平成28年4月5日
衆議院総務委員会第11号
平成28年4月19日
衆議院総務委員会第14号
○菅家委員 自由民主党の菅家一郎でございます。(略)
行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案についてであります。
この法律は、行政機関や独立行政法人が保有する個人情報、いわゆるビッグデータ、これを氏名や住所が特定できないように加工した上で民間の企業や研究機関に提供し、付加価値を生み出す新事業、新サービスの創出を強力に推進するため、このように考えるものでありまして、セキュリティーにしっかり対応しながら積極的に取り組むべき、私はこのように考えるわけでありますが、まずは大臣のお考えをお示しいただきたいと思います。
○高市国務大臣 (略)
さて、今御質問いただきました件ですが、今回の改正は、行政機関等が保有する個人情報を効果的に利活用することによって、新たな産業の創出などに資するための仕組みを立案しているところでございますが、やはりこれを運用するに当たりましては、国民の皆様の間に不安が生じないようにセキュリティーを十分に確保しなければなりません。そのためのさまざまな措置を講ずることにしております。
具体的には、行政機関非識別加工情報の作成に当たりまして、行政機関及び行政機関から作成の委託を受けた民間事業者には、行政機関非識別加工情報やその加工の方法などについて、個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、情報漏えいを防止するための安全措置を講ずる義務を課すこととしております。具体的には、情報を取り扱う端末のセキュリティー対策や情報へのアクセス制限、取扱者に対する教育といったことが想定されます。
また、委託先の民間事業者を含め行政機関の職員などが個人の秘密に属する事項が記録された個人情報ファイルを不正に他者に提供した場合には、罰則、二年以下の懲役または百万円以下の罰金を科すこととしています。
さらに、行政機関非識別加工情報の提供を受けた民間事業者は、加工の方法などを入手したり、当該情報を他の情報と照合することが法律上禁じられておりますとともに、個人情報保護委員会による監督が行われることになっており、適正な取り扱いが行われるように措置しています。
このような措置を設けることによりまして、行政機関非識別加工情報が安全に管理されるように担保しております。
○菅家委員 次は、非識別加工情報の仕組みを設けるに当たりまして、法律の目的規定まで見直すということにした理由といいますか、これについてお示しをいただきたいと思います。
○上村政府参考人 お答え申し上げます。
近年の情報通信技術の進展によりまして、いわゆるビッグデータの収集、分析が可能になります中で、特に利用価値が高いとされていますパーソナルデータ、これは個人の行動、状態等に関する情報のことでございますが、この利活用を適正かつ効果的に進めていく、このことは、新たな産業の創出、活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するものでありまして、官民を通じた重要な課題であると認識してございます。
昨年の通常国会におきましては、こうした認識のもと、民間部門の個人情報につきまして、適正かつ効果的な活用のため、個人情報保護法が改正されました。
このことを踏まえまして、本法案におきましては、行政機関等の保有する個人情報につきましても、個人の権利利益の保護に支障を生じないことを前提として、同様の活用の仕組みを設けることとしたものでございます。
御指摘のこの法の目的規定でございますが、このような改正内容を的確に反映した条文としますために、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものである、その旨を規定したところでございますが、こうした個人情報の活用の有用性に配慮しつつも、あくまでも法の目的といたしましては、個人の権利利益の保護を図ることとしているものでございます。
(略)
○逢坂委員 民進党の逢坂誠二でございます。
(略)
それでは、本題に入りたいと思いますが、今回の法改正でありますけれども、私、実は民間の個人情報保護法の改正のときも非常に悩ましく思って、この法律の目的の改正、これを読んでおりました。
法律の目的が今回変わるわけですね。行政の適正かつ円滑な運営を図り、並びに個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とするものとすることというふうに、個人情報の法律の目的規定が変わるわけであります。
私は、この目的規定を読む限りは、情報保護法ではなくて情報利活用法ではないかというふうに思うんですが、この目的規定というのはなぜこういうふうになったのか。個人情報保護法に置かれる目的規定としては、私はいかがなものかというふうに思うんですが、まず、その経過を含めて、事務方で構いませんので、どうぞ、ちょっと教えていただけますか。
○上村政府参考人 お答えいたします。
委員も十分御承知のとおり、いわゆるビッグデータの活用、中でもパーソナルデータをいかに活用していくかということは、民間のみならず、官民を通じた重要な課題であるというふうに認識をしているところでございます。
そういう意味では、昨年に提出されまして成立した個人情報保護法につきましても、今委員が御指摘になりましたような、適正かつ効果的な活用のための改正というものがなされたわけでございます。
これを踏まえまして、官の方におきましても、行政機関の保有する個人情報につきまして、あくまでも個人の権利利益の保護に支障を生じない、そういうことを前提とした上で有効な活用の仕組みを設けるということにして、この改正案をお諮りしているわけでございます。
御指摘の法の目的規定でございますけれども、こうした改正内容、経緯も含めまして、こうした改正内容に的確に対応する条文といたしておりまして、今御指摘をいただきましたような、新たな産業の創出ですとか活力ある経済社会、それから豊かな国民生活の実現、これは民間の方の個人情報保護法の規定にあるものを引いておりまして、そうしたものの有用性に配慮をする、こういうふうなことを書いております。
ただ、書いておりますが、あくまでも最終的な法律の目的は個人の権利利益の保護を図ること、こういうふうにしているということでございまして、適切な内容になっているものと考えております。
○逢坂委員 私は、この保護法は情報の保護だということはわかるんですけれども、それにしても、目的規定、書き過ぎではないかなという気がするんですね。個人情報の有用性に配慮しつつもぐらいならまだわかりますけれども、産業の創出、活力ある経済社会、豊かな国民生活の実現に資する。
利活用促進法、いや、私は、利活用することが必ずしも悪いと言っているのではないんですよ。法律の本来の目的とこの目的規定というのは少しバランスを欠いているような気がするんですけれども、この点、どんな議論があったんですか、ここは。
○上村政府参考人 御指摘のように、条文といたしましては、いろいろな文言が並んでいるわけでございますけれども、新たな産業の創出といいますのは、これはイコール、イノベーションを通じた経済社会の発展ですとか活性化ということでございますので、それを通じて活力ある経済社会を目指すということでございますし、ひいては、いろいろなイノベーションを通じたサービスないし商品の新たなものが生まれてくるということで、国民生活にとりましても、例えば利便性あるいは快適性、安全性というのが向上されてくることになります。
こうしたものを含めまして一体的に表現しているというふうなことで御理解をいただければと思います。
○逢坂委員 私は、ビッグデータを利活用することを必ずしも否定しているわけではないんです。ただ、法に書く目的としてはやはりバランスを逸しているという気がしてしようがないものですから、あえてこういうことを言うわけであります。
少し踏み込み過ぎなのではないかなという気がするんですが、そこで、それでは目的規定はちょっと脇に置くとして、行政が保有する個人情報を民間企業がビジネスに使うということについて、国民の皆様はどう思われるか、これで理解が得られるのか。何か、行政が持っている情報を商売のために使う、本当にいいんですかというような疑問が多分国民の中にはあるような気がするんですけれども、そのあたりはいかがですか。
○上村政府参考人 やや繰り返しの答弁になるかもしれませんけれども、今回の法改正、いわゆるビッグデータの活用によりまして、いろいろ御指摘いただいています新たな産業の創出等々の目的に資するものでありますので、適切な規律のもとに、民間事業者の提案を受けて非識別加工情報を提供する仕組みというふうなことにしているところでございます。
したがいまして、今般の改正の法目的に照らしますと、イノベーションを実現する、こうしたものは、事業活動を担う、そういう意味ではビジネスを行っている民間事業者が利用するものでございますので、そうした意味におきましても、民間事業者の利用であっても非識別加工情報を提供することとしたものでございます。
なお、申し添えますと、この非識別加工情報というのは、もととなった個人情報とは違いまして、誰のものかはわからない、それから、個人の権利利益の侵害のおそれがないように、対象となる個人情報の範囲自体限定をしておりますし、加工基準も、個人情報保護委員会が定めます基準に従った適切なものになるようにこれを審査していく。幾重にも安全管理その他適切性を確保したものというふうにしてございますので、御理解を得られる仕組みであるというふうに考えております。
○逢坂委員 基本的なところ、多分余り確認されていないのかもしれませんけれども、(略)
(略)
それで、大臣、最後なんですけれども、私は、ビッグデータの利活用というのはこれから多分あり得るんだろうというふうに思います。それは民間であれ行政であれ、そういう分野にだんだん目が向いていくんだとは思うんですが、これによってどんな社会になるのか、あるいは不都合といったもの、目的規定は非常に、「豊かな国民生活の実現に資する」というようなこともあるわけですけれども、どんな社会を目指し、かつまた、その不都合というか、そういうものは生じないのかどうか。
この点を最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
○高市国務大臣 昨年の個人情報保護法改正とともに、今回の法改正をお認めいただきましたら、これで、民間部門と国の行政部門を通じて、ビッグデータとしてのパーソナルデータの利活用の法的基盤は整うことになります。
どのような世界を目指していくのかということなんですが、人、物、金と並んで、データというのは今後の新たな資源となるものでございます。データの活用、すなわちICTの利活用というのが新たな付加価値を創造するということとともに、産業構造ですとか私たちの社会生活にイノベーションをもたらして、社会的な課題の解決にもつながっていくものだと考えております。
国の行政機関におけるパーソナルデータの新たな利活用の仕組みについても、このような文脈で捉えるということが重要だと考えていますので、官民の新たな仕組みが今後適切に運用されていくことで、民間の創意工夫というものが最大限に生かされる、民間から提案を受けるわけでございますから、これによって、ICT利活用の深化で成長していく社会につなげてまいりたい、こう考えております。
○逢坂委員 基本的には、ビッグデータの活用というのはこれから進んでいくんだろうとは思うんですが、その負の側面といったことも、私は、場合によっては多分あるんだろうと思っています。
それから、先ほど戸籍の話をあえて、究極的な一つの事例かもしれませんが、出させていただきましたけれども、そういうことの妥当性も含めて、丁寧な取り組みが私は必要だと思っておりますので、以上申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございます。
(略)
○足立委員 おおさか維新の会の足立康史でございます。
(略)
この法案、大変重要な法案です。ビッグデータを扱うものであります。簡潔で結構ですが、事務方でも結構です。この法案、私はいろいろな目的があると思いますが、基本的にはビッグデータをもっと活用していこう、そのインフラを整えていこうということですが、こういう経済も成長していかなあかん中で、やはりこのビッグデータに係るこういう規定の整備は急いで、早くこれを使いたい民間の人はいっぱいいるわけです。急いで、経済的、社会的なインフラとして早くこれを動かしていくべきだ、こう思いますが、この法案の目的、簡潔で結構ですから、紹介してください。
○上村政府参考人 お答えいたします。
もともとこの法案は、何度も御説明しますように、新たな産業の創出等に寄与するということを目的としているものでございます。
その意味するところは、いろいろなイノベーションということでございまして、経済社会の活性化、発展のためには、各国間の競争とかいろいろなものもございます。そういう意味でスピード感が必要であるということは、まさに委員がおっしゃるとおりであろうと私どもも認識しております。
○足立委員 この法案で、私は、二つどうしても確認しておきたい。
(略)
平成28年4月19日
衆議院総務委員会第14号(参考人質疑)
○藤原参考人 中央大学の藤原でございます。
本日は、参考人として意見を述べる機会を与えていただきましたことを大変光栄に存じております。早速、始めさせていただきたいと存じます。
お手元に、A4一枚でございますけれども、レジュメをお配りしておりますので、その順番でお話しさせていただきたいと思います。
まず最初に、「わが国における公的部門の立法化の歴史 はじめに代えて」というところでございます。
我が国では、周知のように、一九八〇年のOECD理事会勧告を受けまして個人情報保護に関する法律の立法化の作業が進んだわけでございますけれども、まずは公的部門からということになりまして、一九八八年に行政機関個人情報保護法が成立いたしました。行政機関は、公権力を行使して行政情報を収集し得る立場にあり、重要な行政情報を大量に保有しております。したがって、民間以上に厳格な個人情報保護法制がとられなければなりません。行政に対する信頼確保という観点から、まず、行政機関の保有する個人情報保護についての一般法が先行したわけでございます。
その後、基本法的性格を持つとともに民間部門をも規律いたします二〇〇三年の個人情報保護法制定のときに、行政機関個人情報保護法等もあわせて改正されました。この二〇〇三年に全部改正された行政機関個人情報保護法は、電算処理に係る個人情報だけではなく、行政文書に記録された全ての個人情報を規律の対象とするとともに、本人情報について、開示請求権に加えて、新たに訂正請求権と利用停止請求権を認めております。加えて、第三者機関としての情報公開・個人情報保護審査会によるチェックの仕組みが導入されております。この審査会による権利救済は高く評価されていいものであると思っております。
このように、一九八八年の法律を経て、二〇〇三年の法律は、公的部門における個人情報保護法制について、国民の権利保護に心を砕いていたわけです。これを敷衍いたしますと、営業の自由との利益衡量を必要とする個人情報保護法と比較しまして、公的部門では厳格な個人情報保護に係る規律を定めております。
まず、個人識別性につきまして、個人情報保護法、つまり基本法制の方では、容易性というものを要件としております。これは、民間部門に適用されるために、民間の営業の自由への配慮から個人情報をある程度限定する、民間の負担や利用を考慮するということを意味するものであります。
これに対して、公的部門におきましては、より厳格な個人情報保護が必要であると考えて、容易性を要件とせずに、保護される個人情報の範囲を広くしております。また、オプトアウト手続をも認めておりませんし、罰則も間接罰ではなく直罰規定が多いわけです。
救済制度につきましても、先ほど言及しましたように、公的部門には、行政不服審査法に基づく不服申し立て制度があり、第三者機関であります情報公開・個人情報保護審査会に諮問する仕組みがありますが、民間についてはこのような仕組みはないわけでございます。
このような法制のもと、利活用という今日的課題は、むしろオープンデータという形で情報公開の場面で議論されていたと思っております。公的分野では、利活用ということはさほど問題になっていたわけではございません。しかしながら、近時の情報通信技術の驚異的な進展により、個人情報の収集、利用の可能性が著しく拡大してきたという事実がございまして、そのため、利活用の要請と保護の調整、この両者の調整をいま一度考えることが求められてまいりました。それが、昨年の個人情報保護法の改正であり、それを受けたこのたびの行政機関個人情報保護法等の改正であると考えております。
そこで、このたびの改正でございますけれども、今申し上げましたような公的部門の特質を踏まえて、保護と利活用のバランスをとることに腐心していると受けとめております。すなわち、国民が個人情報を権力的に収集されたり、給付と引きかえに提供せざるを得ないといった公的部門の特質を考慮しつつ、他方で、個人情報保護法の狙うところ、つまり、情報通信技術社会の中でのパーソナルデータの利活用ができる制度を構築したわけです。個人情報保護の要請を前提としつつ、個人情報保護法制としての利活用を、公的部門でも一定程度果たせないかという課題を解決する手法を模索したと言えるものであると思います。
以下、最も特徴的な点のみ指摘しておきたいと思います。
第一は、定義規定でございます。個人識別符号、要配慮個人情報につきましては、これは基本法であります個人情報保護法の定義をそのまま導入しております。これは公的分野でございます。
(略)
次に、行政機関非識別加工情報、いわば行政機関における匿名加工情報の仕組みについて簡単に触れておきたいと思います。ここでは、保護と利用のバランスを保つという観点からの工夫がなされております。
第一に、非識別加工情報の対象となる個人情報について三つの要件、個人情報ファイル簿が公表されていること、情報公開法において情報公開請求を受けたら部分開示はできるものであること、行政運営に支障が生じないことという要件がございまして、権利保護及び公益の観点からの一定の枠が設定されております。この要件を満たしたものについて行政機関非識別加工情報が作成されるわけです。
第二に、この行政機関非識別加工情報の提供につきましては、民間事業者の提案を受けて、行政機関等が審査をして、提案者との間で利用契約を締結するという仕組みになっております。つまり、民間が自主的に応募、関与する。そして、審査基準というものを立てて、不適切な者、不適切な提案は排除できるようにする。逆に、審査基準に適合すれば、行政の側で契約をするのが当然であろうという仕組みになっていると解せます。基準を満たしているのならば、それについて契約を締結しないという裁量は恐らく認められてはいないわけです。
また、行政機関非識別加工情報の適正な取り扱いを確保するために、非識別加工情報に関する事項は個人情報ファイル簿に記載、公表され、安全管理措置も定められています。透明性を図っているわけです。
第三に、このような匿名になるように加工された情報は、公的部門、民間部門を通じて個人情報保護委員会が一元的に所管するという仕組みになっております。詳細な手続等に関する規定は個人情報保護委員会規則で定めることとなります。改正個人情報保護法附則の第十二条一項の関係でございますが、加工の基準を含め、行政機関等における匿名加工された情報についても、その取り扱いは個人情報保護委員会が所管することとなっております。
第三に、以上の仕組みをどのように評価するかということでございますが、保護と利用というバランスの観点からは、スモールスタートということで妥当なものではないかと考えております。もちろん、民間の事業者の方々に対する制度の丁寧な説明が必要であるのは言うまでもありません。
したがって、全体として、この法案は妥当なものであろうということでございます。
さて、三番目の項目として、我が国の個人情報保護法制の改正がEU等との関係で語られることもありますので、比較法的な観点も一言だけ述べておきたいと存じます。
(略)
個人的な見解でございますけれども、ここは医療情報などに大きな貢献をするのではないかとも思われます。したがって、着実に施策を講ずることが重要だと考えております。
時間がちょうど参りましたので、私のお話はこれで終了させていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○遠山委員長 次に、鈴木参考人、お願いいたします。
○鈴木参考人 新潟大学から参りました鈴木正朝と申します。
このたびは、参考人としての意見陳述の機会をいただきまして、まことにありがとうございました。
それでは、早速、お手元の資料に従いまして私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。
本日は、法案についてと、午前中の御質問にもありましたが二千個問題について、この二点について意見を申し述べたいと思っております。
まず、法案についてでありますが、本法案の趣旨については、私は賛成であります。
第一に、オープンデータの利活用に向けて、先ほども藤原先生からございましたが、スモールスタートだということではありますが、統計データ主体のものからいわゆる非識別加工情報に拡大したということは、オープンデータの可能性を考えていくと第一歩として評価できるだろう。今後の検証を踏まえて、次期改正によってさらに、例えば、オープンデータ推進法というような形で拡大されていくことを期待したいと思っております。
しかし、一点、懸念が残っております。
趣旨には賛成ですが、テクニカルな話になるかもしれませんが、本法案の根幹となる非識別加工情報の条文の一部に問題が残っていると言わざるを得ません。本来実現すべき趣旨に沿った条文の文言に改められるべきだと思っております。
るる順に説明してまいります。
(略)
○遠山委員長 次に、坂本参考人、お願いいたします。
○坂本参考人 日弁連情報問題対策委員会の委員長をしております坂本と申します。
本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
(略)
○遠山委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○遠山委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子めぐみ君。
○金子(め)委員 自由民主党の金子めぐみでございます。
本日は、限られた時間ではございますが、参考人質疑の時間をお与えいただき、まことにありがとうございます。
まず冒頭、さきの震災で犠牲になられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げたいと思います。
本日の参考人の皆様におかれましては、個人情報の適正な保護と、そしてパーソナルデータの利活用という、大変難しい、バランスを求められる議論をこれまで皆さんが牽引してくださった、そうした御尽力にまずもって心から敬意を表する次第でございます。
御承知のとおり、個人情報保護法、この改正に関しましては、昨年から順次改正がされてきているわけでありますが、今般は、行政機関、独立行政法人部門での改正となります。
この背景には、情報通信技術の発展によりまして、ビッグデータの収集そして分析が可能となり、そして官民の持つパーソナルデータの利活用が産業やサービスの創出また拡大に大きく寄与するとの期待がございます。
これらの法改正は、いわば次世代の生活を支えるための地盤づくりにも当たるということで、私は大変意義ある改正だと受けとめている一人であります。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、二〇二〇年には日本の人口は一億二千四百十万人、二〇三〇年には一億一千六百六十二万人となり、さらに、二〇五五年には九千万人前後にまで減少することが予想されています。
私の地元新潟から、本日、新潟大学の鈴木正朝教授も御臨席いただいておりますが、二〇五五年、今の大学生が六十五歳になるころには約五〇%の生産年齢人口で約五〇%の高齢者及び子供を見なければならない、つまり一対一の関係になるのだというふうにおっしゃられていたと思います。
これを緩和するには、もはや経済成長しかないわけでございまして、そこで、このビッグデータの利活用が我が国の次世代を支える重要な産業振興政策と言えます。
しかし、同時に、個人情報の保護は細心の注意を払って進められるべきでありまして、先ほど参考人の御発言にもありますとおり、特に公的部門の個人情報は、民間部門のものよりもさらに厳格な規定や取扱規則の徹底が必要となるわけであります。
今回、個人情報の定義、そして匿名加工情報のあり方についても改正されるわけでありますが、改正法施行後しっかりと個人情報の管理監督がなされるように、本日は皆様に確認をさせていただきたいというふうに思います。
それでは、まず、今回の改正案に関しまして十六回の議論を重ねてこられた行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会、その座長をお務めいただいたそのお立場から、先ほど妥当なスタートだというふうに表現をされておられましたが、藤原参考人に、本改正案の趣旨及び意義について、現法の持っている課題も含め、あるいは国際競争力の観点も交えて、いま一度御説明をいただきたいと思います。
○藤原参考人 どうも御質問ありがとうございました。藤原でございます。
今の金子先生の御質問は、現行法の意義及び限界も踏まえて、国際競争力あるいは我が国の置かれた状況をも鑑みて、今回の改正法の趣旨と意義についてもう一度整理しろという御下問だと思います。
お二人の参考人からもいろいろ御意見ございましたし、公的部門についてはレベルが高くなければならないということは当然であろうかと思いますけれども、私が申し上げましたように、それでは、諸外国を見て、全く各種のデータを利用していないかということになりますと、恐らくそうではありませんでして、さまざまな形で加工を考えたらできる、あるいは統計、それからさらにもう一歩踏み込んでできるということは考えているんだと思います。
その場合、今度の法案は、意義と趣旨でございますけれども、先ほどスモールスタートと申し上げましたけれども、権利利益の保護、確かに、公的部門ですから、レベルを高くして個人の権利利益侵害がないようにしておかなければならない。しかし、その前提のもとでも、少し条件を整えれば、うまく工夫をすれば、利用できるという枠組みがつくれるんじゃないか、そしてその枠組みを今度、今後いろいろな民間の事業者等に使っていただいて、育てていけばいいんじゃないか、そういう趣旨のものでございます。
以上でございます。
○金子(め)委員 ありがとうございました。
(略)
先ほどお話もありました観光業そして製造業の振興は、まさに地方創生の鍵であろうというふうに考えております。
私の地元のことで大変恐縮でありますが、私の選挙区であります新潟県三条市は、物づくりの町でありまして、中小企業がたくさんございます。中でも、金物、鍛冶が盛んでありまして、多くのすばらしい製品がありますが、これらをさらに国内外へ発信してまいりたいと考えております。
物づくりの付加価値をどう高めていったらいいのか。そういうときに、やはり新潟の強みであるとか魅力をしっかりと分析し、そしてまた効果的に国内外の観光客の皆さんにPRしていくためには、官民力を合わせて、ビッグデータを大いに活用していきたいというふうに考えております。
現在、内閣府の方でRESASという地域経済分析システムがありまして、さまざまな統計データ等が使われておりますが、例えばこういったサービスのほかにも、パーソナルデータをもとにビッグデータ分析を加えていけば、さらに地方創生に効果が得られるものと私は期待しております。
時間がございませんので、最後に別の視点から、藤原参考人、鈴木参考人両氏にお聞きして、終わりたいと思います。
世界に先駆けて超少子高齢化を迎えた我が国にとりましては、経済成長が急務であります。今回の法改正は、ビッグデータの利活用という重要な産業振興策のための地盤づくりというふうに位置づけて、私は見ております。
無論、プライバシーの問題は守られるべきであります。そのために個人情報保護の御質問をこれまでさせていただいてまいりましたが、欧米諸国においては、個人のプライバシーとビッグデータの利活用のバランスをどのようにとっている、どのような議論がなされているのか、最後にお聞きして、終わりたいと思います。
○遠山委員長 それでは、まず藤原参考人、簡潔にお願いいたします。
○藤原参考人 欧米諸国と申しましても、先ほど申し上げましたように、アメリカは、例えば、石油と一緒で、いわゆるジャンクデータと呼ばれるような、一見非常に価値がないと思われているようなデータからすばらしい資産が出るかもしれないという考え方でございます。ですから、我が国で言う目的拘束的な考え方は緩いと思います。
しかしながら、EUの諸国は、どちらかというと、ビッグデータであっても当初の目的との関係を問題にしなければならないという議論がございまして、最初のデータと次に使うときのデータの目的の関係について議論があるところでございます。
○遠山委員長 続いて、鈴木参考人、簡潔にお願いいたします。
○鈴木参考人 ヨーロッパの方では新たな法制が立ち上がりまして、まさに三条市がEU向けにゾーリンゲンと対抗してさまざまな物品を販売しようとすると、EUの消費者相手にビジネスをしますので、EU法の適用を受けます。そうなりますと、二千万ユーロ以上の罰金が科される、前年度売り上げの四、五%の罰金が科されるというような、かなり強硬な規制が入ってまいります。
また、観光客を迎え入れようということで、おもてなしアプリなどをつくってさまざまな対応をしますと、やはり海外の法制度がかかってまいります。
日本は法規制が強くてビッグデータができないというのは全くの誤解でありまして、米国法に比べてもコンプライアンスのコストは極めて低い。ですから、対外的に国際的な法制に合致させたビジネスモデルをつくっていこうとすると、規制緩和一辺倒の発想の中では必ずやビジネスがとまってしまう。
だから、欧州、米国の法制度を踏まえた日本の法制度をつくっていく必要があるだろうという意味では、越境データ問題を含めて、国際的な調和を目指した立法の一歩を踏み出すべきだろうというふうに思っております。
○金子(め)委員 ありがとうございました。
このたびの法改正が新たな経済成長の一助となることを祈念しまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
(略)
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
きょうは、三人の参考人の先生方から大変貴重な御意見をいただき、拝聴させていただきました。本当にありがとうございます。
最初に、三人の参考人の皆さんにお尋ねします。
民間と同様に匿名加工情報の仕組みを導入することについて、いかがお考えでしょうか。個人が特定されないように加工しているとはいえ、匿名加工情報を行政が民間事業者へ提供することは、憲法十三条のプライバシー権とのかかわりから見て、これは問題はないのでしょうか。御所見を伺いたいと思います。
○藤原参考人 お答えいたします。
匿名加工情報を公的部門に導入することについては、さまざまな考え方があろうかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、オープンデータという考え方の入り口を公的部門でも用意しておくという意味で、スモールスタートということにしておりますので、それは一つ理解できるのではないかと私は考えております。
○鈴木参考人 原則として、公的部門が重要な情報を扱っているというのはそのとおりですが、この形式論だけで議論していますと非常に問題であります。
慶応大学は民間であります、早稲田も。ところが、東京大学になると公的部門になります。日本の技術開発はやはり大学部門が、理研や産総研やNICTもありますけれども、そういった研究機関が担っている。そこの何立かによって変わることはないはずであります。
ですから、両方において、匿名加工をするという加工基準は、法のたてつけ上、個人情報にならないようにすることを義務づけているわけですから、そこで切り分けた段階でプライバシーのインパクトは極めて低下しておりますので、そのようにして使うということに関しては憲法十三条の問題は出てこないと考えております。
○坂本参考人 冒頭の意見陳述の中でも述べましたけれども、行政機関が個人情報を保有しているのは、基本的には所掌事務を法令に基づき遂行するために持っているのが第一義的なので、基本的には、民間がビッグデータとして活用して経済的利益を追求する、その同じような形で利益追求を図っていくということになると、これは目的外利用だし、プライバシー侵害のおそれが生じるというふうに考えます。
だから、そういう意味で、民間部門のビッグデータを活用する枠組みができたので行政部門の情報もビッグデータとして活用しようではないかという方向で制度をつくっていくというのは、違和感があるというふうに考えております。
ただし、他方で、情報公開法制はありまして、国民の知る権利に応えるために、行政機関が持っている情報、これは個人情報に限らずあらゆる行政情報ですけれども、基本的には、国民の共有財産として、開かれた政府をつくるためにあるいは国民の知る権利を守るためにデータをオープン化されていくべきだ、こういう議論はあり得ますので、そういう観点から、いかに開かれた政府をつくるのか、こういう観点から議論する中で、では政府が持っているあらゆる情報の中の個人情報についてどう取り扱うのか。そういう知る権利、表現の自由との関連で、行政機関の持っている個人情報についても議論が進められるべきだというふうに考えます。
○田村(貴)委員 ありがとうございます。
(略)
○足立委員 おおさか維新の会の足立康史でございます。
午前中に引き続きまして、質問に立たせていただきます。参考人の皆様、よろしくお願い申し上げます。
難しいですね。私、まだ国会四年目ですが、いろいろな委員会を経験させていただいていまして、初めて難しい、いや、これまでも難しい点はいろいろありますけれども、本当に難しいなと思います。
きょう午前中も、地方公共団体の話とか、それから医療の話、政府に対して質問させていただきましたが、あさってまた法案審議が、我々、国会が政府に対してまた質問する機会がありますので、きょうはできるだけ大枠の議論をぜひ教えていただきたいと思います。
きょう、いろいろな委員の方との質疑も拝聴していましたが、もう一つわからないんですね。きょうは三先生においでいただいています。それぞれの先生方にこういうことを伺っていいですか。
今、政府は、総務省あるいは内閣府、一生懸命やっています。大陸ヨーロッパあるいは英米、いろいろな取り組みがあります。当然、こういうテーマですから、グローバルに競争もしているわけですね。日本はそもそもおくれているのか、進んでいるのか。おくれているのであれば、先進事例がいっぱいあるわけですから、教訓をいっぱい引き出して、いいものをつくればいいわけですよね。だから、おくれているのか、進んでいるのか。
あるいは、今回のこの法案、これは、私はこういう個人情報あるいはビッグデータの話は急ぐべきだと思っています、経済的にも社会的にもこれはニーズがあるので急ぐべきだと思っていますが、拙速だと評価されているのか、もっと急げということなのか。
あるいは、保護と利用を考えたときに、保護が弱いと考えているのか、保護し過ぎだとお考えなのか。
その辺、いろいろ申し上げましたが、ちょっと大枠で、この法案をどう評価しているのか、あるいは日本政府をどう評価しているのか、感覚的なものでも構いませんので、それぞれ御答弁いただければと思います。
○藤原参考人 どうもありがとうございます。お答えいたします。
まず、個人情報保護法制自体が進んでいるのか、おくれているのかということでいえば、言葉にもよりますけれども、制度ができたのは、諸外国では早いところは一九七〇年代でございますから、二十年から二十五年制度自体がスタートするのはおくれた。もちろん、我が国も公的部門はございましたけれども、本格的にできましたのは二〇〇三年ですから、その意味では少しおくれている。
ただ、先生のおっしゃる今日の問題についてどうかといえば、これは世界的にまだ回答がないと言った方がいいと思います。EUの規則の制定過程の中でも、ビッグデータを踏まえて利用目的の拘束をどうするかというのは争われたところでございますし、アメリカはやはり利用を重視すべきだと言っておりますし、今日の議論の論点については、どこが進んでいるという話ではないと私は考えております。
公的部門と私的部門につきましては、やはりこれはどこの国でも公的部門というのは権利利益の保護が最初に来る議論でございます。
○鈴木参考人 おくれているかどうかといいますと、まさにビッグデータ等の対応にはおくれていると言わざるを得ない。したがって、ただいま各省庁の方でその対応をいかにすべきかということの着手に入った。しかし、グランドデザインができていない。
やはり法制度なので、飛行機が飛びながら修正していくというところがありますから、過去の経緯を踏まえて少しずつというのはわかりますが、しかし、人口減少で、後期高齢者に団塊の世代が入っていくオリンピック後になりますと、社会保障制度初めてほころびが一気に顕在化してくるのは周知のとおりであります。
したがいまして、実は納期のある話であります。その納期から逆算しますと、まさに二千個問題を何とかしなきゃというだけではだめで、今後の構想を考えていかなきゃならないと思います。
そういう意味で、諸外国を見ていきますと、いろいろ、プロファイリング規制とか、まさに処理情報を中心としたデジタル化、ネットワーク化された社会の中で出てくる新たな強い弊害に対して対処している。ところが、日本法は、情報公開法もそうなんですけれども、紙の、氏名の黒塗りの世界であります。これを引きずっているというところで、今ここで着目していただきたいのは、散在情報と処理情報の違いであります。
処理情報というのは、データベース等の中に入っている個人情報であります。まさに事前規制としての行政規制が担うべきは、実は、この処理情報に注目していくべきです。これが広く大きく国民一人一人にインパクトを与えるわけですから、この処理情報に着目した法制度を一つ考える。
散在情報、データベースから外に漏れているものにももちろん、医療カルテ一枚一枚のようにばらばらになった情報にも重要なものがありますが、そういったものはまた別途、二次的に考える。
まずはやらなければならないところを一つ注力するという発想に欠けております。まさにオープンデータもしかり、個人情報もしかり、情報公開もしかりという、実は、ベクトルの異なるものを一つの法制度の中に閉じ込めて、過去の経緯を引きずり過ぎている面がある。このあたりの基本法的な枠組みを、やはり頭の体操を早急に始めなければならない。
これは、既存の官庁だけに閉じこもっていて、二年交代の仕組みの中では、着任して逐条解説を見ながらキャッチアップする中では決して得られないので、まさに政治主導していただきたいところだろうと思います。ぜひそういった議論を今後できればなと思っております。
○坂本参考人 日本の個人情報保護法制は、先ほど藤原先生の方からも御発言がありましたけれども、世界的にはおくれたところから出発して、主にEUなんかの背中を追いかけてやってきたのです。
世界的にビッグデータの時代がやってきまして、ヨーロッパも含めて、一体このビッグデータの時代に個人情報保護法制はどうあるべきかというのはすごく難しくて、こんなふうに取りまとめようとかいいながら、なかなかそれでまとまらずに迷っているという状況にあると思います。
そういう状況で、ビッグデータのところだけ、日本では、では行政機関のパーソナルデータを非識別加工情報にする仕組みをつくるぞといって、いきなり世界最先端のことを、よそがやっていないことの仕組みをつくろうとしているので、しかも今国会に出さないといけないという締め切りを切ってやっているのでどたばたしている、何か非常に情報公開法制とも私の中では整合がとれていないんじゃないかというような案が出てくる、こういうことだと思います。
おくれたところを取り戻そうというんだったら、まさに第三者機関のところは、世界各国、これは第三者機関が一元的に監督するんだ、これはもう常識になっていますので、日本でもそこに追いつくのは非常に容易なはずなので、おくれているところから追いつくんだったら、まず、みんながやっていて、誰がやっても定評のある第三者機関の権限のところは世界に追いついて、ビッグデータに対してどう対応するかというのは、試行錯誤もしながらよく検討する必要があろうというふうに思います。
○足立委員 ありがとうございます。大きな枠組みでのお話がよくわかりました。
(略)
○吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。
(略)
次に、藤原参考人にお聞きしたいと思います。
先ほど、最初の意見陳述の際にも、スモールスタートだということでお話がありました。スモールスタートということなんですけれども、いずれこれは広がっていくということがあるからこそスモールスタートなんだというふうに表現されたんだろうというふうに、私は勝手に解釈をしているわけです。
そうなりますと、今後、仮にこの法律が成立するとスモールスタートを切ることになりますけれども、それ以降、どういうふうに将来的に展開をされていくと考えておられるのか。この点についてお聞きしたいと思います。
○藤原参考人 スモールスタートということで受け皿をつくったわけですけれども、まさしくそれがどうなるかは、これは民の側からの提案ということになりますので、国民から納得の得られる適切なものができて、そして運用がうまくいけば成長していくでしょうけれども、そうでなければ、例えば今後見直ししろとかいろいろな議論も出てくるし、それは両方あり得るのではないかと私は考えております。
(略)
平成28年4月21日
衆議院総務委員会第15号
○武正委員 おはようございます。民進党の武正公一でございます。
(略)
そこで、改めて、ビッグデータ、パーソナルデータ利用の目的について、大臣に御所見を伺いたいと思います。
○高市国務大臣 ビッグデータとしてのパーソナルデータの利用目的ということでございます。
やはり近年の情報通信技術の進展によりまして、いわゆるビッグデータの収集と分析が可能となる中で、特に利用価値が高いとされるパーソナルデータを、適正かつ効果的にその利活用を進めていくということは、新たな産業の創出や活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するものであるということで、官民を通じた重要な課題でございます。
このような認識がありましたものですから、昨年の通常国会において、民間部門における個人情報保護法が改正され、これを踏まえまして、行政機関等の保有する個人情報についても、個人の権利利益の保護に支障を生じないということを前提として、有用な利活用の仕組みを設けることにしたわけでございます。
○武正委員 ビッグデータ、パーソナルデータ利用について、成長戦略ということで、今回も法案の中に、経済成長に資するというような形で目的に明記がされているわけであります。それが、ビッグデータ、パーソナルデータの活用と、先ほど言った個人情報の保護、鈴木参考人の言葉をかりれば、情報公開と、個人情報保護と、ビッグデータ、パーソナルデータの活用、この三つのバランスをとらなければならないんだということがやはり指摘をされております。
そういった意味では、今国会では、例えばTPPの審議でのあのノリ弁当の情報しか政府から開示されない点、あるいは、先ほど防衛大臣政務官が来られておりましたが、我々外務委員会でもそうですが、外交交渉の機微のやりとりは公表できません、こういう大臣の答弁がありながら、防衛大臣政務官は、特定秘密保護法違反の疑いのある講演をやってしまう。
こういったところが、やはり情報公開という前提があっての、これはなかなか難しいです、情報公開と個人情報保護の兼ね合いというのは。ただ、先ほど、参考人が言った三位一体の取り組みが必要なんだということで、政府には特に、情報開示について、説明責任について取り組みを求めるところであります。
あわせて、これはロバート・ライシュ米元労働長官が指摘をしておりますが、今アメリカでは、四百人の資産家が一億五千万人の米国民の資産を上回る資産を保有ということで、やはり資産、所得の格差拡大が著しいということでございます。
これをなした背景は、金融工学の著しい発展と金融政策の規制緩和、これがあったわけでありまして、今日本もそれを追随しているのではないのか。アベノミクス三本の矢といいながら、一本、金融政策のみ。しかも今回はマイナス金利という、私からすれば、奥の手ではなく禁じ手であるというふうに感じるわけでございます。
こういった中で、成長戦略だ、経済成長だ、そのためのビッグデータ、パーソナルデータだといったところに余りにも過度に偏り過ぎることは、バランスを欠くのではないかというふうに考えるわけでございます。
この点について、大臣、御所見を伺えればと思います。
○高市国務大臣 先ほども答弁申し上げましたけれども、情報通信技術が発展する中で、世界各国、新しいサービスを打ち出していく、そしてまた、国民の皆様の豊かな生活、こういったものを実現していくために、どうやってビッグデータを活用し、また新たな産業を生み出していくか、ここで大変熾烈な競争が繰り広げられ、また知恵を絞っている状況だと思います。
あくまでも、個人の権利利益の保護、これは大変大切なものですから、本法案の重要な目的でございますけれども、やはり民間の情報とともに行政機関が保有するものも、個人が特定できない形で、一つのビッグデータとして活用も進めていただき、そしてまた新たなイノベーションを生み出していく、こういった取り組みというのは今の日本にとって大変重要なことだと私は考えております。
○武正委員 鈴木参考人が指摘した、個人情報保護と、ビッグデータ、パーソナルデータの利活用と、もう一つ、情報公開あるいは政府のそうした説明責任、やはりこれが三位一体なんだということについては、大臣としての御所見はいかがでしょうか。
○高市国務大臣 さまざまな法制がございます。個人情報保護法制があり、また情報公開法制もあり。行政機関が保有する情報に関して、これらの法制というのは、個人の権利利益の保護であり、国民への説明責任であり、行政の適正な運営などの目的のためにそれぞれ制定されて、これまで必要な改正ですとか見直しが行われてきております。我が国の法的基盤として機能してきていると思います。
法律は本当にいろいろありますけれども、行政機関個人情報保護法、独立行政法人個人情報保護法、これは改正案として今回お示しをしておりますが、このほかにも、行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法、また公文書管理法といったものもございます。
しかしながら、それぞれその時期時期に応じて、時代が動く、また技術が変わっていくという中で、必要な改正や見直しはこれからも行われていくものだと思っております。
そして、やはりICTそれからデータの利活用というのは、私はグローバルな競争を勝ち抜く鍵であると思いますし、その戦略的な利活用をとにかく図っていくということで、政府で、IT国家創造宣言を踏まえて、オープンデータの推進、それから個人情報に係る方策というのを体系的に整合性を持って推進してきている、そのようなつもりでおります。
ぜひとも御理解をいただきまして、やはり国民の権利利益というのは絶対保護しなきゃいけない、しかしながら、日本の成長の大きな鍵となる分野についてはしっかりと育てていかなきゃいけない、その両立に向けてしっかり頑張っていくということで御理解を賜れたらと思います。
○武正委員 最後に、厚生労働政務官もお見えでございます。次世代医療ICT基盤協議会で今進めておられます二〇二〇年に向けた医療情報のデジタルデータ化などについてお触れをいただければと思います。
(略)
○遠山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
(略)
○遠山委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。田村貴昭君。
○田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、行政機関等個人情報保護法等の改正案について、反対討論を行います。
反対理由の第一は、法の目的の中に、新たな産業の創出並びに活力ある社会の実現に資することを書き込むなど、国の行政機関等が保有する個人情報の保護が後退させられかねません。
国の行政機関等には、その機関の性格や業務上、多くの個人情報が集まり、保有、管理されています。だからこそ、行政機関には、個人の権利利益を保護するための適正な取り扱い、その保護を厳格に履行する責任と義務が課せられています。
民間企業の提案に応えて、個人情報を利活用していこうとするならば、行政機関等がみずから、個人情報の保護規制を緩める方向に走らざるを得ません。
また、どんな個人情報を何のために利活用するかについても、説得力ある具体例は示されませんでした。本改正案の必要性の根本にかかわる問題です。
第二は、非識別加工情報についてです。
そもそも、非識別加工情報の作成と提供については、匿名加工が施されたとしても、個人情報が本人が想定しない民間事業者に提供されるという問題があります。
識別行為の禁止が定められていますが、これは再識別化のリスクを前提にしているものです。万が一、識別行為が行われ、個人情報の不適切な流出、漏えいが発生した場合、情報を提供した側の行政機関等がどのような権限を行使できるのか、漏えいした情報をどのように保護していくかなどの点は極めて曖昧です。
匿名加工情報は、原則的に、行政機関等が作成するとされています。しかし、情報の匿名加工を外部の民間事業者に委託することも排除されていません。不適切な個人情報の流出、漏えいに対する懸念は拭い切れません。
さらに、個人情報の利活用を提案することができる民間事業者の欠格事由の規定についても極めて不十分であります。
最後に、個人情報保護委員会の役割は非常に重要です。しかし、個人情報保護委員会が、個人情報の保護を貫きながら、官民の膨大な量の個人情報を適正に処理していくにふさわしい体制を確保する担保は措置されていません。
以上を述べて、討論とします。(拍手)
○遠山委員長 次に、吉川元君。
○吉川(元)委員 社会民主党・市民連合を代表し、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の一部改正案、独立行政法人の保有する個人情報の保護に関する法律の一部改正案に反対の立場から討論を行います。
反対の第一の理由は、民間事業者からの具体的な要望、すなわち立法事実が希薄なまま、法案の目的に、新たな産業の創出や活力ある経済社会の実現に向けて、行政機関等が保有する個人情報を利活用することが盛り込まれた点です。
民間部門、行政機関問わず、その個人情報の利活用自体を否定するものではありません。しかし、昨年の改正個人情報保護法と今回の法改正、余りにも利活用に傾斜している懸念を払拭できません。
反対の第二は、民間の個人情報は、オプトアウト制度を初め、他者への提供を前提とする場合には本人の関与を必要としていますが、行政機関等の保有する個人情報は国が半ば強制的に情報を取得することを前提にしており、この手続がありません。幾ら個人が特定できないように情報を加工したとしても、商業目的に利用する場合には、本人の関与を必要とする何らかの仕組みが不可欠と考えますが、改正案で欠落していることは問題と考えます。
また、参考人からも指摘されたように、そもそも非識別加工情報と匿名加工情報は対象とする事象の範囲が異なるにもかかわらず、非識別加工情報が民間事業者の手に移った段階で匿名加工情報になるという政府の説明にも無理があります。
反対の最後の理由は、今回の法改正をもってしても、EUとの十分性が確保できるというふうな確信に至らなかった点です。
個人情報を利活用しようとするのであれば、まず、個人情報保護においてグローバルスタンダードを達成すべきです。
以上の理由から、本改正案に反対することとし、討論といたします。
○遠山委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○遠山委員長 これより採決に入ります。
行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
○遠山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
平成28年4月26日
衆議院総務委員会第16号
平成28年5月12日
参議院総務委員会第13号
○参考人(宇賀克也君) 東京大学の宇賀と申します。
本日は、参考人として意見を述べる機会を与えていただきましたことに厚く御礼申し上げます。
この委員会で御審議中の法案は、一昨年六月二十四日にIT総合戦略本部が決定いたしましたパーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱及び昨年九月九日に公布されました個人情報保護法及びマイナンバー法の一部改正法附則十二条一項が政府に求めました課題に対応すべく真摯に検討された結果まとめられたものと評価しております。
以下、その理由について申し上げます。
個人情報保護法及びマイナンバー法の一部改正法附則十二条一項は、新個人情報保護法の全面施行日までに、新個人情報保護法の規定の趣旨を踏まえ、行政機関個人情報保護法二条二項に規定する個人情報及び独立行政法人等個人情報保護法二条二項に規定する個人情報の取扱いに関する規制の在り方につきまして、匿名加工されました情報の円滑かつ迅速な利用を促進する観点から、その取扱いに対する指導、助言等を統一的かつ横断的に個人情報保護委員会に行わせることを含めて検討を加え、その結果に基づきまして所要の措置を講ずることを政府に対して義務付けております。
この附則の規定が政府に求めましたことを分析いたしますと、第一に、行政機関及び独立行政法人等、以下、両者を併せて行政機関等と呼ばせていただきますが、その保有する個人情報につきましても、新個人情報保護法の匿名加工情報に相当する情報の円滑かつ迅速な利用を促進する観点から規制の在り方について検討し、その結果に基づいて所要の措置を講ずること、第二に、当該情報の取扱いに対する指導、助言等を統一的かつ横断的に個人情報保護委員会に行わせることを含めて検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること、第三に、以上の所要の措置を新個人情報保護法の全面施行日までに講ずることの三点になります。そして、第一、第二の点の検討に当たりましては、新個人情報保護法の規定の趣旨を踏まえることが要請されております。
まず、第一の点につきましては、行政機関等非識別加工情報に係る制度を新設し、提案を募集する個人情報ファイルを個人情報ファイル簿に記載して対象を明確にした上で、民間事業者が行政機関等非識別加工情報をその用に供して行う事業を提案する方式を採用しております。民間のニーズを把握しないまま行政機関等の判断のみで行政機関等非識別加工情報を作成いたしましても、民間のニーズに合わないおそれがございますので、民間事業者からの提案を受けて行政機関等非識別加工情報を作成する方式は、前述いたしました改正法附則十二条一項が言う新制度の円滑かつ迅速な利用の促進という観点から合理的なものと考えております。
第二の点につきましては、行政機関等非識別加工情報の加工基準は、新個人情報保護法の匿名加工情報と同様、個人情報保護委員会が定め、行政機関等非識別加工情報の取扱いに対する監視、監督を個人情報保護委員会が一元的に行うこととされておりますが、行政機関等非識別加工情報が官民間で流通するものであることに照らし、新個人情報保護法の匿名加工情報につきまして監督権限を有する個人情報保護委員会が行政機関等非識別加工情報につきましても監視、監督を行うことは合理的であり、また、この点も、前述いたしました改正法附則十二条一項の趣旨に合致するものと思われます。
第三の点につきましては、そこで言う新個人情報保護法の全面施行日は、新個人情報保護法が公布されました昨年九月九日から起算して二年を超えない範囲内で政令で定める日となります。
改正法附則十二条一項が新個人情報保護法の全面施行日までに所要の措置をとることを政府に義務付けましたのは、パーソナルデータの利活用の促進は官民共通の課題であり、官民が収集、提供するパーソナルデータを有機的に関連付けて有効活用することが期待されていることに照らしますと、行政機関等非識別加工情報及び匿名加工情報の両制度を同時期に一体のものとして施行することが望ましいという国会の御判断によるものと考えております。
新個人情報保護法の全面施行日を定める政令は未制定でございますが、仮に区切りのよい来年四月一日施行といたしました場合、今国会で行政機関等個人情報保護法改正案が成立いたしましても、更にその後、その委任を受けた政令及び個人情報保護委員会規則を意見公募手続も経た上で策定する作業が必要であり、それに加えまして、制度の周知期間が一定程度必要となります。
したがいまして、今国会に政府が行政機関等個人情報保護法案の改正案を提出されましたのは決して早過ぎず、むしろ改正法附則十二条一項に込められました国会の御意向に沿うためには必要不可欠だったと思われます。
次に、IT総合戦略本部が決定いたしましたパーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱との関係につきまして述べさせていただきます。
この大綱におきましては、行政機関等が保有するパーソナルデータにつきましては、その特質を踏まえた検討を求めております。
そこで、行政機関等が保有するパーソナルデータの特質とは何かが問題になりますが、この点につきましては、個人情報保護法案の制定過程におきまして、当時のIT戦略本部個人情報保護法制化専門委員会が二〇〇〇年十月にまとめました個人情報保護法制に関する大綱におきまして、第一に、政府と国民の間におきましては行政に対する国民の信頼を一層確保することが求められていること、第二に、私人間におきましては企業活動における営業の自由等との調整が問題となるのに対し、公的部門につきましては法律による行政の下に国民一般の利益との調整が重要になること、第三に、特に行政機関における個人情報の取扱いに当たりましては、法令に基づく厳格な保護管理の下に置かれるよう特別の配慮が必要であることが指摘されております。
これらの点は今日におきましても妥当するものと思われますが、私はそれに加えまして、国及び独立行政法人等は国民に対して説明責任を負う主体であり、その説明責任を履行させるための法制度として情報公開法がある点が民間事業者とは決定的に異なり、行政機関等の個人情報保護法制を考えるに当たりましては、情報公開法との関係に絶えず配慮することも重要であると考えております。
また、二〇〇七年の統計法全部改正により、行政のための統計から社会の情報基盤としての統計へのパラダイムシフトを図り統計情報の有効活用を推進するために、オーダーメード集計や匿名データの提供という二次的利用の制度が整備され、本年二月の統計法施行規則の改正により、学術研究を直接の目的とはせず営利企業が通常の企業活動の一環として研究を行う場合でありましても、学術研究の発展に資すると認められる研究であればオーダーメード集計を認めることとされましたが、行政機関等が保有する一般の個人情報につきましても、個人の権利利益を的確に保護することが当然の前提になりますが、その上で、社会全体のために有効活用するというオープンデータの視点も必要と考えております。
御審議中の法案は、行政機関等の保有する個人情報の特質を十分に踏まえて、その利活用により個人の権利利益が損なわれないこと、利活用に対する国民の不安を解消し行政に対する国民の信頼を確保すること、行政の適正かつ円滑な運営に支障を与えないこと、情報公開法との関係に配慮すること、以上の前提の下に、行政機関等が保有する個人情報の適正かつ効果的な活用によるメリットの実現を志向することに慎重な配慮をされたことがうかがわれます。
具体的には、対象となる個人情報を、個人情報ファイル簿が公表されていること、情報公開請求に対して全部不開示とならないこと、行政運営に支障を生じないことの各要件を満たすものに限定し、提案の募集に関する事項及び行政機関等非識別加工情報の概要を個人情報ファイル簿に記載することにより透明性と一覧性を確保し、提案の欠格事由及び審査の要件を法定することにより公正性と透明性を確保し、第三者に対する意見書の提出の機会を付与した結果、提案に係る行政機関等非識別加工情報の作成に反対の意思を表示した意見書が提出されましたときは、当該提案に係る個人情報ファイルから当該第三者を本人とする保有個人情報を除いた部分を当該提案に係る個人情報ファイルとみなすことにより、国民の不安に応えて行政に対する国民の信頼を確保することに配慮した上で、行政機関等非識別加工情報に係る制度の新設により、新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現への貢献を意図したものと考えております。
二〇一〇年十月二十七日から同月二十九日にかけましてエルサレムで開催されました第三十二回国際データ保護プライバシー・コミッショナー会議で満場一致で可決されましたプライバシー・バイ・デザインの七つの基本原則の一つに、個人情報の保護と利用をゼロサムではなくポジティブサムで捉えるという考え方がございます。すなわち、個人情報の保護と利用をトレードオフの関係にあると捉えるのではなく、的確に保護しながら利用によるメリットも実現するという考え方でございます。御審議中の法案は、行政機関等の保有する個人情報の特質を踏まえつつ、個人情報の保護と利用の適正なバランスをポジティブサムの考え方の下に模索したものと評価できるのではないかと存じます。
なお、御審議中の法案におきまして、生存する個人に関する情報であって個人識別符号が含まれるものをそれ単独で個人情報として位置付けましたことは、個人情報の定義の明確化に資するものであり、要配慮個人情報についての定義規定を設け、個人情報ファイルに要配慮個人情報が含まれる場合には個人情報ファイル簿にその旨を記載することとしておりますことも、保有個人情報の本人が自己に関する要配慮個人情報の利用実態をより的確に認識し得るようにするものであり、望ましい改正であると考えております。
以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。
○委員長(山本博司君) ありがとうございました。
次に、山本参考人にお願いいたします。山本参考人。
○参考人(山本隆一君) 本日は参考人として意見を述べさせていただく機会をいただき、ありがとうございます。
私は、医師で医療情報の研究者をもう三十年以上やっておりますので、医療情報の観点から今回御審議中の法制度についての意見を述べさせていただきます。
(略)
○参考人(清水勉君) 日本弁護士連合会情報問題対策委員会の委員の清水と申します。
(略)
非識別加工情報についてですけれども、一般に、行政機関等の保有するパーソナルデータは取得プロセスの権力性、義務性、秘匿性が高いという特性があります。このようなパーソナルデータを商業目的で利活用することは、本人の予測の範囲を逸脱した目的外利用であり、プライバシー侵害のおそれがあるのではないかということでまとめさせていただいております。
以下は個人の見解ですけれども、そもそもなぜパーソナルデータの扱いに慎重な立場を取る必要があるのかということでありますけれども、昨今、パーソナルデータの収集、蓄積、検索、編集が誰にでも極めて容易にできる情報環境社会になっているということであります。つまり、大人でないとできないとか日本社会にいる人でないとできないとかというものではなくて、世界中どこにいる人であろうが子供であろうが誰であろうができると、その人が扱う動機が何であれできるという環境であります。
パーソナルデータは、一旦外部流出した場合、それ以上に広がることはあっても、なかったことにすることはできません。本人が気付かないうちに広がり、利用され、悪用され、本人が不利益を被るということが起こり得ます。誰がいつどのようなパーソナルデータを悪用するかは予測不可能であり、情報は有体物ではありませんので、不正利用している者以外には不正利用されているということが判明しづらいという現実があります。ここは有体物と違うところであります。
危険な情報環境、制度設計と運用、これをつくらないということが課題になるということであります。ここで課題と言いましたのは正解がないということであります。どういう方向性で考えていくべきかという方向をきちんと見据えて、つまり利活用と保護というものをどういうふうにバランスを取っていくかということを、環境が変わるごとにどんどんバージョンアップしていかなければいけないということであります。
我が国の個人情報保護法制の基本的な価値観ということですけれども、EUとアメリカというのが一つの比較になるかと思うんですけれども、EUの方は個人の尊厳を重視、政府や制度が個人の判断が及ばない部分を守る必要があるという観点があります。これに対して米国の方は、個人の自由、プライバシーというものが自己決定権というふうな意味で使われることもあります。政府の介入を基本的に嫌うということがあります。
この連休中、私の事務所の弁護士がアメリカ・ニューヨークに行きまして、この問題について弁護士さん、行政の方たちと話をしてきましたが、最近プライバシーという言葉でアメリカでは判決は出ていません。これはなぜかというと、プライバシーという説明の仕方で切るのではなくて、例えばイスラムの人たちの情報ばかりを集めるという問題については、プライバシー侵害の問題ではなくて平等原則違反という、つまり違った説明の仕方で切っておりまして、プライバシーの概念がどうするかによって変えてしまうのではなくて、この局面で何が問題になっているかということをよく考えて制度設計していくというのがアメリカの考え方というふうに考えた方がいいかと思います。そこの基本にあるのは個人の自由、自由に選択をしていくという価値観。これは、いわゆる移民国家として様々な民族が世界中から集まっている国家としてはそのような、まあ日本のように日本にずっと生まれ育って生きてきた人たちがいる社会のような考え方とは違うものになるということは、これは社会のありようとしてうなずけるところであります。
しかし、制度としてEUとアメリカはかなり違います。ただ、その中核として守るべきは、先ほど出ました医療の情報についても、こういうことは守るべきだよねという考え方はあったとしても、それをどう守るかというところについての理屈の立て方、制度のつくり方のところに違いがありますので、日本はどうすべきなのかということを、どこかのまねということではなくて、この国ではどうすべきかということを考えていくべきなんだろうと思います。
具体的なニーズを前提としない制度設計は無駄であり、無謀だということであります。
今回のことにつきましても、お配りいただいた資料でヒアリングをした資料がたしかあったと思うんですが、経済界からの意見の部分を見させていただいたんですけれども、そこで、百四ページ、百五ページですね、ここを見てがっかりしたんですけれども、つまり、要するに、使えるといいよねと言っているだけでありまして、何がしたいのかということが具体的にないことです。
様々な微妙な問題があるだけに、何がしたいのかということを具体的に提案をしていただくならば、どういう制度がある、どういうふうな法改正が必要だと具体的に言えるんですけれども、余りざっくりと言われてしまうと、やはり微妙な問題がたくさんあるだけに、こういったものが動機となって法律を作っていくというのはよろしくないのではないかというふうに考えております。
過去の例でいいますと、住基ネットがうまくいかなかったという原因は、市町村のネットワークでいいんですかというのを私としては意見を持っていました。つまり、市町村にニーズがないところにネットワークをつくるというのは、そこで各それぞれに責任を負わせるという仕組みは非常に問題があるのではないかというふうに思います。
マイナンバー制度についても、社会保障と税の一体改革というスローガンでやってしまいましたけれども、スローガンと具体的な制度設計というのは、これはなかなか結び付きません。ですので、ここにも難しい問題があったというふうに考えております。
(略)
○委員長(山本博司君) ありがとうございました。
以上で参考人の方々の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○島田三郎君 ありがとうございます。
自由民主党の島田三郎でございますが、本日は大変、お三人の参考人の皆様方、お忙しい中おいでいただきまして本当にありがとうございます。また、貴重な御意見を賜りまして、本当に感謝を申し上げたいと思っております。
もとより、私どもは個人情報というものが非常に重要なものであるという認識がございます。また、個人の権利利益の保護というのはいかに守っていくかということは喫緊の課題であるし、また今の時代の課題であると思っております。ただ、そういう中で、それを利活用していく方法というのも一つのツールではないかと私は考えております。
先ほどお話がありましたように、ゼロサムではなくポジティブサムということを保護、利用として捉えていく考え方、これは私は、今後の日本の将来を考える中で重要なものであると私は考えております。ただ、ここの中で今日議論がございました行政機関が保有する個人情報をどう取り扱っていくのかということは、ある意味、民間情報とはやはり意味が違うものと私は思っております。
そういう中で、各お三人の参考人の方々にお伺いをしたいと思っておりますが、この目的規定を含んだ個人情報の適正、効果的な活用のための法整備を行うことの意義についてお伺いをしたいと思っております。
まず、宇賀参考人、山本参考人におかれましては、民間部門の個人情報の利活用についての検討を行うために内閣官房において開催されておりましたパーソナルデータの利活用に関する検討会でいわゆる座長、委員を務められておられました。昨年の個人情報保護法の改正を含め、今後の制度改正の全体を俯瞰する観点から、まずもって御意見をいただきたいと思っております。
また、清水参考人におきましては、EUやアメリカの例をお引きされながら利活用と保護の問題を語っていただきました。私自身、個人的には、先生自体が全くこの制度について反対ではないというように私は感じたわけでございまして、可能な範囲で本法案の意義についてお考え方をお伺いしたいと思っております。
○参考人(宇賀克也君) 御質問ありがとうございます。
今回の改正は、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法の改正という形を取っておりますけれども、私は、オープンデータ政策の一環として情報公開法の改正という立法政策もあり得るのではないかというふうに考えております。
情報公開法では、何人にも開示請求権を与え、請求目的も限定しておりませんので、企業が個人情報を例えば新産業の創出のために請求するということも可能でございます。その場合、特定の個人が識別されます場合には原則として不開示ということになるわけですけれども、情報公開法では開示請求時点である文書をそのまま開示をするという前提でございますので、加工を認めておりません。しかし、加工を施せば特定の個人が識別されず、個人の権利利益を損なうことなく当該情報を国民に提供して有効活用していただくということができる場合がございます。
例えば、生年月日をそのまま出してしまいますと特定の個人が識別されるので情報公開請求では不開示とせざるを得ない場合であっても、それを例えば二十代、三十代というふうにグルーピングいたしますと、特定の個人が識別されずに、個人の権利利益を損なうことなく国民に提供して、それを有効活用していただくということができる場合があるわけでございます。
そう考えますと、今回の改正は、非識別加工という行政サービスを付加することによって情報公開請求では開示できなかったそういう情報も国民に提供することによって、それを社会のために有効活用していただくことができるようになる、そういうツールを提供するものというふうに捉えております。
○参考人(山本隆一君) 御質問ありがとうございます。
御指摘のように、私はパーソナルデータ利用の検討会の委員をしておりまして、新個人情報保護法及び今回御審議いただいている行政機関あるいは独立行政法人の個人情報保護法全体として、それらが議論される前に非常に困っていたことが多いという意味では、今回の一連の法改正の動きは非常に意義が大きいと思います。
何に困っていたかと申しますと、要するに、余りにも解釈の幅が広過ぎて、ある人はこれは匿名化情報だと言い、ある人はこれは個人情報だと言いということで、それがほとんど水掛け論みたいな議論がかなり多く見られたわけですね。それをやはりかなり明確にできたという意味では、匿名加工情報あるいは非識別加工情報の定義に関しては進捗があったというふうに考えております。
ただ、先ほどの意見でも申しましたように、医療の現場あるいは医学研究の場合を考えますと、現在のこの新個人情報保護法あるいは御審議中の法案の、法案はこれでいいのかもしれませんけど、あとその政令あるいは指針等を含めてもう少し慎重に手当てをする必要があるのではないかというふうに考えております。
○参考人(清水勉君) 今回の法律の意義といいますか、前に作りました個人情報保護法にしましても、さらに、二十世紀のときに作りました行政電算処理の個人情報の法律につきましても、この種の法律を作っていくときというのは、様々その時代時代で問題がある中で、どれを解決していくべきかということを考えながら作っていくという面がありますので、常に少しずつ進化をしている。それがこの時代にどこまでそぐうものになっているかどうかということが問題でありまして、そういった意味でいえば、今回作ったものが作らないよりいいのかという、改正しない方がいいのかというふうに考えれば、改正して良かったという部分は当然のことながらあります。それは、個人情報の定義を明確化していくということは、これは重要なことだろうと、非常に重要なことだろうと思います。
ただ、先ほど来、山本先生が医療関係のことをおっしゃっておりますけれども、私どもも、二〇〇二年、二〇〇三年のときに個人情報保護法を作っていくときに、医療については特別なものを作るべきだというふうに考えて提案をしていました。それは、今日、山本先生がプレゼンしていただいたものと全く同じ考えでありまして、プライバシー性が非常に高い一方で、公共性が強いということであります。
私自身も世界で初めて手術に成功した難病の患者さんのその医療に関係していたんですけれども、事件を扱ったことがありますけれども、その学術論文を見るとその手のことをやっている世界中の人がどこの誰って分かります、名前を見なくても。世界で初めて成功した手術例ですから。ですので、どこまでその医療データをオープンにするかというのはほかの個人情報をオープンにするというのとはかなり違っていて、片方で、一定の範囲の人たちについてはかなりオープンにしないと有効に使えないという面などがあります。ですので、そのことを二〇〇二年、二〇〇三年のときも提案していたんですけれども、個人情報という形で法律が作られてしまって特別法ができませんでした。
厚労省はガイドラインを作りました。ガイドラインは、実はよくよく見ていくと、これは個人情報保護法に合致するの、つまり同意原則というのが医療情報の中で原則として通っていいのかという問題があります。片方で、その個人の自己決定権を無視していいのかという問題、非常に難しい問題があります。でも、それを医療の分野についてはやはり独立のものとして作っていかないと、患者のプライバシーが守れない、片方で医療が進歩しないという非常に難しい問題があろうかと思います。
その意味では、私は、今回医療についてもっと情報共有できないのかという議論が活発化されていることからすると、この分野については特別にやっぱり法律を作るとかということを考えていく必要はあるのか、その場合には民間も行政も関係なく、共通化したルールとして市町村も県も国も民間もというものがつながるような、そういうものを考えていくべきではないかというふうに考えます。それが今回のきっかけとしては私は非常に意味があったというふうに思っていますし、第三者機関の問題につきましても、一部ではありますけれども第三者機関が監督するということになりましたことも私は評価しております。
ありがとうございました。
○島田三郎君 何度も申し上げますように、個人情報の取扱いというのはやはり国民の信頼の下で成り立つものであると考えております。そういう中で、いわゆる公正性や透明性というのは私は非常に大事なものであると。ただ、黙示の同意というものも実はあるわけなんです。知らなかったから同意をしたと。この辺は私、今後やはり考えていかなけりゃいかぬ問題だと思っております。そして、そういう中で、この非識別加工情報の活用の方向性というのは、やはり今後法律が通ったとしても議論をしていってどう直していくべきものであるということを私は思っておりますし、決して今回の法律がいわゆる到達点ではないというのは私自身も思っておるわけであります。
(略)
○石上俊雄君 民進党・新緑風会の石上俊雄でございます。
本日は、三名の参考人の先生、本当に多岐にわたる御示唆を賜り、本当にありがとうございました。
時間に限りがありますので早速質問をさせていただきたいと思いますが、まず宇賀先生に質問させていただきます。
まずは、今回の行個法が保護法なのか公開法になっちゃうのかといったところの視点で御質問させていただきたいと思いますが、昨年成立しました個人情報保護法の改正の第一条の目的に、「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであること」というのが追加の文章で入ったわけですが、これというのは、そもそも前の個人情報保護法の中に含まれておりました有用性についての説明に「個人情報の有用性に配慮しつつ、」という文言があるんですが、その有用性に対しての説明だというふうに解釈されているわけでありますけれども、一方で、今回の行個法はそういう文言がそもそもない中にあって先ほど言った文言がどんと入ってきているということから考えますと、法の中核的目的、個人の権利利益の保護を最重要視することと何ら変わらないというふうに言われているわけでありますけれども、その辺に対しまして先生のお考えをお聞きしたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 大変重要な御指摘だと思います。
実際、行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会におきましても、今回の行政機関非識別加工情報の制度を行政機関個人情報保護法に位置付けるのがいいのか、それとも行政機関情報公開法に位置付けるのがいいのかということについてはかなり議論があったわけでございます。
私は、今回の改正があっても、行政機関個人情報保護法が第一義的には個人の権利利益を保護する、これを最重要視しているというその基本的な目的は変わっていないというふうに考えておりますけれども、個人情報の保護と利用のバランスを取っていくという中でこのような利用というものも例外的に認め得るということで、今回、行政機関個人情報保護法に位置付けられたと思います。
しかし、おっしゃるとおり、これは一種のオープンデータ政策としての一環も持っていますので、そういう要素が行政機関個人情報保護法の中に加わったということは言えると思います。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
(略)
○横山信一君 公明党の横山信一でございます。
今日は、宇賀参考人、山本参考人、清水参考人から大変に示唆に富むお話を伺うことができまして、感謝を申し上げます。
今回の法整備につきましては、個人情報保護と、それから行政機関の保有する個人情報の活用というんですか、利活用ということについて、それを明確にするという意味では意義のあるものだというふうにも思っております。宇賀参考人が行政のためのデータからのパラダイムシフトという言葉も使われましたけれども、今回の法整備によってそうしたことも起こり得るのではないかというふうにも考えております。
今、この委員会でもずっと議論を続けていることでありますけれども、今日的な課題としてビッグデータ社会というのが迎えているわけでありまして、それに向けてインターネット・オブ・シングスという、IoTを推進していくというそうした制度上の整備も今求められておりますし、またそうした議論も続けているわけでありますけれども、ビッグデータがあって、それを活用することによって、そこには個人情報も含まれてくるわけですが、それが住民にとってメリットのあるものとして返ってくる、そういう、まさにパラダイムシフトなんですけれども、その住民意識がビッグデータを活用することによって利便性が向上するというところにつながってくるかどうかということが重要になってくると思うんですけれども。
今回の法整備というのはこうした社会情勢の中でどう捉えるべきなのかということを、ちょっと漠然とした質問ではありますけれども、それぞれのお立場からお考えをお示しいただければというふうに思います。
○参考人(宇賀克也君) ビッグデータ社会を迎えまして、そのビッグデータの中で最も利用価値が高いとされておりますのがパーソナルデータでございます。そのパーソナルデータを有効活用することによって様々なイノベーションが生まれて、そして、それが結局国民の利益につながっていくという点を考える必要がある一方で、パーソナルデータでございますので、それを利活用することによって個人の権利利益が侵害されないようにするということも必要でございます。
個人情報保護法を二〇〇三年に制定されましたけれども、個人情報保護法が制定された当時はそのようなビッグデータ社会というものの到来というのは全く想定できなかったわけであります。しかし、施行から十年を経て、ビッグデータ社会を迎えてパーソナルデータを取り巻く環境が大きく変化しました。昨年の個人情報保護法改正は、そのようなビッグデータ社会を迎えた中で、新しい観点で個人情報の保護と利用のバランスをどう取るかということを見直しをしたと、そういうものだと捉えております。
そして、今回、今御審議中の法案は、言わばその延長上に、では、行政機関や独立行政法人等が保有しているパーソナルデータ、その利活用についての新しいバランスをどのように取ったらいいかということを検討したと、そういうものだというふうに捉えております。
○参考人(山本隆一君) 二つの面があると。私は医療のことしか分からないので医療の面からお話ししますけれども、二つの面があって、一つは、今の社会保障制度をどうやって持続させるのかということに対して現状をいかに見える化するかということで、これは患者さんのデータを使わずに見える化することはできないわけで、これを確実にやっていって、なおかつそうすることによって御本人に一切の損害を与えない、権利侵害をしないということを確実にしつつその見える化をしていって、それで例えば地域差でありますとかそういったものが、地域差は当然あっていいんですけれども、合理的な地域差なのか、あるいは不合理な地域差なのかとかというようなことを十分検討していく必要があって、そのために今の個人情報保護三法の改正は非常に有効だというふうに思っています。
それからもう一つは、IoTを中心とした新しいイノベーティブな健康管理あるいは健康向上あるいは医療を開発するための、導入するための資料としてのデータをどう集めてくるか、これは本来のビッグデータの利活用によるイノベーションということに入ると思うんですけれども、それを進めていくことも非常に極めて大事なことですので、これに対して十分な個人の権利の保護を確保するという意味での法制度の整備の、今が完全かどうかは分かりませんけれども、少なくともその一助でありますから、そういう意味では私としてはこれは非常に評価をしておりますけれども、更にこういった概念を進めて、一方では利活用を促進しつつ、片方で絶対に個人の権利を侵害しないというのをどうつくっていくかということは継続して議論が必要じゃないかというふうに思っています。
○参考人(清水勉君) 今日配っていただいたこの参考資料を見て愕然としたんです、要するに驚いたんですけれども、これ、個人情報の開示の件数ですとか、それから訂正、利用決定の件数とか、そういったものが出ているんですけれども、以前から承知はしていたんですけれども、非常に利用件数が少ない。これは自己情報コントロール権の具体的な権利として開示請求であり、訂正だったり利用停止請求だったりというものがあるわけですけれども、それを活用している人がほとんどいない。恐らくこの部屋の中でも、個人情報保護条例や個人情報保護法に基づいて自分の情報を開示請求をし、利用中止請求とかそういったものに関わったことがある方はいらっしゃらないんじゃないでしょうか。私自身も、実は東京都の個人情報保護条例ができたときにすぐ使ったことがあるんですけれども、それ以来使っていません。
何が言いたいかといいますと、個人情報がいろいろなところで使われているにもかかわらず、本人からアクセスしていって、どんなふうな情報がどんなふうに使われているかということを確認するということをする人はほとんどいないということであります。その一方で、皆さんおっしゃっているように、この保護はすごく重要だねというのは、それは共通認識になっているわけですね。
つまりそれは、問題が起こったときは、非常に深刻な差別問題であるとかどこからもお金が借りられなくなったりとか深刻な問題が起こるということも分かっていらっしゃるので、この保護は重要だねということが分かる。例えば、戸籍情報というのは日本独特の制度ですけれども、戸籍情報がいわゆる住民票の情報と違って保護の強化しなきゃいけないよねという考え方も、恐らくこの国ではかなり共通の認識だと思います。今、法務省でその方の検討を、マイナンバーとの関係で検討しているところでありますけれども。
にもかかわらず、ここの個人としての権利行使がほとんどされていないということからすると、それはビッグデータの社会の中で、利活用というのは当然いろいろニーズが、経済的利益というだけではなくて、今日は医療の話がよく出ているので医療の話でいいますと、やはり昨日より今日、よりいい医療を提供しようとした場合に、それはビッグデータ化されている方が、ああ、これが使える、あるいはこのことをやっている人たちがどこそこにいるというのが検索できて、早くそれに対しての治療ができるとか、そういうことを考えると進んでいくべきである。ところが、個人が適正に運用されているかどうかをチェックする仕組みだとすると、それはかなり無理がある。また、市町村にそれができるかというとこれができないという、まあできる市もあるでしょうけれども、町村となったときに、特に行政機関の場合には二年、三年で担当が替わってしまいます。そのために専門性がありません。そうしますと、こういったことについて個人情報の利活用についての対応について自治体ができるかというと、これはできないのではないかというふうに考えます。
ですので、どういう分野でどういうニーズがあるかということを考えながら利用させるというか、経済的利益を追求するのが悪いというわけではないんですけれども、誰にも文句がないのは、人を助けるために必要だよねということであればそれは共有化できると思うんですけれども、そのときに、じゃ、どういう方向にするのかということについても、各自治体がばらばらにやるのではなくて、やはり平準化した、その機関がそれを判断していくというものをつくっていくという方向性を考える必要があるというふうに思います。
○横山信一君 ありがとうございます。
(略)
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
(略)
やはり、先ほどからあるように、ニーズに基づいて制度をつくるということが私本当に大事なのかなということをお話伺って思ったんですけれども、例えば、先ほど来あるように、医療については本当にニーズがあって、そういった特別法も必要なのではないかというのをお三人から出されたわけですけど、そういうふうに分野に絞ってどう利用というニーズに基づいて制度をつくるというのであれば分かるんですけれども、網羅的に、きっとこういう情報を使える法律があるといいよねという形での今回のような法律を作るという、改正していくという形というのは何か私にとっては疑問が残るわけですけれども、その点について、最後、清水参考人、御意見いただければと思います。
○参考人(清水勉君) 時間がないので簡単に言いますけれども、資料の百四ページ、百五ページ辺りのところを見ると、やはり具体的に、本当、個人情報の扱い方というのはいい面もあるけど悪い面もあるという問題ですので、こういうことに使いたいということを明確にしないといけないと思います。
ですので、むしろ医療の分野のことを国民がいろんな立場で考えて、そこを出発点として、じゃ、ほかの分野はどうするか、あるいは法律全体をどうするかということを考えていくというのが出発点となるべきではないかというふうに考えています。
○吉良よし子君 ありがとうございました。終わります。
○片山虎之助君 維新の片山虎之助と申します。
三人の先生方、どうも今日は御苦労さまでございます。適切な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。
何点かお尋ねしたいんですが、まず、一番基本的なことですけれども、この法案の評価をお聞きしたい。それはもう世界的な傾向というか潮流の中で、三人の先生方はどう思われているか。わざわざ、守るべき個人、パーソナルデータを民間の方の提案を受けて加工して、匿名化して、非識別化して提供するわけでしょう。そこまでやらにゃいかぬのかと。それで新しい産業を興すという話なんだけれども、そういうことが起こるのかどうか。利活用で、ビッグデータ時代ですからデータの活用はいいんだけど、そこまでやるのかどうか。
宇賀先生はポジティブサムといういい言葉を言われましたので、両方が利用してうまくいくようなことになるかどうか、世界的な傾向としてどうなのか、まず三人の先生方からお聞きしたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 国際的な潮流としてオープンデータ政策を進めていく、つまり、行政が持っている情報をできる限り民間で利用してもらう、そしてそれを利用しやすいような形で提供していく、これは国際的な潮流であるというふうに思っておりまして、今回の法案もそのようなオープンデータ政策の一環というふうに位置付けることができるのではないかと思っております。
そして、その場合、我が国は情報公開法があるわけですけれども、情報公開法の場合には加工ができませんので削除する、不開示情報に該当すれば削除することしかできないわけであります。しかし、その部分について削除ではなくて加工を施す、グルーピングをするとか、あるいは、例えば百五歳の方というとそれだけで特定の個人が識別されてしまうというときに、その部分を不開示にするのではなくて、七十歳以上という形で大くくりにする、トップコーディングをやるというような形にすれば、削除以外の方法でその部分もビッグデータとして有効活用できるようになるわけです。
ですから、そのように考えますと、ある意味、情報の提供の仕方をより精緻化して国民が有効活用できるようにするというのが今回の法案ではないかと、そういうふうに評価しております。
○参考人(山本隆一君) 宇賀先生とほぼ同じですけれども、データはやはり行政が持っている、例えば介護認定のデータベースとかも厚労省は持っているわけですけれども、そういったものはできるだけオープン化して使えるようにしていくということはそれなりに意義が深いというふうに考えております。そういう意味では、この今回の法案は十分期待できるというふうに考えております。
ただ、一方で、個人情報保護法制という観点から見ますと、清水参考人がおっしゃったように、個人情報保護委員会への委任の部分が非常に小さいために、これは世界的な傾向から見ると、いわゆるプライバシーコミッショナーの存在がそれほど大きくないという意味ではやや不十分に取られるというふうに思っております。
○参考人(清水勉君) もう一つ、利活用を進めていく上では、情報の電子データ化というものをどこまで進めるかということが非常に重要なんだろうと思います。国の公文書管理法ではまだその行政文書を基本的に電子データ化するという考え方を取っていません。韓国の同様の法律では電子データ化をするという基本原則を立てております。
そのことの意味合いというのは、一つは利活用の問題、それも民間に対してはオープンにしていくということも考えた上での制度設計になっています。それが紙データベースになると一々、今でもそうです、情報公開請求すると墨塗りの文書が出てくるという、そういう状況ですけれども、そういったことで、ビッグデータの時代にその情報公開制度の中で一々職員が墨塗りしているということをやりながらこれかというのは非常にバランスが悪いです。
つまり、全部電子化できるかということは、それはそれで難しいと思うんですけれども、公的な情報を個人情報も含めて電子データ化することによって、匿名化の問題についても手間も掛からずに割と簡単にできるという方向性が考えることができるんじゃないかというふうに思います。ですので、個人情報保護法の問題としてだけ考えるのではなくて、これを良くして使いやすくしていくためにはどこを変えていかなければいけないかということを多面的に考えるべきでありまして、公文書管理法についても是非関心を持っていただければというふうに思います。
○片山虎之助君 民間が先行したんですよね。今度は国の機関と独立行政法人でしょう。そこまで何でやらにゃいかぬのか。まあ税金ですよ、簡単に言うと、加工するにも人件費もいろいろ要るし、もちろん経費は提案する民間の方からもらうんでしょうけれどもね。この辺がもうひとつ腑に落ちない、私個人のあれですけれども。
それと、それじゃ具体的な、どれだけのニーズがあるかなんですよ。恐らく医療は私あると思いますよ、今いろいろ先生からお話もありましたので。しかし、その具体的なニーズがないときに、どこまでそれをやるのかというのがあるので、先生方にどういう分野でどういう利用があって効果がどうだということを端的に教えていただければ有り難いと思います。宇賀先生からどうぞ。
○参考人(宇賀克也君) この法案におきましては、提案を募集する個人情報ファイルである旨を個人情報ファイル簿に記載して定期的に提案の募集をすることとなっておりますので、行政機関等の非識別加工情報を利用可能な個人情報ファイルが公にされることによって民間から様々なアイデアが生まれてくるものというふうに考えておりますけれども、例えば外国人出入国記録マスタファイルというのがございますけれども、それを観光振興に利用したり、あるいは二輪自動車の検査ファイルとか自動車等不具合情報ファイルというのがございますけれども、これを利用して二輪自動車とか自動車を設計する際の安全性を向上させるといったような使い方が考えられるのではないかというふうに個人的には考えております。
○参考人(山本隆一君) 医療、介護の面では、これは主体が行政機関であろうと独立行政法人であろうと市町村であろうと民間であろうと、これは同じような情報の重要性がありますので、少なくともルールが明確になったという点では私は評価ができるんだろうというふうに考えております。
○参考人(清水勉君) 私のこれまでの説明でお気付きだと思うんですけれども、医療分野以外で使うということがあるのかというのは疑問です。
やっぱり具体的なニーズでこういうことが切実にあるのでというのを言われれば、もう私どもの委員会もこぞってこういうのを作ればいいよと言えるんですけれども、片山先生が御指摘の御懸念というのは、まさに一生懸命職員を使って、ボランティアじゃありませんからちゃんと給料を払ってそれをやらせるわけですけれども、それを出したところが民間ではほとんど使われない。
というようなことだとすれば、元々自治体として積極的にそれに乗ることができないし、乗ったらその分だけほかの仕事の方の業務に支障が来すということになるわけですから、民間の方で勝手に使えるというようなことを考えれば、むしろ情報公開度をどこまで、情報公開度といいますか、オープンにする情報をどこまで今まで以上に出せるかということの方が意味があって、お客さんの注文が来たら各自治体が、村とか何かもやるとかというのは、これはやっぱり非現実的かなというふうに思います。
○片山虎之助君 それともう一つは、やっぱり何人かの先生方も指摘されましたけれども、地方自治体をどうするかなんですよね。(略)
○又市征治君 社民党の又市征治でございます。
参考人の御三方には大変貴重な御意見ありがとうございました。
何点か、私で六人目ですからどうしてもダブってしまう面があるんですが、再確認の意味含めて幾つか質問をしたいと思うんです。
今回の法改正は、個人情報の利活用を促進すると同時に個人情報を保護するということが目的でもあって、これ、そもそもこの個人情報の保護と利活用のバランスが問われるし、両立ができるのかどうかという問題も大変難しい問題だろうと思うんですが、いずれにしましても、その論議に入る前提として、収集される個人情報の性質が問題になるんではないかと思うんです。
そこでまず、宇賀参考人と清水参考人からお伺いしたいんですが、民間企業などが収集する情報は、基本的には本人が了解をし、収集する側も基本的にはその利活用について事前に個人の了解を得ることは前提になっていると思うんですが、これは、場合によっては、本人の同意なしに行政機関が収集する個人情報とは、たとえ利活用されるときの匿名加工あるいは非識別加工されたとはいえ性質が異なるのではないのか、この利活用方法もそういう意味では異なるのではないかというふうに思うんですが、ここら辺りのところのもう少し御見解を伺いたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) おっしゃるとおり、国の行政機関が収集する情報というのは、権力的に収集したり、あるいは許認可を得るために申請でやむを得ず、選択の余地なく収集するというものがあります。その点は、おっしゃるとおり、民間が収集する個人情報との重要な相違というふうに考えております。そのような相違というものは、やはり保護とそれから利用のバランスを考える際に当然考慮に入れるべきというふうに思います。
今回は、そのようなことを考えて、そもそも、個人情報ファイルのうちで個人情報ファイル簿が公表されていないものをこれを対象外とする、それから、情報公開請求があったときに全部不開示となるものというのはこれは対象外とする、さらに、行政運営に支障を与えるようなものを対象外とするということで、対象を限定をしているわけでございます。
それから、民間の方の匿名加工情報につきましては、これは、その匿名加工情報を作成いたしました個人情報取扱事業者やその提供を受けました匿名加工情報取扱事業者の場合には、その匿名加工情報につきましての安全管理については努力義務にとどまっているわけです。それに対しまして、行政機関非識別加工情報につきましては、安全確保が義務付けられて、より厳格に保護するといったような措置をとっているということがございます。
そのような形で、今おっしゃられたような行政機関の情報のその特殊性というものを反映した形で、民間とは異なる形で制度を仕組んだと、そのように考えております。
○参考人(清水勉君) 典型的には、行政が集める集め方というのと民間が集める集め方というのは典型的には違うんですね。典型的にはと申し上げたのは、じゃ、具体的にいろんな分野を見たときに、全部違うのかというとそうではなくて、今日主な共通の話題になっている医療の分野について考えてみると、国立の方は強制的に何でも集めて、民間の方は何でも同意というふうになるかというと、そういうものではありません。
また、今日の山本先生のレジュメの十三ページのところに同意の在り方ということが提起されていますけれども、これは個人情報を保護する場合の非常に難しい課題でありまして、同意というのは、その同意した後どうなるかということが分かる人でないと同意する能力はないというふうに考えなければいけないんですね。
これ、全ての人にそれを期待することができるかというと、全ての患者さんに期待できるかというと、できないんですね。これは、患者さんだけではなく、ほかの分野でもそうです。あなた、同意しましたよねというのが、いや、後で、同意したんだけれども後から気が付いてそれはやめたというふうになったときに、それはやめられないのかという問題が出ますので、オプトイン、オプトアウトの考え方があるように、同意をしたから引き返せないという問題でもないし、でも、一旦同意してしまうとその情報というのはその後どう拡散していくか分からないというところで、本人に不安を与えるという問題もあります。
先ほどちょっと言いましたが、戸籍情報の場合、今法務省で検討、マイナンバーでそれを付けて管理できるようにするのかみたいな議論をしていますけれども、ここがやっぱり住民票情報と違うのは、やはりかなり歴史を遡る、親族の歴史を遡ってどこの出自かということが分かるような情報ですので、それは民間で広がることは問題がありますし、それから、民間が広く利活用するということについても問題があろうかと思います。
ですので、行政か民間かではなくて、どういう情報なのかということをやっぱり考えていかなければいけないんだというふうに私は思います。
○又市征治君 どうもありがとうございました。
次に、山本参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、先生は、今日も、あるいはいただいた資料も、医療情報の利活用に力を入れておいでになっているということだと思いますが、事前にいただいたこの資料を見ますと、個人情報が本人の治療に役立った後に新たな薬の開発等々で新たな価値を生んだとするならば、情報を提供した側が違和感を持つ可能性が高いと指摘をされ、それを避けるための工夫が必要だと述べられていると思います。
今回の法案にはいろんな問題点がありますけれども、本人の了解なしに収集される場合もあるこの行政機関が所有する個人情報がビジネスのために利用されるというのも理解されにくいのではないかと、こう思うんですけれども、先ほど述べた事例では、先生は、本人の事前の了解を得るとか社会的資産としてあらかじめ共有、活用するという提案をされていると思うんですが、この観点、つまり先生の言い方では価値の再配分、こういうふうにおっしゃっていると思うんですが、から見て、この法案についてどのようにお考えか、お聞きしたいと思うんです。
○参考人(山本隆一君) 御質問ありがとうございます。
これ、個人情報保護法制だけで解決できる問題ではないと考えておりまして、そういう意味では、今回の法案でそれに対する対策が書いてあるとは思えないんですけれども。
御指摘いただいた点は、個人情報が価値を生む、価値を生んだときにその価値の帰属がどうなるのかという問題というのはまだ全く解決されていないことで、これは交通系のICカードの定期券のデータの販売もその要素があると思うんですけれども、そもそも定期券を買って乗り降りすることで契約は終結しているのに、それから新たな価値が生まれて、その価値が一体誰に帰属するのか。あるいは、患者さんが使ったお薬を全部集計して集めてくるとそれによって新しいお薬を開発する価値が生まれて、それに例えば製薬会社が対価を払った場合、この対価は誰に帰属するのかという問題があると思うんですね。
これはいずれ多分問題になってくるでしょうし、それまでには解決しなければいけない問題だと思っていますけれども、私は個人的には、やっぱり医療の場合ですけれども、社会保障で生まれた情報というのは、これは国民の財産なので一旦国民のプロパティーとして、国民の財産として預けると。それで、それを、じゃ、どういうふうに使うかというルールが決まっていれば、それをどう使って新しい価値を付けようと、それは価値をつくった人の価値であると。
これは、アメダスのデータがもう全く全部公開されていて、天気予報をする会社はいっぱいあるんですけれども、あの情報を上手に使いながら局地的な天気予報をしてお金を稼ぐ。これは別に誰も文句は言わないわけですね。そういうふうな形をつくらないとなかなかうまくいかないのではないかなというふうに考えています。
今回の法案でそこまで多分踏み込むのは難しいというふうに思っております。
○又市征治君 ありがとうございました。
(略)
○主濱了君 生活の党の主濱了であります。
参考人の皆様には、本当に貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。私からも御礼を申し上げたいと思います。
早速質問に入ります。
まず、宇賀参考人にお伺いしたいわけですが、先ほど片山委員の方からも質問ありましたけれども、行政機関の長がその提案に応じて非識別加工情報を作成し提供することができる、この必要性、背景、理由について伺いたいわけであります。
個人情報保護法あるいはこの度の法案、これは、事業者の経済的利益の追求とそれから個人のプライバシーとの調整を図るものであるというふうに私は思っております。でも、次の理由から、個人情報を商品のように取り扱う経済的利益の追求の面が優先している、大きい、こういうふうに感じられるわけであります。
その理由というのは、昨年改正されました個人情報保護法におけるオプトアウト、これ二十三条の二項、三項ということですけれども、の手続が十分ではないというふうに思われること。それから、個人情報保護法の匿名加工情報に関する政府答弁、これは昨年の三月の十日になりますけれども、まあ非常に基準は甘いというふうに考えられます。
これについては、先ほど島田理事からもお話ありましたけれども、匿名加工情報の加工方法については、個人情報保護委員会規則において、氏名を削除する、住所の市町村以下を削除する、あるいは生年月日を年代に置き換える等の、こういうふうな大ざっぱな、これで本当に大丈夫なのかなというふうな基準しか示されておらないと、こういう状況であります。
それから、自らのプライバシーを守る権利の一環として、個人情報保護法の匿名加工情報又はこの度の法案の非識別加工情報から自ら離脱をする、私は除いてくださいよと、こういうふうな道が定かではないと、こういったようなことがあるというふうに思っております。
このような中で、行政機関の長が非識別加工情報なるものを作成し、その事業の用に供する事業者に対して情報を提供することができるとする必要性、これは相当大きくないといけないと思うんですよ。必要性、背景、理由、これについてお伺いをいたしたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 御質問ありがとうございます。
まず第一に、今回の提案がされましたときの審査でございますけれども、その審査基準の一つに、新たな産業の創出又は活力ある経済社会若しくは豊かな国民生活の実現に資するものであることとあります。これ、私の考えですけれども、これは単に一企業の経済的な利益というのではなくて、企業のイノベーションを通じて、それの利益が国民全体に還元するようなものであると、私はそのように理解しております。
それから、加工基準につきましては、おっしゃるとおり、個人情報保護委員会は全ての情報についての言わば一般的な基準を作りますので、どうしてもそこでは抽象的にならざるを得ない面がございます。そこで、民間の場合には、認定個人情報保護団体がそれぞれの情報の性質に応じたより具体的な基準を個人情報保護指針で定めるということが想定されているわけであります。
私は、国の行政機関とか独立行政法人等の場合におきましても、情報の性質は多様でございますので、個人情報保護委員会が定めた加工基準を、これを基にしながら、それぞれの行政情報の性質に応じた加工基準というものはやはりガイドライン等で定めていく必要があるのではないかなというふうに思っております。
その上で、その必要性ということでございますけれども、このパーソナルデータの利用というのはこれは官民共通の課題で、官民それぞれが取得、そして提供する情報が言わば有機的に連携して有効活用されていくという面がございますので、そういう面では、単に民のみならず官におきましてもそのような制度というものを併せてつくり、同時に施行していくということが望ましいのではないかというふうに考えております。
○主濱了君 ありがとうございます。
それでは、時間の関係上、今度は清水参考人にお伺いをいたしたいと思います。
本法案、そして改正後の個人情報保護法では、その個人、先ほども申し上げましたけれども、やっぱり私は、個人のプライバシーよりもどうしても経済的利益を優先しているんじゃないかなと、そういうふうに感じられているわけなんですが、日弁連の第五十三回、先ほど資料いただいたやつですね、このシンポジウムの中で、高度情報化社会におけるプライバシーの保護、こういうテーマの中で、自己情報コントロール権を実効的に保障していくための提言が示されております。この自己情報コントロール権を実効的に保障していく原則あるいはその仕組み、この概要について御教示をいただきたいと思います。
○参考人(清水勉君) ありがとうございます。
これは二〇一〇年の人権大会のときに採択されたものですので、日弁連のホームページを見ていただければ出てくる内容ですけれども、ここでは電子マネーの問題、監視カメラの問題、その前にライフログの問題ですね、それからマイナンバーの問題、そういったものとして書いています。
このライフログのところから書き始めているというのは、個人情報がとにかくあちこちに記録化されていく社会であるだけに、それをどう保護するかということについて非常に慎重に考えていかないと、本人が気付かないところで個人情報があちこちに存在するという環境になってしまっているという中で、じゃ、そういう社会における保護って何なのかと考えたときに、保護は人を孤独にするものが保護なのか。つまり、誰にも近寄らせないというものは保護なのか。でも、今日の話題になっているような医療情報というのは孤独にさせていく情報なのかというと、そうではなくて、ある患者さんが、今まで助けられなかった患者が助けられた、私の患者さんもそうですけど、それは、その前に何人もの方が死んでいて、その人たちの医療情報を基にしてたまたま今回のその担当のお医者さんが成功してくれたという、そういう積み重ねの中で生きているわけです。
プライバシーというのは同時に公共性というのもセットになって存在しているようなものが、それが人間として社会的な存在なんだろうと思います。ですから、営利が駄目という問題ではなく、営利というのは何、医療だって営利の部分があるではないかということが考えられますし、また、人を食い物にするというのは、これは非常に問題でしょうけれども、利用することによってその本人も社会も、あるいはその事業に携わっている人たちにとってもプラスであるならば、それは積極的に伸ばしていくべきではないかと。
それが、今現在こういうことが、個人データがもっと商売になるよねっていう考え方というのは、商売にできる環境が今までなかったのでこういう議論が余りなされていないということでありまして、商売というものよりも、実は医療の世界ではもうとっくにそれをやっている、やっていたことをもっとできるようにしましょうよという面で考えていくならば、これは、むしろそこに営利的な医療機関があったとしても、それは営利の方にウエートを置くべきではなくて、やはり個人のプライバシーを守る、保護するということとその公共性と共有すること、その共有することの意義とかというものをきちんとかみ合わせて議論していって、どういう制度設計にするのがいいのかという進み方がいいのではないかというふうに考えます。
○主濱了君 ありがとうございます。
(略)
○委員長(山本博司君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
平成28年5月19日
参議院総務委員会第14号
○井原巧君 おはようございます。自由民主党の井原でございます。
本案につきまして順次質問を行いたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
まず、社会の事象ということ、社会不安という言葉があるんですけれども、基本的に私たちの社会というのは、本来信頼が当たり前のものが崩れたときに社会不安というのが起こってくるんですけれども、例えば行政とか、あるいは司法というか裁判所とか、あるいは警察とか治安とか、本来はそれが、信頼が当たり前のところで成り立っているものに、後ろに不安とか不信という言葉が続くような、そういう時世になると社会不安が起こってくるということでありますけれども、今回の法案の個人情報ということは、実はそれぞれ国民にとっては非常に大切なものというふうにみんな思っております。まして、行政が保有する個人情報というのは、任意ではなくて、法律等で半ば強制的にその目的のために徴集されたというものでありますから、仮にそれが一つでも漏えいするようなことがあればそれはもう大きな社会不安につながってくると、そういう基本的な認識を持った上で本日は質問を続けてまいりたいと思いますけれども。
今法案は、パーソナルデータの利活用により、経済の効率化や新産業の創出につながる、もって消費者の生活の豊かさや利便性が向上することの期待とか、あるいは何より防災とか健康とか医療とか福祉とか、その分野での公益性が向上できるというふうに伺っておりますが、今申し上げたように、そこに社会不安が生まれては元も子もないというふうな認識を私は持っております。
そこで、改めて確認の意味でお伺いをいたします。これまでは情報公開という、個人情報を避けたものをそのまま出すという、そういう手法しかなかったわけでありますけれども、今回は利活用という、そういう見地に立ってこの制度の法案を改正したというふうに理解しております。今回、非識別加工情報の提供制度を整備するわけでありますけれども、この法案の基本理念を改めて確認することと、またその国際的な潮流をどのように踏まえているのか、お伺いをいたします。
○国務大臣(高市早苗君) 近年の情報通信技術の進展によりまして、いわゆるビッグデータの収集、分析というものが可能になりました中で、特に利用価値が高いとされるパーソナルデータの利活用を適正かつ効果的に進めていくということは、新たな産業の創出、活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するものでありまして、官民を通じた重要な課題でございます。
今回の制度改正でございますが、行政機関等が保有する個人情報の効果的な利活用を図るものですが、個人の権利利益の保護、これが確保されるということが大前提でございます。利活用と保護の調和の取れた制度とするということを基本といたしております。
このような制度設計に当たりましては、国際的な動向にも留意しております。第三十二回国際データ保護・プライバシー・コミッショナー会議で議決されましたプライバシー・バイ・デザイン、ここでは、一見すると相反するように捉えられがちな個人情報の保護と利用をゼロサムで捉えるのではなくポジティブサムで捉え、その両立を図るという考え方が取られておりまして、今回の改正はこのような考え方に合致したものになっております。
この法律案によりまして、個人の権利利益の保護に支障がない形で利活用するための環境を整備した上で、民間事業者の創意工夫による利活用が図られることで豊かな国民生活に寄与するということを期待しております。
○井原巧君 保護とその利活用の調和ということでありまして、保護を確実に皆さん方に担保できるように今後も取り組んでいただきたいというふうに思っておりますが。
昨年の九月には、先ほどお話ありましたように、民間部門の個人情報保護法が改正されて、そこでは匿名加工情報という仕組みが設けられております。また、本改正では行政機関等という公的機関のパーソナルデータを活用するということでありますが、そこでは非識別加工情報という名前になっているわけでありますけれども、共にどちらも加工をしてパーソナルデータを提供するという制度でありますけれども、まずは、具体的にそういうふうな取組を行ってどのような民間からのニーズがあるというふうに考えているのか、その辺のことについてお聞きしたいと思いますし、また、果たして、それだけ苦労してつくるのにニーズがあるのかなという不安の声も聞いたりもいたします。
そこで、三点ほどお伺いしたいと思いますが、
(略)
○石上俊雄君 おはようございます。民進党・新緑風会の石上俊雄でございます。
今日は、行政等の個人情報の効率的な運用ということに係る法律の改正案につきまして質問させていただきたいと思います。
情報的には行政機関がたくさん持っているということで、それを個人が特定できないような加工をして経済の成長とか産業の発展等に利活用するために対応していくんだということでありますが、行政機関が持っている情報はその特性を様々考えていかないと大変なことになりますので、ちょっと基本的なところからまず質問させていただきたいというふうに思います。
今日は、言葉でしゃべりますとなかなか長くなりますので、分かりにくい面が、結構難しい法の改正だというふうに思っていますので、今日は資料も結構私準備させていただきましたので、それを見ながらちょっと質問をさせていただければと思います。
まず、個人情報保護法制における行個法等の位置付けについて質問させていただきたいというふうに思います。
資料一の①に示させていただきましたが、我が国の個人情報保護法制は、ここの図にありますように、今回審議をする行個法と個人情報保護法と独立行政法人の個人情報保護法と先ほどちょっとありましたが各地方公共団体の条例等で構成をされていると、こういう複雑な構図になっているわけなんですよ。しかし、なかなかこれが難しくて、個人情報保護法というのが昨年改正されまして新しいものができたんです。その下に今回審議する行個法とかが連なるわけですが、この中身をよく読んでいきますと、それぞれの領域で完結していないんですね。行個法は、非識別加工情報にして外に出すと、それ以降の取扱いについてというのは、要はどこを参照するのかというか、個人情報保護法の中に書いてあるものをやりながら対応するということになってくるわけです。
そういった意味で質問させていただきたいと思いますが、この四つの分類がされていますけれども、その相互の関係ですね、相互それぞれあることによってその効果はどこにあるのか。この関係性の、だから、行個法で、含まれていない、関係があるということを今回の行個法の中でどこで規定されているのか。何でこの変則的な五角形的な体制を組んでいるのか。この辺について、総務省、御説明いただけますでしょうか。
○政府参考人(上村進君) お答えいたします。
この資料で御説明いただきましたように、まずこの三角形のてっぺんにありますのが昨年改正をされました個人情報でございまして、これは各機関、各主体ごとの個人情報に通ずる通則的なまず基本理念、基本的なところを定めると同時に、この三角形の左下半分、民間部門については、これがそういう意味では個々を規制する法律となっているわけでございます。
どうしてこういうことになっているかということをちょっと御説明いたしたいと思いますけれども、もちろん、前提といたしまして、個人情報の取扱いに伴います個人の権利利益の保護の必要性は公的部門と民間部門とで異なるものではございません。
しかしながら、その取扱いにつきましては、政府と国民との間というのは、行政に対する国民の信頼の確保というまず命題が一つございます。それから、私人間といいますか、民間部門は基本的に民間と民間とのやり取りでございまして、一つには、例えば企業活動における営業の自由、こうした問題との調整があるとは思いますが、他方、公的部門の方では法律による行政の原則、こういうものがございます。そういう意味では、国民一般の利益とこうしたものとの調整が重要であるということでございまして、こうした違いを踏まえますと、取扱いについての具体的な規律内容は異ならざるを得ないというふうに思ってございます。
このため、行政機関、独立行政法人もそうでございますが、こうしたところにおきます個人情報の取扱いに当たりましては、法令に基づく厳格な保護管理、この下に置かれるよう特別の配慮が必要であるとされたところでございます。
その趣旨でございますけれども、これ、平成十五年に行政機関個人情報保護法が制定する前の個人情報保護法、これはもう今はなくなった条項でございますが、第六条一項で、国の行政機関については別途法制化の措置を講ずると、こうした義務規定がございました。これに基づきまして、個人情報保護法とは別に、今御指摘の行政機関の個人情報保護法、独立行政法人等の個人情報保護法が設けられることになったものでございます。
そういう意味では、こうした法律間の連携というのは、今申し上げました条項に基づいて我々が今御審議願っている法律が別個のものとしてできたという経緯であるというふうに御理解をいただければ有り難いと思います。
○石上俊雄君 できたその、何というんですかね、背景でいろいろばらばらになっちゃったというんですけど、分かりやすくするためには、もう少し一つの法律で全部カバーできるようなそういうような内容になればいいんじゃないかなと、そういうふうに思っています。
次なんですが、資料一の②ですね、下に書いてありますが、今回の行個法と同じように、個人の情報に対する制度の位置付けについてちょっとお聞きしたいんですが、行個法と同じように、その情報の提供を要求する対応として、行政機関情報公開法とか統計法とか、そういう法律もあります。さらには、法律じゃありませんが、各種オープンデータ政策というものもあるわけでございます。
これ、中身見ていくと何か余り変わらないんじゃないかなというところもあるわけでございまして、まずは制度が様々存在する理由、そして、今回の法の改正ですね、行政機関情報公開法や統計法で行わない理由ですね、それじゃ駄目だという理由について、総務省、教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(上村進君) お答えいたします。
御指摘のとおり、こうした行政機関等が持っています情報を利活用、公開する法律あるいは政策というのはいろいろあるわけでございます。これは当然のことながら、それぞれの趣旨、目的から、別の制度や取組として設けられ運用されているものでございますが、今回御提案を申し上げております非識別加工情報、この提供制度というものをどのような法的な枠組みで措置するかにつきましては十分検討を重ねてきたところでございますが、先ほど来御答弁申し上げておりますが、個人情報を元に作成する情報でございますので、これを民間事業者に提供し、利活用を促進していくに当たりましては、国民の信頼それから安心、これを確保することが極めて重要であるというふうに思っております。
したがいまして、御指摘のような、例えば行政機関情報公開法等ではなくて、個人情報に係る個人の権利利益の保護、これを目的とする行政機関個人情報保護法等の改正によることが最適であると判断したものでございます。
なお、ほかの法律ではどうして、何といいましょうか、適切ではないのかということでございますが、情報公開法でございますが、これはまず特定の個人が識別される場合は原則として不開示となります。一方、部分開示と、その部分を部分的に削除する等の開示はできるわけでございますが、これは削除しかできないわけでございまして、他方、本法案におきましては、識別される部分をほかの情報に置き換えるとか、それからグルーピングするということが可能でございますので、より民間事業者にとって有用な情報がそういう意味では柔軟に提供ができるということになると考えております。
また、統計でございますが、統計データというのは、これまた御承知のとおりでございますけれども、ある種、このいろいろな情報の共通の部分というのを抽出しましてまさに集計をすると数値として非常に抽象度が高いデータにしてしまいますので、ビッグデータとして使うのには抽象度がちょっと高いというふうなことがございます。
また、オープンデータといいますのは、基本的には情報をそのまま出していくということでもございますので、個人情報となりますとなかなかそのまま使えないという場合が出てくるかと思っております。
以上のような理由ということでございます。
○石上俊雄君 何となく分かったかな、ちょっと分かんないなというところもありますが、ちょっと、一応様々なことを確認したいので次に行きますが。
先ほど、井原先生の方からもちょっと質問がありましたが、今回の法案というのは保護法なのか活用法なのかといったところですね。保護と活用は比較考量されるのかということについて質問をさせていただきたいと思いますが、先日の参考人質疑でも質問をさせていただいたわけでありますけれども、昨年の個人情報保護法の第一条の目的規定ですね、ここで、「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」と変更されたわけでありますけど、これはその有用性といったところの説明だというふうに理解をされているわけであります。
しかし、一方で、資料の二の②にも付けさせていただきましたが、資料の二の①は個人情報保護法の条文の改正ですけど、②が今回の行個法の改正の部分なんですけれども、今回の現行法には個人情報の有用性の表現が元々存在しないわけでございます。いきなりこの条文の中に先ほど言った個人情報で入れ込まれたものがすとんと入ってきているということになるわけであります。
で、それ自体が追加ということになるので、この条文をよく読んでいくと、冒頭で個人情報の利用が拡大するということでのマイナスの影響に言及するわけでありますが、後半では、個人情報の有用性とプラス面への配慮に触れた直後に、ただ単に個人の権利利益を保護が目的と条文を締めくくっているわけでございまして、権利利益にはマイナスからの保護とプラス利活用の権利があると読めなくもなくて、改正案では個人情報の保護と活用はバランスされる関係にあると考えておられるのか、さらには行個法本来の目的が書き換えられたという批判もあるわけでありますが、このことについて総務省の認識をお伺いします。
○政府参考人(上村進君) お答えをいたします。
今回の法案、御提案申し上げている法案では、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、そうした本来の目的は変更することなく、従来制度的な位置付けがなかった個人情報の適切な利活用に向けた道、これを開こうとするものでございまして、個人の権利利益の保護それから利活用の推進、この二つの調和の取れた法制度として立案しているものでございます。
それで、委員御指摘のように、今回の改正案につきまして、個人情報の適切な利活用、こういう要素が目的に追加されたということは事実ではございますが、国や独立行政法人において個人情報を適正に取り扱いましてこの個人の権利利益を保護すると、こういう大前提は何ら変更しているわけではないわけでございます。というふうなことで、御理解を賜れば有り難いと思っております。
○石上俊雄君 なかなかこの辺、何かいろいろ読めば読むほどちょっと難しくて分からなくなるんですけれども、何かもうちょっと明確になればいいなというふうに思います。
(略)
○横山信一君 公明党の横山信一でございます。
午前中の質疑と多少かぶる部分も出てまいりますけれども、通告どおりに質問させていただきたいと思います。
世界最先端IT国家創造宣言におきまして、IT、データの活用はグローバルな競争を勝ち抜く鍵であり、その戦略的な利活用により、新たな付加価値を創造するサービスや革新的な新産業、サービスの創出と全産業の成長を促進する社会を実現するというふうにされております。安倍政権におきましては、これらを実現するために、行政が有する地理空間情報あるいは個人のライフログ情報などのビッグデータの利活用を推進をしていこうとしております。
そこで、今回のこの法律案で、法律案を含めて、行政機関におけるパーソナルデータの有用性をどのように考えているのか、伺います。
○大臣政務官(古賀篤君) ただいま横山委員から御質問ありましたパーソナルデータについてでありますが、行政機関の保有するパーソナルデータは、元来は法令の定める所掌事務の遂行のために収集し、保有しているものであります。近年、いわゆるビッグデータの収集・分析技術が進歩する中で、パーソナルデータは特に利用価値が高いとされておりまして、その利活用を適正かつ効果的に進めていくことは官民を通じた重要な課題と認識をいたしております。
行政機関の保有するパーソナルデータについて、個人の権利利益の保護を前提としつつ、適切な利活用を図っていくことにより、新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資することが期待されるところであります。このような認識の下で本法案の御審議をお願いすることとしたわけでございます。
以上です。
○横山信一君 行政のための情報という枠から、今社会が大きく変化をする中で、それを企業あるいは住民のために利活用していくという流れが今できているわけでありまして、各国ともその法規制についての模索というか、続けているわけであります。
海外に目を向けた場合、ビッグデータ利用の先進国でありますアメリカでは、政府のデータを利活用する民間部門における個人情報保護については自主規制それから自主統制というのが基本になっているというふうに聞いております。そのため、信用情報、医療情報などの各分野で法整備が行われているようであります。一方、オバマ大統領は、政府の保有する情報を公開するオープンガバメントを推進をしております。また、医療情報ということだけに限ってみれば、デンマーク、スウェーデンでは医療情報のオープンデータ化によって両国GDPの二〇%を占める医療・健康産業クラスターを構築しているというふうに聞いております。
そこで、こうした先進各国の取組と比較して、我が国の行政機関のパーソナルデータの取扱い状況をどのように認識しているのか伺います。
○大臣政務官(古賀篤君) ただいま委員から、アメリカですとかデンマーク、スウェーデンの状況について御紹介いただきました。このパーソナルデータの取扱いにつきましては、今御紹介あった以外にも、米国やEU諸国など、ほかの先進諸国を見ましても、考え方ですとか制度に違いがありまして、単純に比較、優劣を付け難いところがございますが、一方で、各国の取組状況ですとか国際的な動向には常に留意をしながら取組を進めていく必要があるというふうに認識をいたしております。
例えば、先日の参考人質疑におきまして、宇賀参考人から御紹介ございましたように、諸外国におきましても、個人情報の保護と利用を対立的に考える、いわゆるゼロサムではなくて、両立させる考え方、ポジティブサムを取っているというような御紹介がございました。今回のこの法改正も、こうした個人の権利利益の保護と利活用の促進を対立的に捉えるのではなくて、両立させることとしているところであります。
今後とも、個人情報保護に関する各国の取組状況や国際的な動向を的確に踏まえながら、施策の充実を図ってまいりたいと考えております。
○横山信一君 保護と利活用の両立という、そのポジティブサムというその考えに立脚して進めていくということだと思いますが。
午前中の質疑の中にもあったんですけれども、行政機関の有するパーソナルデータの利活用への期待が高まる一方、行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会、いわゆる総務省研究会ですが、それでのヒアリングでは、行政機関及び独立行政法人等の公的部門のパーソナルデータに関し、医療分野の情報の利活用への期待はあるが、それ以外の分野についてはオープンデータやビッグデータの具体的ニーズは特定できなかったというふうにされております。だからニーズの掘り起こしが必要なんだというお考えも聞かせていただいたわけでありますけれども、総務省として、この医療情報以外のパーソナルデータについて、その公正利用の促進をどう図っていこうとしているのか、伺います。
○大臣政務官(古賀篤君) 今御指摘いただきました総務省の研究会におきまして、確かに最終報告におきまして、御指摘いただきましたように、「行政機関等が保有するパーソナルデータについての具体的な利活用のニーズは特定できなかった。」とされているところであります。
しかしながら、この最終報告では、同時に、公的部門のパーソナルデータに対しても一般的な利活用への期待が存在するとしまして、「公的部門のデータの利活用の対象や範囲を適切に定め、提供時等における規律を課すこと等を前提として、匿名加工情報の仕組みを導入すべきである」との提言をいただいているところであります。
御審議をお願いしているこの法案は、このような産業界の要望ですとか有識者の提言を背景として立案したものでございます。当法案では、医療分野を含めて幅広く利活用を促進するために、対象を特定分野に限定しないこととした上で、利活用を効果的に促進するため、民間事業者による提案により非識別加工情報を作成、提供する仕組みとしているところであります。
この法案によりまして、幅広い分野の個人情報について、国民が安心できる利活用の環境を整備し、民間事業者の創意工夫による利活用が図られることで豊かな国民生活の実現等に期することを期待しているところであります。
○横山信一君 まあ、まさにポジティブサムの実践ということになってくるんだと思うんですけれども、ちょっと具体的な話をさせていただきたいんですが、(略)
(略)
○横山信一君 分かりました。
順調に質疑が進んで最後の質問になるんですけれども、最後、大臣にこれもお聞きをしたいんですが、匿名化情報であっても、市民やメディアの中には過剰に反応する傾向が見られます。こういった個人情報であっても、慎重に対応していても、やはり自分の個人情報が勝手に使われるという漠然とした不安とか、気持ち悪いというか、根拠のない不安がどうしても付きまとっていく、そういったことを示しているんだというふうに思うのでありますが、そこで、今後、こうした非識別加工情報を取り扱うことに対して大臣はどのように考えていくのか、所見を伺います。
○国務大臣(高市早苗君) パーソナルデータはビッグデータとして特に利用価値が高いと言われておりますけれども、やはり国民の皆様が安心できる環境の下で適切に利活用するということ、これが初めて豊かな国民生活の実現などにつながる大前提だと考えております。
このために、今回御審議をいただいております法案では、非識別加工情報について、民間部門と同様に、一定の基準に従って加工を行い、情報漏えい防止措置を講じること、提供を受けた民間事業者には識別行為の禁止義務が課せられることといった措置を講じますとともに、官民を通じて個人情報保護委員会が一元的に監視、監督するということにしております。
さらに、行政部門におきましては国民の信頼をより一層確保する必要があるものと考えているところです。
本法案では、行政機関非識別加工情報の対象となる個人情報の範囲を適切に設定すること、不適格な提案者を排除することといった規定を設けまして、個人の権利利益の保護に万全を期すことにいたしております。国民の皆様に真に安心していただける、そんな利活用の環境を整備して、民間事業者の創意工夫による利活用を促進することで豊かな国民生活の実現などに寄与できるということを期待しております。
その上で、国民の皆様が不安や懸念、こういったものを持たれることがないように、法律の趣旨ですとか仕組みの周知を十分に図ってまいります。あわせて、本法案成立させていただきましたら、制度の適切な運用の確保に努めることが重要だと考えております。
○横山信一君 大臣からそのような答弁をいただいたということは、非常に国民にとっての安心の材料を与えていただいたというふうにも思うところでございます。
今後、この法案が通った後、次はいよいよ個人情報が一番ある自治体の個人情報について、それをどう利活用を進めていくか、またどう保護を図っていくかという議論に入っていくわけでありますので、この法律が適正に執行され運用されていくということは踏まえて進んでいくことでありますので、今後の議論に資するような、そういう形での運用を望んでまいりたいというふうに思います。
以上で質問を終わります。
○又市征治君 社民党の又市です。
今日は吉良委員の御厚意によりまして質問の順序を入れ替えさせていただきました。感謝を申し上げたいと思います。
なお、この種法案、どうしても論点がみんな集中をいたしますから、私もどうしてもダブらざるを得ない面があるわけですが、再確認の意味を含めて質問をしてまいりたいと思います。
まず、十二日の参考人質疑に続いて本案について政府の見解を伺うわけですが、大臣は法案の趣旨説明において、個人情報の有効活用が産業創出、活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するとの前提に立ち、個人の権利利益の保護や行政機関等の活動に支障がない範囲内で行政機関等が所有する個人情報を加工して事業用に提供する、このように述べられたわけです。
この間、政府は、企業が利益を上げればそれが勤労者の所得増大につながる、こういうふうに主張される、いわゆるトリクルダウン理論、こういうふうに言われてきて、日本を世界で一番企業が活躍しやすい国にしよう、こういうふうに言ってきたわけですが、しかし、企業は今最高の利益を上げているにもかかわらず、例えば今年の春闘の賃上げ状況、昨年の半分以下、こんな格好に見られるように、必ずしもそうなっていない。いわゆる今のこの法案に絡めて申し上げるならば、個人情報の有効活用が産業創出や活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するという、こうした考え方、認識というのは、私は、この間の日本経済の流れの中では破綻しているのではないか、こう思う。ここのところについて、改めて大臣の認識をお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 近年の情報通信技術の進展によりまして、いわゆるビッグデータの収集、分析が可能となる中で、特に利用価値が高いとされるパーソナルデータの利活用を適正かつ効果的に進めていくということは官民を通じた重要な課題だと考えております。
新たな仕組みにおける非識別加工情報についての民間事業者の提案におきましては、提案に係る事業が新たな産業の創出、活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するものであることを求めております。これは単に一企業の利益のために提供するということではなくて、民間事業者における有効活用を通じて、ひいてはその利益が国民全体に還元させることになるという考え方に立ってそう規定をしている、そういうものでございます。
幅広い民間事業者の新たな仕組みが利用されて制度改正の趣旨が実現されるように、しっかりと周知をしてまいりますし、的確な運用を期してまいりたいと思っております。
なお、賃上げにつきましては、安倍総理の方からも幾度となく経済界に対して要請ということを行っていると承知をしております。
○又市征治君 相変わらず、新たな産業を創出、活力ある経済が国民生活を豊かにすると。日本経済の現状は必ずしもそうなっていない、そういう面もしっかりと見ていただきたいということだけ申し上げておきたいと思うんです。
そこで、先日の参考人質疑において山本参考人は、本人の了解なしに収集される場合もあるこの行政機関が所有する個人情報がビジネスのために利用されるというのも理解されにくいのではないかという私の質問に対して、個人情報保護法制だけで解決できる問題ではなく、今回の法案でそれに対する対策が書いてあるとは思えない、個人情報が価値を生む、価値を生んだときに、その価値の帰属がどうなるのかという問題はまだ全く解決されていないということを述べられております。
先ほども少し触れましたが、企業が伸びれば、イノベーションが進めば国民生活が豊かになるというのは実は極めて抽象論、いろんな見方があります。個人情報が価値を生む、その価値の帰属が企業であるというのであっては国民の理解が得られないのではないのかということがまず基本的にあると思うんです。
日弁連も意見書において、「商業目的での第三者提供は、パーソナルデータの持ち主本人の認識している本来のデータの利用目的以外での利用を意味する。特に、公権力の行使によって収集されたパーソナルデータに関して無差別な商業目的での利用を許すことについて、国民の理解が得られるとは考え難い。」、こういうふうに日弁連述べているわけですけれども、この点について大臣の見解を伺います。
○国務大臣(高市早苗君) イノベーションということですけれども、イノベーションというのは、単なる技術革新ではなくて、技術革新の成果がまた国民生活に恩恵をもたらしていく、そこまでのプロセス全体を指すものだと考えております。
今回、この法案でございますけれども、パーソナルデータの利活用を適正かつ効果的に進めていくということで、新たな産業の創出や活力ある経済社会、豊かな国民生活の実現を図るものでございますから、あくまでも個々の企業の利益のみならず国民全体の利益につながる取組だと考えています。
例えば、先日の参考人質疑におきましても、二輪自動車の検査ファイルを利用して製品の安全性を向上させることが想定されるといった参考人の御意見もありましたし、このようなケースでは国民の皆様にも安全、安心というメリットがもたらされると考えています。
やはり制度改正の趣旨について十分に民間事業者の方にも周知をすることに努めまして、的確な運用を期してまいります。
○又市征治君 現行法でも、統計の作成であるとかあるいは学術研究の目的のため、又は本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるときは提供が認められている、そういう法体系になっていると思うんです。つまり、今回の改正というのは、本人の利益になるかどうか全く分からない、提供の公共性も不明なのではないのかということは指摘をしておきたいと思うんです。
(略)
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
(略)
大臣に改めて伺いますが、今回の法案で言う新たな産業の創出というのはどういうものだとお考えなんでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) まさに、新たな産業の創出でございますから、行管局長や私が発案できるようなレベルのものであったらそれは新たな産業とは言えないんではないかと思います。
このデータ、ICTの活用ということで、新しい付加価値を創造するとともに、産業構造や社会生活に従来にはなかったようなイノベーションをもたらして社会的な課題の解決にもつながっていく、そういう姿を期待しています。新たな産業の創出ですから、これまでにはなかったような新しい産業が生み出されるということで、この法律案によりまして非識別加工情報の利活用の仕組みを、当然、安全性、安心、安全ということは大前提ですけれども、利活用の仕組みを整備するということで民間の方々の創意工夫が最大限に生かされて、まさに私が今具体的にこういうサービスが、こういう産業がと言えないようなレベルの新しいものが生み出されてくる、これを期待いたしております。
○吉良よし子君 要するに、今現時点では思い描けないような新たな従来になかったものをつくっていく。衆議院の方でも思いもよらなかったイノベーションが起きてくることを期待しているという御答弁もあったかと思いますが、もちろんそうした思いもよらなかったイノベーションが起きて日本経済や国民生活にいい効果を生んでくれることというのは確かにあると思うわけです。ただ、今ある具体的なニーズに基づいて議論されるのではなくて、将来もしかしたら起こるかもしれないからという期待だけで、行政機関が保有している大量の個人情報について、言わば、先ほども創意工夫をしてもらうんだ、民間事業者にという話ありましたけれども、民間事業者に利活用を求めていくような枠組みづくりを今急ぐ必要が本当にあるのかというところが疑問なんですが、利活用を優先するような枠組みづくり、今必要だと思われるのでしょうか。大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(高市早苗君) 利活用をすることによって全くこれまで想像も付かなかったような新たなサービスが展開され、またそれが公益にも資するような姿をつくっていける、こういうことが可能な環境を今整備しておくことが必要だという認識でございます。それを阻害してしまう要因が残っていてはいけないのであって、もちろん国民の皆様の安心、個人、自分の大切なパーソナルデータですから、それに対する安心というものを確保するために匿名化をするわけでございます。そういった安心を確保できるということが大前提で、しかしながらそこから新たなイノベーションが生まれ、そしてまた社会的な課題が解決される、そのための環境を整備するというスタンスでございます。
○吉良よし子君 環境整備ということですけれども、やはり行政機関等が収集して保有する個人情報というのは、先ほど来ありますように、大量に組織的に情報提供者の選択の余地なく集められるような類いのものだと思うわけです。だからこそ、その扱いというのは慎重過ぎるほど慎重でなければならないと考えます。だからこそ、将来起きるかもしれない新産業の創出のためにと自ら率先して利活用に走るということはやめるべきなのではないかと。やっぱり、求められているのは、厳格な個人情報保護の下での社会的な要請に応えた利活用だというわけです。
(略)
○主濱了君 生活の主濱了であります。
早速質問に入りたいと思います。
まず、目的規定の改正から伺いたいと思います。
本法律案では、まず、行政機関個人情報保護法と独立行政機関等個人情報保護法の目的規定を改正しようとしていると、こういうことでございます。昨年改正されました個人情報保護法の目的規定には、昨年の改正の前から個人情報の有用性に配慮することが記載をされておりました。しかし、現行の行政機関個人情報保護法の目的規定には、この個人情報の有用性に配慮する、こういう文言は全く含まれていないわけであります。仮に今回の改正が行われたとすれば、個人情報の保護という法律の目的から、加工されるとはいえ個人情報の提供に関することをも定められることになり、法律の目的を根本から変えることになるというふうに考えるわけであります。
今日の委員会で石上理事の方からお話がありましたけれども、よくよく考えてみますと、個人情報の保護を旨とする行政機関個人情報保護法に個人情報の保護とは全く逆の概念、全く逆の概念の情報の提供、すなわち個人情報の利活用の仕組みを盛り込もうとする、こういうことは大いに無理がある、法律上に無理があると、私はこのように考えるわけであります。与野党の皆さん、いかがお考えでしょうか。
で、伺いますけれども、これは総務省に伺いますけれども、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。
○副大臣(土屋正忠君) お答えを申し上げます。
今、主濱先生が御指摘をいただきました法律の改正の条項でございますが、確かに利活用の部分が入っているわけでございますが、同時に、最後の部分をちょっと読ませていただきますが、「経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」ということになっておりまして、法律の立て付けからいきますと、個人情報保護ということを法益に据えていることは間違いないところでございます。この部分は改正していないわけであります。
ただ、御指摘のありました個人情報の保護と利活用というのは少し方向が違うんじゃないかということについては御意見として承っておきますが、ただ、私どもとしては、いわゆるビッグデータと称する指摘が、利活用がいろいろ言われているわけであります。とりわけ、かつてICT技術が進歩しなかったときには考えられないような収集・分析技術が進歩していて、中でも特に利用価値が高いとされるいわゆるパーソナルデータの適切な利活用は官民を通じた重要な課題となっているわけであります。
去年改正された民間の個人情報保護法でも、目的規定において、新たな産業の創出等の個人情報の有用性が明記されたところであります。
こういったことを踏まえまして、民間部門と同様の認識の下に個人情報の適切な利活用の環境整備を行う観点から、行政機関個人情報保護法について改正を行うものとしたわけであります。
先ほど申し上げましたが、国や独法における個人情報を適切に取り扱い、個人の権利利益を保護するという大前提は何ら変更いたしておりません。その上で、従来、制度的な位置付けがなかった個人情報の適切な利活用に向けた道を開こうとしているわけでありまして、これらの目的規定を明確に位置付けることで、個人の権利利益の保護と利活用の推進の調和の取れた法制度として立案をした次第でございます。
どうぞよろしくお願いします。
○主濱了君 一方には個人情報の保護というものがあります、一方には利活用というものがあるわけであります。じゃ、行政機関の保有する個人情報の提供が、利活用、提供がどのように新たな産業の創出とか、それから活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するのか、これは実はまだ通告はしていなかったんですけれども、どういうシステムで、メカニズムでそういうふうなことに資するのか、これを具体的に詳しく、これはどなたでも結構ですので、お願いします。
○政府参考人(上村進君) お答えいたします。
一般的にビッグデータを活用したイノベーションというのは、先ほど副大臣からもお答え申し上げましたとおり、我が国の産業界それから経済社会の発展にとっても喫緊の課題であると思っております。それは、いろいろなデータを組み合わせることによりまして、消費者のニーズでありますとか、あるいは今後の、パーソナルデータに寄せて申し上げるならば、今後のいろいろな少子高齢化の中での消費者の行動の実態がどう変わっていくか、あるいはどういうふうなサービス、それから商品ニーズがあるか予測する、それからいろんな分析の過程でいろいろな新しい技術が生まれてくると、いろんなことが想定されているわけでございます。
パーソナルデータ一般についてはそういうことでございまして、先ほど来ニーズのことにつきましてはいろいろと私も御答弁を申し上げていることでございますけれども、このパーソナルデータというものの性格自体は、これは官民で変わることがないわけでございますので、実際に具体的な御提案をいただければ、今私が申し上げたような形で、行政機関の持っているパーソナルデータ、当然これは非識別加工した上でありますけれども、使っていただけるようなことになるんであろうというふうに想定をしておるところでございます。
○主濱了君 総じて言えばこういうふうに言えると思うんですよね。結局、行政機関の長が提供するデータ、これがその提供された企業だけにとどまるとすれば、これは逆に使っちゃいけないわけでしょう、それ以外の企業に流しちゃいけないわけでしょう。もし一企業に止まるとすればやはり、一企業の利益ではない、一企業の利益なんですよね、多分。そういうことになるんではないかなというふうに言わざるを得ないというふうに思っております。
ですから、今伺った答弁、これは、一〇〇%私は信ずることができません。
次の質問に移ります。
(略)
○委員長(山本博司君) これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○吉良よし子君 私は、日本共産党を代表して、行政機関等個人情報保護法など個人情報の利活用を進める関係法律の整備法案についての反対の討論を行います。
本法案は、産業界からの要望に沿って、従来になかった新しい産業、思いもよらなかったイノベーションが起きてくることなどを期待して、行政機関等が保有する個人情報を利活用させようとするものです。行政機関が保有する個人情報は、行政事務の執行のため収集、管理されているものです。だからこそ、厳格な個人情報の保護の下で社会的な要請に応えた利活用が求められているのです。しかし、本法案は、個人情報の保護は不十分なままで、行政機関の側から個人情報の利活用を民間事業者に求めていくものであり、やめるべきです。
また、本法案は、民間企業等からの提案に沿って行政機関等が個人情報に非識別加工を施し提供します。どんなに高度な加工が施されたとしても、本人が想定していない民間企業等に個人情報が提供、利用されるという問題が残ります。そもそも、識別行為の禁止が本法案で明記されること自体、再識別化のリスクがあることを意味しています。
そして、もし民間事業者に提供した非識別加工情報や個人情報がリスクにさらされた場合、情報を提供した行政機関等が行使できる権限などについて曖昧な点が残されています。
さらに、総務省は不適格事業者を提案者から排除できると言いますが、いわゆる名簿屋のような事業者も本法案のスタート時には個人情報の利活用を提案できるという懸念が残ります。
個人情報の非識別加工についても外部の民間事業者に委託することもできるとされ、不適切な個人情報の漏えいや流出につながりかねないことから、本法案に反対します。
また、本法案は、個人情報を多く保有している市町村にも、国がその一体的な利用を促進していくことを明記しており、看過することはできません。
以上を述べて、討論とします。
○委員長(山本博司君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(山本博司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
(略)