平成28年4月5日
衆議院総務委員会第11号
平成28年4月19日
衆議院総務委員会第14号
○足立委員 おおさか維新の会の足立康史でございます。
(略)
それから、地方公共団体の問題と、もう一つ重要な問題、医療ですね。ビッグデータを扱うときに、私は、大変重要な分野として医療分野があると思っています。
かつて私も厚生労働委員会でこれは議論していたことがありまして、聞くところによると大分検討が進んでいるということでありますが、まず、きょう、この法案に係る医療関係データ、これについては、事前に伺うと、大体、別に医療だから特別ということはなくて、保護委員会等で決めていくさまざまなルールの中で、同じスケジュールでやっていけるんだ、こういう御紹介があったと思うので、もしそうでなければ教えていただいたらいいと思いますが、多分そうだと思います。
一方で、そもそも、個人情報のさらに別の制度インフラとして、マイナンバーというのがありますね。マイナンバー、きょうの直接のテーマではありませんが、その関連で、医療は医療等ID。医療等IDは早くやった方がいい。これは、どんな取りまとめ状況、今後の予定、ちょっとお願いします。
○安藤政府参考人 お答え申し上げます。
医療分野も含みます匿名加工情報の作成等のルールに関しましては、今先生から御指摘がありましたとおり、個人情報保護委員会規則で定まるものと考えてございまして、厚生労働省といたしましても、医療情報の機微性にも十分配慮した適切な方法となりますように協力をしてまいりたいと考えてございます。
それから、御質問にございました医療等分野のIDの件でございます。
このIDにつきましては、例えば、医療機関の情報の共有でございますとか、あるいは、医療情報のデータベースのさまざまな、多様なデータベースの連携ですとか、そういったものに大変大きな役割を果たすものと私どもは考えてございます。
これにつきましては、昨年六月に閣議決定をされました「日本再興戦略」改訂二〇一五におきまして、二〇一八年度から段階的な運用を開始し、二〇二〇年までの本格運用を目指すとされてございます。
これを受けまして、厚生労働省の方では、研究会を開催し、医療関係者、保険者、有識者等で御議論いただきまして、具体的な方法のあり方等につきまして、昨年十二月に報告書を取りまとめたという状況でございます。
この日本再興戦略のスケジュールを確実に実現していくように、私どもとしては着実に準備を進めてまいりたいと考えてございます。
○足立委員 ありがとうございます。
今、私は二つ取り上げました。地方公共団体の、ちゃんと対応、それから医療分野も大事な分野ですから、しっかり取り組んでいただきたいということで申し上げました。
以上二つをちゃんとやっていただければ、私は、この個人情報の分野、ビッグデータの分野は本当に経済的、社会的に大きな役割を果たしていけると思いますし、この法案についても当然賛成ということでやっていきたいと思います。
(略)
○遠山委員長 次に、吉川元君。
○吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。(略)
次に、今回の法改正についての質問に移らせていただきます。
(略)
次に、もう時間が余りありませんので少し飛ばしまして、個人情報保護法の観点について若干お聞きしたいと思います。
昨年、個人情報保護法に関係する改正が行われました。それについて、総理が、四月十二日に官邸で開かれた第五回の未来投資に向けた官民対話という中で、名前を明かさないことを条件に医療機関が持つ患者データを患者の同意なしに集められる仕組みづくりを表明した、こういう報道がされております。健康診断の結果や手術後の経過について年齢や居住地によって分析し、新薬の開発に役立てるもの、こういうふうにも報道されております。
改正個人情報保護法においても、医療情報を患者の同意なしに集めることはできないはずであります。
報道によれば、これも全て報道ベースですけれども、来年の通常国会に関連法案を提出する予定で、国の認定機関が医療目的でデータを使う場合には同意を不要として、大学や医師会が運営する機関がデータを集めることを想定し、医療番号制度をその際に利用すること、さらに、当初は二千の病院と二万の診療所からの収集を目指す。かなり詳細な報道がされております。
この報道というのは事実なんでしょうか。そしてまた、こうした検討が実際に進められているのか。まずその点について尋ねます。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
医療の高度化や研究開発の促進等のため、医療・健康分野の各種情報保護、収集、管理する機関の設置を検討し、必要な法制上の措置等を講じていくことにつきましては、昨年六月に閣議決定されました「日本再興戦略」改訂二〇一五等に盛り込まれております。
これらを受けまして、現在、健康・医療戦略推進本部のもとに設けられました次世代医療ICT基盤協議会などにおきまして検討が進められているところでございます。
御指摘の報道がこれらの検討に関するものと理解しておりますけれども、本人同意の取り扱いなども含め、現在まさに検討段階にございまして、今後さらに議論を深める必要があると考えております。
いずれにいたしましても、具体的な制度設計に当たっては、医療情報の特性に配慮した情報の安全な取り扱いや、患者などの関係者の十分な納得の得られるものとなることが重要と考えております。
今後、制度の実現に向けて、関係府省と一体となって検討を進めてまいりたいと考えております。
○吉川(元)委員 検討されてというのは理解できましたけれども、非常に重要な、本人同意がなくても集められるようにする、これは日本経済新聞の記事ですけれども、そういうふうに安倍首相が表明をしたというふうな報道が流れているんです。
これは、本人同意なしでもやるということを考えているということでいいんですか。それとも、それはないのか。本人同意は絶対に必要だというふうに考えているのか。その点はどうなっているんですか。
○藤本政府参考人 お答えします。
総理が本人の同意なしでとおっしゃったことに関して、我々、そういう事実ではないというふうに承知しております。
本人の、患者などの関係者の十分な納得のもとで制度が運営されていくことが大事だというふうに認識しておりますので、そういう方向で検討させていただきたいというふうに考えております。
○吉川(元)委員 つまり、本人同意のない状況の中での提供はないということで、そういう理解でよろしいんですね。いろいろ検討するにしても、本人同意というのは絶対に必要なんだということを原則として、原則といいますか、それのもとで検討が進められているという理解でよろしいんですね。
○藤本政府参考人 本人同意というのはいろいろな定義がございますので、今、それも含めて協議会で検討させていただいているところでございます。
いずれにいたしましても、患者など関係者が納得しない制度運営にならないように制度設計をしていきたいというふうに考えております。
○吉川(元)委員 ちょっと繰り返しになりますけれども、本人同意がなくてもということについて、それも含めて検討しているということですか。
○藤本政府参考人 今、それは協議会で御検討いただいている中でございますので、本人同意なくしてということではなくて、関係者が納得する形での運営をやっていきたい、制度設計をしていきたいというふうに考えております。
○吉川(元)委員 もう時間が来ましたので、あとの質問については、引き続き、次回質問したいというふうに思います。
○遠山委員長 この際、暫時休憩いたします。
平成28年4月19日
衆議院総務委員会第14号(参考人質疑)
○藤原参考人 中央大学の藤原でございます。
(略)
○鈴木参考人 新潟大学から参りました鈴木正朝と申します。
(略)
○坂本参考人 日弁連情報問題対策委員会の委員長をしております坂本と申します。
(略)
○遠山委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
(略)
○足立委員 おおさか維新の会の足立康史でございます。
(略)
もう時間が来ましたが、あと一つだけ。
医療等ID、ちょっときょうの法案と離れます、医療等IDがマイナンバーとは別に一応つくられることになった。これは意味ありますか。藤原先生と鈴木先生、意味があるかないかだけ、五秒ずつでいいです。
○遠山委員長 時間が来ておりますので、参考人はお一人。
○足立委員 では、鈴木先生。
○遠山委員長 では、鈴木参考人、簡潔にお願いいたします。
○鈴木参考人 番号制を一元化するというのはやはり人権インパクトがありますので、お金回りのマイナンバーと生命身体回りの医療等IDを原則分けておくというのは、情報の人権侵害インパクトを例えば三権分立のように幾つかの大きさに、三つくらいに分ければ、自由と統制のバランスがとれるのではないかと考えております。
○足立委員 ありがとうございました。
(略)
○吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。
(略)
○吉川(元)委員 次に、坂本参考人にお聞きをしたいと思います。
実は、午前中も少し議論を委員会の方でさせていただいたわけですけれども、日弁連の意見書を読ませていただきますと、先ほどから先生お話しのとおり、公権力の行使によって本人の同意なく収集されたものが多いとした上で、無差別に商業目的で利用するということはなかなか国民の間で納得感がないのではないかというようなことが日弁連として指摘をされております。
行政機関の情報についても、やはり本人同意というのは求められるものなのかどうなのかということ。
それからあと、午前中はっきり否定をしなかったのでますます疑惑を持っているんですが、安倍総理が、医療データについて本人同意なしに使えるようにするというような発言があって、これは、役人の皆さんからの答弁だと、言ってはいないだとかいうような話もあったりだとか、今それも含めて検討中だとかいうことなんですけれども。
私は、やはり本人同意というのはここで外すわけにはいかないというふうに考えています。この本人同意の問題についてどのようにお考えでしょうか。
○坂本参考人 本人同意は非常に基本的な要件だと考えます。
ただ、全てのものに本人同意がなければ利用できないかというと、これまたちょっと違うかなという気もする。
例えば、情報公開制度で情報公開法に基づいて開示される情報について、全てそれの中に出てくる個人に同意を求めるか。手続がないことはないですけれども、全て同意がなければ開示できないかというと、場合によっては、開かれた政府をつくるために、公務員が職務上どんなことをしているかについては、幾ら公務員が、いや、これを出されたら困ると言っても、説明責任を果たすために出す、こういう見解もあり得るところだと思うのです。
何でも行政機関が持っている個人情報全般という形で、本人同意は要りますか、どうですかという問題設定をすると、基本は本人同意が原則だけれども例外もあるよねというふうにしかならないと思うのです。だから、具体的に、こういう情報をこういう形で利用するときに本人の同意を必須の要件とするべきか、それともしなくてよいのか、こういう議論に持っていくべきだと思います。
特に、医療情報についてはもうずっと議論がされていて、特に、極めてセンシティブで、本人が同意しなければ出せない代表例のように考えられており、基本はそうだと思うんですけれども、他方で、医療情報についてはさまざまな研究開発のために使うメリットもありますので、基本は、それについても本人同意をとって、研究のために使うということに基づいて提供してもらうのが原則だと思いますけれども、情報の性質に応じた議論をすべきであろうというふうに思います。
○吉川(元)委員 ありがとうございます。
(略)
○遠山委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。(略)
平成28年4月21日
衆議院総務委員会第15号
○武正委員 おはようございます。民進党の武正公一でございます。
(略)
高市総務大臣はマイナンバーの方も担当大臣ということで、きょうは、政府、内閣官房が示しておりますマイナンバー制度導入後のロードマップの案、これについてまず御質問をさせていただきたいと思います。
(略)
今、カードについては所掌だというお話なので、このロードマップでいうと、個人番号カードの一番下の段、「二〇一七年七月目途 医療保険のオンライン資格確認システム整備」、そして「二〇一七年七月以降(二〇一八年四月目途) 健康保険証としての利用」というのがロードマップに書かれておりますが、今、こういったことで番号カードについては検討が行われているということでよろしいでしょうか。
○高市国務大臣 健康保険証とマイナンバーカードの一体化につきましては、平成二十七年六月に閣議決定された日本再興戦略において、平成二十九年七月以降の早期に可能とするということになっています。
今、厚生労働省を中心に、マイナンバーカードの公的個人認証を活用した被保険者資格をリアルタイムでオンライン確認することでマイナンバーカードを健康保険証として利用する仕組みというものが検討されている、その最中であると承知をしています。
健康保険証とマイナンバーカードの一体化は、お使いになる方の利便性に資するものでありますので、引き続き検討は進めてまいりたいと思います。
なお、医療IDにつきましては、これは厚労省において検討中で、まだ結論を得ているとは伺っておりません。
○武正委員 おととい、参考人質疑では、医療IDとマイナンバーを分けたことは評価するということが鈴木参考人から指摘があったというふうに承知をしております。
このマイナンバーについて、先ほど触れましたように、国民の理解ということが大前提で、今厚労省にも付言がありましたが、進めていただきたいというふうに思っております。
特に、おとといの参考人質疑でも、この後触れる行政機関の個人情報保護法改正の非識別加工情報の対象としての拡大範囲、これについては、特に医療情報それから観光情報、これがやはり十六回の研究会でも一番上がったテーマだということでありますので、マイナンバーと、それからマイナンバーカードと、それから行政機関の個人情報保護法の非識別加工情報、特に医療、これが非常にリンクをしてくる、あるいはリンクをしてくる可能性があるということで、きょう、厚生労働省もお見えをいただいているところでございます。
そこで、大臣に改めて、先ほど指摘をした二ページ以降、世界最先端IT国家創造宣言いずれにも、オープンデータ、ビッグデータの活用推進については、パーソナルデータの利用を促進するための環境整備等を図る、しかし、やはりその前提として、個人情報及びプライバシーの保護との両立に配慮したデータ利活用ルール、これが必要なんだということが、いずれの宣言、見直しでも記載があるわけでございます。
それについては、おとといの参考人質疑やこれまでの質疑の間でも、個人情報保護委員会の関与が緩い、各所管大臣の権限が残されていることや、そしてまた総務省行政管理局にその権限が残されていることであって、このいずれの文書でも出ているプライバシーコミッショナー的な個人情報保護委員会、第三者機関のあり方が必要だという指摘が再三出され、これは法案の修正も必要なんじゃないかということも、参考人から、スモールスタートであるけれどもということで付言があったわけでございます。
これは引き続き、この委員会の質疑はきょうで終わってしまいますが、総務委員会としても、傾聴に値するし、取り組む必要があるというふうに思うわけでございます。
(略)
○武正委員 最後に、厚生労働政務官もお見えでございます。次世代医療ICT基盤協議会で今進めておられます二〇二〇年に向けた医療情報のデジタルデータ化などについてお触れをいただければと思います。
○太田大臣政務官 お答え申し上げます。
広い視野からの御質問でございますけれども、厚生労働省では、先ほど来、健康保険証についてマイナンバーカードが利用できないかというような観点や、あるいは、各保険者に蓄積されておりますビッグデータがデータヘルスに活用できないかとか、医療全体の効率化とともに日本全体の医療関連産業の発展のためにこうしたビッグデータが広く活用できないかどうか、利活用できるかどうかという点について、個人情報保護とのバランスも考えながらこれを進めているところでございます。
今回の改正法案につきましては、今大臣からるる御説明ございましたように、適切に活用ができれば医学研究や医療の高度化など社会全体の利益につながるものでございますから、こういう観点を大事にしながら、行政機関のトップとしての厚生労働大臣の的確な判断が導かれるように検討をしてまいりたいと思っておりますが、とにもかくにもこの法案では要件がございますので、その要件に照らして、情報を保有する庁として、適切な判断を行っていきたいと考えております。
○武正委員 時間が参りましたので終わりますが、次世代医療ICT基盤協議会では、今のこの法改正ではグレーゾーンとされるカルテ情報、あるいは個人の機微のセンシティブな病気の履歴などについても、さらに行政機関の個人情報保護法の対象範囲としての検討をされているように報告を受けております。こうした点についてもしっかりと個人情報保護の観点を踏まえて臨むことを求め、私の質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
(略)
○足立委員 おおさか維新の会の足立康史でございます。
(略)
法案審議ですから、二千個問題とかいろいろ質問したいことはありますが、大体もう私わかっていますから、御答弁。わかっていることは質問しません。
大体、ここでやられている質問の多くは、ここでやらなくてもわかっていることなんですよ。だから、もうちょっと大事な質問をみんなしましょう。与党の皆さんも退屈しちゃうと思います。よく週刊誌が、与党の議員が寝ている写真を撮りますね。あれは野党が悪いんですよ。野党がつまらない質問をしているから、与党の皆さんは寝るわけですよ。まあいいや、ちょっとやめておきましょう。
今回の法案で一番僕が大事だと思っているのは、何度も言っていますが、医療です、医療。厚生省、ちゃんとやってください、ちゃんと。
きのうも事務方に聞いていたら、法案ができたら考えますと言うんですよ。あかんでしょう、それは。議院内閣制なんだから、法案は通るんですよ、絶対。安全保障法制は法案が成立する前から準備する、僕は、当たり前ですよ。それをまた民進党とか共産党は、何を準備しているんだと怒るけれども、準備するのは当たり前じゃないですか。
この法案はまだ通っていません。準備をちゃんとしてくださいよ。ちょっと、どうですか。
○安藤政府参考人 お答え申し上げます。
行政機関や独法等が保有しております個人情報につきましては、個人の権利利益に支障が生じない範囲内で、民間事業者への利活用を進め、豊かな国民生活の実現につなげていくことが重要だと私どもは考えてございます。
また、医療情報につきましては、適切な、適正な保護が求められる一方で、適切に活用することを通じまして、医学研究や医療の高度化など、社会全体の利益につながるものであると考えてございます。
厚生労働省や所管法人等で保有します医療情報につきましては、民間事業者の提案を受けまして、今回の法改正の趣旨や要件に照らしまして、厚生労働省あるいは独法等で適切に判断をいたしまして、行政機関非識別加工情報を作成いたしまして、医療情報の適切な利活用につなげていきたいと考えてございます。
○足立委員 今御答弁いただいたのは、厚生省でいうと官房なんですよ、多分。官房ですよね、官房。こういう一般的な質問をすると、官房がお答えになるんですよ。いいですよ、全然。
それで、本当は、大事なのは、医療の保険者たちが情報を持っているわけです。保険者の質問をしようと思うんだけれども、保険局はなかなか、現場を持っていて、答えられないんですよ、重たくて。
だから、僕は、本当に今、行政というのは難しい時代ですけれども、保険局と官房、官房の思いを、原局である保険局とかとちゃんと連携して、現場が重たいのはわかるし、医師会とか、いろいろ四の五の言ってくるところはあると思いますが、大体、医療等IDをつくったのも合理性はないんですよ。医師会の肩をもむためにつくったんですよ。まあいいけれども、とにかく合理的にやってください。
(略)
○遠山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○遠山委員長 これより採決に入ります。
行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
○遠山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
平成28年4月26日
衆議院総務委員会第16号
平成28年5月12日
参議院総務委員会第13号
○参考人(宇賀克也君) 東京大学の宇賀と申します。
(略)
○参考人(山本隆一君) 本日は参考人として意見を述べさせていただく機会をいただき、ありがとうございます。
私は、医師で医療情報の研究者をもう三十年以上やっておりますので、医療情報の観点から今回御審議中の法制度についての意見を述べさせていただきます。
資料を一枚おめくりいただきまして、二ページ目に、いわゆる実地の医療、介護あるいは医学研究における従来の個人情報保護制度下の課題というのが列挙されております。一番上が、保護は追求されているんですけれども公正な利用の促進に対する対策が不十分であるとか、あるいは個人情報保護法は情報取得主体によって異なるルールで運用されている、それから遺伝する情報の本人同意の影響範囲が不明瞭という問題点、さらに四点目には、不正利用に関して実効性のある悪用防止の手だてが必要とか、五点目には、個人情報の定義が曖昧で匿名化が定義できないとか、それから本人が自らの個人情報の現状を知るために医療、介護分野で安心して利用できる共通IDが必要とか、これらの点が問題点として挙げられておりました。
その下の三点に関しましては、現在御審議中の法制度、あるいは既に決められております個人情報、新個人情報保護法等で、あるいは政府の方針等で一応の手だてが、手当てが打たれているものと思われます。上の三つに関してはまだ少し、医療、介護あるいは医学研究の観点から少し不安がございます。
次のページは、医学の教科書を上に四つ並べていますけれども、これ、私が医学部の学生の頃からこれらの本は同じような本がございまして、今も使われている有名な教科書ですけれども、この中に書かれている知識というのは実際の患者さんの知識がほとんどでありまして、実験室でつくったとか実験動物での知識というのはこれほとんど含まれていない、つまり患者さんのプライバシーセンシティブな情報から精製されたものであります。
下の二つの絵は、これは一つはイギリスのアカデミー・オブ・メディカル・サイエンスが二〇〇六年に出したレポート、左側がそうで、右側がアメリカのIOMが二〇〇九年に出したレポートで、いずれも、データ保護法あるいはHIPAAのプライバシールールが制定されてから、公益的な医学研究に非常に手間が掛かって遂行が難しくなって、なおかつ患者さんのプライバシーの保護が不十分であるというふうなレポートが出ております。それ以外にもこの二つのレポートには解決策をかなり詳細に書かれておりますけれども、いずれの国も、個人情報の保護と、それから人類あるいは公益に資する医学研究あるいは疫学研究等の兼ね合いにかなり悩んできているというのが現状だろうと思います。
その次の四ページ目は、これは厚生労働省の保険局が運用しているレセプト情報・特定健診情報データベース、俗にNDBと呼んでおりますけれども、私、これの有識者会議の座長をして、七年間これの、育ててきたといいますかお世話をしてきたんですけれども、今既に百億件を超えるレセプトが入っておりまして、一億数千万件の特定健診が入っております。
ここでどういうふうに、これは法律に基づいて集めていますので、個人情報保護法の対象外ではあるんですけれども、集めるときに、これは複雑な形をもって一応匿名化をチャレンジをしています。それが五ページ目で、審査支払機関の出口でハッシュ、ハッシュというのは一方向に変換する関数でございまして、変換されたものから元に戻らないという性質を持っていますが、極めてまれな例外を除いて同じハッシュ値に変換されることはないので、例えば一人の人のレセプトは時期をたがえて出してきたレセプトも結び付けることができると。つまり、一人の人の情報は全てひも付けできるけれども誰のかは分からないというふうな工夫をされております。
この情報が、今六ページ目に現状、ちょっとこれ古いデータですけれども、百億件を超えているということで、いろんなデータセットを作って様々な目的で利用できるようにということで提供してきておりますけれども、やはりこれ匿名化、完全に個人の情報でないとは言えないというような立場で行われています。もちろん新しい個人情報が制定される前ですけれども、いわゆる新個人情報保護法で言う匿名加工情報として扱えるように、安全管理をかなり厳しく審査した上で、公益性を審査した上で別途データを提供するということになっています。これが今御審議中の法律で非識別加工情報に相当するかどうかというのがかなりこの運用に関しては大きな問題でありまして、これは是非、その非識別加工情報に相当するというふうに判断をして、あるいはそれに相当するような加工をしなければならないと考えているところです。
この利活用は、高齢者の医療の確保に関する法律で決められたデータベースですので、法律に基づいて利用する場合はそのまま粛々と利用しておりますけれども、極めて学術的にも有益性の高いデータベースですので、それ以外の目的に関しては有識者会議による審査で、先ほど申しましたように、いわゆる匿名加工情報あるいは非識別加工情報に相当するものとして様々な条件を十分審査した上で提供しているという制度になっています。
こういったデータベースが、これからがん登録でありますとか、あるいはDPCのデータベースとか様々出てまいります。これが十分活用できることは、これから日本の社会保障の持続性を保障するに当たっては非常に重要ですので、是非この利活用を進めていくような形で、なおかつ患者さんあるいは介護施設の利用者のプライバシーは確実に保護されるという方向で進めていかなければならないというふうに考えております。
それから、現実の問題として、困っている問題として八ページがございますが、医療機関は実は国立国際医療センターやがん研究センターのように国立の組織もございます。それから、当然ながら自治体立の市立、県立あるいは町立の医療機関もございますし、あるいは独立行政法人の国立大学病院もあります。それから、それ以外の大部分は民間でありまして、患者さんからするとどの主体の医療機関にかかろうと恐らく関係はないわけですね。なおかつ、現在は一つの医療機関で医療が完結する時代ではなくなってきております。複数の医療機関が連携をして情報共有をして一人の患者さんのケアをしていくというふうなことがもう当たり前の世界になってきておりますけれども、この主体が変わることによって個人情報保護に関わる制度が変わってくるということが実際の医療の現場でかなり大きな問題になっております。
今回御審議中の法案で、独立行政法人あるいは行政機関の非識別加工情報に関しましては個人情報保護委員会が民間と同様に一貫してそれを指導していくということになりましたので、民間、国、独立行政法人は改善されるというふうに考えられますけれども、自治体立の医療機関との間が、これがまだ残っております。
これは、制度が違うことが問題ではなくて、ルールが違うことが問題ではなくて、責任主体が異なるということが問題でして、責任主体が異なるために、各自治体では個人情報保護委員会が設けられていて、そこに、こういった医療連携を継続的にするというふうな計画があった場合にその個人情報保護委員会にかけて許可をもらわなくてはいけない。これが例えば十の自治体をまたぐような地域医療連携ですと、十の自治体の個人情報保護委員会に申請をして許可を得なければならない、これが非常に大きな事務的な負担になっております。
それから、要配慮情報、これは病歴が新個人情報保護法では要配慮情報として明記されております。この病歴をどう捉えるかによってかなり現場での扱い、あるいは医学研究のいろいろな扱いが変わってまいります。
一般には、広く医療情報を病歴と捉えるというふうに思われるのが普通だと思いますけれども、その場合はやはり若干の例外と申しますか、現場での取扱い上の利便性というのを考慮されなければなりません。これは法律ではなくて恐らく政令あるいは指針等の話になると思いますけれども、ここは十分配慮をしないと、現場に非常に大きな負担になると同時に、いわゆる患者さんあるいは介護の利用者と医療従事者あるいは介護従事者の間で意識の乖離が生じると、実際には信頼性に基づいて行われるべき医療、介護でありながらそういったことで、プライバシーの侵害を起こす起こさないという問題ではなくて、単に意識の違いで信頼性が失われることになると非常に大きな影響があるというふうに思われます。
それから、十ページ目が遺伝する情報でございまして、これはなかなか難しい問題が含まれております。現在、厚生労働省のゲノム医療推進タスクフォースで議論がされているところでありますけれども、遺伝子情報は個人識別情報で、個人識別情報であれば要配慮情報であるという整理になっているというふうに聞いております。
ただし、遺伝子情報と申しましても、遺伝子の部分情報である場合やあるいは一定程度統計処理をした情報などは個人情報に該当しない場合もあるので、今後検討するというふうに記載されております。
このことによって、遺伝子情報が要配慮情報に相当するという原則を立てることによって、DTC、DTCというのはダイレクト・ツー・コンシューマーで、これは民間企業が直接利用者の遺伝子を分析するというビジネスベースの遺伝子検索ですけれども、こういったことが、不完全な同意の下で本人の意図しない利用を防止することはこれで対応可能だというふうに考えておりますけれども、一方で、共同研究におけるデータ共有が困難になることが予想されるとか、あるいは、同意の問題として、遺伝子の場合は、本人がたとえ同意をしていても、その個人情報の取扱いに関わる影響が血縁親族に及ぶことがあって、影響が及んだ人が同意をしていないというふうな問題も起こり得ます。
十一ページ目は、これはアメリカのNIHのホームページのコピーでありますけれども、ゲノミック・データ・シェアリング・ポリシーとございまして、これはNIHがサポートする研究に関しましてはデータは全てシェアリングすることを義務付けている。これは何も無条件という意味ではなくて、限定された公開であるとか、あるいは非常に厳しい条件を付けた公開とかいろいろありますけれども、少なくとも共有しないということの選択肢はないということで進めています。
これは、遺伝子の研究は、現在残っている分野というのは、やはり非常に少ない、難病に対する研究であるとか、そういったものでありますと、一つの研究プロジェクトで集められるサンプルでは不十分なことが多いわけですね。したがって、様々な目的で集められたサンプルであっても、それを共有することによってそういった希少疾患に関する診断あるいは治療に結び付くということが期待されますので、このNIHのグラントを受けている限りはこのデータ・シェアリング・ポリシーに従うということが義務付けられております。
それから、十二ページは、これは我が国の科学技術振興機構が運営しておりますバイオサイエンスデータベースセンターで、これも今、遺伝子に関わる研究費を取りますと、結果をこのNBDCに登録することを強く勧められています。
こうして様々な目的で収集された遺伝子情報を共通に利用することによって、まれな疾患あるいは非常に重要な疾患に関する診断及び治療への研究に結び付けようという努力をされているわけですけれども、実際にデータを収集するときに、その利用目的が、将来にわたる利用目的が全て分かるわけではないですね。したがって、全てを説明して同意をいただいているわけではないので、これがその要配慮情報を厳密に適用すると利用目的を明示した上で同意をいただかないと利用できないということになり、これらの動きが非常に制限されると。また一方で、国際的な協力というのも非常に進められているところでありまして、これも我が国だけが置いてきぼりになるというふうな可能性もないではないとちょっと危惧をしております。
十三ページは同意の在り方で、これはいろんな同意があるということをここにお示ししただけでございまして、これ要配慮情報で禁止されているのはオプトアウトだけなんですけれども、これはもう少し緻密な議論が必要ではないかというふうに考えております。
最後に、まとめですけれども、個人情報の保護は明らかに改善されると。それから、個人情報保護委員会を匿名加工情報あるいは非識別加工情報のコミッショナー、扱いのコミッショナーとすることで基準が明瞭になると。ただし、地方自治体による差が相変わらず残ってしまうということで、これは更にこれから努力が必要だろうというふうに思われております。
それから、要配慮情報に病歴が含まれる、それから遺伝子情報を含むということで濫用されるリスクは低下しますけれども、その一方で、公益研究、特に多施設共同研究や国際共同研究に不要な負荷がないように十分な対策を望みたいと考えております。
それから、遺伝する情報の保護は、先ほど言いましたように、個人情報保護法はやはり同意ベースでありますので、同意の有効範囲が及ばないところで影響が出る可能性があるということで、それ以外の制度的な裏付けが必要ではないかと、あるいはこれで十分なのかという検討が必要だというふうに考えております。
私の意見は以上であります。
どうも御清聴ありがとうございました。
○委員長(山本博司君) ありがとうございました。
次に、清水参考人にお願いいたします。清水参考人。
○参考人(清水勉君) 日本弁護士連合会情報問題対策委員会の委員の清水と申します。
(略)
○委員長(山本博司君) ありがとうございました。
以上で参考人の方々の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
(略)
○石上俊雄君 民進党・新緑風会の石上俊雄でございます。
(略)
続きまして、山本先生にお聞きしたいと思いますが、ざっくり言って、先ほど絵にも記していただいておりましたが、今回の行個法が成立するというか、この法律によって、先生が取り組まれている医療関係のデータにつきまして、国立病院などの医療データの加工、あとは市立病院、自治体関連の病院や民間企業、製薬会社等が活用できるようになる方向に進むのか、その辺どういうふうに御期待されているのかといったところをお聞きしたいのと、そういうふうになるということについて、今回の法の改正で良かったところと、もうちょっとこうなった方がいいんじゃないのというところ、さらには、今回成立した暁には、その先に委員会の規則等が様々作られていくと思うんですけど、成立した後にこういうことをやれば更に良くなるといったところをちょっと御示唆いただきたいと思います。
○参考人(山本隆一君) 今回の御審議中の法案につきましては、これが成立した暁には、少なくとも行政機関、独立行政法人の持っている医療情報、これは、例えば国立大学法人でありますとか国立大学病院機構でありますとかが独立行政法人で、国の場合は国立感染症センターとかあるいは国際医療センターとか、がん研究センターがありますけれども、そういったものの非識別加工情報あるいは匿名加工情報としての利用に関しましては一定の進捗があるというふうに考えております。これは範囲が明確になりますし、手続も明確になって、それこそ世間の皆様方と余りそごのない考えの下に利活用を進めていけるという意味では、研究者も自信を持って使っていけるということになろうかと思います。
医学研究に関してはそうでありますけれども、医療の現場、つまり医療と介護の連携でありますとか医療連携に関しましては残念ながら特段の進歩は見られないというふうに、なぜかといいますと、非識別加工情報にまで至らないと特別な変化がないんですね。現場の場合は、これは匿名化してはできませんので実名のままで情報をやり取りする必要がありますけれども、その場合は先ほど申し上げましたように主体者における責任の壁がございまして、それを有機的に、あるいはどんどんどんどん進めていこうとすると手続的にかなりハードなものがございます。
あと、民間の利活用に関しましては、これはどちらかというとオープンデータ政策の方に関係する話で、非識別加工情報というのはこの法案の場合はほとんど個人が識別できないものとされていますけれども、そうはいいながら、安全管理を義務化している、求めているということは、一定のリスクがあるという配慮だと思うんですね。そうすると、一定のリスクがある配慮のままでいわゆる民間事業者が営利目的で利用するということは恐らくできないというふうに考えていますので、医療に関しましてはできないと考えていますので、更に特定性を下げて全く安全になったオープンデータにまで至らないとイノベーション等に役立てることはそれほど容易ではないというふうに考えています。
これは個人情報保護法の問題ではなくてオープンデータの問題でありますから、これは今も進められていますし、これからも多分進んでいくんだろうと理解していますので、それはそれで別の動きとして期待していいんだと思いますけれども、今回の法案で特段変化があるというふうに私自身は考えていません。
それから、この後ですけれども、この後なのか、あるいは今、宇賀先生、清水先生からお話があった、例えば医療でもう少し個別法みたいなものを考えるのかとかいう問題がございますけれども、仮にそういう個別法がない状態で新個人情報保護法が施行されて今回の法案が通過した場合ですけれども、やはり要配慮情報に関する取扱いというのが非常に難しくなっていて、これ、患者さんが期待する取扱いと、それから医療従事者あるいは医療、医学研究者が期待する取扱いというのにはまだ私はそごがあるように感じています。
したがって、決してプライバシーを侵害する、個人情報を軽んずるということがあるわけではないんですけれども、そのないということを納得した上で共通に理解ができるような政令あるいは指針等の整備が欠かせないというふうに考えております。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
(略)
○石上俊雄君 最後になりますが、山本先生にもう一問お聞きしたいんですけど、山本先生は次世代医療ICT基盤協議会の委員として入られていると思うんですが、先ほど清水先生が資料をちょっと、経団連の方からは何もニーズがないというふうな、まあ確かにそうなんですね。しかし一方で、医療的な分野では、先ほど介護といった言葉も出ましたが、これ大変なことになるということで、本当に力を入れて取り組まれているわけでございます。
そんな中で、今回のこの行個法なんですが、ざっくり本音で、一部では法律が先走ってイノベーションの芽を摘まないでほしいというような意見も出てきているわけでございまして、先生におかれましてはどのような認識でおられるかをちょっと教えていただけますでしょうか。
○参考人(山本隆一君) 正直に申しまして、危惧はしております。まだやはり、何といいますか、患者さんのプライバシーの侵害を全く起こすおそれがないにもかかわらず保護規定のために利用できないということが起こり得るのではないかというふうに危惧をしています。
ただ、これは先ほどから申し上げましたように、今の法律の枠組みだけでいくと、やはり一般の情報と医療情報を区別していませんので、一般の情報に関してルールを適用するとなると、医療情報はここはもう我慢しなくちゃしようがないというふうなところがやっぱりどうしても出てくると思うんですね。
話が長くなって恐縮ですけれども、例えば百人の被験者で一人だけ副作用が出た、その副作用の人が私は公開するのは嫌だと言ってしまうと、データは九十九人で副作用のないデータになってしまうわけですね。実際は百分の一で副作用が出ているのにそうなるというふうなことが一般の事例では起こり得るわけですけれども、医療の場合はやっぱりそれが起こっては困るということがありますので、そういう意味では現在の法制度の下ではやや不十分で、医学研究あるいは医学に基づくイノベーションに関してやや心配であるということはございます。
これは、今御紹介のありました次世代ICT推進本部等でこういうことに対する解決法等も議論されているようですので、その議論の結果を待って、もしもその制度が必要であれば制度の整備を進めていただきたいと考えておりますし、そうでなく進められるものなら粛々と進めていきたいというふうに考えております。
○石上俊雄君 時間が来ましたのでここで終わりますが、もう少し、SS―MIX2とか、いろいろなところで聞きたかったんですけど、また次回にしたいというふうに思います。
本日は三名の参考人の先生方、本当にいろいろ御意見をいただきましてありがとうございました。
終わります。
○横山信一君 公明党の横山信一でございます。
(略)
行政情報の持つ個人情報の中で有効というか期待されているのはやはり医療情報ということですので、山本参考人にお聞きをしたいんですけれども、従来、御紹介のあった医療情報データベースのNDBとかあるいは法律上で整備されましたがん登録とかですね、そうした医療情報の個人情報みたいなものはこれまでの中でどんな役割を果たしてきたのかということと、また、今後ビッグデータ解析に利用しようとする場合にはどのような不備があるのか、お聞きしたいと思います。
○参考人(山本隆一君) これまでと申しますか、いわゆる御紹介申しました、医学そのものは全て個人情報の集まりから抽出した知識でありまして、本当に頭の中でつくったものでもなくて実験室でつくったものでもないですし、患者さんの個人情報がなければ絶対進まない分野ですので、明日の医療を考える上では個人情報の利活用というのはもう避けられない話なんですね。
それで、私も医療の現場に結構いましたけれども、多くの患者さんは非常に、何といいますか、高い公共心から、あるいは互助精神からか、自分の情報を使うことに関して全く拒否はなさらずに、どうぞお使いくださいというふうなことで、こう言っていただくわけですけれども、一方で、そういった御奇特なその精神に対して、間違ってもその人の権利が侵害されるようなことをしてはいけない。医療従事者はするつもりはなくてもやっぱり不注意ということはあり得ますし、本来気を付けるべきところを手を抜いてしまったということもあり得ると思うので、そこはやはりルールをきちっと作って、説明責任を果たせる形で使っていくということが非常に大事だろうと思います。
それから、逆に、そういう医学のため、あるいは人類の未来のため、明日の医療のためという気持ちでデータを提供していただくということがよりやりやすくなるように安心感をお示しするということも、これも非常に大事だと思うんですね。この二つを兼ねる制度というのが本来求められるべきものだというふうに思っています。
今、ヘルシンキ宣言とかそういうのは引くまでもなく、医療従事者とか介護従事者が誰かのプライバシーを侵害してやろうと思うことはまずあり得ないことですし、医学研究者もそうでしょう。それから、まあ民間になってくると少し分かりませんけれども、基本的には善意で動いている、あるいは本来の職業意識で動いている者に対して、間違って権利の侵害が起こらない、あるいはそういう心配をしなくていいというふうな制度整備をするということが非常に重要で、それが次のビッグデータにつながっていくと思うんですけれども。
ビッグデータになりますと、これは今まで分からなかったことが随分分かってきています。今までは本当に想像でしかされていなかったような、例えば医療の地域による差でありますとか、あるいはその疾患によるどのような治療が実際に行われているのかみたいなことが本当に実データとして分かってくるんですね。そうすると、これはもう少し日本全体としてこの治療方法を統一した方がいいのではないかとか、あるいはその介護と医療のバランスをどう考えるのかみたいなことがかなり明確に、しかもその具体的な数字で見えてくるんですね。これは社会保障を考える上で非常に重要ですし、あと、あるいはその医学を考える上でも、実際にこれが有効だとされている割にこれがほとんど広まっていないとか、そういったことも見えてきますので、極めて重要な進歩がここ数年見られていると思います。
ですから、これは決して阻害することなく進めていくべきだと思いますけれども、一方で権利侵害を起こさないということが保障されるということが一番大事だというふうに考えています。
○横山信一君 ちょっと時間がなくなってしまいまして、本当は、今回の法整備は国の行政の個人情報保護で、地方公共団体にまで立ち入ってはいないんですけれども、今後そういった議論というのは必要になってくるわけでありまして、先ほども議論に出ておりましたけれども、一番個人情報を持っているのは地方自治体ですから、そこの部分についてのお考えもお聞きをしたかったのでありますけれども、今日の御意見を参考にしてまた議論を進めさせていただきたいというふうに思います。
どうもありがとうございました。
(略)
○主濱了君 生活の党の主濱了であります。
(略)
それでは、山本参考人にお伺いをいたします。
医療に関して、例えばレセプト情報あるいは特定健診情報あるいは特定保健指導情報、これはもう本当に貴重な情報だというふうに思っております。
一方におきまして、個人情報保護法におきましては、要配慮個人情報の中に病歴が入っています。そして、先ほど来お話があったように、遺伝情報なんというのは思わぬ広がりがあるわけでありますよね。この点についてどうやったらいいのかということで、先ほど清水参考人の方から御提案があった、この医療関係の情報については別途の法制を考えてみたらいかがと、こういったような御提言があったというふうに私理解しているんですが、これについて山本参考人はいかがお考えでしょうか。
○参考人(山本隆一君) 個別法という別途の法律というのを、私は昔から別途の法律があったらいいなと思っている方なんですけれども、ただ、日本の、我が国の立法のやり方の中で考えていくと意外と難しいところがありまして、例えば医療情報の個別法を、じゃ、どこが作るのかというと、厚生労働省が作るのか。厚生労働省が作るとその規制対象は医療、介護機関になってしまって、それ以外の機関が対象外になると。そうすると、今すごく問題になっている、利活用ではなくて間違った利用をされるリスクというのは、そういうところにあるわけではなくて民間事業者の方にやっぱりあるわけですね。勝手に情報を集めてきたりとか、あるいは太りやすい体質かどうかで遺伝子調べますみたいな形で収集するんだけど、実はそれを違う目的に使うとかというようなことが起こり得るわけですけど、そこに対しては全く規制が掛からない法律になってしまうと。
そういう意味では、全体を規制対象となる法律の中でできるだけ書き込む方が効果的ではあると思うんですね。したがって、個別法と言っても、そういう意味での、省庁縦割りの個別法という意味ではなくて、情報種別における個別の考慮点というのが必要だと思うんですね。
それは、例えばEUの今回通ったレギュレーションの方でも、センシティブデータの中で保健医療情報というのは別に扱われていて、それに関しては、プロフェッショナルによる医療とそれから介護それから公益的医学研究はこの例外とするとかというふうに結構細かく書き込んであるんですね。
そういう、個別法と言いながら、実は私は情報種別による配慮が個別にされている法律であることが望ましいというふうに考えています。そうしないと、結局保護すべきものが曖昧になってしまうというおそれがあるんじゃないかなと思っています。
○主濱了君 もう一問あるんですが、時間がちょっとオーバーしそうなので、これで終わります。
ありがとうございます。
○委員長(山本博司君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
平成28年5月19日
参議院総務委員会第14号
○石上俊雄君 おはようございます。民進党・新緑風会の石上俊雄でございます。
(略)
続きまして、医療のビッグデータの解析についてお伺いしたいと思います。
これは先日の参考人の質疑でもちょっとお伺いをしたんですが、資料の十の②に示させていただきましたが、現在、内閣官房で、次世代医療ICT基盤協議会というところで、国の代理機関を設置して、電子カルテを集めて匿名加工したビッグデータを利活用する仕組みを検討中とお聞きします。せんだって言わせていただいたSS―MIX2というのがこれになるわけでありますが、議論の進捗をこれフォローしますと、総務省の研究会のヒアリングであった、経団連から来るわけでありますが、経団連が具体的なニーズはないというようなことを言ったので把握していないとかいうことになるわけでありますが、しかし、医療の分野では真逆で、ビッグデータ解析に道筋を付けなければ日本の医療と看護の未来が見えてこないということで、真剣そのものなわけですね。
したがって、議論では、資料十一の①にもありますけれども、要は、代理機関は今回改正された個人情報保護法の対象から逸脱した存在になるため、公的機関の認可に加え、制約の在り方も検討する必要がある、さらには、法律が先走ってイノベーションの芽を摘んではいけないとの意見も出ているというふうに聞くわけであります。
したがって、医療分野はしっかりとやっていかなくてはいかぬ、しかしいろいろあるねということで、行個法との関係ですね、今後、特別法等も考えながら進めていくのか、この方向性について議論になっているというふうに聞きますが、内閣官房、お答えいただけますでしょうか。
○政府参考人(藤本康二君) お答えいたします。
医療の高度化や研究開発の促進等のため、医療研究分野の各種情報を収集、管理する機関の設置を検討し、必要な法制上の措置等を講じていくことにつきましては、昨年六月に閣議決定された日本再興戦略改訂二〇一五等に盛り込まれております。これらを受けまして、現在、健康・医療戦略推進本部の下に設けられました次世代医療ICT協議会において検討が進められているところでございます。
改正個人情報保護法や今回の法案においては、病歴が含まれる個人情報が要配慮個人情報とされ、慎重な取扱いが求められることになります。そのため、検討中の新たな法制上の措置は、医療情報の特性に配慮した情報の安全な取扱いとともに、患者等の関係者の十分な納得が得られるものとなることが重要であるというふうに考えております。今後、議論を深めていく必要があると考えております。
制度の実現に向けて、関係府省と一体になって検討をしてまいりたいと考えております。
○石上俊雄君 そこで、せんだっての参考人質疑でも明らかになったわけでありますが、医療分野では、国立病院、市立病院、あと自治体病院、あと民間企業が共通、一括したルール、手続で患者情報を扱えて、それを匿名加工し、ビッグデータとして利活用するという、こういうスキームが要望だったわけでありますが、残念ながら今回の改正案ではそこまで至らなかったということでございます。
しかし、その改正案の下で理想に近づける方法として、資料十一の②に示したように、民間とタイアップしてやる、民民のマルチステークホルダープロセスと一緒にやるという、こういうこともあり得るというふうに言っているわけでありますが、この考え方について総務省としてはどういう御認識か、お考えをお聞かせください。
○政府参考人(上村進君) お答えをいたします。
御指摘のように、改正案におきましては、先ほど私からもお答えしましたように、このマルチステークホルダーのプロセスみたいな仕組みはないわけでございます。ただ、他方で、お尋ねのような医療分野など具体的にニーズがある分野につきまして、官民一体となったデータの利活用、これにつきましては、本法案附則第四条というものがございまして、これに基づき、今後検討されることになってくると思ってございます。
なお、制度的な仕組みとしてはないわけでございますが、今の改正法でできないのかできるのかということにつきましては、今後、改正された本法案あるいは個人情報保護法等々の施行の状況を見ながら、関係の部局、関係者が検討されることであるのかなとは思います。
ちょっと私からその点につきましては、そういう意味もございまして、具体的にどうこうするということを述べることはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
(略)
○横山信一君 公明党の横山信一でございます。
(略)
○横山信一君 まあ、まさにポジティブサムの実践ということになってくるんだと思うんですけれども、ちょっと具体的な話をさせていただきたいんですが、その総務省研究会で医療情報は利活用の期待が高まっているんだということが踏まえられておりますけれども、例えばデンマークでは、医療情報は匿名化情報であれば世界中の研究者が自由にアクセスできるようになっているというふうに聞いております。また、患者からの情報活用の同意を得ることができれば匿名化されていない情報についても活用が可能であると。
先日の参考人の意見陳述の中でも、匿名化されない医療情報の重要性についての指摘もあったところでありますけれども、また一方で、我が国では匿名化された医療情報であってもその利活用には肯定的でないという、そういう部分のお話もありました。超高齢社会となる我が国にとっては、医療情報のオープンデータ化が可能になれば、介護・医療分野やヘルスケア産業など様々な分野でのイノベーションが期待をされます。
本法律案によって、医療情報を匿名化しオープンデータ化できるようになれば医療情報の利活用が進むということを考えられるんですけれども、総務省としてはこれにどう取り組んでいるのか、伺います。
○政府参考人(南俊行君) お答え申し上げます。
医療情報の利活用ということにつきましては、これまで主として医療機関の間で患者の情報を共有するためのネットワークをつくるという形で整備が進められてきたところでございまして、専門医が不足しているような地域の医療圏を中心にしまして全国に二百を超えるような医療情報の連携ネットワークというものが現在存在しているところでございますが、その多くが、やはりランニングコストが高い、あるいは患者さんが進んで同意を与えてその仕組みに参加してくれないという、その利用率の低さという問題を抱えているところでございます。
このため総務省では、昨年、厚生労働省と一緒に懇談会を立ち上げましてこうした課題の解決に向けた方策を検討してまいりまして、二つの御提言をいただいております。
一つは、モバイルですとかクラウド、そういった最新のテクノロジーを使って、もっと低廉でセキュアな医療情報の連携のネットワークができないかということが一点。それから、もう一点は、本人が自らの医療情報、日本には様々な手帳文化というものが根付いてございますので、その医療情報を時系列的にきちんと管理をしまして、自らの望む場面でその情報を活用するような基盤となります、これPHR、パーソナル・ヘルス・レコードという言い方をしてございますが、このPHRの基盤をしっかりつくるべきじゃないかと。そうすることによりまして、救急のときに今までの既往歴を見ることができたり、あるいは災害のときにこれまでの服薬情報が分かったりと、これはマイナンバーカード辺りと組み合わせることによってそういった提供が可能になるのではないかというふうに考えておるところでございます。
こういった提言を受けまして、予算も活用しながらモデル的な実証事業に着手をしていきたいというふうに考えてございまして、医療情報のセンシティブな取扱いには十分留意しながらも、医療情報がより積極的に活用していけるように取組を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
○横山信一君 私の知り合いのお医者さんが国際シンポジウムに出て、日本では医療情報のオープンデータ化が遅れていますねというふうに言われて全然議論に参加できなかったというお話も聞いておりますけれども、今おっしゃっていただいたように、センシティブな部分をしっかりと保護するということは大事でありますが、一方で、今の日本の置かれている状況というのは決して進歩的な立場ではないと思いますので、そういったところを、今後のイノベーションを起こしていく上でも、総務省が是非イニシアチブを取って頑張っていただきたいというふうに思っております。
この医療分野においては、先日の山本参考人のお話にもあったとおり、実際のデータを用いることが重要だというお話がございました。国、自治体等の行政機関が個別に管理する個人情報を有機的に利活用できるように、行政機関個人情報保護法等を所管する総務省としても何らかの方策を打ち出すべきではないのかと、こんなお話もあったわけでありますが、これについて大臣はどのようにお考えになりますか。
○国務大臣(高市早苗君) 横山委員が御指摘いただきました点は、本法案の附則第四条におきまして、個人情報取扱事業者や国の機関、地方公共団体等が個別に保有する個人情報について、一体的に利用されることが公共の利益の増進及び豊かな国民生活の実現に特に資する分野について個人情報の一体的な利用の促進のための措置を講ずるということを定めています。
具体的には、本法律の公布後二年以内に必要な法令の整備などの措置を行うべく、内閣官房を中心として関係省庁が連携しながら検討を行っております。
○横山信一君 検討中ということでありますので、早急な整備をお願いをしたいというふうに思います。
(略)
○片山虎之助君 それじゃ、順次質問いたします。
(略)
厚労省、一つあなたに聞くのを忘れておった。この前の参考人質疑で、あれ、山本さんと言われたかな、出られた方が医療関係は個別法の方がいいんだと言ったんです。これ、全体の中に医療情報関係があるというより、医療情報は抜き出して、個別の方が適当だということを言われたんですが、それについてはどうですか。
○政府参考人(安藤英作君) 先般の参考人の質疑につきまして私どもも聞いてございました。山本先生の方からそのような意見があったということはもう十分承知してございますし、またほかにもそういうことをおっしゃられる有識者の方々やあるいは関係者の方々もいらっしゃるものと考えてございます。
いずれにいたしましても、附則の第四条等で検討するということになってございますので、私どもとしましては、政府の中で適切に対応していきたいと考えているところでございます。
(略)
○委員長(山本博司君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
(略)
○委員長(山本博司君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(山本博司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
(略)