されたものでありまして,本条約を締約国が解釈する際に参照するために作成されたものでございます。

配布資料4は,統計資料でございます。

1頁は,我が国のインターネット利用者数と人口普及率の推移に関する統計であります。

2頁は,インターネットの接続サービスを提供しているインターネットサービスプロバイダと呼ばれる事業者の数の推移に関する統計でございます。

我が国におけるインターネットの普及には,近年目覚ましいものがありまして,平成14年の人口普及率は54.5%に達しております。現在,国民の半数以上がインターネットを利用している状況にあるわけでございます。また,プロバイダの数も急激に増加し,平成13年度で6,700余りの事業者が存在しております。

3頁から7頁までは,世帯,企業,国の行政機関のそれぞれにおけるパーソナルコンピュータ及びインターネットの利用状況の推移に関する統計でございます。

世帯,企業,国の行政機関のいずれにおきましても,コンピュータ及びインターネットの利用が飛躍的に増加していることが御理解いただけると存じます。

次の8頁は,コンピュータ・ウイルスの届出件数の推移に関する統計でございます。

平成2年に,当時の通商産業省が「コンピュータ・ウイルス対策基準」を策定いたしまして,コンピュータ・ウイルスを発見した者は,被害の拡大及び再発を防止するために必要な情報を,「情報処理の促進に関する法律」に基づいて設立された特別認可法人である情報処理振興事業協会に対して届け出ることとされておりますが,その届出件数をまとめたものでございます。届出件数は,平成5年には897件だったのが,同14年には2万352件にまで増加しております。実際にコンピュータに感染したケースは,平成13年には4,676件だったのが,同14年には1,719件に減少しておりますが,その理由としては,いわゆるアンチ・ウイルスソフト等によるセキュリティー対策が進んだことなどが考えられます。しかしながら,コンピュータ・ウイルスは次々に新種のものが社会に被害を与えておりまして,今後も,コンピュータ利用者の自衛手段のみによってはウイルスによる被害を防ぐことはできないものと考えられます。

9頁は,ハイテク犯罪の検挙件数の推移に関する統計であり,10頁は平成11年から14年までのハイテク犯罪の検挙件数の罪名別の内訳をまとめたものでございます。ハイテク犯罪は,コンピュータ・電磁的記録対象犯罪,すなわち,コンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪と,ネットワーク利用犯罪,すなわち,コンピュータ・ネットワークを手段として利用したわいせつ物頒布,詐欺等の犯罪,そして,不正アクセス禁止法違反とに分けられます。これらの統計から,ハイテク犯罪,特にネットワーク利用犯罪の件数が急激に増加していることが御理解いただけると存じます。

11頁は,平成9年から13年までの刑法175条のわいせつ物頒布等の罪に係る通常第一審の有罪人員の刑期別の内訳についてまとめたものでございます。

続きまして,席上に参考として配布いたしました資料について,簡単に御説明させていただきます。

第1は,データ損壊罪,わいせつ物の頒布等の罪及び捜索差押手続等に関する諸外国の関係法制について,その概略をまとめたものでございます。第2は,近年発生した主なハイテク犯罪の事例をまとめたもので,第3は,そのうちの1事例についての概略図でございます。最後の第4は,犯人が多額の収益を得ていたわいせつ物頒布等の最近の事例を抽出したものでございます。

以上,簡単ではございますが,配布資料等の説明をさせていただきました。

●ただいま,事務当局から諮問の朗読,諮問事項についての説明,諮問に至る経緯の説明,そして,要綱(骨子)についての説明,配布資料の説明と,長時間にわたりまして説明していただいたわけでございますが,この諮問事項に関する審議の進め方につきましては,後ほど皆さんに御相談いたしますけれども,とりあえず,ただいまの事務当局の説明等につきまして御質問がございましたら,よろしくお願いいたします。

●諮問63号の要綱(骨子)の各項目と,サイバー犯罪に関する条約のどこが対応しているかということを教えていただきたいのですが。

●サイバー条約の対応関係ですか。ただいまの説明では不十分ですか。

●はい,ちょっと分かりにくかったものですから,もう一度。

●それでは,順次御説明させていただきます。

まず,要綱の第一の一から四の「不正指令電磁的記録等作成等の罪」の関係でございますが,これは,サイバー犯罪に関する条約6条1項におきまして,データ妨害やシステム妨害の犯罪を行うために使用する意図をもって,これらの犯罪を主として行うために設計され,又は調整されたコンピュータ・プログラムを含む装置の製造,販売,配布その他の方法によって利用可能とする等の行為の犯罪化を締約国に求めておりますが,これを踏まえたものでございます。

次に,第一の五の「電子計算機損壊等業務妨害の罪の未遂」の処罰でございますが,これは,サイバー犯罪条約5条のシステム妨害の罪に対応するものでございます。

それから,要綱の第二の「わいせつ物頒布等の罪の改正」につきましては,直接にはサイバー犯罪条約に対応するものではございません。

第三の「電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法」についてでございますが,これは,サイバー犯罪に関する条約が,19条3項におきまして,締約国に対し,必要なコンピュータ・データを確保するために,コンピュータ・データの複製を作成し,保持すること,それからコンピュータ・データを消去すること等を行う権限を当局に与えることを求めておりますが,これらを踏まえたものでございます。

それから,第四の「記録命令差押え」でございますが,これにつきましては,サイバー犯罪に関する条約18条が,締約国に対しまして,協力的な第三者が保管するような電磁的記録に係る証拠の収集に当たりまして,複雑なコンピュータ・システムの種々の専門的な操作等を捜査機関が行うことを回避するとともに,被処分者,処分を受ける者にとってもより侵害性の弱い方法によることを可能とするものとして,電磁的記録の保管者等に電磁的記録を自ら提出させる制度の創設を求めておりますが,これを踏まえたものでございます。

第五の「電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体からの複写」でございますが,これは,サイバー犯罪に関する条約19条2項におきまして,コンピュータ・システムの捜索等を行う場合に,対象となるデータが他のコンピュータ・システムの中に蔵置されていると信ずるに足りる理由があり,かつ,当該データに対して当初のシステムから合法的にアクセスが可能であるか,又は当初のシステムで利用可能であるときには,その他のコンピュータ・システムの捜索等を行うことができるようにすることを締約国に義務づけておりますが,これを踏まえたものでございます。

第六の「電磁的記録に係る記録媒体の差押状の執行を受ける者等への協力要請」でございますが,これは,サイバー犯罪に関する条約19条4項等におきまして,締約国に対し,コンピュータ・システムの機能,あるいはコンピュータ・システム内のコンピュータ・データの保護措置に関する知識を有する者に対しまして,コンピュータ・システムの捜索・差押え等の執行を可能とするために必要な情報を合理的な範囲で提供するように命ずることができるようにすることなどを求めておりますが,これらを踏まえたものでございます。

それから,第七の「保全要請等」でございますが,条約の16条1項におきまして,締約国に対しまして,特定の捜査との関係で,既に記録・蔵置された既存のデータを削除せずに維持しておくことを命ずる保全命令又はこれに類する方法により確保することができるようにすることを求めておりますが,要綱の保全要請は,迅速に保全する必要性が特に大きい通信履歴の電磁的記録につきまして,条約が求める法整備を行おうとするものでございます。

第八の「不正に作られた電磁的記録等の没収」でございますが,これは,条約に直接対応するものではございません。

以上でございます。

●ほかにいかがでしょうか。

●先ほどの御説明で,今年の秋には国会に提出とお伺いしたのですが,そのときは同時にこの条約関係も国会に出るということでしょうか。

それと,他の省庁の関係がどうなっているか。条約の締結に当たってというのが諮問の内容になっているのですが,条約の締結に当たってとなると,法務省マターだけなのかどうかということをお聞きしたいと思ったのですが。

●このサイバー犯罪条約で求めております内容は,今回御提示させていただいております,法務省において手当てができる内容だけというわけではございませんで,関係する省庁が幾つかございますけれども,秋に臨時国会が開かれるようであれば,条約の承認を求めるための作業を,それはそれで進めていただいていると承知しておりまして,その条約の承認をいただく際には,必要な国内法制も併せて提出させていただくことになるということでございます。

●今の質問との関係で,ちょっとお伺いします。

この法制審での議論の範囲ということですけれども,他省庁との関係,必要な制度,あるいは他の法制の準備が必要だという議論もお許しいただけるのでしょうか。それとも,刑訴法あるいは刑法との関係だけで議論すべきなのか,少なくともこの答申との関係で。その辺,御案内いただきたいと思っています。

具体的には,例えば,物の差押えに代えて複写をする,あるいは移転をする,移転をしたデータを保管するというプロセスが出てくるわけですけれども,その際に,当然,同一性に関する紛争が執行の現場あるいは押さえられた後に発生する。その際の解釈基準なり技術基準なり,そうしたものを技術的に準備するものがあれば,例えば,裁判所における紛争なども迅速に解決できるというアイデアもあるわけで,その辺を含めて,技術基準とか手順とか,あるいは物の基準,例えば,用いるべき機具の基準,こうしたものをどういうふうな組織で,どういう手順で定めていくかということも議論することが,このような制度を具体的に落としていく上で必要になるだろうと考えているのですが,そんなような議論もお許しいただけるのか,どの辺までをターゲットに考えればいいのかというところを御案内いただきたいのですが。

●御指摘の点は大変興味深い問題を含んでいると思いますけれども,一つは,法制審議会は刑事・民事の基本法制についての調査審議をお願いする審議会であるということで,今回,諮問いたしましたのも,サイバー犯罪に対処するということと,それから,サイバー条約の締結ということを考えて,刑事の関係の実体法,手続法,その基本法の部分についてどのような手当てが必要かということで,8項目の諮問をした要綱(骨子)を立てまして諮問をしたということでございますので,基本的には,その要綱(骨子)の内容について,具体的な御議論をいただければというように考えております。

御指摘にありましたような,差押えに当たりましてのいろいろな技術的な問題,あるいは機器の問題,手続の詳細等につきまして,この要綱(骨子)の議論に必要な範囲で触れていただく分にはよろしいかと思いますけれども,捜査機関なり何なりの具体的な執行場面でのいろいろな技術的な問題ということになりますと,恐らく,この諮問の内容について議論をし答申をする上では,やや,本来の諮問なり審議の対象とするところからは外れてくるものも多いのかなという感じがしております。

関係する省庁からも出席をいただいておりますので,必要な範囲でお話しいただくということはあろうかと思いますけれども,例えば,技術的基準をここで決めるということにはならないのではないかと考えております。

●今日の配布資料の3番で,「欧州評議会サイバー犯罪に関する条約」の注釈書を配布していただいていて,これは大変重要なものかと思います。この条約は,サイバー犯罪に対応するためのかなり新しい考え方を打ち出している条約で,これを正確に理解するためには,このExplanatory Reportを子細に検討しながらこの審議を進める必要があろうかと思うのですが,当然,委員の皆様方,英語で読みながら,これで議論すればいいということなのかもしれませんが,事前に伺ったところでは,正式な仮訳ではないけれども翻訳はあるというようなお話も伺っているので,この場で議論するとしましたら,この注釈書の訳文を提出いただいて,それに従ってやった方が,ずっと実りのある討論ができるかと思われますので,そういうことは可能ではないのでしょうか。

●この注釈書につきましては,御覧いただいたとおりかなりのボリュームがございまして,私ども,必要な範囲で訳ができないかということで作業はしているところではございますが,条約のように,一応の仮訳文としてお示しできる状態に至る前でございまして,ボリュームの関係もございますので,どの範囲でどのような対応が可能か,その点はちょっと検討させていただきたいと思います。

●少なくとも,用語の定義がされている部分と,今回,6条が関連していますけれども,6条は2条から一連の流れでできているので,チャプターでいうと㈼ですね。それと,Procedural Lawの,先ほどの話でも16条,18条,19条あたりが出てきているので,このあたりは必須なのではないかなと思いますので,よろしくお願いいたします。

●いかがですか,物理的に可能ですか。

●検討いたします。

●配布資料との関係で確認をさせていただきたいのですが。

各国の立法例として,後ろに資料が載っております。この問題については,欧州各国のサイバー条約の作成,それから,9.11を経た上でのアメリカの捜査法制と,それから,激変された後のこの条約の反映というのが背景にあって,その上での日本の刑訴法の改正ということで,激変している法制の中でのことで,実は各国の法制もヨーイドンで始まってはいるのだとは思うのですが,やはりどういう方向に行くのかということを見極めながら議論ができれば非常に有り難い。

特に,今回のケースについては,サイバースペースにおける法秩序というか,個々の秩序と,それから,従前の憲法の場所と物によって特定されたという非常に固い令状主義の形,あるいは令状の概念というものを同じに考えて広げていくのかとか,違うものを準備するのかとか,その辺踏ん切らないといけないのかという議論が背景にあるわけで,是非各国での現在の議論の水準というのを知りたいと思うのです。その意味で,ここに掲げられているこの立法例というのは,まずいつの時点なのか,それから,例えば,ここにはアメリカの先ごろ改訂された,9.11の後に改訂された,捜索・差押えマニュアルというふうに名前が変わりましたけれども,そうしたものは見えないのですけれども,あれは法律というほどのものじゃないということかもしれませんが,日弁連では議論するときにかなり注目しているところもございますので,少なくとも改訂された捜索・差押えマニュアルのガイド部分等も載せていただくとか,ほかの国でこの条約に向けた議論,あるいは法制の準備のニュースを,できるだけ早くお知らせいただきたいと思うのですけれども。

●かなり実質的な議論に入り込みそうなのでありますが,この辺で休憩をさせていただきまして,その上で改めて御議論いただくということでよろしいでしょうか。

(休憩)

●それでは,会議を再開いたします。

先ほど,○○幹事から御要望のございました点につきまして,事務当局から御説明させていただきます。

●先ほど,○○幹事から御質問等ございました件でございますが,参考資料として御用意させていただきました諸外国の法制につきましては,現段階で入手可能な最新のものを御用意させていただいております。アメリカの法制も,9.11後に制定されましたパトリオット法による手続等の改正が反映された現段階での資料でございます。

そのほか,フランスにつきましては,現在,サイバー条約批准のための法案が国会に提出されておりまして,これにつきましては入手可能でございましたので,この資料にも「情報化社会に関する法律案」の内容ということで盛り込んでおります。

そういう意味で,現時点で可能な限り入手し得る内容で資料を作らせていただいておりますが,可能な資料につきましては,提出等も検討させていただきたいと思っております。

●それでは,諮問事項の審議に入りたいと思いますが,お手元に配布されております要綱(骨子)案を軸に御審議をいただきたいと思います。

部会によりましては,要綱(骨子)を示さないで審議する場合が結構あるようでございますが,最近は,刑事法関連部会では,必ず要綱(骨子)を示して,それを軸に御議論いただくというようにしておりますので,そういう形で今後も進めさせていただきたいと思いますが,少し,事務当局の方で,今後の審議の進め方につきまして御提案をいただきたいと思います。

●審議の進め方につきましては,もとより部会において決定されるべき事柄でございますけれども,事務当局の立場から1点お願いさせていただければ,本日,要綱(骨子)の案につきまして,御提示させていただいておるわけでございまして,特定の部分,あるいは全体についてでも結構でございますが,委員各位の問題認識を共有することができますような形で,御質問なり御意見,御感想などを御発言いただきますと,次回以降の審議をより充実したものにできるのではなかろうかと思われます。

●ただいまの御提案でございますが,現在予定されております,7回あるいは8回,相当長時間にわたる部会になろうかと思っておりますので,私としても,できれば,今日の段階で,概括的・総括的なあるいは全体に及ぶような御議論をいただきますと有り難いと思っておりますので,ひとつよろしくお願いしたいと思います。

それでは,御自由に御発言をいただきたいと思います。

●今回の要綱を見ると,言い回しが非常に難しいといいますか,難しい日本語を使っているといいますか,ハイテク犯罪というふうになると,最近は,片仮名でかなりいろいろのものを表記しますよね。電子計算機のときも,いろいろ議論になって,「コンピュータ」という言葉が定着しているのではないかという議論もあったわけですが,条約の訳語を見ても,少し訳し方というか,同じものを表すのに違う用語が出ているというふうに見えるのですが,この辺は,今年の秋に出される他の省庁のそういう関連したものと,同じような用語を使うというふうになっているのでしょうか。それとも,この部会で議論するのは,この要綱は,ある意味で特殊といいますか,独特の言葉遣いをしているのだということなのでしょうか。そこだけ,ちょっとお聞きしておきたいと思います。

●今回,要綱(骨子)としてお示しさせていただいております内容,これがどの法律を変えるのかということにつきまして,確たることを今の時点で申し上げられないわけでございますけれども,ただ,内容といたしまして,法制審議会では,基本法制ということで,当然のことながら,実体法につきましては刑法,手続法につきましては刑事訴訟法というものを念頭に置いた御議論をお願いしなければならないと思っておりまして,これまでの刑法,刑訴法で使われてまいりました用語例などを参考にした形で表現させていただいておるということから,このような要綱の表現ぶりになっているわけでございまして,これは,仮に他省庁で所管しておられます法律の改正が必要だという場合には,その法律の用語の用い方に従ってそれぞれ行っていかれるものというように考えております。

●関連するのですが,2002年の4月に,経済産業省から,サイバー刑事法研究会の報告書ということで,「欧州評議会サイバー犯罪条約と我が国の対応について」というかなり分厚いレポートが出ているわけですけれども,今回提案されているのはここで指摘されているものの本当にごく一部だなという印象を持っているわけですけれども,サイバー犯罪条約全体を批准するかどうかということが,まず一つ,国の対応として大きな問題であって,この条約全体をどう理解するかという,そして,どういう法的対応が必要であるという,日本国全体としてこの条約を批准する際に対応を求められているものの総体があって,その一部がこれであるという理解のはずで,我々がここでこの要綱(骨子)案の是非を議論するのは当然なのですけれども,それが全体像としてどういうものになるものの一部なのかということが分からないで議論するのはちょっとやりにくいなと,いかがなものかなと思うのですが,もし差し支えなければ,現状で,法務省と経済産業省や総務省などとどういうすり合わせなり,どういうことが話し合われているのか,これも御紹介いただきたいと希望いたしますけれども。

●確かにサイバー犯罪条約の締結ということを考えた場合には,ここにも複数の省庁の方に出席していただいておりますが,そういう省庁を中心に関係する省庁が一定の数にわたっておりまして,それぞれの省庁内部でいろいろな検討作業を進め,また,必要に応じ,意見交換するということで進めているということなのだろうと思います。しかし,私どもの理解としましては,ほかの省庁の所管の法令で担保法を検討すべき事項については,それぞれ項目があるのだろうと思いますが,具体的にどういう内容の担保法を検討しているとか,あるいはどういうふうにするということを,対外的にといいますか,御披露いただけるところはもちろんいただけばいいのかもしれませんが,恐らく,今の段階では,必ずしもそういう形で対外的にこういう状況だということの御説明はそれぞれの省庁でもなかなか難しいところがあるのかなという感じがしております。私どもといたしましては,少なくとも,刑事の基本法,刑法,刑訴法を中心とします基本法の法制で,サイバー犯罪条約の締結,更にはサイバー犯罪への対処という観点から,どういう手当てが必要なのかということをまずもって中心的に御議論いただければと思います。

ほかの立法を要する部分については,もし議論の過程で他の省庁からも御紹介いただけるところがあるようであればお話しいただければと思いますが,この諮問の要綱(骨子)を中心に御議論いただければと考えております。

●ほかにいかがですか。

●第一の「不正指令電磁的記録等作成等の罪の新設等」のあたりからちょっと教えていただきたいのですが。

まず,保護法益ということで,これを読んだときに私は誤解をしておりまして,電子計算機損壊の予備的な行為の処罰の範囲が広がるのかなと,その必要性はどういうところかなと。電子計算機の機能,あるいはそこに蔵置されたプログラムの機能というものに対する損壊,いわば器物損壊罪の拡張のようなイメージでとらえたのですが,御説明を伺うと,人のプログラムに対する信頼,つまりプログラムが意図したように動くということへの信頼を保護する,文書偽造の作成の真正とはまた違うのですけれども,いわば内容の真正についての保護という考え方のようですが,そうした保護法益のとらえ方というのは,どんなふうな背景というのでしょうか,議論の背景があって出てきたのか,教えていただきたいのですけれども。

それから,第一の一については,2行目の「その意図に沿うべき動作」というのをどう把握するのか,あるいはこれでコントロールしなければいけない事象としてどのあたりまで考えているのか,この言葉でこの辺は線を引かなければならないという議論がどんなふうに行われたのかをお伺いしたいのです。

例えば,ウィンドウズのXPなどを購入しますと,デフォルト状態でマイクロソフトに接続されるような形になっている。それは買ったときにはほとんど分からない。普通の人はね。普通の人というか,特にマニュアルを詳細に読んでやらないと分からない。

それから,オフィスというソフトウェアがありますけれども,あれも買って使うといろいろ便利な表とかワープロとか出てきますけれども,何もしないとイルカが出てくる。邪魔だということで消さなければいけない。こういう機能面というのですか,おまえが買ったのだからということでこれを処罰するというふうには考えていないとは思うので,例として出したわけですけれども,この辺をどういうふうに切っていくのだろうと。つまり,その意図というのはどういうふうに解釈するのか,つまり,購入した,あるいはプログラムを作成したその作成されたプログラムそれ自体というふうに考えるのか,それから,いつの時点で把握するのか。つまり,ワードのイルカを出すプログラムをかいた人は,当然それが買った人のもとでもそのように動くということは分かっている,買った人は,そんなものが動くとは思っていない。そうすると,プログラム作成者ということで限定していいのかどうかということが一つ出てくるのですけれども,これはコンピュータの使用者ですから,プログラムを作成した人ではなくて,使用する人の意図したとおりに動くかどうかということになってくるのじゃないか。しかし,使用する人のプログラムに対する認識というのは,個々具体的で,具体的に把握するというのは余りに細か過ぎて,これも適当ではない。その辺で,「その意図に沿うべき」というのをどういうふうに考えていて,これでコントロールできる範囲,あるいはここから除外しなければいけない範囲について,どんな議論がなされたか,教えていただきたい。

併せて,先ほどのお話で,「人の電子計算機」というところで他人のという意味だという御説明がありましたけれども,例えば,セキュリティの技術者が依頼を受けて,それでセキュリティの侵入をテストしましょうという,そういうベンダーがありますね。そうすると,それは,依頼を受けた会社のために,そこに適合した侵入ソフトとか,はっきり言うとハッカーと同じ,ハッカーを上回るそういうプログラムを作って会社に持ち込んでテストして,防御できる,防御できないということをやるわけですけれども,当然これも排除するということになるのだろうと思うのですけれども,排除というか,不可罰ということになるのだろうと思うのですが,それは,構成要件的に排除していくのか,あるいは違法性阻却というか,そういう形で排除するというふうに考えられているのか,文言との関係はどうなんだろうか。そのあたりを,ちょっと多くなりましたけれども,提案者としてはどんなふうなお考えか,お伺いしたいのですけれども。

●よろしいでしょうか,3点ほどありますが。

●まず,保護法益の関係でございますが,コンピュータ・ウイルスは,他人が使用しているコンピュータで実行されて,データの破壊などの実害を与えるものでありまして,その意味でコンピュータ・ウイルスは個々のコンピュータ利用者の利益を害するという側面があって,それについても刑法的な保護が必要であると考えておりますが,それとともに,コンピュータのプログラムというのは容易に広範囲の電子計算機に拡散するという性格がある上に,コンピュータの使用者は,プログラムがどのように機能するかというのを容易には把握できないので,プログラムが変な動作をしないと信頼して利用できないと,コンピュータの社会的機能が保護できないということになります。また,現実にコンピュータ・ウイルスが広範囲に社会に害を与えているという実態がございますので,そういうことを考えますと,電子計算機のプログラムに対する信頼という社会的法益を害する罪として構成するのが相当だと考えているところでございます。

次に,「人の使用する電子計算機についてその意図に沿うべき動作をさせず」の「その意図」というのはだれの意図かということでございますが,この要綱で,「人の使用する電子計算機について」と書いておりますのは,だれであれ,人がコンピュータを使うときに,そのコンピュータを使っている人の意図に反する動作という意味で考えているものでございます。

それから,依頼を受けて,ある会社のコンピュータのセキュリティーが万全かどうかを調査するために,ウイルスプログラムを送り込んでテストをするというようなときは「人の電子計算機における実行の用に供する目的」がない,同意を得て,あるいは依頼を受けてやっている限り,「人の電子計算機における実行の用に供する目的」があることにはならないので,ここで新設しようとしている罪には該当しないということになると考えております。

また,意図に反するものであっても,正当なものがあるのではないかというような御質問もあったかと思いますが,その観点からは,この要綱の案におきましては,対象とする電磁的記録を「不正な指令に係る電磁的記録」に限定しておりまして,例えば,アプリケーション・プログラムの作成会社が修正プログラムをユーザーの意図に基づかないでユーザーのコンピュータにインストールするような場合,これは,形式的には「意図に反する動作をさせる指令」に当たることがあっても,そういう社会的に許容されるような動作をするプログラムにつきましては,不正な指令に当たらないということで,構成要件的に該当しないと考えております。

●できれば全般的な点について,御意見を頂だいしたいと存じます。前段は実体法的な問題,後段は手続法の問題でございますので,この要綱(骨子)の考え方について,何か御意見賜ればと思いますが。

●要綱の第五ですけれども,「電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体からの複写」で,先ほどの御説明で,非常に分かりやすい例でリモートアクセスできるストレージがあって,そこにアクセスしている場合に必要であるという御説明で,それは,私も非常によく理解できるのですけれども,電子計算機が電気通信回線で接続されているという場合は,そういう場合だけじゃなくて,大きな会社でたくさんのコンピュータがLANで接続されているというようなケースで,合法的にアクセス可能なというようなことも条約には書いてありますけれども,会社のある一人の人のコンピュータに対する差押令状が出ていて,そこから合法的にアクセス可能なというと,相当広範囲に広がるわけですけれども,もちろん,この場合に,「当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるもの」と,確かにこれは限定をつけるためにつけられている文言だろうと思うわけですが,現実に捜査をされる際には,LANの中を検索か何かをかけて関連する情報を根こそぎ持ってくるというようなことが現実に可能なわけですね。そういうことをやられると,例えば100個のコンピュータ全体の中を駆けめぐって全部探してくるなんていうことも,この要綱の第五でできてしまうのかなとも思わなくもなくて,どの程度のことまでこの条項で予定されているのか,リモートアクセスできるストレージの部分はよく分かりましたので,それ以上にどの範囲まで広げようとされているのか,具体的に説明していただきたいと思います。

●LANで接続されているような記録媒体についての御質問でございますが,基本的に,差押えの対象となる電子計算機とLANでつながっていて,その電子計算機からアクセスして電磁的記録を記録し,あるいはダウンロードすることが可能な記録媒体であれば,差し押さえるべきコンピュータで処理すべき電磁的記録が,そのLANの先の記録媒体に保管されている蓋然性が一般的には認められるわけでございますので,この要綱の「当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にある」ということが一般的には言えると思われます。

ただ,LANで接続されているすべての記録媒体について,ここで言う複写ができるかということになりますと,LANの利用状況などによりましては,手元のコンピュータで処理すべき電磁的記録を保管するために使用されている状況にあると言えないような記録媒体もあり得ることは御指摘のとおりだと思いますし,そういうものにつきましては,令状で範囲が特定されることになりますので,その限度でしかアクセスできない,複写できない範囲も当然あるということになると考えております。

●今の御説明で何となく分かってきたのですが,その場合に,令状の記載をこのようにしますというような説明が先ほどございましたね。具体的に令状上はこういうふうに特定するのだというものか何かを,今日じゃなくていいのですけれども,この第五とか,記録命令差押えも是非現物を見たいと思っているのですけれども,どういう令状発付になるのか,恐らく事務当局では検討されているだろうと思いますので,そういうものをお示ししていただければ議論も活発化するのじゃないかと思います。

●いろいろなケースがあり得ようかと思いますので,ケースごとにどういう形になるのか,お示しする方向で考えたいと思います。

●今のに関連するのですが,この第5の条文を読むと,二つの点が含まれているように思うのですね。場所を広げることができるという問題と,それから,複数の令状が要らないという,マルティプル・ワラントというか,そういう令状の形態がある。

そのときに,例を示していただいて御検討いただきたいのですが,場所と,それから,令状の数だけでなくて,情報処理の場合は単位が情報処理の権限で決まりますよね。つまり,これを読むと,物を差押えに行ったら,そこにつながっていたものはみんなできるというふうに書いてありますけれども,物については,例えば,アドミニストレーター権限を持つ人をターゲットにした場合は,それはネットワーク全体に対する管理権限があるわけですから,全体に行けるとしても,その人のプライバシーを開くという裁判所の判断があった以上はそれでいいだろうと。だけど,一つの物でも,例えば,サーバでも,ある人が許される範囲はここまでだよという,要するにアクセス制御がかかっている場合は,そこまでしか行けませんよね。LANで同じようにつながる。そうすると,リアルワールドでの秩序の構成は所有とか占有ですけれども,ネットワークの場合は管理権限で決まるということになってくると思うので,その辺も配慮した条文の作り方というのはできるのじゃないかと思うのですけれども。

つまり,対象の物の管理権限に全く条文で触れられていないというのは,ネットワーク秩序の作り方とちょっと違ってくるのじゃないかと思うので,その辺も御検討いただけたらと思うのですけれども。

●一つは,条約との関係で申しますと,先ほど○○委員からもお話がありましたが,条約19条2項では,当該データに対して当初のシステムから合法的にアクセスが可能であるか,又は当初のシステムで利用可能であるという,かなり広い書き方をしているわけですが,今回の第五の一では,そこまではいっていないもので,「当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にある」という限定をかけているわけであります。今の御指摘との関連で申し上げれば,確かに「管理権限」という用語を使って範囲を画していくという考え方もあり得ようかとは思いますけれども,ここで記載しているように,当該手元の電子計算機で情報を処理するために離れた記録媒体に電磁的記録を保管しているという関係にあるという,そういう状況を一つの枠として設定する以上は,当然,こちらのコンピュータからアクセスできる,そういう意味で管理権がそこまで延びているような範囲におのずと限られるわけです。「管理権」という言葉を使うか,あるいはこういう形で記載するかというのは一つの議論としてはあり得ようかと思いますが,およそ管理権が届かないような本来アクセスできないようなところまで入っていけるということをここで書いているというわけではないということです。

●と申しますのは,この第五については,憲法の令状主義を新しいサイバー法制に際してどういうふうに合法的に解釈しながら,新しい捜査構成を見つけていけるのかという,そういう観点から考えていかなければいけないと思うのです。私も,結論的には,日弁連は見解はいろいろあるかもしれませんけれども,対応したものはやらなければいけないと。そのときに,先生方おられるので是非教えていただきたいのですが,ネットワークで広がって世界を一つと考えれば,それについて一つの場所と観念していけると考えるのも一つですけれども,そうすると現実の場所は相当違ってくるだろうと。それを一枚の令状でできるというふうに考えていいのかどうか。

これは,リアルワールドでは,ほかの場所にあるものについても,一つで結ばれているのだから1か所と観念できるという考え方もできるでしょうし,それはやはり文言上は別の場所なんだから別の場所のプライバシーがあるじゃないかという問題もある。逆に言えば,別の場所だけれども守るべき法益がないじゃないか,ここでも司法審査が行われているのだ,幾つかの考え方ができると思うのですが,私どもは,実務を通じた法律家としての考え方でございますけれども,刑事訴訟法学とか憲法学とか,そちらの方からすると,場所・物の議論というのを,今回の議論について,どういうふうな解釈をして合法的に制度をつくっていくのかという点について,御指導いただけたらと思います。

●いろいろな御意見出ましたが,そういう御意見も踏まえてこれから御議論いただこうと思いますが,別の視点から何かございませんでしょうか。

●非常に初歩的な質問なのかもしれないのですけれども,お聞きしたいと思います。

まず,要綱(骨子)の第一の一でもそうだし,第二の一でも「その他の記録」というふうに広がっている部分があります。もちろん,それぞれ趣旨が違うのでしょうけれども,単に「電磁的記録」というのじゃなくて,「その他の記録」というところまで広げたのはどういうところが狙いなのかというのを教えていただければと思います。

●第一の一の「その他の記録」につきましては,コンピュータ・ウイルスの機能を有する,内容的にそういう実質を有するプログラムではあるが,電磁的記録以外の記録の形で存在しているもの,例えば,プログラムのソースコードを紙媒体に印刷したものを想定してます。このような紙媒体の形で社会に広めるという形態も十分に考えられるので,第一の一について「その他の記録」を客体にしているものでございます。

第二の一の「その他の記録」につきましても,例えば,不特定多数の者にファクスでわいせつな文書データを送る場合,送られたわいせつな情報は,「電磁的記録」の形態ではなくて,紙媒体に記録された形で生じることが考えられますので,第二の一の客体にも「その他の記録」を加えているものでございます。

●そうすると,簡単に言うと,要綱(骨子)第一の方でいえば,まだ電磁的記録になる一歩前の段階で,例えば,計算式みたいな形で紙に書かれているというものも含めて捉えるという御趣旨で考えてよろしいということですか。

●内容的に,コンピュータ・プログラム,ウイルスのプログラムとして機能する実体を備えているものである必要はございますので,プログラムの断片部分のようなものは,ここで言う「不正な指令に係る記録」には当たらないと考えております。

●電磁的記録になっていても,今一歩何か欠けている部分があって,使ってもそれだとウイルスとしてうまく動かないという場合であっても,場合によっては,こうなり得る余地はあるということにつながってきますか。

●ほんの少し手を加えただけで不正な指令として完成するような実体であるものは,ここでいう完成している電磁的記録,完成しているウイルス・プログラムとしてとらえるべきだと考えております。

●もう1点,補足なんですけれども,第二の二では,対象から,「その他の記録」が除かれている形になっていますね。つまり,一の方だとかあるいは電磁的記録か,そして,その他の記録というのは物にも電磁的記録にも当たらないものということになりますね。二の方では,物と電磁的記録に限定されているということですから,いわば所持も保管もできないようなものが「その他の記録」で予定されているというふうに考えていいのですか。

●第二の一の「その他の記録」というのは,頒布される相手方の記録媒体のところでできるものに着目して考えております。これに対しまして,二の方では,頒布しようとする犯人の手元にあるものが対象でございまして,したがいまして,「その他の記録」も有体物に化体しているものですから,頒布しようとする犯人の手元にある形態としては,有体物か電磁的記録ですべてを含んでいるという理解に立っております。

●よく分かりました。

●ほかにいかがでしょうか。

私からごく初歩的な質問で恐縮ですが,「ハイテク犯罪」とされて,「サイバー犯罪」とどうしてされなかったのでしょうか。

●これは,総会で会長の方でお決めいただいた名称であったと承知いたしております。条約上は「サイバー」という言葉を使っておりますけれども,「ハイテク」の方が一般の方から見てイメージがわきやすいのかなと思います。

そういった意味で分かりやすくということで,「ハイテク犯罪関係」という名称を付されたのではなかろうかと推測いたしております。

●ほかにいかがでしょうか。せっかくでございますので,3回目から本格的な審議に入りますが,そのためにも是非ここで問題点を指摘していただければ有り難いと思います。

●今回の諮問の中で,特に重要と思われるのが第七の「保全要請等」かと思われるのですが,この保全要請の条項が,条約16条を満たしているというふうにお考えになっている論理を,先だって○○幹事から御説明を受けたのですが,みんなで共有しておいた方がいいのじゃないかと思いますので,事務当局の考え方を正確にここで述べておいていただいた方がいいのじゃないかと思いますので,お願いいたします。

●条約16条につきましては,保全命令の制度自体を設けることを締約国に義務づけているものではなく,迅速な保全という結果の確保を求めたものでございますので,その意味で,基本的には,現行法の捜索・差押え・検証の規定で担保されていると考えておりますが,捜査に必要な通信履歴の電磁的記録につきましては,捜査の必要性,それから,短期間で消去されるという実態を踏まえまして,令状の発付を得るまで消去しないよう求める制度を作る必要がある,その意味で捜索・差押えの規定だけでは必ずしも十分ではないので,通信履歴の電磁的記録に限って保全要請の規定を設けるということで考えているものでございます。

●よく分かりました。

●質問ということではなくて確認ですが,特にウイルスの関係ですが,これは,国外犯の関係は今回は対象になっていない,お考えにならないという理解でよろしいですか。

●刑法に規定を設けるのであれば,刑法の4条の2で担保されることになると考えております。

●今の問題,もう1点確認ですけれども,テクニカルなことがよく分からないものですから教えていただきたいのですが。

自国の領域かどうかというのは,どの段階で確認すると想定されているのですか。

例えば,先ほどの第五のような場合に,その情報が自国内にあるということは,どういう手続で確認されることになるのか教えていただきたい。

条約の方では,「自国」という言葉が使ってありますが,それが4条の2でかかってくるということですけれども,それは分かるのですが,手続的にはどうなるのでしょうか。

●まず一つは,4条の2と申しましたのは,第一のウイルスの罪についても国外犯処罰の関係については刑法の4条の2の適用ということで,条約が求める範囲で国外犯の処罰ということが考えられるであろうという趣旨でございます。

それから,第五の方の差押えの関係での国内・国外の問題といいますのは,手続法の問題でございまして,特に外国にある記録媒体について差押えをする,あるいは捜索をするということは,刑事訴訟法上の問題と,それからもう一つは主権の問題,両方議論され得るわけでありますけれども,主として,他国に存在する記録媒体について強制処分を行うことは,一般的には主権の問題があり得るということで,その点については,サイバー条約でも国際共助の手続を行うという前提になっているものでございますので,そういう問題があるような記録媒体であるということが捜査の過程で判明し,あるいは確認されるような場合には,サイバー条約の場合であれば条約に従って共助の要請をしていくということになるという,そういうことでございます。

●それは,あけて見てから分かるのでしょうか。

●あけてみてということもあるのかもしれませんが,あるいはもっと前段階でそういうリモートの保存場所が日本国内にはないと,他国のどこかにあるということが分かれば,それについては共助の手続をとっていくということになると思います。

●ほかにございませんか。

●今のIPでどこかに問い合わせて,つまり,ネットワークでつながれているものは画面から見てどこの国にあるか分からない,そうすると,IPで追いかけて,そのIPがどこの国のサーバなのかを確認する手順をとってというふうなことが想定されているという,そういうことでしょうか。

●コンピュータの所在場所については,恐らく捜査の過程でいろいろな情報があり得ますので,それをもとに判断するということになりましょうが,所在場所が他国にあるということがその過程で分かれば,そういう共助の手続をとるということでありまして,何の証拠で分かるかというのは,多分ケース・バイ・ケースでいろいろあるのかなというように思います。

●全体との関係ではないのですが,ちょっと質問なんですが。

第五のところですけれども,一の電気通信回線で接続という場合に,これは無線も含めて考えるということでよろしいのでしょうか。それとも有線だけですか。

●無線も含まれます。

●細かいところなのですが,保全要請のところで一項のところに「業務のために」というのが出てくるのですが,「業務のために」という言葉の意味は,反復・継続する可能性,要するに,先ほどの例では会社ということが出てきましたけれども,例えば,家庭内LANなんかは,これは入れないということだと思うのですが,そういう理解でしょうか。

●家庭内LANにつきましては,「業務」にも当たらないと思いますし,それから,「不特定若しくは多数の者の通信を媒介する」という要件にも当たらないので,対象にはならないと考えております。

●家庭の場合,今は核家族ということで……。

「業務として」というのは,家庭の場合は当たらない。つまり,業務というのは営利性をもってということですか。どういうふうに定義されるのですか,ここでの「業務」というのは。

例えば,研究団体とかそういうもの,つまり営利性は問わないですよね。それから,例えば,コンピュータ研究団体とか,そうしたものはどういうふうになるのでしょうか。

●業務である以上は,反復・継続する意図で行うものであることは必要だろうと思われます。

●家庭の中で,例えば10人に対してプロバイディングしている,そういうサーバをつくっている人はどうなんですか。毎日プロバイディングするわけでしょう。

●要するに,不特定若しくは多数の者を相手にするものですから。

●不特定若しくは多数ですよね,どちらでもいいわけでしょう。

多数人に対して反復継続してプロバイディングする,これが入ってくるわけですね。そうすると,5人家族で家庭内LANのサーバを立ててやっている人はどうなんですか,入るのですか。

●先ほど申し上げましたように,家庭内で限られた方がお使いになる場合につきましては業務のためという整理はいたしておりません。ここでは,社会生活上の地位に基づくものとして評価できるような,そういう業務形態というイメージを持っておるわけでございますけれども,この辺につきましても,どういうメルクマールが一番ふさわしいのかにつきまして,今後また御議論いただければと思っております。

●会社が入るということは明らかだということでしたけれども,例えば,大学なんかも当然入るのでしょうね,大学のシステム管理者というものも。

●それはもちろん入ります。

●営利性みたいなものは要件になっていないということですね。

●今後の会議の持ち方等につきまして,事務当局から御説明いただいた上で,今日は,これで打ち切りにさせていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

●今日の議論でなくて結構なんですが,議事録の点ですけれども,これまで議事録は非顕名ということで来たことは十分承知しておりまして,かつて顕名にするかどうかという議論をこの臨時部会でないころにして,非顕名にするという意見が多数を占めたということも承知しているのですが,そろそろ,いろいろな委員会で,政府関係のところでも,あるいは司法改革関係のところでも顕名にするというところが多くなってきておりますので,この部会でも議事録顕名ということの方向を打ち出していただきたいというふうに思っておりまして,その点について,できましたら次回なりに議論をちょっとしていただきたいと考えております。

●私も顕名にしていただきたいと思うのですが。

それと,これはコンピュータ業界とかプロバイダなどからも大変注目を浴びている審議なので,審議の途中でも,審議内容を見た上でいろいろな人が意見を述べられるように,議事録の作成・公表はできるだけ早くやっていただきたいということも要望しておきたいと思います。

●ほかに何か御要望ございますでしょうか。

そうしましたら,ただいまの議事録の件も含めまして,次回に一応事務当局の考えを示していただきたいと思います。

●今,御提案がございましたので,次回正式にお答えするなり御議論いただくことになろうかとは思われますけれども,この法制審議会におきましては,議論の内容が明らかになるということは非常に大事なことであるといったことから,議論の中身自体を公開するということで,これまで,非顕名で議事録が作成されてきました。その理由につきましては,独立して自由闊達な御議論をやっていただくためとか,いろいろな理由によりまして,これまで,総会等の議事録との並びもございますけれども,刑事関係につきましては,特に慎重に取り扱われてきたという経緯がございました。

●ほかにいかがでしょうか。

特になければ,幹事の方から今後の進め方について御説明いただきたいと思いますが。

●この部会の日程につきましては,開催予定日,それから場所につきまして,一覧表を御用意させていただいております。

次回は,4月21日,その後,5月15日,6月2日,6月23日,7月4日,7月23日と,本日を含めまして,7月までで,一応7回の会議が開けるように準備をいたしております。

さらに,今回は諮問事項がハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備ということで,多少技術的な面を有しておりますことから,まず,次回の第2回部会におきまして,そのようなコンピュータ等の技術的な面について,専門家による説明,具体的には情報処理の振興を図るためプログラムの開発及び利用の促進等を実施しております情報処理振興事業協会(IPA),それから,インターネット・サービス・プロバイダの方による説明を行う機会を設けてはいかがかと考え,事務的に準備を進めているところでございますので,この点について御検討いただければと考えております。

●それでは,ただいまの説明のように,次回,技術的な問題について専門家の説明を聞くという,そういう機会を設けることにつきまして,いかがでしょうか。−それでは,そのようにお願いいたします。

そういたしますと,第2回目の部会では,情報処理振興事業協会(IPA)及びインターネット・サービス・プロバイダの方による説明をしていただき,それから審議をしていただくということにいたします。その後は,一覧表どおりの日程で審議を進めまして,審議の進行具合を見ながら,更に日程を増やすなどにつきまして決めていきたいと思います。

なお,先日の法制審議会では,法務大臣から,今秋,臨時国会が開かれるようであれば同国会に所要の法案の提出をしたいというごあいさつがありましたので,十分に御議論いただくのは当然でございますけれども,委員・幹事の皆様方も議事進行に是非御協力をいただきまして,事務当局の方々にも必要な準備を迅速に進めていただきたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

それでは,今日は長時間ありがとうございました。