平成28年4月5日
衆議院総務委員会第11号
平成28年4月19日
衆議院総務委員会第14号
○逢坂委員 民進党の逢坂誠二でございます。
(略)
○逢坂委員 具体例、二つだけお伺いします。
一つ、戸籍情報。これを匿名加工情報、行政ですから非識別加工情報というふうに加工した場合、戸籍情報は使えるのかどうか。それからもう一つ、住民基本台帳。これは自治体の事務でありますから、国の方がどうこう言う問題ではないというふうにお答えになるのかもしれないんですけれども、この二つについて、非識別加工情報にした場合に、これは提供できるのかどうか。いかがですか。
○上村政府参考人 ちょっと今、にわかに、戸籍情報を国、地方、住民基本台帳についてもそうですけれども、どちらがどういう関係であるか定かではありませんけれども、いずれにいたしましても、個々の判断につきましては、個々の、その情報を管理しております行政機関の長ないしは独法の方の判断になるものだというふうに思っております。
○逢坂委員 戸籍情報と住民基本台帳については事前に通告していなかったものですから、大変申しわけございません。これは後でもう少し調べて、きちっと整理をしておいた方がいいのではないかというふうに思います。
(略)
○奥野(総)委員 ちょっと空席が目立つように思います。これは定足数ぎりぎりですかね。割れていないようですが、委員長の方からもしっかり注意していただきたいと思います。
(略)
○奥野(総)委員 おっしゃっていることはよくわかるんですが、やはりそもそも、さっきも申し上げましたけれども、強制的に集めているような情報と任意で集めているような情報を一緒にして、それをまとめて非識別加工情報として開示していこうというやり方に僕は無理があると思うんですよね。
例えば、いわゆる行政サービス、病院とか学校とかで集めているような、任意ですよね。国立学校に行くか、私立に行くか、公立に行くかというのは任意だから、任意の情報提供だと思っていいと思うんです。あるいは病院もそうですよね。そういう任意のものについて、それは一定の加工をしたら個人情報じゃないといって使うというのはわかると思うんです。ところが、そこに権力として集めた情報を一緒にして出すようなたてつけにするから、すごく無理があると思います。そういう指摘ですね。これはかみ合わないと思いますけれども、指摘をしておきたいと思います。
時間も大分使ってしまったんですが、私は、この法案を使って、要するに、公益に資するような情報提供がなされれば、そこはいいと思っているんです。ただ、その中で、個人情報の保護ということと公益に資するということのバランスをどうとるかというのがすごく難しいことだと思います。
これは大臣に伺いたいと思うんですが、では、今回の法制が成立したとして、行政機関非識別加工情報として民間に、提案に応じて渡されるような個人情報としてはどのようなものが想定されるか、民間からはどういった要望があったかということをまず伺いたいと思います。
○高市国務大臣 民間事業者からの提案を受けて非識別加工情報の提供制度というものを、今回の法改正をお認めいただいて初めて整備するというものですから、具体的にどのような情報の利活用が見込まれるかということについて、現段階で確定的に述べるのは大変難しゅうございますが、例えば、外国人の出入国記録のデータを外国人旅行者をさらに呼び込む事業活動に活用したり、あと、製品事故のデータを安全性の高い製品の開発に役立てるといった活用の可能性というのはあると思います。
○奥野(総)委員 物の本なんかを見ると、例えば医療ですね、病院のカルテ、国立病院あるいは公立病院のカルテを処理して新薬の開発に役立てるとかというのもあるというふうに理解していますが、そういうものは大臣は承知をされていますか。
○高市国務大臣 基準として、情報公開請求があった場合に、全部非開示であるような情報については対象になりません。
今後、法律が成立しまして、この法律の公布後二年以内に必要な法令の整備を行うということですから、内閣官房を中心として、関係省庁が連携しながら、例えば、どういったものを対象にしていくか、豊かな国民生活の実現に特に資する分野としてどういう分野があるのかといったことについても具体的な検討がなされていくと思います。
医療・健康分野に対してニーズが非常に高いということを承知はいたしております。
○奥野(総)委員 そういう意味で、附則の四条というのがありまして、この法律の公布後二年以内に、個人情報が一体的に利用されることが公共の利益の増進、豊かな国民生活の実現に特に資すると考えられる分野における個人情報の一体的な利用促進のための措置を講ずる、こう書かれていますが、今言ったようなことを想定してこの附則があるということでよろしいんでしょうか。
○高市国務大臣 まさに、この公布後二年以内の必要な法令の整備などの措置を行うべく、今後、内閣官房を中心として、関係省庁が連携しながら具体的な検討がなされるということで、先ほど委員がおっしゃった医療分野などもその一つであると思います。
○奥野(総)委員 ここに、「一体的な利用の促進のための措置を講ずる。」こういうことがあるんですが、例えば、医療にしてもそうですし、大学にしてもそうですが、いわゆる行政サービスを提供するような部門について、学校では、国立大学があって、公立大学があって、私立の大学がある、それぞれの分野にまたがっているんですね。それぞれについて、では、どういうふうな匿名加工情報になるかということを想定すると、これからの話なんでしょうが、まず、情報の加工の方法については、加工基準を個人情報保護委員会で定めるということになっていますが、これはどういう規定になるんでしょうか。
○其田政府参考人 お答え申し上げます。
匿名加工情報の加工方法につきましては、個人情報保護法改正案の法案審議のときに政府側からも御答弁申し上げておりますけれども、委員会規則におきまして、匿名加工情報を作成する事業者全てに共通する一般的な加工手法、その他最低限の規律を定めることを想定しております。
こうした上で、このような個人情報保護委員会規則に加えまして、事業の特性でありますとか取り扱うデータの内容に応じた詳細なルールにつきましては、民間の場合には、認定個人情報保護団体が定める個人情報保護指針等の事業者の自主的なルールに委ねることも想定をしてございます。
○奥野(総)委員 それぞれデータの形が違いますから、それぞれ専門のところに委ねるというのは理解できるんですが、そうしたときに、民間はそうやって、民間の認定個人情報保護団体の方で決める。学校の例でいえば、公立学校なら条例で決まっていく。それから、国は、やはりこの規則の範囲で、規則の運用の中で決まっていくということなんです。そうすると、ばらつきが生じないか。
ちょっと若干奇異に思うのは、まず民間が決まってしまって、民間の方に引っ張られる形で国が決まる、公立が決まるということになると思うんですが、これは統一的に運用しなきゃいけないと思うんですね。附則にも「一体的な利用の促進」と言っていますから、民間で作成される匿名加工情報、それから自治体で作成される非識別加工情報、あるいは行政機関非識別加工情報、あるいは独法でつくられるもの、それぞればらつきがあってはいけないと思うんですが、その点はどうですか。
○其田政府参考人 お答え申し上げます。
行政機関や独立行政法人等が非識別加工情報を作成するに当たりましては、先生がおっしゃっていただいたとおり、委員会規則に則した上で、取り扱うデータの内容や事業者からの提案内容に応じまして、具体的な加工方法を定めていただく必要がございます。
官民でといった場合になりますけれども、民間で同じような情報を扱うような分野がある場合には、例えば、認定個人情報保護団体が作成した個人情報保護指針の内容を参考にすることも考えられるかと思います。あるいは、行政機関のみが保有するような情報につきましては、個人情報の保護と利活用のバランスが図られるように、取り扱うデータの内容などに応じまして、適切な加工方法を各行政機関等で御判断いただくものと考えております。
いずれにいたしましても、行政機関等が非識別加工情報を作成するに当たりまして、委員会が定める基準に則した上で、事業者の提案内容や民間における実態などをよく踏まえまして具体的な加工方法を定めることで、官民を通じた情報の利活用が促進されるような制度の運用が可能と考えております。
○奥野(総)委員 やはりこれを見ていても思うんですけれども、行政機関の持っている情報を全て一緒くたにして非識別加工情報とするのは、私はちょっと違うと思うんですね。
例えば、病院とか学校とか、そういうサービス、任意で集まってきているような情報については、まさに民間と統一基準で、同じ法制のもとで開示方法を決めた方が、情報の統一的な取り扱いの観点からいっても、明らかにその方がいいと思うんですよね。
どうも、税務情報みたいな話と、民間でやっているような学校とか病院のような話と、同じように扱ってしまうことに私はやはり違和感があります。
ちょっと伺いたいんですが、諸外国はどうなっているのか。例えば、アメリカなんかはもう全然、民間は自由に、規制もなくやっていると理解していますし、逆に、EUは指令を設けてやっている。ただ、資料を見ると、民間の情報なんですね。民間の情報についてという資料はあるんですが、では、行政機関が保有している情報について、何か開示をしたり、特別な扱いをしている例というのは海外にあるんでしょうか。
○上村政府参考人 お答えいたします。
EUの場合でございますけれども、まさに先日、一般データ保護規則というものが欧州議会で可決されたところでございます。
今回の非識別加工情報に類似するものということでございますと、例えば、データ主体が識別できないような方法で匿名化されて、個人とひもつく可能性のない匿名データ。それからもう一つは、仮名化されたデータというカテゴリーがございまして、情報の安全保護のために仮名化、仮の名前の措置を施すものですが、これは多少、個人が識別される見込みがあるものということになってございます。
こうしたカテゴリーについての記述はございますが、我が国の今御提案申し上げているような非識別加工情報のような提供の仕組みは見られない、また、実際の事例は承知していないというところでございます。
それから、米国でございますが、これはもうよく御承知のとおりと思いますが、民間部門につきましては、連邦取引委員会、FTC、これはFTC三条件とかというものを決めまして、匿名化された個人情報の取り扱いに関する指針を示しているところでございます。ただ、行政機関の保有する個人情報を民間事業者が利用している事例というのは、必ずしも承知をしてはおりません。
その他、スウェーデン等ではそういう事例は多少はあるということは承知をしております。
○奥野(総)委員 やはり日本だけ独自だと思うんですよね。そもそも、入り口がちょっと違っていると僕は思います。
だから、今言ったように、税務情報みたいな強制的に取り扱うものは厳しく保護していく、一方で、任意で提供しているような情報については、私ども、照合禁止義務もかけて、完全に個人情報じゃなくしてしまって利活用してもらう、こういう仕組み、しかも、こういったものについては、統一的な法制で、行政機関等の法律、民間の法律というんじゃなくて、統一的な視点でまとめていくべきだと思います。
(略)
○梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
(略)
そこで、まず、非識別加工までして個人情報を提供する、どのようなニーズが民間事業者から出ているのか、お伺いしたいと思います。
○上村政府参考人 近年の情報通信技術の進展によりまして、いわゆるビッグデータを活用していくことが可能になっております中で、特にパーソナルデータというものは利用価値が高いというふうになってございます。これを適正に、かつ効果的に利活用を進めていくことによりまして、新たな産業、それから活力ある経済社会、豊かな国民生活の実現に資していく、これは官民を通じた重要な課題だというふうに認識しております。
このため、一昨年から総務省におきまして、有識者研究会、これは行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会でございますが、これを開催いたしまして、専門的な検討を行ってまいりました。
研究会におきましては、産業界からヒアリングを実施するなどした上で最終報告を出させていただいておりますが、その中で、公的部門のパーソナルデータに対しても一般的な利活用の期待が存在する、それから、公的部門のデータの利活用の対象、範囲を適切に定め、提供時等における規律を課すことを前提として、匿名加工情報の仕組みを導入すべきであるという提言をいただいているところでございます。
今回の法案は、このような産業界の要望、それから有識者の提言を背景として立案させていただいているものでございます。
なお、本法案につきましては、非識別加工情報の作成のもととなる情報が、行政機関等が保有する個人情報である、こういう性質を考慮いたしまして、国民の不安を惹起しませんように、あくまでも個人の権利利益の保護を前提とした上で活用を図るため、有識者の提言も踏まえまして、まず、対象となる個人の情報の範囲を限定する、それから、提案者において適切な安全管理措置が講じられているかなどについて審査を行った上で、提供する仕組みというふうにしているところでございます。
○梅村委員 今お伺いしたのは、具体的にどのようなニーズがあるのかということでしたので、ぜひ質問に沿ってお答えいただきたいなというふうに思います。
しかも、今の御答弁では、産業界の要望と識者の中での検討ということで、一番情報が提供される主人公であるべき国民の意見がこの審議の中でどのように反映されているのか。やはり今の答弁を聞いただけでも、全く、産業界そして識者の中で生まれてきたものというふうに言わざるを得ないというふうに思います。
今質問いたしました、具体的なニーズ、想定というのはいかがでしょうか。
○上村政府参考人 本制度でございますけれども、この法案の成立をいただきましたならば、その後に、各行政機関等におきまして、提案募集の対象となる個人情報ファイルをまず特定いたしまして、それから募集をするということでございますので、現時点で、民間事業者等から具体的なデータ等の名称を挙げて要望をいただくということが困難であるということは御理解をいただければと思います。
ただ、先ほど申し上げました有識者研究会におきます経済団体からのヒアリングにおきましては、非常に信頼性が高い基礎データでありますところの公共データ、これを民間で活用することについての期待は非常に高いということが述べられますとともに、行政機関等が保有いたしますパーソナルデータの適正な利用を促進するため、利用可能なパーソナルデータに関するデータカタログといったようなものを整備することについて要望は示されているところでございます。
○梅村委員 もう少し具体的に御答弁いただきたいというふうに思います。
そもそも、御紹介いただいている行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会の第二回報告の中でも、経団連からも具体的な御発言があるかというふうに思います。
この中で、利用イメージとして、不動産取引の判断材料の多様化、適正化として、地域ごとの世帯構成や年収、大気汚染濃度、騒音測定値、犯罪情報などを企業が加工し、不動産取得時や賃貸に利用できるソフトを提供していく、それについての利用に使っていくというようなことも御発言であったようです。
また、記憶に新しいと思いますけれども、二〇一三年には、JR東日本がSuicaの乗降履歴などを日立製作所に販売して、それが明るみに出ると苦情が殺到し、データ販売から除外してほしいという申請が実に六万を超えたという事例もあったかというふうに思います。
このとき同社が販売したのは、利用者の生年月、性別、乗降駅、利用額、何時何分何秒に改札を通ったかというデータでした。これを日立が購入し、出店、広告計画などに使う予定だったということで、利用者の中では、自分たちが知らない間に自分の情報が売られていた、活用されていた、とても怖いという声がこのとき非常に起こったというふうに思います。
また、ほかにも、市立図書館を運営する民間事業者が、市民の貸出履歴を自社及び提携企業内の情報システムに送信し、批判を受けたような事例もあるかというふうに思います。
ですから、このような事例だとか、研究会のときにいろいろ経団連などから御発言があったような事例など、やはりニーズの一つにもなっていくんじゃないかなと想定するんですけれども、そのような認識でもよろしいでしょうか。
○上村政府参考人 そのような御発言があったということは当然承知をしているわけでございますが、実際、今後、繰り返しになりますが、そうしたものが、今回、その後にこの法案を策定してお出ししておりますので、まず、加工対象となるデータ、個人情報ファイル簿でありますけれども、これは個人情報ファイル簿が作成、公表されているものに限定されるですとか、それから、情報公開請求があったとしたならば、全部不開示になるようなものは除かれるとか、いろいろ制限がかかっております。
そうした中におきまして、そもそも、今おっしゃったようなデータみたいなものが対象となるかどうか、今ちょっと具体的には何とも判断がつきませんので、そのような回答とさせていただいたところでございます。
○梅村委員 そのようなものになるかどうかという判断は、やはり国民の皆様お一人お一人で、どこに住んでいるのが漏れても嫌、どういう環境に住んでいるのが漏れても嫌、それを判断するのは、やはり国民の皆様お一人お一人にも問うていかなければいけないのが個人情報の問題だというふうにも思うわけなんですね。
そういう意味でいうと、非常に大きなビッグデータを行政機関は抱えていらっしゃるというふうに思います。きょう、資料の二の方で、お配りさせていただいておりますけれども、実に国の行政機関が持っているデータの件数は六万五千弱、電算データは五万三千強、膨大なファイル簿が存在している。独立行政法人の持っているデータも、一万五千弱、うち電算データは六千弱。最も多いのは国税庁なんですね、電算データは五万二千弱。そして法務、農水と続いてまいります。国税庁は課税台帳、法務省は登記簿や矯正保護、外国人登録関係、農水省は生産者関係ファイルと言われております。また、百万人以上の個人ファイル簿、電算されているのも二百三十七ということで、このようなビッグデータに文字どおりなっていくわけです。
やはり、こうした公的なものを、非識別加工するといっても、民間、第三者に提供していく、これは日本の個人情報保護の歴史の中でも大変大きな変更、大転換であるというふうに思います。公的なものを民間と共有していく、民間に提供していく、こうした転換ですから、私は、極めて慎重にこれは審議をしなければいけない法案であるというふうにも思います。
そして、そもそも、こうした行政機関の個人情報は、権力的に集められてきているもの、行政にいろいろかかわろう、参加しようと思えば登録せざるを得ない、そういう中で集められてきたものだというふうに思いますけれども、そのように集められたというものでよろしいでしょうか。
○上村政府参考人 お答えいたします。
行政機関の保有する個人情報は、まさに多種多様でございます。いろいろな形態がございますし、その経緯もいろいろでございます。一つは、法令等に基づく申請、届け出、許認可、調査等によって収集される、こうしたカテゴリーがございます。また、行政機関がサービスの提供主体、それから契約の一方当事者として相手方の情報を保有しているものもございます。それから、各種相談の対応ですとか施設利用者等の情報を収集しているものなど、これはさまざまな契機により取得されているものだというふうに考えております。
○梅村委員 さまざまと言いますけれども、行政のサービスを受けようとしたらそういうことを登録せざるを得ないという仕組みの中であり、それはやはり権力的に集められたものという定義になるというふうに思うんですね。
そして、先ほどのSuicaの件ですけれども、除外してほしいという申請が六万件もあったと。では、今度、もし実施をされていくとなると、国民の皆さんからデータから除外してほしいというふうに言われれば、それは除外をすることができるのかどうか。そして、公的目的に応える公開はそもそもこれまででも行われてきたのではないかというふうに思うんですけれども、この二点についてお答えいただきたいと思います。
○上村政府参考人 まず、後者の方からお答えを申し上げますと、公共的な利益のために、目的外にこれらの個人情報を提供するという仕組みはございます。ただ、これは個人情報そのものを提供するというものでございまして、しかも、その目的は非常に、学術、統計、その他特別な理由があるものということで限定をされています。極めて例外的な利用ということでございます。
他方、今回の御提案申し上げております非識別加工情報でございますけれども、これは識別性をなくしたものということで、安全なものということになってございますので、そういう意味では、特別な理由がなくても広くお使いをいただけるという形にしているところでございます。
それで、もう一つは、非識別加工情報は個人が識別できませんので、この情報が自分のものであるということはわからないという仕組みにはなってございます。ただ、この個人情報ファイル簿の、どの個人情報ファイル簿を使ってこうした非識別加工情報を作成したかということは記載をすることになってございますので、この点で苦情を申し出ていただくというようなことは可能な仕組みになってございます。
○梅村委員 そうしますと、苦情を言った場合は除外をしていただける仕組みになるんですか。
○上村政府参考人 仮に、加工の方法が十分でない、あるいは運用が十分でない、そういうふうなことがあった場合には、そのいろいろな状況に応じまして適切な対応をしていくことになろうと思います。
(略)
○梅村委員 理解といっても、こうした法案がそもそも国民の中には知られていませんので、やはり全ての国民にかかわることですので、もっと慎重な審議が必要な法案だというふうに私は思います。
今のにかかわってなんですけれども、データベース、電算化しているデータを提供するということだというふうに思います。しかし、ここで、前述したように、行政機関等が集めるデータについて、行政機関だからこそ出している個人情報が含まれているというふうに思います。
財務省からは、多量の個人情報が含まれており、外部からの攻撃の対象となるリスク等が含まれており、ファイル名を従来より公表していないとも伺いました。ファイル簿となっていても、ファイル簿名さえ公表していないものもある。慎重に扱うべき情報が多くあると思います。
この膨大な個人情報ファイル簿のうち、匿名加工情報の提供可能性のあるファイル簿は、どのような範囲で、どれぐらいあるのか、お答えいただきたいと思います。
○上村政府参考人 お答えいたします。
類型といたしましては、私が先ほどから申し上げているようなことでございまして、個々の個人情報ファイル簿、これがまず公表されているかどうかということ。それから、繰り返しになりますけれども、情報公開請求等があったならば、部分開示がされ得るものであるかどうか。それともう一つ、行政機関等に過大な負担が起きないかどうか。
そういったことを勘案いたしまして、各省庁がこれを特定していく、法案の成立をいただきましたならばそういうことをしていくということになりますので、現時点ではどのぐらいの数になるかということは、ちょっとお答えするのは難しいと思います。
○梅村委員 どのように活用されるのかというイメージも湧かない、現状では範囲も示されない。この点では、本当に国民の皆さんにとっては、これで自分たちの個人情報の権利利益が守れるのか、やはり全くわからないんですよね。このまま枠だけ決めて、あとはこれから決めていきますと。あれこれの法案ではなくて、全ての国民の皆さんの情報にかかわる、個人情報にかかわる問題ですから、やはりこのようなやり方は強引過ぎるのではないかなというふうに思います。
時間が参りましたので、この点、最後に高市大臣にお伺いして、お願いいたしたいと思います。
○高市国務大臣 近年、情報通信技術が進展しておりますので、ビッグデータの収集、分析が可能となっている中、特に利用価値が高いとされるパーソナルデータの利活用、これを適正かつ効果的に進めていくということは、これは新たな産業の創出や活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するものですから、官民を通じた重要な課題です。
委員から、先ほど来、国民の皆様の特にプライバシーなどについての懸念、セキュリティーに対する懸念という問題提起をいただきましたが、パーソナルデータの利活用はあくまでも個人の権利利益の保護に支障を生じないということを前提に行う必要がございます。
非識別加工情報ですが、特定の個人を識別できず、もとの個人情報を復元できないように個人情報を加工したもので、個人の権利利益を侵害するおそれは極めて低いものですけれども、作成のもととなる情報が行政機関が保有する個人情報であるという性質を考慮しましたので、本法案では、対象となる個人情報の範囲を限定し、また提案者において適切な安全管理措置が講じられるかといったことについてきちっと審査を行った上で、提供する仕組みにしております。
あくまでも個人の権利利益の保護ということを前提に進めるということにいたしております。
○梅村委員 個人の利益、権利の保護をあくまでも前提としてということでしたけれども、事前のレクチャーのときには、匿名加工しても、これからの技術発展の中で、この匿名がいろいろ明らかにされる技術が手にできるようになるかもしれない、五十年後、百年後にあるかもしれないというような御答弁もありました。しかし、そういうことを言っていれば、全くそのことがないわけではないわけで、やはりこういう中でこれを決めていくというのは非常に問題があるというふうにも思います。
十分な徹底審議を求めまして、私の質問を終わりたいと思います。
(略)
○吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。(略)
次に、今回の法改正についての質問に移らせていただきます。
先ほど、少し他の委員からも質問がありましたけれども、今回の立法措置ですけれども、立法事実というのが本当にあるのかというのは私も疑問に感じざるを得ません。
総務省の行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会での関係団体ヒアリングでは、医療分野の情報については一定程度の利活用の期待というものが存在をしておりましたが、それ以外の分野については具体的な利活用のニーズというのは特定できなかったというふうにも聞き及んでおります。
そこで、改めてお聞きしますけれども、ビッグデータの活用による新産業、新サービスの創出の可能性、そういう一般論ではなくて、行政機関とかが保有する個人情報の活用について、具体的にどのような需要があるというふうに考えておられるのか、答弁を求めます。
○上村政府参考人 やや繰り返しの答弁になるかもしれませんけれども、この制度は、まず、行政機関が持っている個人情報を加工して非識別加工情報にする、それを民間の事業者の方から提案を受けて提供する、これは全く初めての制度でございます。
それからもう一つ、先ほども答弁申し上げましたように、どういうような類型あるいは情報を提供されることになるか、それは、これから、法案の成立をいただきましたならば、各行政機関、独立行政法人におきまして検討して特定していくことになるということでございますので、現時点でもそうですし、法案が形になる以前の研究会の段階で、産業界の皆様から具体的にこのデータというふうな特定の名称を挙げてニーズをお聞きするというのは難しかったというのが実情でございます。
ただ、また一般論ということにはなりますけれども、産業界からは、公共機関等が持っているデータというのは非常に信頼性が高い、非常に期待が高い、特にパーソナルデータというものは非常に使う可能性があるので、データカタログ等のような形でぜひ整備をしていただきたいというふうな御要望もございました。
そういう観点も踏まえまして、今回の御提案をしている法案の中では、民間事業者が提案をしていただくことが可能な個人情報ファイルにつきましては、個人情報ファイル簿に記載して公表する、ある意味、一覧性を持って見ていただけるようなことを盛り込んでいるところでございます。
いずれにいたしましても、これから、成立いただきましたならば、この法案の趣旨、内容を十分に説明してまいりまして、活用していただけるような形に施行までの間に持っていくということであると思っております。
○吉川(元)委員 やはり何度聞いても、立法事実というものがどうもはっきりしないというふうに思わざるを得ません。
昨年の個人情報保護法の改正時に、確かに附則の十二条において検討条項として設けられたというのは承知しております。それに基づいて今回法改正というふうなことなんだろうと思いますけれども、ちょっとそれは話が少し逆転しているのではないか。立法事実があって、その上で法改正というのが行われるべきであって、附則に書いてあったからとりあえず合わせるために今回こういう法改正をやるということ、実際に何をどういうふうに使えるのかはこれから考えるということであれば、そういうものを考えた上で法改正をやるのが普通の順番なのではないかなというふうにも思います。
特に、行政機関が保有する個人情報というのは、半ば強制的に集められたセンシティブな情報も多量に含まれているわけで、そういう意味でいうと、慎重な対応が必要だというふうに私は考えます。
次に、もう時間が余りありませんので少し飛ばしまして、個人情報保護法の観点について若干お聞きしたいと思います。
(略)
平成28年4月19日
衆議院総務委員会第14号(参考人質疑)
○藤原参考人 中央大学の藤原でございます。
(略)
○鈴木参考人 新潟大学から参りました鈴木正朝と申します。
(略)
○坂本参考人 日弁連情報問題対策委員会の委員長をしております坂本と申します。
本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
(略)
二点目、非識別加工情報の規定について意見を述べます。
これについては、拙速で、検討が不十分ではないかというふうに考えております。
基本的な考え方ですけれども、先ほども述べましたように、行政機関等の保有するパーソナルデータは、法令により強制的に収集されるものでありまして、提供するかどうかについて選択の自由がありません。また、秘匿性も高いという特質を有します。
このようなパーソナルデータを商業目的あるいは営利目的で利活用するというのは、そもそも本人の予測の範囲を逸脱した目的外利用であって、プライバシー侵害のおそれがあるというふうに言わざるを得ません。
以下は、本法案についての私見でございます。
まず、具体的なニーズを前提にせずに制度設計されているのではないかということを疑っております。
この法案は、昨年の個人情報保護法改正を受けて提出されたものであります。昨年の個人情報保護法の改正で、民間部門においてビッグデータ活用を促進するための仕組みとして匿名加工情報に関する規定を新設したので、では次は行政機関等の情報だ、これをビッグデータとして活用しようということで出てきた法案であるというふうに理解しております。
しかしながら、民間事業者がさまざまなパーソナルデータを利活用して経済的利益を追求するのは、いわば当然であります。しかし、行政機関等は、法令に定める事務を遂行するためにパーソナルデータを保有しているのでありまして、営利活動をするためではありません。したがって、行政機関等が保有する情報をビッグデータとして利活用するという必然性は必ずしもないというふうに思います。
先ほど述べました総務省の研究会でも経済団体等からヒアリングを行っておられますけれども、行政機関等の保有するパーソナルデータの利活用について、一般的、抽象的な期待は表明されたところですが、どの行政機関等が保有するどのパーソナルデータの利活用を期待しているのか、具体的にはほとんど、ほとんどというか、全然明らかになっておりません。
したがって、この法案は、具体的なニーズを前提とせずに仕組みだけ準備したというものでありまして、制度がひとり歩きすることによって、もしかすると今予測できないような権利侵害が発生するおそれもあるのではないかというふうに危惧しております。
それから、非識別加工情報に加工するための要件として、情報公開請求があれば全部または一部開示されるという要件が用意されておりますが、この要件を持ってくるのは非常に不合理であるというふうに考えます。ここも拙速な一例であろうというふうに思います。
法案では、非識別加工情報として提供される対象となる個人情報の要件の一つとして、行政機関情報公開法に基づく開示請求があった場合には全部または一部開示されることというのが挙げられております。
この要件は、権利利益を保護するための要件であるというふうに説明されています。すなわち、情報公開法における個人情報の非開示事由に該当して、全部非開示とされるような個人情報は、非識別加工情報としては提供しないという考えであろうと思います。
しかしながら、情報公開請求に対する一部開示というものの範囲は非常に広くて、例えば、表題だけが開示されて、それ以外の部分が全部墨塗りであっても、一部開示であります。そのようなほとんど全面非開示に近い一部開示の場合でも、今回の法案では非識別加工情報の対象になってしまいますので、そういう意味では、実質的に権利利益を保護するための要件としては役に立たないというふうに考えます。
逆に、情報公開法の非開示事由としての個人情報の規定では、事業を営む個人の当該事業に関する情報、あるいは、法令の規定によりまたは慣行として公にされ、また公にすることが予定されている情報、人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報、公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る情報、こういったものが非開示情報から除外されております。
さらに、裁判例の蓄積により、対象となる情報の秘匿性と開示の必要性とを勘案して、非常に弾力的に、個人情報に該当しそうなものでも、場合によっては開示する、こういう扱いがされております。
したがって、行政機関個人情報保護法の個人情報には該当するけれども、情報公開請求に対しては全部開示される、あるいは、ほとんど全面開示に近いような一部開示がされるということも十分にあり得ます。
そして、情報公開法の方では、開示請求の目的を問わないので、全部開示された個人情報を商業目的で活用することも可能であります。
ところが、今回の法案では、そのような情報公開請求に対しては全部開示する。したがって、権利利益として保護する必要性のない、プライバシー性がないか、著しく低いような情報であっても、今回の法案に基づいて非識別加工情報として提供を受けてしまうと、一律に識別行為の禁止等の規制を受けてしまうことになります。これは非常に奇妙なことでありまして、情報公開法と整合性がとれておらず、規制として不合理であろうと考えます。
さらに、今回の改正に伴いまして、情報公開法の方にも非開示事由が新設されることになっております。すなわち、非識別加工情報の作成に用いた保有個人情報から削除した記述等もしくは個人識別符号は、一律に非開示情報として扱われることになってしまいます。
しかし、このような非開示事由は、ほかのこれまである非開示事由と比べると、非常に異質であります。
情報公開法における非開示事由は、いずれも、開示することにより何らかの実質的な不都合が発生することを前提としております。なぜならば、情報公開法は、国民の知る権利を実質化するための法律でありますから、行政情報は、何らかの実質的な不都合がない限り広く開示されるべきという考え方に基づいているからでございます。
これに対して、今回新設される非開示事由は、形式的な要件に該当すれば直ちに非開示となってしまいます。
先ほど述べましたように、情報公開法では、行政機関個人情報保護法の個人情報に該当しても全部開示される情報がありますけれども、その情報について非識別加工情報を作成してしまうと、その際に削除した記述等は、開示したとしても権利侵害にならないはずなのに、一律に非開示になってしまいます。これは非常に異質な規定であろうと思います。
以上のようなことから、今回出てきた非識別加工情報に関する規律は非常に不合理な部分を含んでおりまして、先ほど鈴木先生の方からも言及がありましたけれども、どたばたで、直前まで議論が二転三転したあげく出てきた案ではなかろうかというふうに思うものです。
このような拙速な形で法制化するというのは禍根を残すおそれがあるのではないかというふうに思いますので、もっと慎重に検討して、よく練り直した案を検討されるべきであるというふうに思います。
以上です。(拍手)
○遠山委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○遠山委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子めぐみ君。
○金子(め)委員 自由民主党の金子めぐみでございます。
(略)
第四次産業革命という言葉をよく耳にするようになったわけでありますけれども、諸外国においては、もう数年前からビッグデータの利活用というものを見据えた法整備をかなり進めているというふうに受けとめております。これから日本においても、少子高齢化、地方経済やコミュニティーの疲弊といった問題の対策ですとか、エネルギー、あるいは環境制約の打開、こういった分野においてビッグデータの利活用というのは重要であります。
公的部門の持つパーソナルデータがこの目的に資するものというふうに私は受けとめておりますが、しかし、先ほども申し上げたとおり、同時に、厳格さが求められる行政機関、独立行政法人の持っている個人情報の取り扱いにはやはり細心の注意が必要であるということだと思います。
そこで、再び藤原参考人にお聞きをしたいと思います。
今回の法改正に際しまして、特に最も懸念をした点、慎重な議論を重ねてこられた部分というのはどこであったか、お聞かせいただきたいと思います。
○藤原参考人 お答えいたします。
今回の法案、今先生御指摘のように、公的部門での利活用を図るというものでございます。
先ほど坂本参考人からもございましたけれども、公的部門の利活用を、例えば商業目的、あるいはビジネス目的というふうに言ってしまうと、それは語感の点で反発をする、あるいは、公的なデータ、権力でもってとってきたデータをビジネスということで考えていいのか、その一点張りで考えていいのかという御疑問があるのは、私はこれは無理からぬことであると思います。
しかしながら、先ほど先生御指摘のように、新たな産業の創設等は、いわゆる商業目的というよりは、もう少し、一段次元の高いといいますか、その結果公益にも資する、そういったものでございますので、その観点から、民間部門の御提案を受けるときに、先ほど申し上げましたように、まずは対象情報を絞る、何でもかんでもいいということにはしない。
特に、先ほどの情報公開法との関係でいえば、情報公開制度と個人情報保護制度は、ある意味ではメダルの裏表でございます。個人情報というものでくっついていて、表は情報公開、裏は個人情報保護でございます。もちろん、個人情報の方は、民間部門だけは広いですけれども、公的部門に限って見ればメダルの裏と表でございます。ですから、個人情報というつながりを通じて何らかの調整が必要である。
そこで、権利利益侵害がないように、およそ情報公開で請求があって開示されないようなものにはそれを匿名加工という形で利用することはできない、そういったところには気を配りました。
さらに、懸念でありますとかのほかにもう一つ、提案ですね。民間の方々から提案をしていただいて、その審査基準をきちんとつくって、それに基づいて審査をする。その中で、これが公的部門の個人情報を使うにふさわしい者であるかというところはきちんと見るということになっております。きちんと見るかわりに、きちんと見て審査基準に合致しているとなったら、これは恣意的にならないようにオーケーをする。
そういう仕組みをつくって、決して個人情報の保護とのバランスを失しないようにしたというところが多分一番気を使ったところではないかと考えております。
○金子(め)委員 ありがとうございます。
今ほど触れていただきました匿名加工情報制度の導入ですとか、また、どこまでを個人情報というふうに定義するか、その明確化。これまで曖昧だった部分の明確化ですとか個人の特定を防ぐための取り組み等、大変難しい部分だったと思いますが、このあたりの具体的な取り組みの中身をいま一度お聞かせいただきたいと思います。
あわせて、行政機関が扱っている情報というのは、個人の資産状況であったり、あるいは犯罪、病気、健康情報等、極めてセンシティブな分野の部分が多いというふうに考えております。流出や悪用を防ぐために、民間部門よりもさらに厳格な管理が必要であると考えますが、その対策という点はどのように考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
○藤原参考人 お答えいたします。
まず、後者の方からでございますけれども、匿名加工になって、民間に、つまり、非識別個人情報が民間部門に提供されまして匿名加工ということになりますと、もちろんそれについて安全管理措置等の義務はかかりますけれども、先生の御質問の後段の方ですけれども、犯罪捜査にかかわる情報とか極めて機微な情報は、個人情報ファイル簿への登載の段階で恐らく落ちる。そして、先ほどの第二要件の、情報公開で非常に機微な情報がそのまま開示されるかといえば、それは恐らく開示はされませんので、対象情報という点でまず落ちるのではないかと思います。
そういうふうに、機微なもの等を除いて、個人情報の対象とできるものについて、行政機関における匿名、つまり、非識別加工情報を考えるということでございます。
それで、前半の方の質問に移らせていただきますと、そういうふうにしてできた行政機関の非識別加工情報についても、公表でありますとか透明性の点において規律をかけまして、もちろん安全管理措置というのも担保するということになっております。
これが大きな後半の質問で、前半の御質問は、行政機関の個人情報保護について、どのような工夫があったか、どのような苦労をしたかという御質問であったかと覚えておりますけれども、これについては、民間部門で、例えば所与の前提として要配慮個人情報というものがございましたり、個人識別符号というものがございましたり、さらに言えば、匿名加工情報というものがございました。そういうものを公的部門に流し込むときに、先ほど先生がいみじくも御指摘になった視点、公的部門というのはやはり公権力の行使によってその情報収集等をしている、そこのところの視点を忘れないようにするという、そのバランスをとるのが一番研究会等で皆さんが議論をしたところだと覚えております。
以上です。
○金子(め)委員 パーソナルデータの利活用がいかに有用なものであったとしても、個人情報が特定されたり、また流出、悪用されたりしてしまいましたら、やはり国民の皆さんには信用していただけない、そういったわけで、足元から崩れてしまうわけであります。それが行政機関等からの情報であればなおさらということも思いますので、適正な取り扱いがなされるよう、今後も引き続き見てまいりたいというふうに思います。
次に、公的部門のパーソナルデータの利活用によって期待される効果、具体的な可能性についてお伺いしたいと思います。
行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会の中では、観光分野、製品開発分野の利活用に関する議論もあったようでありますが、具体的にどのような可能性や効果を見込まれておられるか、藤原参考人にお聞きしたいと思います。
○藤原参考人 検討会でも、どのような利活用の道があるかということを議論いたしました。その中で、何回か民間の事業者の方にもおいでいただいて、ヒアリングも行いました。その中では、残念ながら、これといって、たくさん具体的に御提案が現段階で出たわけではございません。
しかしながら、希望、あるいはこういう点で活用ができるのではないかという御議論になったのは、やはり医療の分野と、今おっしゃられました観光等の分野には議論がありました。
ただ、観光の分野と申しますのは、種々のデータは民間の事業者が既に持っている。それで分析することが多いので、恐らく、我が国でいえば、例えば国土交通省等が分析するということには至らないのかもしれません。
しかしながら、先生の御質問との関係でいえば、出入国管理のデータでありますとか、外国人、日本人の移動のデータを分析することによって何らか観光等にさらに有益な効果を与えられるのではないか、そういう期待はあろうかと思います。それは、恐らく当該省庁における今後の、今私が申し上げた出入国管理でありますとか人の移動に関するデータの分析を待っての議論かと、今のところは考えております。
以上です。
○金子(め)委員 ありがとうございます。
(略)
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
(略)
それでは次に、坂本参考人にお伺いします。
民間企業の保有する個人情報と行政機関等が保有する個人情報と、どんな違いがあるのでしょうか。その取り扱いについて、行政機関等が保有する個人情報の場合はどのようなことに留意すべきだとお考えでしょうか。
○坂本参考人 行政機関が持っている情報は、法令に基づいて所掌事務を遂行するために、義務として国民に提供を求める、こういうものがほとんどですよね。税務署には幾ら稼いだかを申告して、経費はこれだけかかったので差し引いてくれ、こういうのを申告するのは義務です。ところが、民間部門については、個人情報を提供するかどうか、基本的には本人の選択に委ねられていて、こういうことに使われるんだったらこの情報は出しませんよ、こういうふうに選択する余地がある。そこにおいて決定的な違いがあると思います。
行政機関の情報は、さらにセンシティブな情報も含めて、あらゆる情報を、さまざまな個人情報を大量に集めておりますので、その行政機関の持っている個人情報をひっくるめてパーソナルデータとして利活用するかというのは非常に乱暴な議論だというふうに思っております。
例えば、医療情報については、例えば国立病院が持っている情報と民間の病院が持っている情報と取り扱いが違う、根拠条文が違って取り扱いが違うのはおかしいじゃないか、確かにそう思います。
でも、それは、医療情報という特殊性に鑑みて、医療情報はセンシティブな情報であるとともに、治療法や医薬品の開発等として広く利活用すべき側面もありますので、これはやはり医療情報という枠組みで特別法がつくられるべきであって、二〇〇三年の個人情報保護法制をつくるときにもそういう議論をしていましたので、情報ごとに特別法をつくる等の対応をするのが正しいというふうに思います。
○田村(貴)委員 続いて、坂本参考人にお伺いします。
民間事業者からいかなる要望があっているのかということで、きょうも午前中の審議の中でもあったんですが、政府は、具体的にどのような情報のニーズがあるのかについては、要望を受けてみないとわからないと明確にしなかったわけであります。
このような漠然とした目的のもとで仕組みだけを先につくってしまうというのは、限られた場合のみに公開されてきた仕組みと大きく違うことになってしまうのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○坂本参考人 おっしゃるとおりでございます。
行政機関が持っているどの情報、特に国の行政機関は個人情報を余り持っていないですよね。公的部門の中で個人の情報を一番持っているのは市町村です、密着した地域住民に対する行政を展開するために。だから、市町村の次が都道府県で、国の行政機関は一番個人情報を持っていないです。
一番持っていないところのどの情報が欲しいのですか。枠組みを国の情報でつくっておいて、これを市町村まで広げていくということになってしまうと、それこそ、人口何千人の村にまで非識別加工情報をつくれるような技術基準に対応できる体制を設けなければならないのか。こんなことになったらとても対応できない市町村がいっぱい出てくると思いますので、そういう意味でも、どこの行政機関が持っているどの情報が欲しいのか、医療情報なら医療情報という形で、特化して議論すべきであろうというふうに思います。
○田村(貴)委員 私も、レクチャーを受けて、それから質疑の中でも考えてきたんですけれども、民間の方から行政に対して、こうしたビッグデータ、パーソナルデータを活用させていただいて経済の活性化等に利活用したいといったところの具体的な例というのが、なかなかちょっとイメージができませんでした。きょうの参考人の皆さんからのお話の中でも、なかなかイメージができないといったところもあるんです。
民間が利活用するための個人情報というのは、具体的にはどういったことがイメージされていくのか、このことについて藤原参考人にお伺いしたいと思います。
○藤原参考人 民間が利用する公的部門のデータという理解でよろしいでしょうか。
それは、検討会の過程でも、先ほど申し上げましたように、ヒアリング等で民間事業者に来ていただきましたし、その後もう一度パブリックコメントで御意見も伺ったんですけれども、先生御指摘のように、多くが具体的に出たということではございません。先ほど金子先生の御質問にもありましたように、観光あるいは医療等で今後使えるのではないか、そういうものが想定される、そういうふうな議論でございました。
○田村(貴)委員 同様の質問を鈴木参考人にもお伺いしたいと思います。
今の藤原参考人のお話では、具体的な話はなかったと。総務省からの説明でも、外国人の出入国に関する情報は観光等に役に立つのではないか、そういう説明があったんですけれども、鈴木先生はいかがお考えでしょうか。
○鈴木参考人 民間部門からニーズが出てこないというのは、今までこういった制度がなかったことによって具体的に発想が乏しかったがゆえに、こういう状況であろうと思います。
医療に関しては特別法をつくってやると、パッチを当てるように、継ぎはぎでパッチワークのようにやっていく状況の中で我が国の個人情報保護体系が崩れておりますので、まずはデフォルトルールである一般法部分でこういったオープンデータの利活用の原則的基盤を整えるところからスタートするという、冒頭意見の冒頭で申し上げたようにこの法律の趣旨に関しては賛成しているところでありますので、まずはつくる。
スモールスタートですから、これから手を挙げさせてやってみる。国会の方は、むしろ経過を報告させて、何件要望があったのかという施行状況を確認する中で今後調整を図る。もしくは、個人情報と情報公開とまた別に、オープンデータの基本法なるもの、推進法なるものを構想してもいいと思います。このあたりがまさに立法政策の問題ではなかろうか。
既存法制の中でこういった制度をまずは小さくスタートして実験してみるというのは、極めて有意義であると思っております。
○田村(貴)委員 次に、坂本参考人にお伺いします。
(略)
平成28年4月21日
衆議院総務委員会第15号
○梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。
早速、法案について伺いたいと思います。
まず、法案の目的についてです。
非識別加工情報の導入について、この委員会でも繰り返し、新たな産業の創出並びに活力ある社会の実現に資することが強調されております。
しかし、この間の質疑や参考人質疑を通じ、まず強く感じることは、国の行政機関等が保有する個人情報を第三者、民間に提供するというリスク、不安を背負ってまでしようとする割には、本当にこの民間への個人情報の提供が、新たな産業の創出、活力ある社会の実現につながるものになるのかという疑問です。
私の一昨日の質疑でも、政府参考人からは、法案成立後、各行政機関で提案募集の対象となる個人情報ファイルを特定して募集をする、現時点で、民間事業者から具体的なデータ名を挙げて要望いただくことは困難との答弁でありました。
また、一昨日の参考人質疑でも、藤原参考人からも、具体的な可能性や効果について、検討会でも民間事業者へのヒアリングでも、これといってたくさん具体的な提案が現段階で出されたわけではない、医療、観光等で今後使えるのではないか、そういうものが想定される議論だったとありました。
そこで、本当に高いリスクを背負ってまでやることか。経済成長、新産業の創出の切り札となるようなイメージは、これまでとても持ててきておりません。仮に、述べられていた観光や医療分野を挙げるなら、何より大きな個人情報のリスクを考え、国や独立行政法人の全ての個人情報を民間への提供対象とするのではなく、観光や医療など分野ごとに、あくまでも公益性を踏まえながら新産業の創出を進めるやり方もあろうかというふうに思います。
大臣に改めて確認いたしますが、本法案は、個人情報保護への不安、リスクを抱えてまでして新産業の創出に本当につながるものなのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
○高市国務大臣 この法律案は、行政機関などが民間事業者からの提案を受けて非識別加工情報を提供する仕組みを導入するものでございます。ですから、民間事業者が創意工夫により、新たなサービスや事業を創出しようとする取り組みを後押ししようとするものでございます。
この法案に言います新産業というのは、ビッグデータとしての匿名加工情報の利活用を通じて、現在では想像できないような産業の進展が起こり得ることを念頭に置いて述べたものです。これは、昨年の個人情報保護法案の審議の中でも政府から答弁がございましたけれども、やはり、今普通にある、すぐに想定できる産業ではなくて、ビッグデータを活用したらこんな思いも寄らなかったイノベーションが起きてくるんだよ、こういう姿を期待しております。
では、新産業の創出に実際に資するのかどうかということを審査するのに当たりましては、非識別加工情報の利用目的及び利用に供される事業の内容が記載された提案書、それから、新たな産業の創出等に資するものであるということを明らかにする書面を提出していただくということにしております。あわせて、具体的な説明を求めるということでございます。
今回の法律案、お認めいただきましたなら、産業界への丁寧な説明を行いまして、非識別加工情報の提供によって実際に新たな産業が生まれてくるという状況ができるように取り組んでまいります。
○梅村委員 ただ、新産業の創出、これまでも考えていなかったようなことが生まれるかもしれないということですけれども、同時に、国や独立行政法人の公的データを提供していくということでいえば、また考えられないようなリスクも、そういうことでいえば起こりかねないというふうにも思うわけです。やはり私は、そこをもっと慎重にしっかりと、国民皆さんの個人情報に関することですから、慎重審議、しっかりと個人情報について、前提といいますけれども、本当にそれが担保されるのか、その議論が足りないのではないかということを指摘させていただきたいというふうに思うわけなんです。
そして、この点にかかわって、これももう一度大臣にも確認したいと思います。
参考人質疑の中で、坂本参考人から、商業目的あるいは営利目的で利活用するのは、本人の予測の範囲を逸脱した目的外利用であって、プライバシーの侵害のおそれがあるという御指摘がありました。
これにかかわって、藤原参考人からは、公的部門の利活用を例えば商業目的と言ってしまうと、それは語感で反発をする、あるいは、公的なデータをビジネスということで考えていいのか、その一点張りで考えていいのかという御疑問があるのは私は無理からぬことであると思う、新産業の新たな創設等は、商業目的よりは、もう少し一段次元の高いといいますか、その結果公益にも資するというものですので、その観点から、民間部門の提案を受けるときに、まず対象情報を絞る、何でもかんでもいいということにはしないというふうに御指摘もありました。
この点で、商業目的、営利目的や公的なデータをビジネスで考えていいのかという意見について、いかがお考えでしょうか。そして、具体化する際に、商業主義に陥らないことや公益に資するということを認定の重要な基準などにやはりするおつもりなのかどうか、この点を確認させていただきたいと思います。
○上村政府参考人 お答えをさせていただきます。
今般、御提案申し上げております非識別加工情報、これは確かに民間事業者による利用を予定しているものではございますけれども、単なる商業利用ではなくて、もう少し概念の広い、新たな産業の創出、こうしたものを法律の目的として掲げているということでございます。
したがって、このような言い方が適切かどうかわかりませんが、一企業の利益ということだけにとどまらず、このビッグデータを活用いたしましたイノベーションを通じまして、社会全体の経済成長、活性化、そういったものが実現する、その果実が社会全体にもたらされる、そうした効果を想定しているというものでございます。
また、イノベーションの結果、いろいろな企業の創意工夫、御努力によりまして、従来存在しなかったような、考えられなかったような商品それからサービスが生まれる、そうしたことは、国民生活にとりましても、利便が向上する、それから快適性が向上する、より安全なものになる、豊かな国民生活の実現にも寄与するということでございますので、単なるビジネス利用とかそういうものより、もう少し広い概念で御理解をいただければ幸いだと思います。
○梅村委員 ただ、今回の法案の、現段階ではそういう基準についての具体的な問題はないわけで、今の御答弁で確認させていただきたいんですけれども、商業主義に陥らない、単なるビジネスではない、公益性をしっかりと認定の際には基準にしていくということでよろしいんでしょうか。
○上村政府参考人 法律上の審査の要件では、そういうふうな新産業の創出に資するものであるか、見ることになってございます。
ただ、具体的にどうやってそれを見ていくかということは、これから、個人情報委員会等の規則その他いろいろな形で決めていくということになりますが、基本的な法律の目的は今申し上げたとおりでございまして、それに沿った検討がなされていくものだというふうに考えております。
○梅村委員 公的データであるということをしっかりと踏まえる必要があるというふうに思います。
そして、同時に、そもそも国の行政機関等には、前回も質問させていただきましたけれども、その機関の性格や業務上、多くの個人情報が集まり、保有、管理をされている。つまり、行政目的として権力的に国民から提供を受けている個人情報である。だからこそ、行政機関には、個人の権利利益を保護するための適正な取り扱い、その保護を厳格に履行する責任と義務が課せられているというふうに思います。
これまでの議論、今御答弁いただきましたけれども、民間企業の提案で個人の情報を利活用していこうとすれば、しっかりとここら辺は監視、そして慎重にしていかなければ、行政機関等がみずから個人情報の保護規制を緩める方向に走る危険がある法案だということを十分に認識して当たる、また、私たちは、そもそもそういうことで公的データを提供するということについては、やはりやるべきではないというふうに考えているところであります。
(略)
そこで、次に伺いたいというふうに思います。
非識別加工情報についてですけれども、先ほど、要配慮との関係では、ファイル簿に記載されるということは今御答弁でわかりましたけれども、法改正の非識別加工情報の対象とならないもの、法案はどのような扱いになっているのかを御答弁いただきたいと思います。
○上村政府参考人 まず、行政機関の保有している個人情報であるということから始まります。その上で、たった今も申し上げました個人情報ファイル簿、これが公表されているものが対象となります。
逆に言いますと、公表されていないものは加工対象にならない。例えば、国の安全、外交上の秘密等々を記録する個人情報ファイル、また、犯罪捜査等のファイルはこうした対象になりません。
それから、その次の条件といたしまして、情報公開請求があったならば部分開示はされるものであるということでございます。
これは、当然個人の識別性をなくした上で、そのなくした残りの部分に個人の権利利益を場合によって侵害のおそれがあるというふうなものについては、それを除く。あるいは、やはり先ほどの個人情報ファイル簿の不公表と似てくるところがあるわけですが、国の安全、犯罪予防、それから事務事業への支障、そういった情報につきましては、今でも部分開示もされない、全面不開示という扱いになっているものにつきましては、今回の加工の対象にはならない、こういうことになってございます。
○梅村委員 そういうことを各省庁の判断でこれから具体化していく、そして法律ではなく、施行令や運用に今後はどの適用をされるかということは委ねられていくということかというふうに思いますけれども、それでよろしいんでしょうか。
○上村政府参考人 法律上の要件は、それぞれの行政機関個人情報保護法及び情報公開法に記載をしてございます。情報公開法でございましたら五条に第一号から第六号までそれぞれ記載がございますし、行政機関個人情報保護法は十条二項に一号から十号までございます。
それに当たるかどうかという具体的な判断は、委員おっしゃるとおり、それぞれの行政機関が個々に判断していくという部分はあると思います。それの具体的な決め方等々につきましては、そういう意味では運用の部分というのもあるというふうには考えております。
○梅村委員 ですので、これからがまだまだ、国民の個人情報との関係では慎重にしていかなければいけない部分が大変多い法案だというふうに思います。
(略)
○吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。
(略)
次に、今回の法改正について伺います。
今回、行政機関が保有する個人情報ファイルから、個人の特定ができず、なおかつデータを復元できないように加工した情報を提供できるというふうになっております。ただし、法案の第二条九項三号では、行政の適正かつ円滑な運営に支障を来さない範囲で非識別加工情報を作成することができるものと規定をしております。ということは、行政の適正かつ円滑な運営に支障を来す情報については非識別加工情報にはできないということになると考えます。
そこで、業務の運営に支障を来すものとして、加工が不可能な個人情報、情報ファイルがあって、なおかつ、一部または全部が情報公開によって開示されているにもかかわらず業務の運営に支障を来すというものは、一体具体的にどういうものを想定されているのか、尋ねます。
○上村政府参考人 お答えいたします。
行政の適正かつ円滑な運営に支障を及ぼす場合でございますが、例えば、行政機関の人員等の制約から電算処理されていないようなファイル、これはいわゆるマニュアルファイルと申しますが、紙ベースの情報が大量にある場合、これを加工してビッグデータの形にしていくということは多大な作業が必要となりますので、こうしたものは一例となろうと思っております。
それから、電子計算機処理されているものでありましても、電子計算機の仕様上、情報を加工するためには一旦稼働中のシステムを運用停止させてデータを引き出す等々、それをやることによりまして日常運用されています円滑な業務運営に支障が生じる場合、こうした場合も考えられます。
それから、これはもう少し厳しいケースになりますが、システム外への情報持ち出しが仕様上できないというふうな、これは事実上対応困難でございますので、こういったケースは代表的事例に当たろうかと思っております。
○吉川(元)委員 今のお話を聞くと、非常に技術的なところのお話でした。
(略)
○吉川(元)委員 では、次の質問に移らせていただきたいと思います。
法案を見ておりますと、非識別加工情報の提供について、いつでもやるというわけではどうもないようで、改正案の第四十四条の四では、定期的に民間業者からの提案を募集するというふうになっております。
この募集の期間、どの程度の期間を指すのか。例えば、年一回、四月から六月の間とかそういう感じで決めるのか。これらについてはどういうふうになっているんでしょうか。
○上村政府参考人 御指摘のとおり、御提案しております法案第四十四条の四におきましては、定期的に実施することとしているところでございます。これから詳細は決定していくことになると思いますが、毎年度募集を行うというようなことを考えておりまして、年度ごとに募集期間を設定する、こういうことが制度の円滑な運営に資するということだろうと思っております。
具体的には、繰り返しになりますけれども、法律の成立をいただきましてから検討しますけれども、毎年度一カ月から二カ月程度、こうした募集期間を設定するということを想定しております。
○吉川(元)委員 もう一つ、関連なんですが、その募集期間というのは、全ての省庁そろってやるということでよろしいんでしょうか。
○上村政府参考人 その点につきましては、今後検討の課題になってくると思っております。
○吉川(元)委員 次に、行政機関非識別加工情報を取り扱う提案が許可されて、契約を結んだ、情報を受けた民間業者というのは、四十四条の七の第一項五号において、その利用期間は個人情報保護委員会で定める期間を超えないものとされております。
この利用期間、おおむねどのぐらいの期間を想定されているのかということが一点目。
それから、利用期間が終了した際、民間事業者には匿名加工情報としてあるわけですけれども、この情報はどのようにその後処理をされることになるのか。また、当然、利用期間が終われば利用してはいけないということになろうかと思うんですけれども、利用期間後も利用してしまった場合、それを防止する手だてというのは講じられているんでしょうか。
○上村政府参考人 まず、利用できる期間でございますけれども、具体的には、提案者のニーズそれから適正管理の面、こうしたものを踏まえまして行政機関と提案者との間で利用契約を締結するわけでありますが、その契約の中でそれぞれ定めることになろうと思っております。
それから、その利用期間を超えてしまった場合、行政機関非識別加工情報をどうするかということでございますが、この取り扱いも基本的には契約において定めることとなると思いますが、具体的には、それは廃棄ないしは返却ということを定めるということになるんだろうと思っております。
その契約条項を守らなかった場合どうするかということでございますけれども、行政機関といたしましては、契約、一旦結びましたものの履行状況を適切にフォローアップしてまいりますし、法律上も、例えば、偽りその他不正な手段により契約を締結した、それから、契約事項について重大な違反があったというときには当然契約を解除することができますし、その段階で利用は停止になります。解除に際しましては、民間事業者に対しまして、提供された情報の廃棄義務を課すことも考えられるわけでございます。
こうした契約に違反をいたしますと、当然契約解除になりますが、その先、また、この法律の欠格条項に該当いたしまして、新たな提案もできなくなるというようなことになっております。
○吉川(元)委員 今、ちょっと答弁の中で一点気になる言葉があったんですが、(略)
(略)
○遠山委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。田村貴昭君。
○田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、行政機関等個人情報保護法等の改正案について、反対討論を行います。
反対理由の第一は、法の目的の中に、新たな産業の創出並びに活力ある社会の実現に資することを書き込むなど、国の行政機関等が保有する個人情報の保護が後退させられかねません。
国の行政機関等には、その機関の性格や業務上、多くの個人情報が集まり、保有、管理されています。だからこそ、行政機関には、個人の権利利益を保護するための適正な取り扱い、その保護を厳格に履行する責任と義務が課せられています。
民間企業の提案に応えて、個人情報を利活用していこうとするならば、行政機関等がみずから、個人情報の保護規制を緩める方向に走らざるを得ません。
また、どんな個人情報を何のために利活用するかについても、説得力ある具体例は示されませんでした。本改正案の必要性の根本にかかわる問題です。
第二は、非識別加工情報についてです。
そもそも、非識別加工情報の作成と提供については、匿名加工が施されたとしても、個人情報が本人が想定しない民間事業者に提供されるという問題があります。
識別行為の禁止が定められていますが、これは再識別化のリスクを前提にしているものです。万が一、識別行為が行われ、個人情報の不適切な流出、漏えいが発生した場合、情報を提供した側の行政機関等がどのような権限を行使できるのか、漏えいした情報をどのように保護していくかなどの点は極めて曖昧です。
匿名加工情報は、原則的に、行政機関等が作成するとされています。しかし、情報の匿名加工を外部の民間事業者に委託することも排除されていません。不適切な個人情報の流出、漏えいに対する懸念は拭い切れません。
さらに、個人情報の利活用を提案することができる民間事業者の欠格事由の規定についても極めて不十分であります。
最後に、個人情報保護委員会の役割は非常に重要です。しかし、個人情報保護委員会が、個人情報の保護を貫きながら、官民の膨大な量の個人情報を適正に処理していくにふさわしい体制を確保する担保は措置されていません。
以上を述べて、討論とします。(拍手)
○遠山委員長 次に、吉川元君。
○吉川(元)委員 社会民主党・市民連合を代表し、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の一部改正案、独立行政法人の保有する個人情報の保護に関する法律の一部改正案に反対の立場から討論を行います。
反対の第一の理由は、民間事業者からの具体的な要望、すなわち立法事実が希薄なまま、法案の目的に、新たな産業の創出や活力ある経済社会の実現に向けて、行政機関等が保有する個人情報を利活用することが盛り込まれた点です。
民間部門、行政機関問わず、その個人情報の利活用自体を否定するものではありません。しかし、昨年の改正個人情報保護法と今回の法改正、余りにも利活用に傾斜している懸念を払拭できません。
反対の第二は、民間の個人情報は、オプトアウト制度を初め、他者への提供を前提とする場合には本人の関与を必要としていますが、行政機関等の保有する個人情報は国が半ば強制的に情報を取得することを前提にしており、この手続がありません。幾ら個人が特定できないように情報を加工したとしても、商業目的に利用する場合には、本人の関与を必要とする何らかの仕組みが不可欠と考えますが、改正案で欠落していることは問題と考えます。
また、参考人からも指摘されたように、そもそも非識別加工情報と匿名加工情報は対象とする事象の範囲が異なるにもかかわらず、非識別加工情報が民間事業者の手に移った段階で匿名加工情報になるという政府の説明にも無理があります。
反対の最後の理由は、今回の法改正をもってしても、EUとの十分性が確保できるというふうな確信に至らなかった点です。
個人情報を利活用しようとするのであれば、まず、個人情報保護においてグローバルスタンダードを達成すべきです。
以上の理由から、本改正案に反対することとし、討論といたします。
○遠山委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○遠山委員長 これより採決に入ります。
行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
○遠山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
平成28年4月26日
衆議院総務委員会第16号
平成28年5月12日
参議院総務委員会第13号
○参考人(宇賀克也君) 東京大学の宇賀と申します。
本日は、参考人として意見を述べる機会を与えていただきましたことに厚く御礼申し上げます。
この委員会で御審議中の法案は、一昨年六月二十四日にIT総合戦略本部が決定いたしましたパーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱及び昨年九月九日に公布されました個人情報保護法及びマイナンバー法の一部改正法附則十二条一項が政府に求めました課題に対応すべく真摯に検討された結果まとめられたものと評価しております。
以下、その理由について申し上げます。
個人情報保護法及びマイナンバー法の一部改正法附則十二条一項は、新個人情報保護法の全面施行日までに、新個人情報保護法の規定の趣旨を踏まえ、行政機関個人情報保護法二条二項に規定する個人情報及び独立行政法人等個人情報保護法二条二項に規定する個人情報の取扱いに関する規制の在り方につきまして、匿名加工されました情報の円滑かつ迅速な利用を促進する観点から、その取扱いに対する指導、助言等を統一的かつ横断的に個人情報保護委員会に行わせることを含めて検討を加え、その結果に基づきまして所要の措置を講ずることを政府に対して義務付けております。
この附則の規定が政府に求めましたことを分析いたしますと、第一に、行政機関及び独立行政法人等、以下、両者を併せて行政機関等と呼ばせていただきますが、その保有する個人情報につきましても、新個人情報保護法の匿名加工情報に相当する情報の円滑かつ迅速な利用を促進する観点から規制の在り方について検討し、その結果に基づいて所要の措置を講ずること、第二に、当該情報の取扱いに対する指導、助言等を統一的かつ横断的に個人情報保護委員会に行わせることを含めて検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること、第三に、以上の所要の措置を新個人情報保護法の全面施行日までに講ずることの三点になります。そして、第一、第二の点の検討に当たりましては、新個人情報保護法の規定の趣旨を踏まえることが要請されております。
まず、第一の点につきましては、行政機関等非識別加工情報に係る制度を新設し、提案を募集する個人情報ファイルを個人情報ファイル簿に記載して対象を明確にした上で、民間事業者が行政機関等非識別加工情報をその用に供して行う事業を提案する方式を採用しております。民間のニーズを把握しないまま行政機関等の判断のみで行政機関等非識別加工情報を作成いたしましても、民間のニーズに合わないおそれがございますので、民間事業者からの提案を受けて行政機関等非識別加工情報を作成する方式は、前述いたしました改正法附則十二条一項が言う新制度の円滑かつ迅速な利用の促進という観点から合理的なものと考えております。
第二の点につきましては、行政機関等非識別加工情報の加工基準は、新個人情報保護法の匿名加工情報と同様、個人情報保護委員会が定め、行政機関等非識別加工情報の取扱いに対する監視、監督を個人情報保護委員会が一元的に行うこととされておりますが、行政機関等非識別加工情報が官民間で流通するものであることに照らし、新個人情報保護法の匿名加工情報につきまして監督権限を有する個人情報保護委員会が行政機関等非識別加工情報につきましても監視、監督を行うことは合理的であり、また、この点も、前述いたしました改正法附則十二条一項の趣旨に合致するものと思われます。
第三の点につきましては、そこで言う新個人情報保護法の全面施行日は、新個人情報保護法が公布されました昨年九月九日から起算して二年を超えない範囲内で政令で定める日となります。
改正法附則十二条一項が新個人情報保護法の全面施行日までに所要の措置をとることを政府に義務付けましたのは、パーソナルデータの利活用の促進は官民共通の課題であり、官民が収集、提供するパーソナルデータを有機的に関連付けて有効活用することが期待されていることに照らしますと、行政機関等非識別加工情報及び匿名加工情報の両制度を同時期に一体のものとして施行することが望ましいという国会の御判断によるものと考えております。
新個人情報保護法の全面施行日を定める政令は未制定でございますが、仮に区切りのよい来年四月一日施行といたしました場合、今国会で行政機関等個人情報保護法改正案が成立いたしましても、更にその後、その委任を受けた政令及び個人情報保護委員会規則を意見公募手続も経た上で策定する作業が必要であり、それに加えまして、制度の周知期間が一定程度必要となります。
したがいまして、今国会に政府が行政機関等個人情報保護法案の改正案を提出されましたのは決して早過ぎず、むしろ改正法附則十二条一項に込められました国会の御意向に沿うためには必要不可欠だったと思われます。
次に、IT総合戦略本部が決定いたしましたパーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱との関係につきまして述べさせていただきます。
この大綱におきましては、行政機関等が保有するパーソナルデータにつきましては、その特質を踏まえた検討を求めております。
そこで、行政機関等が保有するパーソナルデータの特質とは何かが問題になりますが、この点につきましては、個人情報保護法案の制定過程におきまして、当時のIT戦略本部個人情報保護法制化専門委員会が二〇〇〇年十月にまとめました個人情報保護法制に関する大綱におきまして、第一に、政府と国民の間におきましては行政に対する国民の信頼を一層確保することが求められていること、第二に、私人間におきましては企業活動における営業の自由等との調整が問題となるのに対し、公的部門につきましては法律による行政の下に国民一般の利益との調整が重要になること、第三に、特に行政機関における個人情報の取扱いに当たりましては、法令に基づく厳格な保護管理の下に置かれるよう特別の配慮が必要であることが指摘されております。
これらの点は今日におきましても妥当するものと思われますが、私はそれに加えまして、国及び独立行政法人等は国民に対して説明責任を負う主体であり、その説明責任を履行させるための法制度として情報公開法がある点が民間事業者とは決定的に異なり、行政機関等の個人情報保護法制を考えるに当たりましては、情報公開法との関係に絶えず配慮することも重要であると考えております。
また、二〇〇七年の統計法全部改正により、行政のための統計から社会の情報基盤としての統計へのパラダイムシフトを図り統計情報の有効活用を推進するために、オーダーメード集計や匿名データの提供という二次的利用の制度が整備され、本年二月の統計法施行規則の改正により、学術研究を直接の目的とはせず営利企業が通常の企業活動の一環として研究を行う場合でありましても、学術研究の発展に資すると認められる研究であればオーダーメード集計を認めることとされましたが、行政機関等が保有する一般の個人情報につきましても、個人の権利利益を的確に保護することが当然の前提になりますが、その上で、社会全体のために有効活用するというオープンデータの視点も必要と考えております。
御審議中の法案は、行政機関等の保有する個人情報の特質を十分に踏まえて、その利活用により個人の権利利益が損なわれないこと、利活用に対する国民の不安を解消し行政に対する国民の信頼を確保すること、行政の適正かつ円滑な運営に支障を与えないこと、情報公開法との関係に配慮すること、以上の前提の下に、行政機関等が保有する個人情報の適正かつ効果的な活用によるメリットの実現を志向することに慎重な配慮をされたことがうかがわれます。
具体的には、対象となる個人情報を、個人情報ファイル簿が公表されていること、情報公開請求に対して全部不開示とならないこと、行政運営に支障を生じないことの各要件を満たすものに限定し、提案の募集に関する事項及び行政機関等非識別加工情報の概要を個人情報ファイル簿に記載することにより透明性と一覧性を確保し、提案の欠格事由及び審査の要件を法定することにより公正性と透明性を確保し、第三者に対する意見書の提出の機会を付与した結果、提案に係る行政機関等非識別加工情報の作成に反対の意思を表示した意見書が提出されましたときは、当該提案に係る個人情報ファイルから当該第三者を本人とする保有個人情報を除いた部分を当該提案に係る個人情報ファイルとみなすことにより、国民の不安に応えて行政に対する国民の信頼を確保することに配慮した上で、行政機関等非識別加工情報に係る制度の新設により、新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現への貢献を意図したものと考えております。
二〇一〇年十月二十七日から同月二十九日にかけましてエルサレムで開催されました第三十二回国際データ保護プライバシー・コミッショナー会議で満場一致で可決されましたプライバシー・バイ・デザインの七つの基本原則の一つに、個人情報の保護と利用をゼロサムではなくポジティブサムで捉えるという考え方がございます。すなわち、個人情報の保護と利用をトレードオフの関係にあると捉えるのではなく、的確に保護しながら利用によるメリットも実現するという考え方でございます。御審議中の法案は、行政機関等の保有する個人情報の特質を踏まえつつ、個人情報の保護と利用の適正なバランスをポジティブサムの考え方の下に模索したものと評価できるのではないかと存じます。
なお、御審議中の法案におきまして、生存する個人に関する情報であって個人識別符号が含まれるものをそれ単独で個人情報として位置付けましたことは、個人情報の定義の明確化に資するものであり、要配慮個人情報についての定義規定を設け、個人情報ファイルに要配慮個人情報が含まれる場合には個人情報ファイル簿にその旨を記載することとしておりますことも、保有個人情報の本人が自己に関する要配慮個人情報の利用実態をより的確に認識し得るようにするものであり、望ましい改正であると考えております。
以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。
○委員長(山本博司君) ありがとうございました。
次に、山本参考人にお願いいたします。山本参考人。
○参考人(山本隆一君) 本日は参考人として意見を述べさせていただく機会をいただき、ありがとうございます。
私は、医師で医療情報の研究者をもう三十年以上やっておりますので、医療情報の観点から今回御審議中の法制度についての意見を述べさせていただきます。
(略)
○参考人(清水勉君) 日本弁護士連合会情報問題対策委員会の委員の清水と申します。
(略)
非識別加工情報についてですけれども、一般に、行政機関等の保有するパーソナルデータは取得プロセスの権力性、義務性、秘匿性が高いという特性があります。このようなパーソナルデータを商業目的で利活用することは、本人の予測の範囲を逸脱した目的外利用であり、プライバシー侵害のおそれがあるのではないかということでまとめさせていただいております。
以下は個人の見解ですけれども、そもそもなぜパーソナルデータの扱いに慎重な立場を取る必要があるのかということでありますけれども、昨今、パーソナルデータの収集、蓄積、検索、編集が誰にでも極めて容易にできる情報環境社会になっているということであります。つまり、大人でないとできないとか日本社会にいる人でないとできないとかというものではなくて、世界中どこにいる人であろうが子供であろうが誰であろうができると、その人が扱う動機が何であれできるという環境であります。
パーソナルデータは、一旦外部流出した場合、それ以上に広がることはあっても、なかったことにすることはできません。本人が気付かないうちに広がり、利用され、悪用され、本人が不利益を被るということが起こり得ます。誰がいつどのようなパーソナルデータを悪用するかは予測不可能であり、情報は有体物ではありませんので、不正利用している者以外には不正利用されているということが判明しづらいという現実があります。ここは有体物と違うところであります。
危険な情報環境、制度設計と運用、これをつくらないということが課題になるということであります。ここで課題と言いましたのは正解がないということであります。どういう方向性で考えていくべきかという方向をきちんと見据えて、つまり利活用と保護というものをどういうふうにバランスを取っていくかということを、環境が変わるごとにどんどんバージョンアップしていかなければいけないということであります。
我が国の個人情報保護法制の基本的な価値観ということですけれども、EUとアメリカというのが一つの比較になるかと思うんですけれども、EUの方は個人の尊厳を重視、政府や制度が個人の判断が及ばない部分を守る必要があるという観点があります。これに対して米国の方は、個人の自由、プライバシーというものが自己決定権というふうな意味で使われることもあります。政府の介入を基本的に嫌うということがあります。
この連休中、私の事務所の弁護士がアメリカ・ニューヨークに行きまして、この問題について弁護士さん、行政の方たちと話をしてきましたが、最近プライバシーという言葉でアメリカでは判決は出ていません。これはなぜかというと、プライバシーという説明の仕方で切るのではなくて、例えばイスラムの人たちの情報ばかりを集めるという問題については、プライバシー侵害の問題ではなくて平等原則違反という、つまり違った説明の仕方で切っておりまして、プライバシーの概念がどうするかによって変えてしまうのではなくて、この局面で何が問題になっているかということをよく考えて制度設計していくというのがアメリカの考え方というふうに考えた方がいいかと思います。そこの基本にあるのは個人の自由、自由に選択をしていくという価値観。これは、いわゆる移民国家として様々な民族が世界中から集まっている国家としてはそのような、まあ日本のように日本にずっと生まれ育って生きてきた人たちがいる社会のような考え方とは違うものになるということは、これは社会のありようとしてうなずけるところであります。
しかし、制度としてEUとアメリカはかなり違います。ただ、その中核として守るべきは、先ほど出ました医療の情報についても、こういうことは守るべきだよねという考え方はあったとしても、それをどう守るかというところについての理屈の立て方、制度のつくり方のところに違いがありますので、日本はどうすべきなのかということを、どこかのまねということではなくて、この国ではどうすべきかということを考えていくべきなんだろうと思います。
具体的なニーズを前提としない制度設計は無駄であり、無謀だということであります。
今回のことにつきましても、お配りいただいた資料でヒアリングをした資料がたしかあったと思うんですが、経済界からの意見の部分を見させていただいたんですけれども、そこで、百四ページ、百五ページですね、ここを見てがっかりしたんですけれども、つまり、要するに、使えるといいよねと言っているだけでありまして、何がしたいのかということが具体的にないことです。
様々な微妙な問題があるだけに、何がしたいのかということを具体的に提案をしていただくならば、どういう制度がある、どういうふうな法改正が必要だと具体的に言えるんですけれども、余りざっくりと言われてしまうと、やはり微妙な問題がたくさんあるだけに、こういったものが動機となって法律を作っていくというのはよろしくないのではないかというふうに考えております。
過去の例でいいますと、住基ネットがうまくいかなかったという原因は、市町村のネットワークでいいんですかというのを私としては意見を持っていました。つまり、市町村にニーズがないところにネットワークをつくるというのは、そこで各それぞれに責任を負わせるという仕組みは非常に問題があるのではないかというふうに思います。
マイナンバー制度についても、社会保障と税の一体改革というスローガンでやってしまいましたけれども、スローガンと具体的な制度設計というのは、これはなかなか結び付きません。ですので、ここにも難しい問題があったというふうに考えております。
(略)
○委員長(山本博司君) ありがとうございました。
以上で参考人の方々の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○島田三郎君 ありがとうございます。
自由民主党の島田三郎でございますが、本日は大変、お三人の参考人の皆様方、お忙しい中おいでいただきまして本当にありがとうございます。また、貴重な御意見を賜りまして、本当に感謝を申し上げたいと思っております。
もとより、私どもは個人情報というものが非常に重要なものであるという認識がございます。また、個人の権利利益の保護というのはいかに守っていくかということは喫緊の課題であるし、また今の時代の課題であると思っております。ただ、そういう中で、それを利活用していく方法というのも一つのツールではないかと私は考えております。
先ほどお話がありましたように、ゼロサムではなくポジティブサムということを保護、利用として捉えていく考え方、これは私は、今後の日本の将来を考える中で重要なものであると私は考えております。ただ、ここの中で今日議論がございました行政機関が保有する個人情報をどう取り扱っていくのかということは、ある意味、民間情報とはやはり意味が違うものと私は思っております。
そういう中で、各お三人の参考人の方々にお伺いをしたいと思っておりますが、この目的規定を含んだ個人情報の適正、効果的な活用のための法整備を行うことの意義についてお伺いをしたいと思っております。
まず、宇賀参考人、山本参考人におかれましては、民間部門の個人情報の利活用についての検討を行うために内閣官房において開催されておりましたパーソナルデータの利活用に関する検討会でいわゆる座長、委員を務められておられました。昨年の個人情報保護法の改正を含め、今後の制度改正の全体を俯瞰する観点から、まずもって御意見をいただきたいと思っております。
また、清水参考人におきましては、EUやアメリカの例をお引きされながら利活用と保護の問題を語っていただきました。私自身、個人的には、先生自体が全くこの制度について反対ではないというように私は感じたわけでございまして、可能な範囲で本法案の意義についてお考え方をお伺いしたいと思っております。
○参考人(宇賀克也君) 御質問ありがとうございます。
今回の改正は、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法の改正という形を取っておりますけれども、私は、オープンデータ政策の一環として情報公開法の改正という立法政策もあり得るのではないかというふうに考えております。
情報公開法では、何人にも開示請求権を与え、請求目的も限定しておりませんので、企業が個人情報を例えば新産業の創出のために請求するということも可能でございます。その場合、特定の個人が識別されます場合には原則として不開示ということになるわけですけれども、情報公開法では開示請求時点である文書をそのまま開示をするという前提でございますので、加工を認めておりません。しかし、加工を施せば特定の個人が識別されず、個人の権利利益を損なうことなく当該情報を国民に提供して有効活用していただくということができる場合がございます。
例えば、生年月日をそのまま出してしまいますと特定の個人が識別されるので情報公開請求では不開示とせざるを得ない場合であっても、それを例えば二十代、三十代というふうにグルーピングいたしますと、特定の個人が識別されずに、個人の権利利益を損なうことなく国民に提供して、それを有効活用していただくということができる場合があるわけでございます。
そう考えますと、今回の改正は、非識別加工という行政サービスを付加することによって情報公開請求では開示できなかったそういう情報も国民に提供することによって、それを社会のために有効活用していただくことができるようになる、そういうツールを提供するものというふうに捉えております。
○参考人(山本隆一君) 御質問ありがとうございます。
御指摘のように、私はパーソナルデータ利用の検討会の委員をしておりまして、新個人情報保護法及び今回御審議いただいている行政機関あるいは独立行政法人の個人情報保護法全体として、それらが議論される前に非常に困っていたことが多いという意味では、今回の一連の法改正の動きは非常に意義が大きいと思います。
何に困っていたかと申しますと、要するに、余りにも解釈の幅が広過ぎて、ある人はこれは匿名化情報だと言い、ある人はこれは個人情報だと言いということで、それがほとんど水掛け論みたいな議論がかなり多く見られたわけですね。それをやはりかなり明確にできたという意味では、匿名加工情報あるいは非識別加工情報の定義に関しては進捗があったというふうに考えております。
ただ、先ほどの意見でも申しましたように、医療の現場あるいは医学研究の場合を考えますと、現在のこの新個人情報保護法あるいは御審議中の法案の、法案はこれでいいのかもしれませんけど、あとその政令あるいは指針等を含めてもう少し慎重に手当てをする必要があるのではないかというふうに考えております。
○参考人(清水勉君) 今回の法律の意義といいますか、前に作りました個人情報保護法にしましても、さらに、二十世紀のときに作りました行政電算処理の個人情報の法律につきましても、この種の法律を作っていくときというのは、様々その時代時代で問題がある中で、どれを解決していくべきかということを考えながら作っていくという面がありますので、常に少しずつ進化をしている。それがこの時代にどこまでそぐうものになっているかどうかということが問題でありまして、そういった意味でいえば、今回作ったものが作らないよりいいのかという、改正しない方がいいのかというふうに考えれば、改正して良かったという部分は当然のことながらあります。それは、個人情報の定義を明確化していくということは、これは重要なことだろうと、非常に重要なことだろうと思います。
ただ、先ほど来、山本先生が医療関係のことをおっしゃっておりますけれども、私どもも、二〇〇二年、二〇〇三年のときに個人情報保護法を作っていくときに、医療については特別なものを作るべきだというふうに考えて提案をしていました。それは、今日、山本先生がプレゼンしていただいたものと全く同じ考えでありまして、プライバシー性が非常に高い一方で、公共性が強いということであります。
私自身も世界で初めて手術に成功した難病の患者さんのその医療に関係していたんですけれども、事件を扱ったことがありますけれども、その学術論文を見るとその手のことをやっている世界中の人がどこの誰って分かります、名前を見なくても。世界で初めて成功した手術例ですから。ですので、どこまでその医療データをオープンにするかというのはほかの個人情報をオープンにするというのとはかなり違っていて、片方で、一定の範囲の人たちについてはかなりオープンにしないと有効に使えないという面などがあります。ですので、そのことを二〇〇二年、二〇〇三年のときも提案していたんですけれども、個人情報という形で法律が作られてしまって特別法ができませんでした。
厚労省はガイドラインを作りました。ガイドラインは、実はよくよく見ていくと、これは個人情報保護法に合致するの、つまり同意原則というのが医療情報の中で原則として通っていいのかという問題があります。片方で、その個人の自己決定権を無視していいのかという問題、非常に難しい問題があります。でも、それを医療の分野についてはやはり独立のものとして作っていかないと、患者のプライバシーが守れない、片方で医療が進歩しないという非常に難しい問題があろうかと思います。
その意味では、私は、今回医療についてもっと情報共有できないのかという議論が活発化されていることからすると、この分野については特別にやっぱり法律を作るとかということを考えていく必要はあるのか、その場合には民間も行政も関係なく、共通化したルールとして市町村も県も国も民間もというものがつながるような、そういうものを考えていくべきではないかというふうに考えます。それが今回のきっかけとしては私は非常に意味があったというふうに思っていますし、第三者機関の問題につきましても、一部ではありますけれども第三者機関が監督するということになりましたことも私は評価しております。
ありがとうございました。
○島田三郎君 何度も申し上げますように、個人情報の取扱いというのはやはり国民の信頼の下で成り立つものであると考えております。そういう中で、いわゆる公正性や透明性というのは私は非常に大事なものであると。ただ、黙示の同意というものも実はあるわけなんです。知らなかったから同意をしたと。この辺は私、今後やはり考えていかなけりゃいかぬ問題だと思っております。そして、そういう中で、この非識別加工情報の活用の方向性というのは、やはり今後法律が通ったとしても議論をしていってどう直していくべきものであるということを私は思っておりますし、決して今回の法律がいわゆる到達点ではないというのは私自身も思っておるわけであります。
(略)
○石上俊雄君 民進党・新緑風会の石上俊雄でございます。
本日は、三名の参考人の先生、本当に多岐にわたる御示唆を賜り、本当にありがとうございました。
時間に限りがありますので早速質問をさせていただきたいと思いますが、まず宇賀先生に質問させていただきます。
まずは、今回の行個法が保護法なのか公開法になっちゃうのかといったところの視点で御質問させていただきたいと思いますが、昨年成立しました個人情報保護法の改正の第一条の目的に、「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであること」というのが追加の文章で入ったわけですが、これというのは、そもそも前の個人情報保護法の中に含まれておりました有用性についての説明に「個人情報の有用性に配慮しつつ、」という文言があるんですが、その有用性に対しての説明だというふうに解釈されているわけでありますけれども、一方で、今回の行個法はそういう文言がそもそもない中にあって先ほど言った文言がどんと入ってきているということから考えますと、法の中核的目的、個人の権利利益の保護を最重要視することと何ら変わらないというふうに言われているわけでありますけれども、その辺に対しまして先生のお考えをお聞きしたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 大変重要な御指摘だと思います。
実際、行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会におきましても、今回の行政機関非識別加工情報の制度を行政機関個人情報保護法に位置付けるのがいいのか、それとも行政機関情報公開法に位置付けるのがいいのかということについてはかなり議論があったわけでございます。
私は、今回の改正があっても、行政機関個人情報保護法が第一義的には個人の権利利益を保護する、これを最重要視しているというその基本的な目的は変わっていないというふうに考えておりますけれども、個人情報の保護と利用のバランスを取っていくという中でこのような利用というものも例外的に認め得るということで、今回、行政機関個人情報保護法に位置付けられたと思います。
しかし、おっしゃるとおり、これは一種のオープンデータ政策としての一環も持っていますので、そういう要素が行政機関個人情報保護法の中に加わったということは言えると思います。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
続きまして、山本先生にお聞きしたいと思いますが、ざっくり言って、先ほど絵にも記していただいておりましたが、今回の行個法が成立するというか、この法律によって、先生が取り組まれている医療関係のデータにつきまして、国立病院などの医療データの加工、あとは市立病院、自治体関連の病院や民間企業、製薬会社等が活用できるようになる方向に進むのか、その辺どういうふうに御期待されているのかといったところをお聞きしたいのと、そういうふうになるということについて、今回の法の改正で良かったところと、もうちょっとこうなった方がいいんじゃないのというところ、さらには、今回成立した暁には、その先に委員会の規則等が様々作られていくと思うんですけど、成立した後にこういうことをやれば更に良くなるといったところをちょっと御示唆いただきたいと思います。
○参考人(山本隆一君) 今回の御審議中の法案につきましては、これが成立した暁には、少なくとも行政機関、独立行政法人の持っている医療情報、これは、例えば国立大学法人でありますとか国立大学病院機構でありますとかが独立行政法人で、国の場合は国立感染症センターとかあるいは国際医療センターとか、がん研究センターがありますけれども、そういったものの非識別加工情報あるいは匿名加工情報としての利用に関しましては一定の進捗があるというふうに考えております。これは範囲が明確になりますし、手続も明確になって、それこそ世間の皆様方と余りそごのない考えの下に利活用を進めていけるという意味では、研究者も自信を持って使っていけるということになろうかと思います。
医学研究に関してはそうでありますけれども、医療の現場、つまり医療と介護の連携でありますとか医療連携に関しましては残念ながら特段の進歩は見られないというふうに、なぜかといいますと、非識別加工情報にまで至らないと特別な変化がないんですね。現場の場合は、これは匿名化してはできませんので実名のままで情報をやり取りする必要がありますけれども、その場合は先ほど申し上げましたように主体者における責任の壁がございまして、それを有機的に、あるいはどんどんどんどん進めていこうとすると手続的にかなりハードなものがございます。
あと、民間の利活用に関しましては、これはどちらかというとオープンデータ政策の方に関係する話で、非識別加工情報というのはこの法案の場合はほとんど個人が識別できないものとされていますけれども、そうはいいながら、安全管理を義務化している、求めているということは、一定のリスクがあるという配慮だと思うんですね。そうすると、一定のリスクがある配慮のままでいわゆる民間事業者が営利目的で利用するということは恐らくできないというふうに考えていますので、医療に関しましてはできないと考えていますので、更に特定性を下げて全く安全になったオープンデータにまで至らないとイノベーション等に役立てることはそれほど容易ではないというふうに考えています。
これは個人情報保護法の問題ではなくてオープンデータの問題でありますから、これは今も進められていますし、これからも多分進んでいくんだろうと理解していますので、それはそれで別の動きとして期待していいんだと思いますけれども、今回の法案で特段変化があるというふうに私自身は考えていません。
それから、この後ですけれども、この後なのか、あるいは今、宇賀先生、清水先生からお話があった、例えば医療でもう少し個別法みたいなものを考えるのかとかいう問題がございますけれども、仮にそういう個別法がない状態で新個人情報保護法が施行されて今回の法案が通過した場合ですけれども、やはり要配慮情報に関する取扱いというのが非常に難しくなっていて、これ、患者さんが期待する取扱いと、それから医療従事者あるいは医療、医学研究者が期待する取扱いというのにはまだ私はそごがあるように感じています。
したがって、決してプライバシーを侵害する、個人情報を軽んずるということがあるわけではないんですけれども、そのないということを納得した上で共通に理解ができるような政令あるいは指針等の整備が欠かせないというふうに考えております。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
(略)
○横山信一君 公明党の横山信一でございます。
今日は、宇賀参考人、山本参考人、清水参考人から大変に示唆に富むお話を伺うことができまして、感謝を申し上げます。
今回の法整備につきましては、個人情報保護と、それから行政機関の保有する個人情報の活用というんですか、利活用ということについて、それを明確にするという意味では意義のあるものだというふうにも思っております。宇賀参考人が行政のためのデータからのパラダイムシフトという言葉も使われましたけれども、今回の法整備によってそうしたことも起こり得るのではないかというふうにも考えております。
今、この委員会でもずっと議論を続けていることでありますけれども、今日的な課題としてビッグデータ社会というのが迎えているわけでありまして、それに向けてインターネット・オブ・シングスという、IoTを推進していくというそうした制度上の整備も今求められておりますし、またそうした議論も続けているわけでありますけれども、ビッグデータがあって、それを活用することによって、そこには個人情報も含まれてくるわけですが、それが住民にとってメリットのあるものとして返ってくる、そういう、まさにパラダイムシフトなんですけれども、その住民意識がビッグデータを活用することによって利便性が向上するというところにつながってくるかどうかということが重要になってくると思うんですけれども。
今回の法整備というのはこうした社会情勢の中でどう捉えるべきなのかということを、ちょっと漠然とした質問ではありますけれども、それぞれのお立場からお考えをお示しいただければというふうに思います。
○参考人(宇賀克也君) ビッグデータ社会を迎えまして、そのビッグデータの中で最も利用価値が高いとされておりますのがパーソナルデータでございます。そのパーソナルデータを有効活用することによって様々なイノベーションが生まれて、そして、それが結局国民の利益につながっていくという点を考える必要がある一方で、パーソナルデータでございますので、それを利活用することによって個人の権利利益が侵害されないようにするということも必要でございます。
個人情報保護法を二〇〇三年に制定されましたけれども、個人情報保護法が制定された当時はそのようなビッグデータ社会というものの到来というのは全く想定できなかったわけであります。しかし、施行から十年を経て、ビッグデータ社会を迎えてパーソナルデータを取り巻く環境が大きく変化しました。昨年の個人情報保護法改正は、そのようなビッグデータ社会を迎えた中で、新しい観点で個人情報の保護と利用のバランスをどう取るかということを見直しをしたと、そういうものだと捉えております。
そして、今回、今御審議中の法案は、言わばその延長上に、では、行政機関や独立行政法人等が保有しているパーソナルデータ、その利活用についての新しいバランスをどのように取ったらいいかということを検討したと、そういうものだというふうに捉えております。
○参考人(山本隆一君) 二つの面があると。私は医療のことしか分からないので医療の面からお話ししますけれども、二つの面があって、一つは、今の社会保障制度をどうやって持続させるのかということに対して現状をいかに見える化するかということで、これは患者さんのデータを使わずに見える化することはできないわけで、これを確実にやっていって、なおかつそうすることによって御本人に一切の損害を与えない、権利侵害をしないということを確実にしつつその見える化をしていって、それで例えば地域差でありますとかそういったものが、地域差は当然あっていいんですけれども、合理的な地域差なのか、あるいは不合理な地域差なのかとかというようなことを十分検討していく必要があって、そのために今の個人情報保護三法の改正は非常に有効だというふうに思っています。
それからもう一つは、IoTを中心とした新しいイノベーティブな健康管理あるいは健康向上あるいは医療を開発するための、導入するための資料としてのデータをどう集めてくるか、これは本来のビッグデータの利活用によるイノベーションということに入ると思うんですけれども、それを進めていくことも非常に極めて大事なことですので、これに対して十分な個人の権利の保護を確保するという意味での法制度の整備の、今が完全かどうかは分かりませんけれども、少なくともその一助でありますから、そういう意味では私としてはこれは非常に評価をしておりますけれども、更にこういった概念を進めて、一方では利活用を促進しつつ、片方で絶対に個人の権利を侵害しないというのをどうつくっていくかということは継続して議論が必要じゃないかというふうに思っています。
○参考人(清水勉君) 今日配っていただいたこの参考資料を見て愕然としたんです、要するに驚いたんですけれども、これ、個人情報の開示の件数ですとか、それから訂正、利用決定の件数とか、そういったものが出ているんですけれども、以前から承知はしていたんですけれども、非常に利用件数が少ない。これは自己情報コントロール権の具体的な権利として開示請求であり、訂正だったり利用停止請求だったりというものがあるわけですけれども、それを活用している人がほとんどいない。恐らくこの部屋の中でも、個人情報保護条例や個人情報保護法に基づいて自分の情報を開示請求をし、利用中止請求とかそういったものに関わったことがある方はいらっしゃらないんじゃないでしょうか。私自身も、実は東京都の個人情報保護条例ができたときにすぐ使ったことがあるんですけれども、それ以来使っていません。
何が言いたいかといいますと、個人情報がいろいろなところで使われているにもかかわらず、本人からアクセスしていって、どんなふうな情報がどんなふうに使われているかということを確認するということをする人はほとんどいないということであります。その一方で、皆さんおっしゃっているように、この保護はすごく重要だねというのは、それは共通認識になっているわけですね。
つまりそれは、問題が起こったときは、非常に深刻な差別問題であるとかどこからもお金が借りられなくなったりとか深刻な問題が起こるということも分かっていらっしゃるので、この保護は重要だねということが分かる。例えば、戸籍情報というのは日本独特の制度ですけれども、戸籍情報がいわゆる住民票の情報と違って保護の強化しなきゃいけないよねという考え方も、恐らくこの国ではかなり共通の認識だと思います。今、法務省でその方の検討を、マイナンバーとの関係で検討しているところでありますけれども。
にもかかわらず、ここの個人としての権利行使がほとんどされていないということからすると、それはビッグデータの社会の中で、利活用というのは当然いろいろニーズが、経済的利益というだけではなくて、今日は医療の話がよく出ているので医療の話でいいますと、やはり昨日より今日、よりいい医療を提供しようとした場合に、それはビッグデータ化されている方が、ああ、これが使える、あるいはこのことをやっている人たちがどこそこにいるというのが検索できて、早くそれに対しての治療ができるとか、そういうことを考えると進んでいくべきである。ところが、個人が適正に運用されているかどうかをチェックする仕組みだとすると、それはかなり無理がある。また、市町村にそれができるかというとこれができないという、まあできる市もあるでしょうけれども、町村となったときに、特に行政機関の場合には二年、三年で担当が替わってしまいます。そのために専門性がありません。そうしますと、こういったことについて個人情報の利活用についての対応について自治体ができるかというと、これはできないのではないかというふうに考えます。
ですので、どういう分野でどういうニーズがあるかということを考えながら利用させるというか、経済的利益を追求するのが悪いというわけではないんですけれども、誰にも文句がないのは、人を助けるために必要だよねということであればそれは共有化できると思うんですけれども、そのときに、じゃ、どういう方向にするのかということについても、各自治体がばらばらにやるのではなくて、やはり平準化した、その機関がそれを判断していくというものをつくっていくという方向性を考える必要があるというふうに思います。
○横山信一君 ありがとうございます。
(略)
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
(略)
やはり、先ほどからあるように、ニーズに基づいて制度をつくるということが私本当に大事なのかなということをお話伺って思ったんですけれども、例えば、先ほど来あるように、医療については本当にニーズがあって、そういった特別法も必要なのではないかというのをお三人から出されたわけですけど、そういうふうに分野に絞ってどう利用というニーズに基づいて制度をつくるというのであれば分かるんですけれども、網羅的に、きっとこういう情報を使える法律があるといいよねという形での今回のような法律を作るという、改正していくという形というのは何か私にとっては疑問が残るわけですけれども、その点について、最後、清水参考人、御意見いただければと思います。
○参考人(清水勉君) 時間がないので簡単に言いますけれども、資料の百四ページ、百五ページ辺りのところを見ると、やはり具体的に、本当、個人情報の扱い方というのはいい面もあるけど悪い面もあるという問題ですので、こういうことに使いたいということを明確にしないといけないと思います。
ですので、むしろ医療の分野のことを国民がいろんな立場で考えて、そこを出発点として、じゃ、ほかの分野はどうするか、あるいは法律全体をどうするかということを考えていくというのが出発点となるべきではないかというふうに考えています。
○吉良よし子君 ありがとうございました。終わります。
○片山虎之助君 維新の片山虎之助と申します。
三人の先生方、どうも今日は御苦労さまでございます。適切な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。
何点かお尋ねしたいんですが、まず、一番基本的なことですけれども、この法案の評価をお聞きしたい。それはもう世界的な傾向というか潮流の中で、三人の先生方はどう思われているか。わざわざ、守るべき個人、パーソナルデータを民間の方の提案を受けて加工して、匿名化して、非識別化して提供するわけでしょう。そこまでやらにゃいかぬのかと。それで新しい産業を興すという話なんだけれども、そういうことが起こるのかどうか。利活用で、ビッグデータ時代ですからデータの活用はいいんだけど、そこまでやるのかどうか。
宇賀先生はポジティブサムといういい言葉を言われましたので、両方が利用してうまくいくようなことになるかどうか、世界的な傾向としてどうなのか、まず三人の先生方からお聞きしたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 国際的な潮流としてオープンデータ政策を進めていく、つまり、行政が持っている情報をできる限り民間で利用してもらう、そしてそれを利用しやすいような形で提供していく、これは国際的な潮流であるというふうに思っておりまして、今回の法案もそのようなオープンデータ政策の一環というふうに位置付けることができるのではないかと思っております。
そして、その場合、我が国は情報公開法があるわけですけれども、情報公開法の場合には加工ができませんので削除する、不開示情報に該当すれば削除することしかできないわけであります。しかし、その部分について削除ではなくて加工を施す、グルーピングをするとか、あるいは、例えば百五歳の方というとそれだけで特定の個人が識別されてしまうというときに、その部分を不開示にするのではなくて、七十歳以上という形で大くくりにする、トップコーディングをやるというような形にすれば、削除以外の方法でその部分もビッグデータとして有効活用できるようになるわけです。
ですから、そのように考えますと、ある意味、情報の提供の仕方をより精緻化して国民が有効活用できるようにするというのが今回の法案ではないかと、そういうふうに評価しております。
○参考人(山本隆一君) 宇賀先生とほぼ同じですけれども、データはやはり行政が持っている、例えば介護認定のデータベースとかも厚労省は持っているわけですけれども、そういったものはできるだけオープン化して使えるようにしていくということはそれなりに意義が深いというふうに考えております。そういう意味では、この今回の法案は十分期待できるというふうに考えております。
ただ、一方で、個人情報保護法制という観点から見ますと、清水参考人がおっしゃったように、個人情報保護委員会への委任の部分が非常に小さいために、これは世界的な傾向から見ると、いわゆるプライバシーコミッショナーの存在がそれほど大きくないという意味ではやや不十分に取られるというふうに思っております。
○参考人(清水勉君) もう一つ、利活用を進めていく上では、情報の電子データ化というものをどこまで進めるかということが非常に重要なんだろうと思います。国の公文書管理法ではまだその行政文書を基本的に電子データ化するという考え方を取っていません。韓国の同様の法律では電子データ化をするという基本原則を立てております。
そのことの意味合いというのは、一つは利活用の問題、それも民間に対してはオープンにしていくということも考えた上での制度設計になっています。それが紙データベースになると一々、今でもそうです、情報公開請求すると墨塗りの文書が出てくるという、そういう状況ですけれども、そういったことで、ビッグデータの時代にその情報公開制度の中で一々職員が墨塗りしているということをやりながらこれかというのは非常にバランスが悪いです。
つまり、全部電子化できるかということは、それはそれで難しいと思うんですけれども、公的な情報を個人情報も含めて電子データ化することによって、匿名化の問題についても手間も掛からずに割と簡単にできるという方向性が考えることができるんじゃないかというふうに思います。ですので、個人情報保護法の問題としてだけ考えるのではなくて、これを良くして使いやすくしていくためにはどこを変えていかなければいけないかということを多面的に考えるべきでありまして、公文書管理法についても是非関心を持っていただければというふうに思います。
○片山虎之助君 民間が先行したんですよね。今度は国の機関と独立行政法人でしょう。そこまで何でやらにゃいかぬのか。まあ税金ですよ、簡単に言うと、加工するにも人件費もいろいろ要るし、もちろん経費は提案する民間の方からもらうんでしょうけれどもね。この辺がもうひとつ腑に落ちない、私個人のあれですけれども。
それと、それじゃ具体的な、どれだけのニーズがあるかなんですよ。恐らく医療は私あると思いますよ、今いろいろ先生からお話もありましたので。しかし、その具体的なニーズがないときに、どこまでそれをやるのかというのがあるので、先生方にどういう分野でどういう利用があって効果がどうだということを端的に教えていただければ有り難いと思います。宇賀先生からどうぞ。
○参考人(宇賀克也君) この法案におきましては、提案を募集する個人情報ファイルである旨を個人情報ファイル簿に記載して定期的に提案の募集をすることとなっておりますので、行政機関等の非識別加工情報を利用可能な個人情報ファイルが公にされることによって民間から様々なアイデアが生まれてくるものというふうに考えておりますけれども、例えば外国人出入国記録マスタファイルというのがございますけれども、それを観光振興に利用したり、あるいは二輪自動車の検査ファイルとか自動車等不具合情報ファイルというのがございますけれども、これを利用して二輪自動車とか自動車を設計する際の安全性を向上させるといったような使い方が考えられるのではないかというふうに個人的には考えております。
○参考人(山本隆一君) 医療、介護の面では、これは主体が行政機関であろうと独立行政法人であろうと市町村であろうと民間であろうと、これは同じような情報の重要性がありますので、少なくともルールが明確になったという点では私は評価ができるんだろうというふうに考えております。
○参考人(清水勉君) 私のこれまでの説明でお気付きだと思うんですけれども、医療分野以外で使うということがあるのかというのは疑問です。
やっぱり具体的なニーズでこういうことが切実にあるのでというのを言われれば、もう私どもの委員会もこぞってこういうのを作ればいいよと言えるんですけれども、片山先生が御指摘の御懸念というのは、まさに一生懸命職員を使って、ボランティアじゃありませんからちゃんと給料を払ってそれをやらせるわけですけれども、それを出したところが民間ではほとんど使われない。
というようなことだとすれば、元々自治体として積極的にそれに乗ることができないし、乗ったらその分だけほかの仕事の方の業務に支障が来すということになるわけですから、民間の方で勝手に使えるというようなことを考えれば、むしろ情報公開度をどこまで、情報公開度といいますか、オープンにする情報をどこまで今まで以上に出せるかということの方が意味があって、お客さんの注文が来たら各自治体が、村とか何かもやるとかというのは、これはやっぱり非現実的かなというふうに思います。
○片山虎之助君 それともう一つは、やっぱり何人かの先生方も指摘されましたけれども、地方自治体をどうするかなんですよね。(略)
○又市征治君 社民党の又市征治でございます。
参考人の御三方には大変貴重な御意見ありがとうございました。
何点か、私で六人目ですからどうしてもダブってしまう面があるんですが、再確認の意味含めて幾つか質問をしたいと思うんです。
今回の法改正は、個人情報の利活用を促進すると同時に個人情報を保護するということが目的でもあって、これ、そもそもこの個人情報の保護と利活用のバランスが問われるし、両立ができるのかどうかという問題も大変難しい問題だろうと思うんですが、いずれにしましても、その論議に入る前提として、収集される個人情報の性質が問題になるんではないかと思うんです。
そこでまず、宇賀参考人と清水参考人からお伺いしたいんですが、民間企業などが収集する情報は、基本的には本人が了解をし、収集する側も基本的にはその利活用について事前に個人の了解を得ることは前提になっていると思うんですが、これは、場合によっては、本人の同意なしに行政機関が収集する個人情報とは、たとえ利活用されるときの匿名加工あるいは非識別加工されたとはいえ性質が異なるのではないのか、この利活用方法もそういう意味では異なるのではないかというふうに思うんですが、ここら辺りのところのもう少し御見解を伺いたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) おっしゃるとおり、国の行政機関が収集する情報というのは、権力的に収集したり、あるいは許認可を得るために申請でやむを得ず、選択の余地なく収集するというものがあります。その点は、おっしゃるとおり、民間が収集する個人情報との重要な相違というふうに考えております。そのような相違というものは、やはり保護とそれから利用のバランスを考える際に当然考慮に入れるべきというふうに思います。
今回は、そのようなことを考えて、そもそも、個人情報ファイルのうちで個人情報ファイル簿が公表されていないものをこれを対象外とする、それから、情報公開請求があったときに全部不開示となるものというのはこれは対象外とする、さらに、行政運営に支障を与えるようなものを対象外とするということで、対象を限定をしているわけでございます。
それから、民間の方の匿名加工情報につきましては、これは、その匿名加工情報を作成いたしました個人情報取扱事業者やその提供を受けました匿名加工情報取扱事業者の場合には、その匿名加工情報につきましての安全管理については努力義務にとどまっているわけです。それに対しまして、行政機関非識別加工情報につきましては、安全確保が義務付けられて、より厳格に保護するといったような措置をとっているということがございます。
そのような形で、今おっしゃられたような行政機関の情報のその特殊性というものを反映した形で、民間とは異なる形で制度を仕組んだと、そのように考えております。
○参考人(清水勉君) 典型的には、行政が集める集め方というのと民間が集める集め方というのは典型的には違うんですね。典型的にはと申し上げたのは、じゃ、具体的にいろんな分野を見たときに、全部違うのかというとそうではなくて、今日主な共通の話題になっている医療の分野について考えてみると、国立の方は強制的に何でも集めて、民間の方は何でも同意というふうになるかというと、そういうものではありません。
また、今日の山本先生のレジュメの十三ページのところに同意の在り方ということが提起されていますけれども、これは個人情報を保護する場合の非常に難しい課題でありまして、同意というのは、その同意した後どうなるかということが分かる人でないと同意する能力はないというふうに考えなければいけないんですね。
これ、全ての人にそれを期待することができるかというと、全ての患者さんに期待できるかというと、できないんですね。これは、患者さんだけではなく、ほかの分野でもそうです。あなた、同意しましたよねというのが、いや、後で、同意したんだけれども後から気が付いてそれはやめたというふうになったときに、それはやめられないのかという問題が出ますので、オプトイン、オプトアウトの考え方があるように、同意をしたから引き返せないという問題でもないし、でも、一旦同意してしまうとその情報というのはその後どう拡散していくか分からないというところで、本人に不安を与えるという問題もあります。
先ほどちょっと言いましたが、戸籍情報の場合、今法務省で検討、マイナンバーでそれを付けて管理できるようにするのかみたいな議論をしていますけれども、ここがやっぱり住民票情報と違うのは、やはりかなり歴史を遡る、親族の歴史を遡ってどこの出自かということが分かるような情報ですので、それは民間で広がることは問題がありますし、それから、民間が広く利活用するということについても問題があろうかと思います。
ですので、行政か民間かではなくて、どういう情報なのかということをやっぱり考えていかなければいけないんだというふうに私は思います。
○又市征治君 どうもありがとうございました。
次に、山本参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、先生は、今日も、あるいはいただいた資料も、医療情報の利活用に力を入れておいでになっているということだと思いますが、事前にいただいたこの資料を見ますと、個人情報が本人の治療に役立った後に新たな薬の開発等々で新たな価値を生んだとするならば、情報を提供した側が違和感を持つ可能性が高いと指摘をされ、それを避けるための工夫が必要だと述べられていると思います。
今回の法案にはいろんな問題点がありますけれども、本人の了解なしに収集される場合もあるこの行政機関が所有する個人情報がビジネスのために利用されるというのも理解されにくいのではないかと、こう思うんですけれども、先ほど述べた事例では、先生は、本人の事前の了解を得るとか社会的資産としてあらかじめ共有、活用するという提案をされていると思うんですが、この観点、つまり先生の言い方では価値の再配分、こういうふうにおっしゃっていると思うんですが、から見て、この法案についてどのようにお考えか、お聞きしたいと思うんです。
○参考人(山本隆一君) 御質問ありがとうございます。
これ、個人情報保護法制だけで解決できる問題ではないと考えておりまして、そういう意味では、今回の法案でそれに対する対策が書いてあるとは思えないんですけれども。
御指摘いただいた点は、個人情報が価値を生む、価値を生んだときにその価値の帰属がどうなるのかという問題というのはまだ全く解決されていないことで、これは交通系のICカードの定期券のデータの販売もその要素があると思うんですけれども、そもそも定期券を買って乗り降りすることで契約は終結しているのに、それから新たな価値が生まれて、その価値が一体誰に帰属するのか。あるいは、患者さんが使ったお薬を全部集計して集めてくるとそれによって新しいお薬を開発する価値が生まれて、それに例えば製薬会社が対価を払った場合、この対価は誰に帰属するのかという問題があると思うんですね。
これはいずれ多分問題になってくるでしょうし、それまでには解決しなければいけない問題だと思っていますけれども、私は個人的には、やっぱり医療の場合ですけれども、社会保障で生まれた情報というのは、これは国民の財産なので一旦国民のプロパティーとして、国民の財産として預けると。それで、それを、じゃ、どういうふうに使うかというルールが決まっていれば、それをどう使って新しい価値を付けようと、それは価値をつくった人の価値であると。
これは、アメダスのデータがもう全く全部公開されていて、天気予報をする会社はいっぱいあるんですけれども、あの情報を上手に使いながら局地的な天気予報をしてお金を稼ぐ。これは別に誰も文句は言わないわけですね。そういうふうな形をつくらないとなかなかうまくいかないのではないかなというふうに考えています。
今回の法案でそこまで多分踏み込むのは難しいというふうに思っております。
○又市征治君 ありがとうございました。
(略)
○主濱了君 生活の党の主濱了であります。
参考人の皆様には、本当に貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。私からも御礼を申し上げたいと思います。
早速質問に入ります。
まず、宇賀参考人にお伺いしたいわけですが、先ほど片山委員の方からも質問ありましたけれども、行政機関の長がその提案に応じて非識別加工情報を作成し提供することができる、この必要性、背景、理由について伺いたいわけであります。
個人情報保護法あるいはこの度の法案、これは、事業者の経済的利益の追求とそれから個人のプライバシーとの調整を図るものであるというふうに私は思っております。でも、次の理由から、個人情報を商品のように取り扱う経済的利益の追求の面が優先している、大きい、こういうふうに感じられるわけであります。
その理由というのは、昨年改正されました個人情報保護法におけるオプトアウト、これ二十三条の二項、三項ということですけれども、の手続が十分ではないというふうに思われること。それから、個人情報保護法の匿名加工情報に関する政府答弁、これは昨年の三月の十日になりますけれども、まあ非常に基準は甘いというふうに考えられます。
これについては、先ほど島田理事からもお話ありましたけれども、匿名加工情報の加工方法については、個人情報保護委員会規則において、氏名を削除する、住所の市町村以下を削除する、あるいは生年月日を年代に置き換える等の、こういうふうな大ざっぱな、これで本当に大丈夫なのかなというふうな基準しか示されておらないと、こういう状況であります。
それから、自らのプライバシーを守る権利の一環として、個人情報保護法の匿名加工情報又はこの度の法案の非識別加工情報から自ら離脱をする、私は除いてくださいよと、こういうふうな道が定かではないと、こういったようなことがあるというふうに思っております。
このような中で、行政機関の長が非識別加工情報なるものを作成し、その事業の用に供する事業者に対して情報を提供することができるとする必要性、これは相当大きくないといけないと思うんですよ。必要性、背景、理由、これについてお伺いをいたしたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 御質問ありがとうございます。
まず第一に、今回の提案がされましたときの審査でございますけれども、その審査基準の一つに、新たな産業の創出又は活力ある経済社会若しくは豊かな国民生活の実現に資するものであることとあります。これ、私の考えですけれども、これは単に一企業の経済的な利益というのではなくて、企業のイノベーションを通じて、それの利益が国民全体に還元するようなものであると、私はそのように理解しております。
それから、加工基準につきましては、おっしゃるとおり、個人情報保護委員会は全ての情報についての言わば一般的な基準を作りますので、どうしてもそこでは抽象的にならざるを得ない面がございます。そこで、民間の場合には、認定個人情報保護団体がそれぞれの情報の性質に応じたより具体的な基準を個人情報保護指針で定めるということが想定されているわけであります。
私は、国の行政機関とか独立行政法人等の場合におきましても、情報の性質は多様でございますので、個人情報保護委員会が定めた加工基準を、これを基にしながら、それぞれの行政情報の性質に応じた加工基準というものはやはりガイドライン等で定めていく必要があるのではないかなというふうに思っております。
その上で、その必要性ということでございますけれども、このパーソナルデータの利用というのはこれは官民共通の課題で、官民それぞれが取得、そして提供する情報が言わば有機的に連携して有効活用されていくという面がございますので、そういう面では、単に民のみならず官におきましてもそのような制度というものを併せてつくり、同時に施行していくということが望ましいのではないかというふうに考えております。
○主濱了君 ありがとうございます。
それでは、時間の関係上、今度は清水参考人にお伺いをいたしたいと思います。
本法案、そして改正後の個人情報保護法では、その個人、先ほども申し上げましたけれども、やっぱり私は、個人のプライバシーよりもどうしても経済的利益を優先しているんじゃないかなと、そういうふうに感じられているわけなんですが、日弁連の第五十三回、先ほど資料いただいたやつですね、このシンポジウムの中で、高度情報化社会におけるプライバシーの保護、こういうテーマの中で、自己情報コントロール権を実効的に保障していくための提言が示されております。この自己情報コントロール権を実効的に保障していく原則あるいはその仕組み、この概要について御教示をいただきたいと思います。
○参考人(清水勉君) ありがとうございます。
これは二〇一〇年の人権大会のときに採択されたものですので、日弁連のホームページを見ていただければ出てくる内容ですけれども、ここでは電子マネーの問題、監視カメラの問題、その前にライフログの問題ですね、それからマイナンバーの問題、そういったものとして書いています。
このライフログのところから書き始めているというのは、個人情報がとにかくあちこちに記録化されていく社会であるだけに、それをどう保護するかということについて非常に慎重に考えていかないと、本人が気付かないところで個人情報があちこちに存在するという環境になってしまっているという中で、じゃ、そういう社会における保護って何なのかと考えたときに、保護は人を孤独にするものが保護なのか。つまり、誰にも近寄らせないというものは保護なのか。でも、今日の話題になっているような医療情報というのは孤独にさせていく情報なのかというと、そうではなくて、ある患者さんが、今まで助けられなかった患者が助けられた、私の患者さんもそうですけど、それは、その前に何人もの方が死んでいて、その人たちの医療情報を基にしてたまたま今回のその担当のお医者さんが成功してくれたという、そういう積み重ねの中で生きているわけです。
プライバシーというのは同時に公共性というのもセットになって存在しているようなものが、それが人間として社会的な存在なんだろうと思います。ですから、営利が駄目という問題ではなく、営利というのは何、医療だって営利の部分があるではないかということが考えられますし、また、人を食い物にするというのは、これは非常に問題でしょうけれども、利用することによってその本人も社会も、あるいはその事業に携わっている人たちにとってもプラスであるならば、それは積極的に伸ばしていくべきではないかと。
それが、今現在こういうことが、個人データがもっと商売になるよねっていう考え方というのは、商売にできる環境が今までなかったのでこういう議論が余りなされていないということでありまして、商売というものよりも、実は医療の世界ではもうとっくにそれをやっている、やっていたことをもっとできるようにしましょうよという面で考えていくならば、これは、むしろそこに営利的な医療機関があったとしても、それは営利の方にウエートを置くべきではなくて、やはり個人のプライバシーを守る、保護するということとその公共性と共有すること、その共有することの意義とかというものをきちんとかみ合わせて議論していって、どういう制度設計にするのがいいのかという進み方がいいのではないかというふうに考えます。
○主濱了君 ありがとうございます。
(略)
○委員長(山本博司君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
平成28年5月19日
参議院総務委員会第14号
○井原巧君 おはようございます。自由民主党の井原でございます。
本案につきまして順次質問を行いたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
まず、社会の事象ということ、社会不安という言葉があるんですけれども、基本的に私たちの社会というのは、本来信頼が当たり前のものが崩れたときに社会不安というのが起こってくるんですけれども、例えば行政とか、あるいは司法というか裁判所とか、あるいは警察とか治安とか、本来はそれが、信頼が当たり前のところで成り立っているものに、後ろに不安とか不信という言葉が続くような、そういう時世になると社会不安が起こってくるということでありますけれども、今回の法案の個人情報ということは、実はそれぞれ国民にとっては非常に大切なものというふうにみんな思っております。まして、行政が保有する個人情報というのは、任意ではなくて、法律等で半ば強制的にその目的のために徴集されたというものでありますから、仮にそれが一つでも漏えいするようなことがあればそれはもう大きな社会不安につながってくると、そういう基本的な認識を持った上で本日は質問を続けてまいりたいと思いますけれども。
今法案は、パーソナルデータの利活用により、経済の効率化や新産業の創出につながる、もって消費者の生活の豊かさや利便性が向上することの期待とか、あるいは何より防災とか健康とか医療とか福祉とか、その分野での公益性が向上できるというふうに伺っておりますが、今申し上げたように、そこに社会不安が生まれては元も子もないというふうな認識を私は持っております。
そこで、改めて確認の意味でお伺いをいたします。これまでは情報公開という、個人情報を避けたものをそのまま出すという、そういう手法しかなかったわけでありますけれども、今回は利活用という、そういう見地に立ってこの制度の法案を改正したというふうに理解しております。今回、非識別加工情報の提供制度を整備するわけでありますけれども、この法案の基本理念を改めて確認することと、またその国際的な潮流をどのように踏まえているのか、お伺いをいたします。
○国務大臣(高市早苗君) 近年の情報通信技術の進展によりまして、いわゆるビッグデータの収集、分析というものが可能になりました中で、特に利用価値が高いとされるパーソナルデータの利活用を適正かつ効果的に進めていくということは、新たな産業の創出、活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するものでありまして、官民を通じた重要な課題でございます。
今回の制度改正でございますが、行政機関等が保有する個人情報の効果的な利活用を図るものですが、個人の権利利益の保護、これが確保されるということが大前提でございます。利活用と保護の調和の取れた制度とするということを基本といたしております。
このような制度設計に当たりましては、国際的な動向にも留意しております。第三十二回国際データ保護・プライバシー・コミッショナー会議で議決されましたプライバシー・バイ・デザイン、ここでは、一見すると相反するように捉えられがちな個人情報の保護と利用をゼロサムで捉えるのではなくポジティブサムで捉え、その両立を図るという考え方が取られておりまして、今回の改正はこのような考え方に合致したものになっております。
この法律案によりまして、個人の権利利益の保護に支障がない形で利活用するための環境を整備した上で、民間事業者の創意工夫による利活用が図られることで豊かな国民生活に寄与するということを期待しております。
○井原巧君 保護とその利活用の調和ということでありまして、保護を確実に皆さん方に担保できるように今後も取り組んでいただきたいというふうに思っておりますが。
昨年の九月には、先ほどお話ありましたように、民間部門の個人情報保護法が改正されて、そこでは匿名加工情報という仕組みが設けられております。また、本改正では行政機関等という公的機関のパーソナルデータを活用するということでありますが、そこでは非識別加工情報という名前になっているわけでありますけれども、共にどちらも加工をしてパーソナルデータを提供するという制度でありますけれども、まずは、具体的にそういうふうな取組を行ってどのような民間からのニーズがあるというふうに考えているのか、その辺のことについてお聞きしたいと思いますし、また、果たして、それだけ苦労してつくるのにニーズがあるのかなという不安の声も聞いたりもいたします。
そこで、三点ほどお伺いしたいと思いますが、
(略)
○井原巧君 生じるものはないというふうに考えているということでありますけれども、いずれにしろ、取る側からすればこれは同じことなんですよね。要は匿名加工情報ということだろうと思うんですけれども、後ほど質問しますが、その辺の周知についてもお聞きしたいと思いますが、具体的に行政機関等が保有するパーソナルデータというのはいろいろ考えられるんですけれども、どのような種類があって、どのような分野での利活用が可能と考えているのか、ニーズが民間からあるのかどうか、省庁としてどのように考えているのか、見込みをお伺いしたいと思います。
○政府参考人(上村進君) まず、行政機関がどのようなパーソナルデータを持っているかということでございますけれども、それぞれの行政機関等の所掌事務に応じて多種多様なものがございます。幾つか例を申し上げれば、まず、法令に基づきまして申請、届出等により提出されたものがございます。それから、行政機関等がサービス提供主体となりまして、このサービスの相手方の個人情報を管理するために保有しているものもございます。その他、各種相談対応に係るもの、それから施設利用とか入館者に係るファイル、こういったものがあるわけでございます。
他方、ニーズについてのお尋ねでございますが、今回の非識別加工情報の提供制度は初めて設けるものでございますので、具体的にどのような情報の利活用が見込まれるか、これにつきまして現段階で確定的に述べること、これはちょっと困難な面があるということを御理解いただきたいと思います。
その上で申し上げますれば、有識者の研究会等におきまして、経済団体からのヒアリングにおきましては、この公共データという非常に信頼性が高い基礎データですので、こうしたものへの活用の期待が非常にあるということが述べられるとともに、行政機関が保有するパーソナルデータ、これを適正な利用促進するために利用可能なパーソナルデータについてのデータカタログを整備してほしい、こうした要望は示されておるところでございます。
また、本年四月十九日、これは日本経済団体連合会からの提言でございますが、ここで、官民の保有するパーソナルデータ等、幅広いデータの収集、分析、利活用、これを促進することが必要であるというふうに述べられておりまして、これまでより踏み込んだ取組が求められているとされているところでございます。
さらに、先週十二日のこちらでの参考人質疑では、例えば外国人出入国記録マスタファイル、こういったものを観光振興に利用する、それから二輪自動車の検査ファイル、自動車不具合情報ファイル、こうしたものを利用して自動車の設計する際の安全性を向上させる、こういったことも想定されるという御意見もあったところでございます。
いずれにいたしましても、今回のこの制度は民間側の要望に応えていくものなのでございますので、新制度につきましては、産業界等への丁寧な説明を行ってまいりたいと考えております。
○井原巧君 ありがとうございます。
いずれにしろ、様々、有用性について期待もされるわけですけれども、先ほど答弁にもあったように、ニーズの掘り起こしということをやっぱり手掛けていかなきゃならないと、こういうふうに思います。
利用する民間企業から、先ほど申し上げたように、その制度が分かりづらいというか、なかなか伝えづらいというところもあろうと思いますが、その運用の、利活用をしていただくように、周知等についてどのように今後取り組んでいくのか、お伺いいたします。
○政府参考人(上村進君) 御指摘いただきましたように、この改正案によります非識別加工情報の提供制度に関しましては、民間事業者から積極的に提案をいただくことが極めて重要なわけでございます。このため、この法案、御審議いただいている法案の第五十一条の二では、民間事業者に対する情報提供等を規定しているところでございます。
また、今回、法案の成立をいただきましたならば、施行に向けまして各種説明会を開催するですとか、ホームページ、それから広報誌の活用を始め様々な形で民間事業者向けに制度の周知を行いまして、相談をいただきましたら丁寧に対応する等によりまして、円滑な利活用をしっかり確保してまいりたいと思ってございます。
また、先般の個人情報保護法改正も含めました一般的なパーソナルデータ利用、こうしたものにつきましても、個人情報保護委員会その他の関係機関と連携いたしまして、民間事業者の理解が深まるように適切な対応を図ってまいりたいと考えております。
○井原巧君 是非周知方、よろしくお願い申し上げたいと思います。
(略)
○石上俊雄君 おはようございます。民進党・新緑風会の石上俊雄でございます。
今日は、行政等の個人情報の効率的な運用ということに係る法律の改正案につきまして質問させていただきたいと思います。
情報的には行政機関がたくさん持っているということで、それを個人が特定できないような加工をして経済の成長とか産業の発展等に利活用するために対応していくんだということでありますが、行政機関が持っている情報はその特性を様々考えていかないと大変なことになりますので、ちょっと基本的なところからまず質問させていただきたいというふうに思います。
今日は、言葉でしゃべりますとなかなか長くなりますので、分かりにくい面が、結構難しい法の改正だというふうに思っていますので、今日は資料も結構私準備させていただきましたので、それを見ながらちょっと質問をさせていただければと思います。
まず、個人情報保護法制における行個法等の位置付けについて質問させていただきたいというふうに思います。
資料一の①に示させていただきましたが、我が国の個人情報保護法制は、ここの図にありますように、今回審議をする行個法と個人情報保護法と独立行政法人の個人情報保護法と先ほどちょっとありましたが各地方公共団体の条例等で構成をされていると、こういう複雑な構図になっているわけなんですよ。しかし、なかなかこれが難しくて、個人情報保護法というのが昨年改正されまして新しいものができたんです。その下に今回審議する行個法とかが連なるわけですが、この中身をよく読んでいきますと、それぞれの領域で完結していないんですね。行個法は、非識別加工情報にして外に出すと、それ以降の取扱いについてというのは、要はどこを参照するのかというか、個人情報保護法の中に書いてあるものをやりながら対応するということになってくるわけです。
そういった意味で質問させていただきたいと思いますが、この四つの分類がされていますけれども、その相互の関係ですね、相互それぞれあることによってその効果はどこにあるのか。この関係性の、だから、行個法で、含まれていない、関係があるということを今回の行個法の中でどこで規定されているのか。何でこの変則的な五角形的な体制を組んでいるのか。この辺について、総務省、御説明いただけますでしょうか。
○政府参考人(上村進君) お答えいたします。
この資料で御説明いただきましたように、まずこの三角形のてっぺんにありますのが昨年改正をされました個人情報でございまして、これは各機関、各主体ごとの個人情報に通ずる通則的なまず基本理念、基本的なところを定めると同時に、この三角形の左下半分、民間部門については、これがそういう意味では個々を規制する法律となっているわけでございます。
どうしてこういうことになっているかということをちょっと御説明いたしたいと思いますけれども、もちろん、前提といたしまして、個人情報の取扱いに伴います個人の権利利益の保護の必要性は公的部門と民間部門とで異なるものではございません。
しかしながら、その取扱いにつきましては、政府と国民との間というのは、行政に対する国民の信頼の確保というまず命題が一つございます。それから、私人間といいますか、民間部門は基本的に民間と民間とのやり取りでございまして、一つには、例えば企業活動における営業の自由、こうした問題との調整があるとは思いますが、他方、公的部門の方では法律による行政の原則、こういうものがございます。そういう意味では、国民一般の利益とこうしたものとの調整が重要であるということでございまして、こうした違いを踏まえますと、取扱いについての具体的な規律内容は異ならざるを得ないというふうに思ってございます。
このため、行政機関、独立行政法人もそうでございますが、こうしたところにおきます個人情報の取扱いに当たりましては、法令に基づく厳格な保護管理、この下に置かれるよう特別の配慮が必要であるとされたところでございます。
その趣旨でございますけれども、これ、平成十五年に行政機関個人情報保護法が制定する前の個人情報保護法、これはもう今はなくなった条項でございますが、第六条一項で、国の行政機関については別途法制化の措置を講ずると、こうした義務規定がございました。これに基づきまして、個人情報保護法とは別に、今御指摘の行政機関の個人情報保護法、独立行政法人等の個人情報保護法が設けられることになったものでございます。
そういう意味では、こうした法律間の連携というのは、今申し上げました条項に基づいて我々が今御審議願っている法律が別個のものとしてできたという経緯であるというふうに御理解をいただければ有り難いと思います。
○石上俊雄君 できたその、何というんですかね、背景でいろいろばらばらになっちゃったというんですけど、分かりやすくするためには、もう少し一つの法律で全部カバーできるようなそういうような内容になればいいんじゃないかなと、そういうふうに思っています。
次なんですが、資料一の②ですね、下に書いてありますが、今回の行個法と同じように、個人の情報に対する制度の位置付けについてちょっとお聞きしたいんですが、行個法と同じように、その情報の提供を要求する対応として、行政機関情報公開法とか統計法とか、そういう法律もあります。さらには、法律じゃありませんが、各種オープンデータ政策というものもあるわけでございます。
これ、中身見ていくと何か余り変わらないんじゃないかなというところもあるわけでございまして、まずは制度が様々存在する理由、そして、今回の法の改正ですね、行政機関情報公開法や統計法で行わない理由ですね、それじゃ駄目だという理由について、総務省、教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(上村進君) お答えいたします。
御指摘のとおり、こうした行政機関等が持っています情報を利活用、公開する法律あるいは政策というのはいろいろあるわけでございます。これは当然のことながら、それぞれの趣旨、目的から、別の制度や取組として設けられ運用されているものでございますが、今回御提案を申し上げております非識別加工情報、この提供制度というものをどのような法的な枠組みで措置するかにつきましては十分検討を重ねてきたところでございますが、先ほど来御答弁申し上げておりますが、個人情報を元に作成する情報でございますので、これを民間事業者に提供し、利活用を促進していくに当たりましては、国民の信頼それから安心、これを確保することが極めて重要であるというふうに思っております。
したがいまして、御指摘のような、例えば行政機関情報公開法等ではなくて、個人情報に係る個人の権利利益の保護、これを目的とする行政機関個人情報保護法等の改正によることが最適であると判断したものでございます。
なお、ほかの法律ではどうして、何といいましょうか、適切ではないのかということでございますが、情報公開法でございますが、これはまず特定の個人が識別される場合は原則として不開示となります。一方、部分開示と、その部分を部分的に削除する等の開示はできるわけでございますが、これは削除しかできないわけでございまして、他方、本法案におきましては、識別される部分をほかの情報に置き換えるとか、それからグルーピングするということが可能でございますので、より民間事業者にとって有用な情報がそういう意味では柔軟に提供ができるということになると考えております。
また、統計でございますが、統計データというのは、これまた御承知のとおりでございますけれども、ある種、このいろいろな情報の共通の部分というのを抽出しましてまさに集計をすると数値として非常に抽象度が高いデータにしてしまいますので、ビッグデータとして使うのには抽象度がちょっと高いというふうなことがございます。
また、オープンデータといいますのは、基本的には情報をそのまま出していくということでもございますので、個人情報となりますとなかなかそのまま使えないという場合が出てくるかと思っております。
以上のような理由ということでございます。
○石上俊雄君 何となく分かったかな、ちょっと分かんないなというところもありますが、ちょっと、一応様々なことを確認したいので次に行きますが。
先ほど、井原先生の方からもちょっと質問がありましたが、今回の法案というのは保護法なのか活用法なのかといったところですね。保護と活用は比較考量されるのかということについて質問をさせていただきたいと思いますが、先日の参考人質疑でも質問をさせていただいたわけでありますけれども、昨年の個人情報保護法の第一条の目的規定ですね、ここで、「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」と変更されたわけでありますけど、これはその有用性といったところの説明だというふうに理解をされているわけであります。
しかし、一方で、資料の二の②にも付けさせていただきましたが、資料の二の①は個人情報保護法の条文の改正ですけど、②が今回の行個法の改正の部分なんですけれども、今回の現行法には個人情報の有用性の表現が元々存在しないわけでございます。いきなりこの条文の中に先ほど言った個人情報で入れ込まれたものがすとんと入ってきているということになるわけであります。
で、それ自体が追加ということになるので、この条文をよく読んでいくと、冒頭で個人情報の利用が拡大するということでのマイナスの影響に言及するわけでありますが、後半では、個人情報の有用性とプラス面への配慮に触れた直後に、ただ単に個人の権利利益を保護が目的と条文を締めくくっているわけでございまして、権利利益にはマイナスからの保護とプラス利活用の権利があると読めなくもなくて、改正案では個人情報の保護と活用はバランスされる関係にあると考えておられるのか、さらには行個法本来の目的が書き換えられたという批判もあるわけでありますが、このことについて総務省の認識をお伺いします。
○政府参考人(上村進君) お答えをいたします。
今回の法案、御提案申し上げている法案では、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、そうした本来の目的は変更することなく、従来制度的な位置付けがなかった個人情報の適切な利活用に向けた道、これを開こうとするものでございまして、個人の権利利益の保護それから利活用の推進、この二つの調和の取れた法制度として立案しているものでございます。
それで、委員御指摘のように、今回の改正案につきまして、個人情報の適切な利活用、こういう要素が目的に追加されたということは事実ではございますが、国や独立行政法人において個人情報を適正に取り扱いましてこの個人の権利利益を保護すると、こういう大前提は何ら変更しているわけではないわけでございます。というふうなことで、御理解を賜れば有り難いと思っております。
○石上俊雄君 なかなかこの辺、何かいろいろ読めば読むほどちょっと難しくて分からなくなるんですけれども、何かもうちょっと明確になればいいなというふうに思います。
(略)
続きまして、保有個人情報についてお伺いしたいと思います。
保有個人情報とは、行政文書としての正式に記録、保管されたものだけで、例えば職員の皆さんの記憶ですとか個人的なメモですとか、念のために撮影をしておいた映像、写真等は、そういうものは当たらないというふうに考えていいのか、この辺について、総務省、お答えいただけますでしょうか。
○政府参考人(上村進君) お答えいたします。
この法律で、現行法でございますが、に言う保有個人情報とは、現行法二条三項に定義があるわけでございまして、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した個人情報であって、当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして、当該行政機関が保有している行政文書ということになってございます。
したがいまして、今の委員の御質問にありましたような職員の記憶ですとか個人的メモ、それから念のための撮影写真等は職員個人が保有、利用するものでございまして、組織として保有するものではないために保有個人情報ということには当たらないというふうに解釈をされております。
○石上俊雄君 ちょっとそれと関連しているんですけれども、匿名加工の対象となるのは公表された個人情報ファイルだけになるのか、さらにはその量や内容、取得プロセス等についてはどのような特質があるのか、総務省、お答えいただけますでしょうか。
○政府参考人(上村進君) お答えいたします。
委員御指摘のとおり、行政機関非識別加工情報の作成に用います個人情報は、御審議いただいております改正法案二条九項第一号によりまして、個人情報ファイル簿が作成、公表されているものに限られているわけでございます。
その量、内容ということでございますが、これから法案の成立をいただきまして、施行に向けますと、また、どういうものが対象となるかというのは、今申し上げました二条九項第一号に続きまして、第二号、第三号というのがございます。第二号というのは、これは情報公開請求があったとしたならば部分開示されるもの、それから第三号というのは、行政の適正、円滑な運営に支障を生じないものと、こういうふうにされております。
こうした法の要件は、法律の成立をいただきましたならば、各行政機関でそれの該当性というものを精査いたしまして選定していくことになります。したがいまして、現段階で、その量がどのぐらいのものになるのか、あるいはどういうものが含まれているのかという内容等につきましては、ちょっと今、現段階ではお示しすることが困難であるということを御理解いただければと思います。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
(略)
続きましては、この行個法に対する行政機関の対応についてお伺いをしたいと思います。
改正案が成立しますと、企業提案の審査次第ではありますが、資料の九の①に示させていただきましたが、大量のファイルを保有する、すごいですよね、行政機関が持っているファイルがあるわけでありますが、これが非識別加工情報としてビッグデータの出し手というか提供元になるわけでありますが、したがいまして、提案が来たらしっかりとやって受けるぞという気概がどの程度あるかといったところも実態としては重要になるのかなというふうに感じているところであります。
そもそも企業は、行政側が改正案の第四十四条の四により行うこの提案募集に対して提案することができる、これが四十四条の五ですから、だけであって、提案はその請求権の位置付けではないわけであります。したがって、何というんですかね、行政のスタンスで決まってしまうといったところが出てくるんじゃないかなと、そういうふうな気がしているわけです。
また、現行法第八条の三項には、保有する個人情報の利用又は提供を制限する他の法令の規定の適用を妨げるものではないというふうなこともあるわけであります。したがいまして、住民基本台帳法に定めるものですとか、こういったものって出せなくなってくるわけですよね。
したがって、そこで質問なわけですけれども、例えば資料の九の②に示させていただきましたが、納税データをアメリカ等先進国並みに利活用すれば経済予想とか政策の精度も格段にアップするという指摘も専門家からはあるわけでありますが、国税庁は今回この改正案での個人情報利活用をどのようなお考えで捉えられているのか、教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(柴崎澄哉君) お答え申し上げます。
国税庁が保有します納税者の個人情報につきましては機密性の高い個人情報でございまして、納税者との信頼関係を維持し、納税者のコンプライアンスを確保する観点から、国税庁におきましては、従来から、保有する税務データの取扱いにつきまして税務職員に課されております厳格な守秘義務の観点に特に留意しつつ、行政機関個人情報保護法の規定等を踏まえまして適切に対応してきているところでございます。
今般の改正法案におきましては、行政機関が保有する個人情報については、権力的、義務的に収集した秘匿性の高い情報も含めまして、情報公開法において全部又は一部の開示がなされないものにつきましては、非識別加工情報対象から除外するというふうにされているところでございます。
国税庁が保有いたします個人情報は、基本的に情報公開法第五条第六号の不開示情報に該当するものとして取り扱ってきているところでございまして、これを踏まえますと、今回の改正法案におきましても非識別加工情報の対象とはならないものと考えているところでございます。
いずれにいたしましても、今般の改正法案の新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現という趣旨を踏まえまして適切に精査してまいりたいと考えております。
他方で、今御指摘のございました経済予測、政策精度の向上という御指摘につきましては、国税庁におきましては、申告納税の状況等を公表することによりまして納税者の税務行政に対する理解と信頼を深め、もって円滑かつ適正な税務行政の運営を実現するという観点から、納税者の個別データではなく、国税庁が保有するデータを集計する形で各税目の課税状況等を税務統計として公表しているほか、主要税目の申告状況等につきましても可能な限り詳細に公表しているところでございまして、今後とも引き続き税務統計の適切な公表に努めてまいりたいと考えております。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
続きまして、警察庁にお聞きしたいんですけど、資料の十の①に示させていただきましたが、世界には犯罪発生頻度の地図を作るというイギリスや、犯罪発生予想ソフト、プレドポルの導入をしているアメリカとかという例があるわけであります。今回の法の改正が通ると、この改正によって、個人情報を利活用することでこういうことも可能になるんじゃないかというふうに思うんですが、警察庁のお考えをお聞きします。
○政府参考人(村田隆君) お答えいたします。
改正法案第二条第九項第一号におきまして、犯罪の捜査のために作成、取得する個人情報ファイルを構成する保有個人情報につきましては、機微な情報が含まれておるため、行政機関非識別加工情報に加工できる対象からは除かれております。当該情報を行政機関非識別加工情報として活用することはできないものと承知をしております。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
アメリカとかとちょっと環境が違うんですね、日本は。警察の皆様の頑張りで治安は安定していますし、そんなに頻度は高くないですから、そういったのは作る必要はないのかもしれません。
(略)
○又市征治君 社民党の又市です。
(略)
次に、行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会、これは総務省の内部の研究会でしょうが、行政機関個人情報保護法、独法等個人情報保護法の改正に向けた考え方を取りまとめていますけれども、その中で行政機関等が保有するパーソナルデータの利活用のニーズに触れて、一般的な利活用への期待が存在しているとしながらも、医療分野の情報以外には具体的な利活用のニーズは特定できなかった、このように述べているわけですね。
そこで伺うんですが、本法案では、行政機関非識別加工情報取扱事業者になろうとする者は情報利用の目的及び方法等を提供することになっていますけれども、総務省はどのような提供内容と、量的にどの程度を想定をしているのか、まずこれは第一点伺いましょう。
また、この提供内容の審査に関しては、当然、先ほど言及しました本法案の目的、個人情報の有用活用が産業創出、活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するかどうかが問われるわけでありますから、この法案の目的自体が実に漠としたものであって、曖昧、こう言わざるを得ないわけで、そこで、具体的な審査基準、これはどういうものを考えておるのか、お示しをいただきたいと思います。
○政府参考人(上村進君) お答えをいたします。
まず、御提案の行政機関非識別加工情報の提供制度でございますが、この法案によって初めて設けるものでございますために、具体的にどのような提案がこれから出てくるか、それから、どれほどの数になるかということにつきましては、現段階ではなかなか確定的に述べることが困難な面があるということはまず御理解をいただきたいと思います。
その上で、委員からも今御指摘いただきましたような研究会、それから経済団体等からは一般的なニーズがございます。それから、今し方大臣からも御答弁申し上げましたような、参考人質疑の中において述べられました二輪自動車の検査ファイルを活用してより安全な製品を作るというニーズ、それからまた、これも参考人質疑にございましたけれども、外国人出入国記録ファイルを利用いたしまして観光振興に利用する、こうしたものは提案がなされてくるようなものではないかと思ってございます。
これをどういうふうに審査するかということでございますが、法案上は確かに非常に、厳密なものは書いていないわけでございますが、ただ、これがどのようにこの提案内容が新たな産業の創出とか国民生活の豊かさにつながるか、それは事業計画書などを添付いただくことになっております。これをできるだけ具体的な説明をいただきまして、そのメリットをきちんと見極めていくということになると思います。
いずれにいたしましても、まだ審査基準は、この法案の成立をいただきましたら、どのような審査の方法があるかも踏まえまして、基本的な考え方を含め、まとめていくということにしておりますので、これはいずれ指針なりガイドラインの形で作成していくということになると思っております。
以上でございます。
○又市征治君 つまり、どういう提案がどの程度提出されるか予想が付かない。たまたまこの間の参考人質疑のときも出ましたけれども、医療関係は当然のこととして大事でしょうと、こういう話。まあ、医療や介護まで入りますかね。あるいは、今あったように観光という問題などがあるかもしれない。だけど、それ以外は予想も付かない。こういう状態の中で、それならばそれで個別法でやってもいいんではないのか。言い換えるならば、具体的な要望すら産業界から出されていないときになぜわざわざこのような改正を拙速に行うのかというのは、これは理解し難い、国民の側でも理解できない、こういう声が強いのではないのか、こう言わざるを得ないわけでありまして、その点は改めて申し上げておきたい、こう思うんです。
(略)
○片山虎之助君 それじゃ、順次質問いたします。
大変中途半端という話が今ありましたが、難しい法律ですよね。こういう難しい法律を審議するのも頭の体操になって大変いいと思いますけど、ただ、質問する方はやりにくいんですよ。だから、今までの議員、先生方の質問とダブる、丸々ダブるかちょっとダブるか分かりませんが、ダブることが多いと思いますし、それから初歩的な質問や見当外れな質問も、私ですよ、多いかと思いますけど、それは勘弁してください。
この前も参考人の意見を聞いて私なりにそこそこの理解はしたつもりなんですが、何で、民間だけならまだしも、国や独法までこういうパーソナルデータの提供というようなことに引きずり込むのかというところがよく分からない。まず、民間と今回の国と独法が違うこういう制度にした理由を、後追いということはありますよ、分かるように言ってください。誰がいいのかな、やっぱり局長なんですかな。
○政府参考人(上村進君) 御質問にお答えする前に、まず今回の法改正でございますけれども、前提といたしまして、それは情報通信技術の進展、いわゆるビッグデータの活用ということがあるわけでございます。これは改めて申すわけでもないわけでございますけれども、そういう中で、先ほどからも申し上げましたように、経済界からの一般的な、これは、公共分野が作るデータというのは非常に信頼性が高い、それからいろいろな分野にもあるということで、一般的なニーズというのは非常にあるということでございます。
それから、先ほどの答弁でも申し上げましたように、例えば参考人質疑で出ておりましたような外国人出入記録の利用あるいは製品の不具合の活用、こうしたニーズというふうなことがございます。
こうしたものからすれば、まだ現段階では活用対象となる情報、具体的に言いますと、どういう個人情報ファイル簿が提案対象となり、それをこれからどう選定していくかということもこれからでございますので、なかなか民間事業者の方からこういうニーズだというふうなことを明確に申し上げていただくような段階になっていないということは事実でございますけれども、そういう意味で、一般的なニーズ、具体的なニーズというのはあるものと思ってございます。
いずれにいたしましても、今回の制度が幅広く利用されるように十分な今後周知をしていく必要はあるだろうと思っております。
○片山虎之助君 いや、だから、ニーズの話は二番目にしようと思ったのよ。それはニーズがあるから国や独法も追っかけると、こういうことなんですけど、そのニーズが、何か説明聞きましたよ、この前も、参考人の方も言われたけれども、もうひとつ腑に落ちないというか、ぴんとこないというか。
こういう大掛かりな制度をつくってまで応えにゃいかぬほどのニーズかどうか。そういう具体的な提案は恐らくまだないと思いますよ、経済界にも。ただ、何かうまく利用できるものをつくっておけば将来は金もうけを含めていいことがあるというぐらいの私は期待だろうと思うんですが、今、局長、あなたは専門家なんだから、国や独法で具体的なニーズというのはどういうのか、皆に分かるように説明してください。あなたの想定でいいわ、間違っているかどうかは別にして。
○政府参考人(上村進君) そういう意味では、それぞれ所管の行政機関もありますので法案の立案部局としての今の想定ということでございますけれども、やはり高齢化社会を今後迎えていく中にありまして、例えば高齢者の方の生活実態というものですとか、それから雇用動向ですとか、そういう非常に生活に密着したデータというのを、ちょっと各省がそれについてどのようなデータを持っているか、今必ずしも全部把握しているわけではございませんけれども、そういったものについてニーズはあるんだろうと思っております。それを民間の企業がいろいろ活用する中で、新たなサービス、それから製品を作ることに活用されていくということは十分想定をされているものだと思います。
○片山虎之助君 この前、参考人の方は、医療はみんな何となく分かるわ、それ、具体的にそう分かっているわけじゃない。観光でしょう。今、あなた高齢者と言われた。その高齢者の例えば何を、どういうデータを民間が提案して、それを行政側というか国や独法がどういう形で提供するという例をちょっと言ってよ。それが非常に例が適切ならみんなすぐ分かると思う。例えば。
○政府参考人(上村進君) 恐縮でございます。
少し考えながらの答弁になると思いますけれども、例えば高齢者の方の地域的な、何といいましょうか、居住の実態ですとか、それからまた勤労されている状態ですとか、それからいろいろな意味での介護とか支援を要する方の実態ですとか、そういうものが例えば地域的なデータと組み合わさることによって、例えばですけれども、新たなサービス展開をするときに、どういう地域にどういうサービスが必要であるとか、あるいはほかのサービスと組み合わせて今までなかったようなサービスを提供できるのではないか、それから企業努力の中で研究を進める中でそういうような活用方法が生まれてくることはあるのではないかと思っております。
○片山虎之助君 この前、参考人質疑でも私始め何人か質問したんですけど、諸外国にこういうパーソナルデータを利活用する仕組みというのはどこがあるのか、どこがうまくいっているのか、いつ頃から始まったのか、分かる範囲でいいですから。
○政府参考人(上村進君) お答え申し上げます。
EUにつきましては先ほど又市委員にお答えをしたところでございまして、匿名データが何であるかという制度的な定義とかいうのはございますが、これをどういうふうに利用していくかというルール化されたものはございません。
また、アメリカにつきましては、連邦取引委員会、FTC、これが、民間部門につきましてこういう個人情報データの取扱いを管轄しているところがございますが、ここにおきまして、いわゆる三要件、FTC三要件というものがございまして、これは今御提案している非識別加工にも少し近いところがございますが、匿名化のためのしっかりした合理的な措置をするというのが一つ、それから再識別をしないとしっかり約束すると、二つ目、それから、これは制度的に提供先で再識別を禁ずる、そういう契約をすると、大体この三要件を示しておりまして、これが守られていれば個人情報には該当しない。したがって、個人情報に係る規律なしで提供できると、こういう仕組みはございます。
ただ、今回私どもが御提案しているように、分野を問わずに行政機関の情報を外部に提供する、こういう法的な仕組みというのは欧米先進諸国を調べた限りにおいてはほかにないのではないかと思っております。
○片山虎之助君 法律に基づく制度はないんですね、法律に基づく制度は。
○政府参考人(上村進君) 失礼いたしました。
二つございまして、法律に基づく制度ということと、それから、この行政機関に特に焦点を当ててこういう制度があるかということになると、それはないと。FTCの場合は民間について定めているということでございます。
○片山虎之助君 ICTで圧倒的な先進国じゃないわね、日本は。それで、よその国がない制度をこうやってつくるところの、それがよく分からないのよ。大体、よその国にあるけど日本にないじゃないかという責められ方をよく皆さんもすると思うけど、よその国にないものをこうやってつくっていく、それを悪いとは言わないけれども、どうも、そこのところがもう一つ私の理解が乏しいのかもしれません。
そこで、厚労省から来られているんですが、医療情報というのは、一番需要が私もある、ニーズがあると思うんですけど、例えばカルテなんかのことを出すんですか。非識別加工するんですよ。そういう意味では匿名化するんですけれども、出すんですか。
○政府参考人(安藤英作君) 医療情報に関しましては、非常に機微性が高うございますので、適切な保護が求められる一方で、適切に活用することを通じまして医学研究や医療の高度化など社会全体の利益につながるものと考えてございます。
その中で、私どもとしましては、厚生労働省や所管法人等が保有しております医療情報につきまして、民間事業者の提案を受けまして、改正法の趣旨や要件に照らしまして適切に対応していきたいと考えてございますが、個別具体的に今どういった情報につきましてどう対応するかということにつきましてはまだ検討をしていないところでございます。
○片山虎之助君 あのね、ちょっとゆっくり言うことと、それから、あなた、分かるように言わないと。対話というのはお互い分かる範囲で言うのよ、一方的に言うのは対話じゃないのよ。それは国会審議じゃありませんからね。分かるように言ってくださいよ。
カルテ等も対象にするんですね。もちろん、匿名で非識別化するんですよ。
○政府参考人(安藤英作君) 具体的な情報につきましてどう対象にしていくかということにつきましては、改正法案の成立をいただきました後で、法の施行に向けまして、情報公開請求があった場合に開示されるもの等の法の要件に照らし合わせまして、情報を保有する行政機関の長におきまして適切に御判断をされるというふうに考えてございます。
○片山虎之助君 いや、その官民を通じてデータを一体的に活用して提供するというのが、それはよく分かる。例えばカルテの扱いはまだ決まっていないとあなたは今言われたわね。病院だって、国立病院があるし、公立病院ね、地方団体の病院もあるし、民間の病院もあるし、済生会みたいなのもあるし。
しかし、そういうところの例えば医療情報なんというのがある種、量的にも質的にもレベルからいっても統一できるんですか。みんなそれぞれが匿名化して出すわけでしょう。私はどういう利用ができるのかなという気がしてしようがないんだけど。分かるように言ってよ、ゆっくり。
○政府参考人(安藤英作君) 大変申し訳ございません。
具体的にどういう情報を非識別加工情報として提供できるかにつきましては、民間事業者からの提案を受けまして、この法律の改正の趣旨や要件に照らし合わせまして、また当然費用が掛かってくるものでございますから、予算の状況等も勘案をして適切に対応していきたいということでございまして、現時点でどういう対応ができるかということにつきましてお答えをできる状況にございませんので、どうか御理解をいただきたいと存じます。
○片山虎之助君 それでは、総務省に聞きますけれども、総務省の何とかの報告書で、最終報告書で、スモールスタートがいいと、スモールスタートがいい。日本にもあるような、小さく産んで大きく育てるなんというような、そういう意味だろうと私は思うんだけど。
今回のこの仕組み、スモールスタートがいいんだということはどういう意味なのか。それは、後で、ゴジラの卵みたいなものをやっておいて、ゴジラをつくるというのではないんだろうと思うんだけど、どういう意図があるんですか。
○政府参考人(上村進君) 御指摘のとおり、総務省のパーソナルデータの研究会ではスモールスタートという言葉が使われております。
これは、もちろん今回の御提案の法案の目的でございます匿名加工情報を導入いたしましてビッグデータ等を活用して新たな産業に結び付けるというこの必要性はある一方で、国民に不安を生じさせない形で導入していく必要があるということもこの中で、報告書の中で言われているところでございます。そうした文脈からいたしますと、一方的に利活用に偏るのではなくて、国民の権利利益の保護との適切な調和の下で進めていくと、こうした考え方をスモールスタートが適当であるというふうに表現されたものだというふうに理解をしております。
○片山虎之助君 それは、国民というのは名前がいいけど、経済界じゃないの。経済界の要請やいろんなことに応じて、何というのか、制度を変えるというわけにはなかなかいかないかもしれないけれども、いろんなことを変えていくという狙いかもしれませんね。
(略)
○片山虎之助君 まあ大変未知の、あるいは難しい問題にこれから乗り出していくので、トライ・アンド・エラーにならざるを得ないですけど、大変プラスの効用もたくさんあるし、そうでない感じもあるし、まあ十分これから検討していきます。
終わります。
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
では、早速ですが、今回の法案により非識別加工情報の対象となる個人情報は全行政機関等にどのくらいあるのか、また、この全てが非識別加工情報として民間事業者等に利活用されるというふうに考えていいのかという点、参考人、お願いいたします。
○政府参考人(上村進君) お答えいたします。
まず、この個人情報の数でございますけれども、我々ファイル単位でこれを数えておりまして、この御提案を申し上げている法案の要件でございますが、第二条九項に三つ要件がございます。
まず、個人情報ファイル簿が公表されているという必要がございます。この公表されている個人情報ファイル簿といいますのは合計で七万九千件ございます。内訳は、国の行政機関が六万五千、独立行政法人等が一万五千、約八万でございます。これは平成二十七年三月現在でございます。この公表されている個人情報ファイル簿のうち、さらに、先ほどの二条九項でもう二つ条件がございまして、情報公開請求があれば部分開示をされるもの、それからもう一つは行政運営に支障を生じないもの、この要件がございます。これを満たすかどうかといいますことは、この法案の成立がいただけますれば、施行までの間にそれぞれ所管する行政機関及び独立行政法人が検討することになります。
したがいまして、現段階で提案対象のファイルの数は申し上げるのは困難ではございますが、御指摘のとおり、全てが提案の対象となるということではございません。
○吉良よし子君 約八万件もの情報が今回の対象となると。ただ、その一方、具体的に利活用される情報はどうなるかは、これから請求があるかどうかというところも含めて決まっていくという話であり、現時点では分からないというお話だったかと思うわけです。
一方、今回の法案というのは、先ほど来ありますとおり、産業界からの要望などを受けて立案したとされているわけですが、では、民間事業者等から、行政機関等が保有する個人情報、どの個人情報を利活用したいとニーズが上がっているのか、これから掘り起こすというようなお話も先ほど来あったわけですけど、現時点で上がっているニーズはどのようなものがあるのか、具体的にお答えください。
○政府参考人(上村進君) お答えいたします。
ただいまの答弁とも関係するわけでございますけれども、まず、各行政機関がどの個人情報ファイルを提案の対象とするか、募集の対象とするかというのは分からないわけでございますので、現時点で民間企業の方が、ではこれをというふうに申し上げていただくというのは非常に難しいんだろうと思っております。
それで、るる御答弁申し上げていることの繰り返しになって恐縮でございますが、他方で、一般的な期待というのは非常に高いものがございます。つい最近の四月十九日の経済団体連合会からの提言でもそういう御期待をいただいていると。それから、もうここで繰り返しませんが、参考人質疑で、具体的なファイルの名前も挙げて、こういう提案はあり得るのではないかというふうな御意見も承ったものでございますので、そうした提案がこれから生まれてくるものというふうに考えております。
○吉良よし子君 先週の参考人質疑の中では、確かに医療分野における個人情報については医学研究や医療の現場にとって利活用が必要な分野であるということも言われ、その一方で、やはりセンシティブな内容が含まれているから慎重な取扱いもすべきだし個別法も必要なのではという議論もあったということは私も認識しております。
では、その医療情報以外のニーズは現時点であるのかといえば、先ほど期待は高いという声はあったけれども、具体的には今まだ出ていないという状況だと思うわけです。一体どんな個人情報が利活用され、新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するというのか、これが本当に具体的にイメージしづらい、疑問な状態にあると思うわけです。
大臣に改めて伺いますが、今回の法案で言う新たな産業の創出というのはどういうものだとお考えなんでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) まさに、新たな産業の創出でございますから、行管局長や私が発案できるようなレベルのものであったらそれは新たな産業とは言えないんではないかと思います。
このデータ、ICTの活用ということで、新しい付加価値を創造するとともに、産業構造や社会生活に従来にはなかったようなイノベーションをもたらして社会的な課題の解決にもつながっていく、そういう姿を期待しています。新たな産業の創出ですから、これまでにはなかったような新しい産業が生み出されるということで、この法律案によりまして非識別加工情報の利活用の仕組みを、当然、安全性、安心、安全ということは大前提ですけれども、利活用の仕組みを整備するということで民間の方々の創意工夫が最大限に生かされて、まさに私が今具体的にこういうサービスが、こういう産業がと言えないようなレベルの新しいものが生み出されてくる、これを期待いたしております。
○吉良よし子君 要するに、今現時点では思い描けないような新たな従来になかったものをつくっていく。衆議院の方でも思いもよらなかったイノベーションが起きてくることを期待しているという御答弁もあったかと思いますが、もちろんそうした思いもよらなかったイノベーションが起きて日本経済や国民生活にいい効果を生んでくれることというのは確かにあると思うわけです。ただ、今ある具体的なニーズに基づいて議論されるのではなくて、将来もしかしたら起こるかもしれないからという期待だけで、行政機関が保有している大量の個人情報について、言わば、先ほども創意工夫をしてもらうんだ、民間事業者にという話ありましたけれども、民間事業者に利活用を求めていくような枠組みづくりを今急ぐ必要が本当にあるのかというところが疑問なんですが、利活用を優先するような枠組みづくり、今必要だと思われるのでしょうか。大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(高市早苗君) 利活用をすることによって全くこれまで想像も付かなかったような新たなサービスが展開され、またそれが公益にも資するような姿をつくっていける、こういうことが可能な環境を今整備しておくことが必要だという認識でございます。それを阻害してしまう要因が残っていてはいけないのであって、もちろん国民の皆様の安心、個人、自分の大切なパーソナルデータですから、それに対する安心というものを確保するために匿名化をするわけでございます。そういった安心を確保できるということが大前提で、しかしながらそこから新たなイノベーションが生まれ、そしてまた社会的な課題が解決される、そのための環境を整備するというスタンスでございます。
○吉良よし子君 環境整備ということですけれども、やはり行政機関等が収集して保有する個人情報というのは、先ほど来ありますように、大量に組織的に情報提供者の選択の余地なく集められるような類いのものだと思うわけです。だからこそ、その扱いというのは慎重過ぎるほど慎重でなければならないと考えます。だからこそ、将来起きるかもしれない新産業の創出のためにと自ら率先して利活用に走るということはやめるべきなのではないかと。やっぱり、求められているのは、厳格な個人情報保護の下での社会的な要請に応えた利活用だというわけです。
(略)
○委員長(山本博司君) これより討論に入ります。
(略)
○委員長(山本博司君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(山本博司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
(略)